KTE-0934-Einherjar-Goodrickchild
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脅威存在データベースエントリ


脅威ID:
KTE-0934-Einherjar-Goodrickchild — "代用グリンカムビ(Mock Gullinkambi)"

認可対応等級:
4 (重度脅威)

概要:
KTE-0934-Einherjar-Goodrickchildは、1947年11月にアメリカ陸軍情報部Military Intelligence Service及びイギリス秘密情報部Secret Intelligence Serviceによって実施されたレインディア作戦1で回収された、アーネンエルベ機関によって戦略兵器としての運用を目的として開発された奇蹟論的及び魔導工学Sorceronics的な構造を有するアーティファクト(LTE/PTE-0912-Kapala-Einherjar-Moro、以下"アーティファクト"と呼称)によって生成された超常的脅威存在である。アーティファクトは非因果性循環定義化イベントNon-causality Circular Definition Event/NCDEの発生及びその制御を目的として開発された事が、ペーパークラフト作戦2の一環として行われた関係者に対する尋問及び回収された文書から得られた情報によって明らかになっている。

アーティファクトは1954年9月、アーヘン・メルツブリュック飛行場からポルト・アレグレのサルガド・フィーリョ国際空港までの空輸途上に喪われたと考えられていたが、後述する経緯によって1989年10月にその所在が判明した。

交戦方式:
現時点でKTE-0934-Einherjar-Goodrickchildの所在、及びそれが齎す可能性のある超常性脅威の全容は不明である為、その捜索又は早期警戒に専念するべきである。KTE-0934-Einherjar-Goodrickchildの再顕現化事案が生じた場合はAltGen資産に加え、Tier3相当の火力が必要と看做されている。盟約に準じた対応であれば、後者は合衆国逸脱戦対応軍U.S.DEVWARCOMを通じて彼らの戦略的資産が提供される事になる。同時に顕現化事案の兆候が確認された場合、PSYCHE部門によってGPU3への事前通知が行われ、可能であれば彼らの管轄下にある同様の資産を活用する。


PTE-0912-Kapara-Einherjar-Moro再回収記録

⁂ PHYCHE部門記録 ⁂


報告者:
ローマ教皇庁典礼秘跡省遠征修道戦技団、GOC特設使節、ミハイル・ガーデナー

経緯:
以下は、超常性脅威の発生源となったアーティファクトが再回収に至るまでの概要を示す記録群である。

アーティファクトは回収後、イギリス占領区域ノルトライン=ヴェストファーレン州のヴェーヴェルスブルク城にて他のアーネンエルベ・オブスクラ軍団に関連する資料及び異常物品と共に学術価値調査団4による調査の対象とされていた。GOCの発足に伴ってソ連側の超常性関与機関にレインディア作戦の概要を含むアーティファクトの関連情報が開示される事を防止する必要が生じた為、当時ソ連と断交状態にあったチリに存在する拠点への移送が計画された。当時、チリには大型機を受け入れられる飛行場が存在しなかった為、ブラジルで同じくGOCによって運用されていたDC-3機に積み替える予定であった。アーティファクトの脅威IDはPTE-0912-Kapala-Einherjar-Moro、認可対応等級は暫定的に3 (中度脅威)と指定された。

1954年9月、ノルトライン=ヴェストファーレン州のアーヘン・メルツブリュック飛行場より乗員6名、アーティファクトの運用・保守要員を含むGOC及び財団職員、計88名を積載してポルト・アレグレのサルガド・フィーリョ国際空港に向かう途上で消息不明となった。当該機の任務及びペイロードの性質上、本案件は完全に秘匿されたが、1989年10月に同空港へ"古いレシプロ旅客機が管制塔の許可無しに着陸した"との警察無線を傍受した事によって超常イベントの発生を検知したUNICASE5GRULACラテンアメリカ及びカリブ海諸国グループ支局コーノ・スール地方支部のGOCオフィス及びSCP財団の現地資産を切欠としてアーティファクトの再回収に至った。

その後の経過及びアーティファクトとKTE-0934-Einherjar-Goodrickchildとの具体的な関連性については、章末の添付資料を参照されたい。

関連文書:
レインディア作戦が発動する切欠となった文書群は、その脅威及びアーティファクトの資産価値に関する判定と排撃手段の策定に有益と考えられた。現時点で確認されているアーティファクトの特性に直接言及する文書のオリジナルは合衆国逸脱戦対応軍と王立逸脱性調査機関の共同資産として保管されており、GOCはISMP6に基づいて両者に開示を要請した。以下はその抜粋である。

    • _

    (前略)これらの理由により、総統閣下は既に現状を正しく認識されていないものと考えられる。哀れな第6軍は失われたも同然だ。輸送機どころか最新鋭のグライフ7さえ彼らの命を繋ぐために東に飛んでいる。積み荷の殆どは弾薬や燃料ではなく、パンと缶詰、それに冬季用のコートや長靴だ。これは総統閣下への批判ではなく、寧ろ取り巻く閣僚が特定個人の偏った意見のみを重用する傾向がある事への言及だと思ってほしい。尤も、それが無ければ私たちがここまでこの戦争に深入りする事も無かったかもしれないが。それは兎も角、総統閣下の判断と現状の間にある溝を埋める事は容易ではないと考える。戦略家としての私の知見から言えば、寧ろ"金の鳥"こと"金の冠を頂く雄鶏"が為すべき事を為すように計らう事の方が、総統を囲む閣僚達の壁を超えるよりも遥かに実効性が高い物と考える。このアイテムが"孵化"すれば、神話の通り死せる戦士達を召喚し、更には必要な時間と空間を得るか、敵にそれを失わせるか、その両方を実現できる筈である。もしかしたら第6軍の生き残りを救出する手段になるかもしれないが、恐らくそれは許されないだろうし、間に合う見込みも薄い。いずれにせよ、このアイテムを制御する事に今は全力を尽くすべきで、その為には早急に戦線を統一するべきだ。

    我らの信念故に。ドイツ、総統、国家社会主義運動、親衛隊を信じる故に。また我が忠誠故に。

    1942年12月4日 フォルカー=ゲオルク・シュミット親衛隊大尉

    • _

    個人的に、君の申し出は検討に値すると考える。冬の嵐作戦が事実上失敗に終わった事は君の耳にも届いている事だろう。仮に1個装甲師団でも敵地の後背に送り込み、直ちに撤収する手段があるのだとすれば、それは100個の師団を手にしたに等しい。あなたの言う"超電撃戦"には、現状その手段が無いという点を除いては差し当たり疑問の余地はない。"金の鳥"計画を提案するには慎重さが肝要であるというのが、率直な今の認識である。とはいえ、君が必要とする物品の一部は私の裁量下で手配できる。今のところはロシア人・キルギス人・ウクライナ人だが、総統閣下が望まれれば生命の泉8から更なる材料を調達する事も出来るだろう。ついては、君の言う"不都合ではあるが興味深い副次的効果"を含めた実用化の目途と、より具体的な運用方法について検討されたい。その上で、まずはシュペーア9に成果を披露する事が望ましいと思われる。


    1942年12月27日 ヴィルヘルム・ビットリヒ親衛隊少将および武装親衛隊少将

    • _

    4/29  私はロシア軍の進撃を遅滞させるのに使用できる手段は全て使った。呪術師めいた無名の大尉が手紙と共に送ってきた"金の鳥"の卵でさえも。エレクトラムで被膜したプリズムを組み込んだ野戦用の望遠鏡、それは大尉の言う"不愉快な呪い"に指向性を持たせる為に、大尉の指示で作られたものだという。その手紙には『本来想定された"金の鳥"の運用はこんな慎ましいものではなかった』と恨みがましく書いてあったが、些細な事だ。もはや帝都は瓦礫の山と化しており、ここで繰り広げられているベルリン防衛軍の戦いは、ソ連軍を押し戻す為ではなく、ただ差し迫る死を少しでも遠ざけようと人間が本能的に行う動作に過ぎない。テンペルホーフに1機、まだ飛べるシュトルヒ10が残っていた。私は操縦経験のあるハンスに命じて、国会議事堂に迫るソ連軍の車列を視界に捉えられる範囲を飛行させた。あの望遠鏡を向けたのは数秒だけで、最初は何も起きなかった。私は落胆し、ただ地上をぼんやり眺めていた。数分後、ハンスが叫んだ。"閣下、ロシア人共が撃ち合っています!" 彼が指さす方向を見ると、まるで中世の戦列歩兵の如く棒立ちのまま小銃をT-34に向かって撃ちまくるソ連軍の歩兵部隊の姿が見えた。撃ち殺された哀れなソ連兵から流れ出る血溜まりから、描写するのも憚られる程に悍ましい異形が現出するのも。私はハンスに引き返すよう命じた。もはやベルリンは常人の居るべき場所ではない。ここから生き延びる事だけを考えなくては。


附記:
アーティファクトの輸送に使用された機材は1949年にアメリカ空軍からUNTSOに譲渡された16機のロッキード社製L-1049/C-121Aスーパー・コンステレーション輸送機のうちの1機である。

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アメリカ空軍所属時代の当該機を映した写真

当該機は民間登録番号"4U-NRC"を付与され、当初は長距離人員輸送用として用いられたものの、第一次中東戦争の勃発が異常物品の散逸を齎す可能性を危惧した当時の有力な多くの正常性維持機構の意向によって別の1機と共にGOCの管理下に置かれた。その間、当該機はナチス・ドイツの軍政施行地域及び南米から回収されたアーネンエルベ機関に由来する異常事物の輸送の為に必要と考えられた改造が施された上で、財団とGOCとの協調関係に基づき"Santiago Commercial Planes"サンチアゴ民間航空機の保有機として運用され、登録番号は"CC-GHK"に変更された。

    • _
    ⁂ PHYCHE部門記録 ⁂


    報告者:
    SMHOSJRM11所属救済の帯剣騎士Swordslinger Knight of Salvation、GRULAC支局特派主任オブザーバー、ヤコポ・バルトロメオ二世

    初期対応記録_1989/152011-A(要約):
    現地の法執行機関及び軍の支援を受けた財団及びGOCの合同初期対応チームによる空港の封鎖と確保の後、定型化された秘匿プロセスが施行された。初期対応チームが到着する前に当該機の機内に侵入した民間人(空港消防隊員及び救急隊員)のうち、3名が犠牲となった。生還者の証言は、概ね以下の3点に集約される。

    【証言A】客室に複数の白骨化した遺体が存在している事
    【証言B】客室内は"フラッシュライトを使っても見通す事が出来ないほど真っ暗"であった事12
    【証言C】犠牲となった同僚は"コンパートメントから溢れ出した、ささくれ立った樹木の蔦のようなものに引き込まれた"事

    着陸時点で乗客・乗員の全員が死亡しているにも関わらず、管制塔職員は"当該機の進入角度、速度、ラダー、迎角はいずれも適正であった"と証言しており、これは空港当該機には自動着陸装置及び如何なるILS13も搭載されていなかったという事実と矛盾する。空港側から着陸誘導管制は行われていたものの、交信には一切応答しなかった為、当該機は搭乗員に拠る操作ではない超常現象によって着陸に至ったものと推察される。

    初期対応チームは先に機内に侵入を試みた空港職員からの情報提供に基づき、認識災害的脅威を回避する為に個人携行型の有線式RPV14を用いた機内の調査を実施した。その際に証言B、証言Cを裏付ける事象は確認されなかった。RPVには回収用の装備が無かったため、敵対的実体との遭遇に備えて武装した人員による有人探査によってアーティファクトは回収された。突入したエージェントは、証言B、証言Cと概ね一致する現象を経験した。

    当該機は形式上財団の資産として扱われていたものの、運用及び保守は国連の管轄下であった事、及びアーティファクトと搭乗者の遺体を含むペイロードそのものの帰属及び管轄を巡る政治的問題が生じた。事案の秘匿及びアーティファクトを含む超常性脅威の確保に充てられる現実的な時間的余裕の無さから、初期対応チーム指揮官は現場判断を強いられた。古いコンステレーション機の操縦資格を持つ人員をGOC、SCP財団共に直ちに招集する事が困難であった事、及び機内の状況から考慮して、同機を回航する事は困難であると判断された。UNICASEから提供された手段によって、隣国ウルグアイのセロ・ラルゴ県セントゥリオン郡の遺棄された飛行場(暫定合同秘匿サイトGBP-024/集積地点Accumulation Station-003SAに指定)に移送された。

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    AS-003SAにて格納庫への移送待ちのコンステレーション機


    結果: アーティファクトは、許容範囲に留まる時間的犠牲によって成功裏に回収された。また、SCP財団側の初期収容チームによって当該事象の関係者を通じたマスコミへの漏洩は最小限に留められたと考えられる。現在、SCP財団側では定型的な"フォークロア化"プロセスを継続的に実施している。

    職員状況: WIA15: 2名(証言Cにて言及された敵対的実体との遭遇及び交戦に拠る)

    結論/提言: 極めて稀なケースではあるものの、GOCと他の非敵対的な超常性関連組織の間でその管轄を巡る問題が提起された事は、現場責任者の業務範囲を大きく逸脱しているものと考えられる。何よりもGOC自体が複数の異なる理念と信条、そして利権を持つ秘儀団体の連合組織である事は、統合化された指揮系統の不在が同種の問題をGOCの管理下に於いても発生し得る事を示唆している。GOCに加盟する各組織単位に於いても、ISMPに準じた法的根拠に基づく取扱が図られるよう提言するものである。

    機内で初期対応チームが遭遇した敵対的実体は標準的な個人携行火器によって鎮静する事が可能であったが、一方でその出現パターン及び数量は予測不可能であり、直前まで存在を察知或いは出現の兆候を知覚する事は困難であった。RPVによる先行偵察では認識災害的脅威の存在が示唆されたが、それ以外にも超常性かつ未知の感染性、汚染性脅威が存在するか、機内で空港職員に人的被害を齎した超常性脅威が高クラスの基底外由来実体Ectomorphである可能性も想定される状況であった事から、初期対応チームが携行するRPVに取り付けたカムコーダーに追加するか、或いは現場で容易に換装可能な範囲で現行のエーテル共鳴結像ERI撮像装置を搭載する事が推奨される。また、それらの脅威が検知された場合に執行活動を継続できるよう、現在のレベルC化学防護服に加えて個人携行型、或いは少なくとも可搬型のサイオニック対抗手段を装備に加える必要性が考慮される16。更に、初期対応班が超脅威の根源を捜索する際に障害となる付随的超脅威との交戦に適した最低限のAltGen装備の配備が推奨される17

    アーティファクト及び本超常性を構成する全ての要素、即ちコンステレーション機の部品・燃料及び油圧系統の動作オイルやエンジンオイル、乗客・乗員の遺体、遺留品、その他搭載物を含む超常性要素群に直接干渉する必要がある作業は、武装した保安要員の随伴下、かつ複数名で実施する事を推奨する。

    VH-EAG.jpg

    SCP財団による立入検査時に撮影された客室内(遺体及び遺留品は回収済み)


    附記_1989/Coct003_A1: AS-003SAへの移送後、アーティファクトを含む本超常性実体の構成要素群はISMP加盟国・機関による共同管理の対象とされた。コンステレーション機及び機内の遺留品(以下、付随要素と呼称)はSCP財団が、アーティファクトはGOCの一次管理下とされるが、施設内で発生した如何なる超常現象の対処及び施設そのものの管理は両者及びISMP加盟国のオブザーバーを含めた合同タスクフォースによって行われる。







    ⁂ PTOLEMY部門記録 ⁂


    報告者:
    グレゴリー・クラヴァーリョ、GRULAC支局コーノ・スール支部需品課長

    初期対応に際して配備されていた需品のうち、本事象の発生からAS-003SAへの移送までに実際に使用された物品・装備の一覧である。用意されたものの実際には使用されなかった、或いは個人所有の定数外装備などは計上されていない。

    通番 指定 種別 機材名 数量
    1 Gen0-HC.1A 輸送ヘリコプター ヘイローHC.1A 1
    ヘイローHC.1Aは、ロシア製Mi-26大型輸送ヘリコプターのUNICASE仕様である。その時点で初期対応チームが活用できるUNICASE資産のうち、航空機を含む重々量物の吊り下げ輸送に適した唯一の機材であった事から、コーノ・スール支部に配備されている2機がGOCの要請に従って提供され、うち1機がコンステレーション機の移送に使用された。なお、もう1機は予備機であり、実際には使用されなかった。
    2 Gen0-HA.4 攻撃ヘリコプター ハインドHA.4 2
    HC.1Aと同じロシア製のMi-24攻撃/強襲ヘリコプターのUNICASE仕様である。ペイロードの脅威性を考慮し、HC.1Aの護衛に加えて不測の事態が発生した際には現場の封鎖及び脅威拡散の抑止を行うための即応排撃班が搭乗していた。なお、同機の所属はHC.1Aと異なりギアナ地方支局であり、アルフレド・ストロエスネル政権下で発生したパラグアイ内戦への介入に備えて一時的にコーノ・スール支局に貸与されていた。
    3 Gen0-RPV/PW 調査用装備 携行型有線RPV 1
    初期対応チームによる機内捜索に用いられた。この装備品は民生品の改造及びその組み合わせによって構築されており、玩具用として市販されている有線リモコンカーのシャーシにSONY製の8ミリビデオカメラを載せ、電源用ケーブル及び映像送信用のアナログケーブルを延長したものである。
    4 Gen0-MP5SD 個人携行火器 MP5SD 8
    初期対応チームが機内に突入した際、敵対的実体の鎮圧に用いられた火器である。なお、突入した8名のメンバー全員がこの装備を携行していたが、この内5名は使用機会が無かった。
    5 Gen0-Ord9P-LP 弾薬 9x19mmパラベラム弾 480
    アイテム#4によって使用される弾薬であり、突入したメンバーは銃に装着されている分を含めて弾倉2本分(60発)を携行していた。消音火器であるアイテム#4の使用により、周囲の空港職員に機内での戦闘が発生した事実は検知されなかった。なお、実際に発砲された弾数は25発である。
    • _
    ⁂ PHYCHE部門記録 ⁂


    合同調査記録_12/27/1989_D(要約):
    アーティファクトは外見上、対象は文様の描かれた卵型の実体であるが、それらは微小な広範にわたる各種の文字或いは記号を含む広範な表記系統18を用いた記述を構成している事が判明しており、それらのうち少なくとも一部は奇蹟論的発生学及び操血術に関連する記述を含んでいる事から、当該実体は生物学的活性を有するものと考えられているが、それらと矛盾する術式に関連する記述も確認されている。これらは何らかの理由によって当該実体の齎す不利益な"副次的効果"、及び当該オブジェクトの運用に際し必要な制御技術が確立される前にアーティファクトが"孵化"する事を抑制する為に後から施された可能性が高いと結論付けられた。但し、オリジナルの術式がどの範囲に含まれるのかは判明していない。
    the_phoenix_egg_1.jpg

    目視及び光学検査中のPTE-0912-Kapara-Einherjar-Moro


    合同調査記録_8/11/1990_B(要約):
    アーティファクトは、元々は局地的に隔絶され安定化されたNCDE領域19を発生させる事で、数的不利を覆すのに十分な機動戦/機略戦に於ける優位を獲得する事を目的として開発され、それによって"超電撃戦"の実現を企図していた事は明らかである。前線の後背に大規模な機甲部隊を直接送り込み、敵の意図しない方面からの包囲や奇襲に拠る突破、連絡線の破壊のみならず、重要目標への直接攻撃手段をも可能とする。それは、米英と異なりスツーカや双発爆撃機が主力であったドイツ空軍の航空戦力をそのまま戦略爆撃用途に用いる事が可能であり、しかもそれは実質的にほぼ敵の対空砲火や戦闘機による妨害を無効する事から、1942年以降のドイツ軍にとっては一際魅力的であったと思われる。更に、このユニットが超常的な手段を用いて開発されている事は、他の既知の手段を用いたより現実的なプランとは資源の調達に於いて競合する事はほぼ無かった。

    しかし、アルソス・ミッションによって連合軍の手に渡った資料及び捕虜となった原子物理学者の証言、及び戦後にヴェルナー・ハイゼンベルクを始めとするナチス・ドイツの原爆開発チームのメンバーから得られた証言を併せて考慮すると、アーティファクトの目的は1942年後半~1943年に掛けてのある時期に変容した可能性がある。同時期にヒトラーは原爆の開発について無関心とも受け取れる反応を示した事、同時期にRLM20のB爆撃機計画や空軍のアメリカ爆撃機計画といった戦略爆撃機の開発計画が相次いで中断されている事、更にはアーティファクトに付与された"金の鳥"の計画名は、中断されたそれらの計画に代わる事を期待されていた可能性を示唆している。

    合同調査記録_2/16/1990_G(要約):
    輸送に用いられた機体には予期されたアーティファクトのサイオニック汚染性を考慮してビフレスト様式対奇蹟論ルーンが施された貨物室が設置されていた他、キャビン及びコクピットには全面にエレクトラム被膜化処理が施されていた。貨物室は開放された形跡があり、これはそれまで閉鎖空間に飽和したアスペクト放射性の気体が機内にごく短時間の間に蔓延した事が、コンステレーション機が飛行中に遭遇したであろう超常性イベントの引き金となったと推測できる。機内各所から回収された試料を用いたレーヴェンハウプト・アスペクト燐光測定の結果は、その際に機内は最低でも3kCasp、サファイア、シャープのARadに晒された事を示している。恐らくはそれによって副次的に生成された高レベルの敵対的外部EVE由来実体が乗客・乗員を攻撃し、それに前後して機体は非因果性循環定義化イベント領域に突入したものと結論付けた。抵抗した形跡が見られない事から、これら一連の事象は乗員・乗客共に検知できなかったか、或いは何らかのサイオニック影響下にあったものと考えられる。

    機体構造の一部は有機組織に置換されており、翼桁、前部胴体及びコクピットに掛けての縦通材及びフロアビーム、前部胴体床下部で顕著である。

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    AS-003SA格納庫区画にて保管されるコンステレーション機

    これらは脈動する柔軟な繊維状組織と強硬なケーブル状分化組織、及びその中間的な振る舞いが観察されるものが混在する。また、前部胴体床下の貨物室には海綿に似た有機組織の塊が存在している。

    超常性実体と化したコンステレーション機が齎す脅威性が不明である事、及び対象の管理状況を鑑みて、侵襲を伴う生化学的分析は保留とされている。






    ⁂ PHYSICS部門 ⁂


    報告者:
    東洋神殿修道会、光の大棟梁、諸儀礼と諸位階の監査官にして戦闘騎士連隊南米派遣団長、武装評価班/1779"踊り子の剣"指揮官、ケネス=リー・エヴァンス

    警備上の事象から得られた脅威評価に関する参考情報_1995/152011-A(要約):
    1989年10月から1994年12月までの間、アーティファクト及び付随要素に起因すると思われる超常現象が頻発した。特筆すべき案件を以下に記録する。なお、特記なき限り時刻は現地時間(GMT-3)、人的被害はGOC職員のみに限られる。

    ケースファイルNo. 発生日 事象 人的被害 追加情報
    Rep/SA-pgml-S02/F 1989/10/23
    AM1時前後
    多数の関節を持つ点を除けば概ねヒトの腕部に一致する特徴を備えた実体群が施設内に存在する複数の開口部から発生。周囲の職員全てを攻撃対象として振る舞った。 MIA21:
    3名

    KIA22:
    4名

    DWRIA23:
    1名

    WIA:
    18名
    WIAのうち7名は同士討ちによる誤射により発生。
    Rep/SA-brhs-U01/F 1989/11/11
    PM5時前後
    警備中のSCP財団保安職員2名、GOC武装警備員3名がほぼ同時刻に自身に向けて携行火器を発砲した上、GOC警備員が統率する警備犬はそれらを強硬に捕食しようと試みた。 KIA:
    4名

    DWRIA:
    1名
    生存者は"目の前の同僚が突然「人の形をした黒い靄のような怪物と化して」襲い掛かってきた"と供述した。
    Rep/SA-brhs-U02/N 1989/11/14
    PM2時前後
    現地で雇用されたケータリング業者の調理担当者が、ケース: SA-brhs-U01/Fによって生じた遺体が保管されている区画に無許可で侵入し、それらを損壊した上でメインの食材として使用した。研究チームが対象の遺体が不自然に損壊されている事を発見するまで、本ケースは発覚しなかった。 N/A 当日のディナーメニューはフェジョアーダがメインであり、喫食した複数のメンバーは"以前に出された同じメニューよりも遥かに食味が勝る"事と述べた。士気低下を防ぐため、本事象は報告者を除き、喫食した可能性のある全ての人員には伏せられる。
    Rep/SA-pgml-V03/F 1989/11/30
    PM未明
    未知の文様がAS-003SAの主滑走路上に出現。外骨格を持つ附属肢が発生し、接近した警備要員を捕捉、その肉体は急速に腐食した。その後文様は急速に崩壊し、黒い液溜まりへと変化した。 KIA:
    1名
    痕跡物は未知の腐食性物質で高度に汚染されたヒトの血液である事が判明した。GRULAC連繋局を通じてUNICASEより提供された標準的なNBC除染装備・要員により除去済み。
    Rep/SA-blt-X07/N 1989/12/15
    AM11時前後
    ケース: SA-pgml-V03/Fにて記録された文様の写真を目視したSCP財団の研究者4名がAS-003SAからの即時退去、及び退職と記憶処理を要求。理由を問われると、全員が暴力的な反応を見せた。 N/A 彼らはAS-003SAで頻発する脅威性の超常現象の調査の為に2週間前に着任しており、アーティファクトと直接干渉した経験はない。また、全員が勤続10年以上であった。SCP財団からの続報に拠れば、記憶処理を受けたうちの3名は未知の副作用によって自己同一性を喪失し、解雇されたとの通達があった。
    Rep/SA-engm/blt-X08/N 1989/12/22
    未明
    アーティファクトに記述されている文字列の解読の為にオブザーバー4名が研究室D-4に入室したが、30秒以内に全員が退出。 N/A 面接を担当した主任オブザーバーは、この超常性に曝露したメンバーが体験した事象について明確な回答を得る事が出来なかった。
    Rep/SA-lvlk-A02/F 1990/1/5
    未明
    AS-003SA領域に多数の野生動物が攻撃的な侵入行動を行い、南側のフェンスを突破して施設内に侵入。一部はコンステレーション機の格納庫まで到達し、機体への攻撃を試みた。 MIA:
    8名

    KIA:
    9名

    WIA:
    32名
    KIAのうち5名、WIAのうち13名は同士討ちによる誤射により発生。事象は1/7のAM未明まで継続し、死亡及び負傷による戦闘不能者が急増した事により、急遽研究者グループによる暫定防衛部隊が組織されて対処した。また、弾薬の欠乏によりUNICASE・GRULAC支部の各支局に加え、SCP財団による要請を受けたブラジル軍から空輸に拠る補給が実施された。
    Rep/SA-frdy-A05/N 1990/1/12
    AM3時21分
    AS-003SA発、GRULAC支局中央支部宛の緊急無線通信が発信される。音声は多数の絶叫とその反響によって構成されており、その内容は判別しない。 N/A 発信者は不明。受信者は認識災害性脅威への曝露を懸念されたが、総合的精神鑑定の結果異常は認められなかった。
    Rep/SA-lvlk-A06/F 1990/1/17
    AM7時前後
    AS-003SA周辺の森林で予兆なく火災が発生。林相から想定される延焼速度及び範囲を大きく逸脱し、火災はAS-003SAを包囲するとその状態を維持した。 KIA:
    4名

    DWRIA:
    8名

    WIA:
    17名
    AS-003SAに常設火災は12時間後に自然鎮火した。発生した煙の痕跡からはN,N-ビス(2-クロロエチル)エチルアミンを含む未知の強毒性化合物が検出された。複数の目撃者は、"(風向きに関わらず)煙がAS-003SAの施設に向かって流れていった"と報告した。多量の煙に曝露した負傷者は搬送後、ごく短時間の内に体毛及び体表の角質及び歯質に喪失し、次いで非典型的な骨粗鬆症を発症した上で急激な肉体的変化を遂げたが、その後も数日間に亘り生存を維持した。死亡個体の遺骸は研究目的の為に解剖されたが、生存個体3名分はSCP財団職員の曝露者と共に、SCP財団との共同研究資産として生存に適した環境の下で生体保存されている。

    結果:
    アーティファクトの主要な超常性の根源と思われる術式の解読は、AS-003SAの稼働率が著しく低下している事、操血術に関する基礎的な知識の欠乏により長期化する見通しである。これは排撃手段の確立までに長い期間を要する可能性を示唆している。

    職員状況:
    KIA: 31名、MIA: 19名(AWOL24と思われる人数を除く)、DWRIA: 15名、自殺者: 61名

    結論/提言:
    アーティファクトの直接的な影響に起因するかどうかに限らず、多くの人員が極めて強い心的ストレス下での勤務を強いられている。月次定例カウンセリングでは所属、役職を問わず過半数の担当者が何かしらの精神障害又は神経症の傾向が確認されており、一部では過酷な手段を用いて維持する必要性に迫られているが、それさえも一時的かつ短期的な延命策に過ぎない。AS-003SAに於ける包括的かつより強固な防護と、アーティファクトによる職員への影響を抑制する為に必要な資産を投入する事が求められている。

    一方で、武装評価班/1779"踊り子の剣"は、現時点でアーティファクトに対する物理的及び奇蹟論的な無力化/排撃を試みるべきではないと結論付けている。これは、前述の事象は明らかにアーティファクトの奇蹟論的性質に起因するものであるにも関わらず、バックラッシュに伴う現象が一切確認されていない事、及びそれらに用いられている術式の解読に至っていない事である。この事は、物理的エネルギーは勿論の事、対象を破壊する為に入力されるEVEがより致命的な結果を生む可能性がある事を意味している。



    ⁂ PTOLEMY部門 ⁂

    報告者:
    バイエルン幻想教団祭司、グスタフ・レーヴェンハウプトGRULAC支局資産調整局長

    上記提言に於いて要求された物品のうち、実際に承認・配備された機材の記録。なお、消耗品を含む非循環物品については+1/2Gen並びにAltGenのみとする。

    通番 指定 種別 機材名 数量
    1 AltGen-Ord12G/00-dhrn 弾薬 ダーラナー様式形而変換12ゲージ散弾 300
    エリファス・クライン回路を持つ霊的実体に対してEVE/霊素変換サイクルを阻害し、修復不可能な損傷を与える術式が施された12ゲージ9粒弾。ケース: Rep/SA-pgml-S02/Fに於いて現出した敵対的実体には標準的な対人/対物用弾薬が使用され、個々の実体に対する破壊効果は確認されたものの、実体の出現数・頻度は事象が終息するまで変化しなかった事から、敵対的外部EVE由来実体を召喚する機能を備えている可能性を考慮して配備された。この弾薬は、UNICASE/GOCで標準的な戦闘用散弾銃であるSPAS-12を含む標準的な12ゲージ散弾銃に無改造で装填・発砲する事が可能である。
    2 Gen0-HCC.3A 汎用ヘリコプター フェネックHCC.3A 3
    UNICASEで運用されている観測及び連絡用汎用ヘリコプターであるユーロコプターAS.550フェネックは、AS-003SAの周辺領域に於ける警備及び軽輸送に用いる為、予備機を含む3機がGOCに編入された。
    3 Gen0-RCV 偵察装甲車 リンクスMk.1 2
    ドイツ陸軍で主要な威力偵察用のAFVとして運用されているルクス偵察戦闘車のUNICASE仕様である。初期投入部隊に於ける最も重要な車両の一つであり、高脅威度環境での威力偵察及び警戒に使用されている。敵対的実体との大規模な交戦を想定し、2両がAS-003SAに配備された。
    4 Gen2-COLLICULUS/VOB 調査用装備 COLLICULUSエーテル共鳴イメージャー 8
    最新型ARIデバイスであるCOLLICULUSは、EVE放射パターン及びそれらが非生体物質と相互作用した痕跡を検出・可視化する為のパッシブ型観測機材である。撮像装置とコンソールを含むシステム制御部、信号処理部、視像用装置、バッテリーから成るコンポーネントは、一般的な車両に搭載する事が可能なサイズに納められており、現在AS-003SAの警備で用いられているSUV及びHWMMVや、新たに配備される予定のヘリ及び偵察装甲車に搭載する事が可能である。8セットが配備され、うち4セットは車両/ヘリへの搭載用、残りは定点監視用として敷地内に配置され、既存の赤外線カメラ、光式測距センサー及び超音波動体検出器を補完する脅威検知システムとして機能する。
    5 AltGen-AFGCAS 特殊機材 アクティブ型基底ゲシュタルト制御増強安定器Active Fundamental Gestalt Control Augmentation Stabilizer 2
    プロメテウス・ラボが開発した現実性維持システムの発展型で、スクラントン現実錨に比較してライフサイクルコストは高いものの、調達コストが安価である事、またHm値を一定の閾値内で能動的に制御できる特性を有する。これは多種多様な超常性脅威を発現する可能性のあるアーティファクトの維持にはSRAに比較してより高い適性を持つと考えられた。配備された2基のうち、定常的に運用されるのは1基であり、もう1基は予備機として使用される予定である。


    補記_2009/Capr001_A3:
    導入された需品類、特にAltGen資産の投入によりAS-003SAの稼働率はそれまでの47%から89%にまで改善され、同時に人員の損耗率は95%抑制された。一方でAFGCASの2号機は、1号機の運用寿命に伴い2005年から稼働を開始したが、想定される運用寿命(約10年)よりも遥かに短い2年7ヶ月で劣化の兆候が確認された。その時点でGOCが使用できるAFGCASの在庫は残り3基、コアとして使用可能な中枢ユニットは4基のみであった。2015年には中枢ユニットの代替マテリアルを取得する目的で、ヌエボ・ラレドにて確認された現実歪曲者の確保が計画されたが、CRITICSの介入により阻止されるに至った事で、正常性コミュニティ間の情報共有及び連携に於いては、依然として問題を残している事が実証される結果となった。代替手段として、2016年には東洋神殿修道会より提供された分散開口型ビフレスト様式対奇蹟論ルーンアレイとスパークスマン・ヴァレンタイン型祈念阻害・還流攪乱器がエヴァーハート共鳴器と組み合わせて配備された。代償としてそれ以降、AS-003SAに於ける電力使用量は前年までに比較して250%増加し、また領域内に於けるAltGen装備を含む奇蹟論的アイテムの使用が大幅に制限された。更に、これらのコンポーネントを維持する為に常時8名の奇蹟論術師を常駐させる必要が生じた。

    • _

    The Council of 108 Classified


    Office of the Undersecretary-General / High Command NEXUS eyes only

    ID
    PW

KTE-0934-Einherjar-Goodrickchild孵化イベント

報告者:
ニヴルヘイム武装戦術騎士団基幹連隊長、GRULAC支局遠征使節長、カマイティス・モリカビュチス

経緯:
2017/08/31、それまで不活性を維持していた当該オブジェクトは、それまでに確認されていない異常性を発揮した。複数の非ヒト型異常実体が特設研究保管区画内に現出し、当該オブジェクトを持ち去った上、ハンガー内で静態保管状態にあったコンステレーション機に侵入、当該機は既に飛行に耐えられないとされていた機械的及び構造的劣化を無視して離陸した。離陸前に行われた阻止の試みは失敗に終わり、航空機による追跡が行われた。その過程でコンステレーション機は墜落したが、同時にアーティファクトによるKTE-0934-Einherjar-Goodrickchild生成イベントが発生した。その結果、アーティファクトそのものはLTE-0912-Kapala-Einherjar-Moroに再指定された。KTE-0934-Einherjar-Goodrickchildの捜索は現在も進行中である。

関連文書:
GOCの保有する資産はKTE-0934-Einherjar-Goodrickchildの追跡には成功したものの、対象が南米大陸を横断して太平洋上に出るまでに阻止する事が出来なかった。当該海域に展開していた連邦国防軍海洋戦力群第24艦隊任務部隊(CTF-24/エクリプス空母戦闘群)はGOCの要請を受けて対象の阻止/撃破を試みた。

CTF-24はグアテマラからアリゾナ州及びテキサス州までを範囲に含むメキシコ麻薬戦争への長期的介入を目的として南太平洋上に展開していた。中核となる空母: USFSエクリプスは、その任務に併せて搭載する航空機の構成を大きく変更していた。通常はそれぞれ16機の戦闘攻撃機を擁する3個戦闘攻撃飛行隊を主戦力とする所を、1個飛行隊のみとした上で、代わりに地上戦力群独立航空攻撃旅団のヘリコプター部隊を搭載していた。

艦隊には旗艦であるUSFSエクリプスの他に大型ミサイル巡洋艦: USFSコンフィデンス、ミサイル駆逐艦: USFSバスティオン、USFSビアティフィック、フリゲート: USFSソリチュード、USFSステュペンダス、長距離哨戒艦: USFSリニエントの計6隻が随伴していた。

以下は事後に合衆国逸脱戦対応軍から提供された交信記録の抜粋である。

    • _

    «対象及びやや後方にて追従するGOCのミラージュ戦闘機3機がCTF-24の展開するBARCAP25範囲内に接近する。EC-30艦上早期警戒機、コールサイン(AEW26): ポインター及びUSFSエクリプスの航空管制レーダー、USFSコンフィデンスの対空レーダーがこれを探知し、BARCAP中のF/A-18Cホーネット戦闘攻撃機、コールサイン(BARCAP1): ジェスター11/14及びコールサイン(BARCAP2): ヴァイパー23/26に対応を指示する。併せて艦隊各艦が対空レーダーを起動し、2グループの追跡を開始する。»

    AEW/ポインター: ポインター。BOGEY27コンタクト、2グループ。南のグループはROCK28 045、40マイル、20,000、HEAVY29、識別不明、接近中HOT。北のグループはROCK 215、50マイル、11,000、ミラージュ、識別不明、接近中。
    BARCAP1/ジェスター11: ジェスターは南のグループ対処、接敵を開始する。
    BARCAP2/ヴァイパー23: ヴァイパーは北のグループへ向かう。
    AEW/ポインター: 南のグループは西にBEAM30、250kt。230へ進路を維持せよ。目視にて識別、ジェスター、Weapons HOLD31、繰り返す、Weapons HOLDだ。
    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター、了解。
    AEW/ポインター: ヴァイパー、北のグループは北へ機動中。400kt、Weapons SAFE32だ。
    BARCAP2/ヴァイパー23: ヴァイパー、了解。

    «この間、GOC機とCTF-24の間で交信が行われ、併せてGRULAC支局より逸脱戦対応軍へ超常存在に関する情報共有が行われた。BARCAPのホーネット2機は対象の予測方位へ転進、GOC機は退去する。»

    AEW/ポインター: ジェスター、南のグループ、"東腕"33の3機は機動、ギムレット34、ミラージュ、DRAG35、12マイル。
    BARCAP2/ヴァイパー23: ポインター、了解。
    AEW/ポインター: ギムレットより情報提供あり。BOGEYはスナーク36の恐れあり、ジェスター、Weapons TIGHT37だ。
    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター11、Wilco38、了解した。ジェスターはフェンスイン39、ミュージックオン40
    BARCAP1/ジェスター14: ジェスター14、Wilco、フェンスイン、ミュージックオン。

    «BARCAP1/ジェスターは対象の概観を目視可能な距離まで接近する。BARCAP2/ヴァイパーはGOC機の退去を確認後、BARCAP1/ジェスターの支援の為に転針する»

    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター11、インターセプト。BOGEYを目視、正面。4発プロペラ機、民間機。
    AEW/ポインター: ポインター、対象は武装しているか?
    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター11、外観上は形跡なし。"サンチアゴ民間航空機"のサイン、機種は恐らくコニー41。Declear42
    ストライク:43 ゴーストライダー(1番機のTACネーム)、こちらストライク。対象の外観について他に確認できる点はあるか?
    BARCAP1/ジェスター11: 機体後部と主翼に複数の破孔が確認できる。こんな状態で飛行できるのが不思議なくらいだ。それを除けば通常の民間機のように見える。スナークの可能性を認める。ストライク、警告するか?
    ストライク: ポインター、交戦を許可する。ターゲットを撃墜せよ。
    AEW/ポインター: ポインター、ストライク。もう一度言ってくれ。
    ストライク: ポインター及びジェスター、こちらはストライク。スナークはブージャム44、交戦を許可する、Weapons FREE45、繰り返す、交戦せよ。
    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター、了解。所属不明機と交戦する。1、攻撃開始Engage Offencive
    BARCAP1/ジェスター14: 2、攻撃開始。


    «BARCAP1/ジェスターの2機は編隊を維持したまま旋回し、射撃位置に付く為の交戦機動を実施する。»

    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター11、スナークが旋回、南へBEAM、追跡する。
    AEW/ポインター: ジェスター11、確認している。周囲に他のコンタクト無し。
    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター11、FOX346-close47、ROCK 115、30マイル、18,000。
    BARCAP2/ヴァイパー23: ポインター、ヴァイパー、BRAA48、南のグループ。
    AEW/ポインター: ヴァイパー、ブルズアイ49090、45マイル、18,000。
    BARCAP2/ヴァイパー23: ヴァイパー、安全装置解除マスターアームオン、ミュージックオン。
    BARCAP1/ジェスター11: PITBULL50命中スプラッシュ

    «AMRAAMの命中により、コンステレーション機の外装はほぼ破壊されたが、脅威実体は機体の残骸をパージしながら飛行を継続する。»

    BARCAP1/ジェスター11: スナークが機動を開始、15,000、こちらに向かって旋回!
    BARCAP1/ジェスター14: ジェスター14、FOX251命中せずTrashed
    BARCAP1/ジェスター11: 2、右へブレイク。1、機銃で交戦する。
    BARCAP1/ジェスター14: 1、了解。
    BARCAP1/ジェスター11: GUNS,GUNS,GUNS52、2、対象の状況をくれ。
    BARCAP1/ジェスター14: 1、ターゲットは逸脱状態に移行、やたらと胴体が長いカラスみたいな姿だ。対象は攻撃的、急機動!
    BARCAP1/ジェスター11: 2、BANDITは6時方向やや上空、1マイル!右へブレイク!フレア!

    «BARCAP1/ジェスターは複数の攻撃手段によって対象の撃墜を試みるが、効果が無い。BARCAP2/ヴァイパーの2機が交戦エリアに侵入する。»

    BARCAP2/ヴァイパー23: ヴァイパー23、接敵マージ、攻撃開始。
    BARCAP2/ヴァイパー26: ヴァイパー26、攻撃開始、1番機に続く。
    BARCAP1/ジェスター11: 2、STATE53だ。
    BARCAP1/ジェスター14: Winchester54基準値BASE7.5。
    BARCAP1/ジェスター11: 2、こちらは0-0-2-マイナス55、7.0。ポインター、ジェスターはWINCHESTER、スナークは依然アクティブ。
    BARCAP1/ジェスター14: 2、スナークが転針、350kt、11,000、FLANK56、ブレイクする。
    BARCAP2/ヴァイパー23: ヴァイパー23、FOX2、ヘッドオン。
    BARCAP2/ヴァイパー26: ヴァイパー26、GUNS,GUNS,GUNS、ブレイク。
    AEW/ポインター: ジェスター、了解した。WPノヴェンバーへ迎え。ヴァイパー、交戦を中断して離脱せよ。方位070、WPマイクへ。インナーサークル57が交戦する。
    BARCAP1/ジェスター11: ジェスター、了解、離脱する。フェンスオフ。
    BARCAP2/ヴァイパー23: ヴァイパーも同じくフェンスオフ、離脱する。

    «コンステレーション機の外装をほぼ失った実体はCTF-24の方向に転針しつつ急激に降下、加速する。BARCAP編隊は離脱し、AEW機の支援下、USFSコンフィデンスUSFSビアティフィックUSFSバスティオンが迎撃を担当する。USFSバスティオンは低空及び洋上の捜索に備えてSH-60N艦載哨戒ヘリ、コールサイン: サイボーグ26を発艦させる。»

    AEW/ポインター: カレント58、4グループ。南のグループはROCK 135、60マイル、12,000、ホーネット、友軍Blue、BEAM。北のグループはROCK 110、50マイル、11,000、ホーネット、友軍Blue、DRAG、西のグループはROCK250、20マイル、3,000、シーホーク、友軍Blue、DRAG、東のグループ、ROCK 080、70マイル、8,000、スナーク、敵性Hostile
    USFSコンフィデンス: ポインター、こちらコンフィデンス戦闘情報中枢CIC、識別した。レイド1をスナークに指定、交戦を開始する、コンフィデンス、BIRDs affirm59だ。
    USFSコンフィデンス: インナーサークル、こちらはUSFSコンフィデンス、スナークはブージャムだ。対空戦闘AAWは自動交戦、コンディション・ズールー60
    USFSビアティフィック: ビアティフィックCIC、目標捕捉、データ、CEC61、自動交戦にて艦隊防空開始。ビアティフィック、BIRDs affirmを確認。
    USFSバスティオン バスティオンCIC、目標捕捉、データ、CEC確認、BIRDs affirm、当艦は個別交戦を開始する。
    USFSビアティフィック: スタンダード迎撃開始、BIRDs away, BIRDs away、2発発射。

    «最も目標に近いUSFSビアティフィックが交戦を開始、他の艦は待機する»

    AEW/ポインター: ミサイル飛翔中。
    USFSビアティフィック: タイムアウト、アクティブ。
    AEW/ポインター: 命中せずTrashed。スナークは健在。
    USFSコンフィデンス: インナーサークル全艦はAAWスペシャルオート、順次射撃。
    USFSバスティオン BIRDs away, BIRDs away、斉射中。
    AEW/ポインター: ミサイル飛翔中、8、いや、9発。
    USFSコンフィデンス: ロストコンタクト、ポインター、ピクチャー要請。
    AEW/ポインター: ピクチャーはクリーン、目標消失。
    USFSコンフィデンス: 消失?撃墜したのか?
    AEW/ポインター: 否定Negative、レーダー上に脅威実体無し。

    «インナーサークル艦艇を含む全ての利用可能なレーダーから脅威実体の反応が消失したが、続いて水中及び水上に未確認反応が確認される。更に、それらから投射されたと思しき複数の飛翔体が艦隊に接近する。»

    USFSコンフィデンス: スカンク62コンタクト、方位310、15マイル、30ノット。更に複数のBOGEYコンタクト、方位285、30マイル、500ノット、低空。
    USFSビアティフィック: ヴァンパイア、ヴァンパイア、ヴァンパイア63。ESSM64、CIWS65、レディ。
    USFSコンフィデンス: スカンクはバスティオンで対応する。サイボーグ26が目標を追尾中。コンフィデンスはビアティフィックと共にヴァンパイアと交戦。
    AEW/ポインター: コンフィデンス、了解した。対象は25マイル、10ノット、北へ移動中、アップデート。
    USFSビアティフィック: BOGEYと交戦開始! BIRDs away, BIRDs away、斉射!
    サイボーク26: カレント・アルファ66、目標を視認。スナークの背部と思われる黒色のオブジェクト、複数の棘、又はポリプ状及び鱗状器官。
    USFSバスティオン サイボーグ26、確認した。安全距離を維持しつつ触接を維持せよ。
    サイボーク26: 了解。ソノブイ投射開始。
    USFSバスティオン BRUISER67, BRUISER、ハープーン発射、2発。
    USFSコンフィデンス: BRUISERs Away、2発発射。

    29056288704_18245ab08f_b.jpg

    対艦ミサイルを発射するUSFSバスティオン。後方には同じく発射直後のUSFSコンフィデンスが映っている。

    AEW/ポインター: BRUISERs確認、ヴァンパイアは撃墜された。ピクチャーはクリア。
    USFSバスティオン 更に複数のゴブリン68コンタクト、音紋解析中。
    USFSコンフィデンス: スカンクコンタクトをロスト!
    USFSバスティオン レーダーでもスカンクをロスト!
    AEW/ポインター: サイボーグ26、状況報告。
    サイボーク26: カレント・アルファ及びインナーサークル全艦、海面上に複数、いや、無数の閃光を確認!洋上に浮遊物無し!ゴブリンコンタクトをロスト!
    USFSバスティオン 確かか?
    サイボーク26: 肯定Affirmative。いや、スタンバイ。あー、ゴブリンを再捕捉、急速に潜航、いや、沈降中、間もなく深度1kydに到達、変温層の下に消えました。コンタクトロスト、これ以上の追跡は不可能です。
    USFSバスティオン ゴブリンはスナーク及び多数の海洋生物と識別、コンフィデンス、指示を。
    USFSコンフィデンス: 全戦闘部署、ピクチャーはクリア、コンディション・ズールーを維持。ストライク、艦載ヘリにヴァンパイアの破片を捜索させる。管制を移管したい。
    ストライク: 了解した。ジェスター、ヴァイパーはWPユニフォームにて給油機タンカーと合流後、帰還せよ。


附記:
交戦後に洋上に残された痕跡はごく僅かであった為、GOC及び財団の合同チームによる調査船が派遣され、USV69による海底探査が実施された。
約3か月に及ぶ調査の結果、以下の物品が回収された。

・縦通材の大半がキチン質及び角質に置換されたコンステレーション機の外装。
・ケラチンとセラミックから構成される未知の重合体物質: 大半が高熱に晒された形跡を持つ。
・退化的で皮膚に埋没した眼球を持つハクジラ類の遺骸: 遺伝子検査に於いては概ねマイルカ属の一種と見られるが、幾つかの個体は異常に発達した胸鰭/前腕と、ほぼ尾状にまで退化した尾びれを持つ。
・死後半年以内と思われる男女の遺体(多数): 一部はM1943及びM1944フィールドジャケット70を着用していた。死因は至近距離からの強い衝撃、又は溺死であると判定されている。
・M1カービン(複数): 遺体のすぐ傍で発見され、大半の弾倉は空であった。



⁂ PTOLEMY部門記録 ⁂

報告者:
グレゴリー・クラヴァーリョ、GRULAC支局中央支部連絡部長

KTE-0934-Einherjar-Goodrickchild孵化イベントの発生に際し、その対応に実際に使用された物品・装備の一覧である。用意されたものの実際には使用されなかった、或いは個人所有の定数外装備などは計上されていない。

需品課記録-P2017-03SA
通番 指定 種別 機材名 数量
1 Gen0-MirFGR 戦闘機 ミラージュFGR.9 6
当該機はミラージュⅢの近代化改修型であり、UNICASEに於ける主要な戦闘用航空機の一つである。アーティファクトの予期せぬ活性化により、UNICASEのGRULAC支局中央支部及びコーノ・スール支部、ギアナ地方支部に配属されていた計6機が急遽GOCの管理下にて発進した。
2 Gen0-HunMSU 支援機 ハンターMSU.12 3
1950年代に開発された第一世代のジェット戦闘機であるイギリス製のホーカー・ハンターは、既に戦闘用航空機としては陳腐化しているものの、各種の支援任務機として運用が続けられている。本件に於いてはミラージュ戦闘機への空中給油用として2機、PARDTSポッドを携行する偵察機として1機が投入された。
3 Gen0-FalAOP 支援機 ファルコンAOP.3 1
UNICASEに於ける各種支援用及び軽輸送機として広範に使用されているダッソー・ファルコン900の内、GOC直轄で運用されている機体である。本事象に於いてはハンター機の得た情報を元にミラージュ機に要撃指示を行うための通信中継機及び指揮機としての他に、採用前の試験機材であるアイテム#8を搭載してハンター機による捜索を支援した。
4 Gen0-CPAL-SR1 弾薬 CPAL-1A7 サイドワインダー 2
アメリカ製の短射程赤外線誘導型空対空ミサイルであるサイドワインダーのUNICASEに於ける制式型である。A7仕様はAIM-9Pと概ね同一仕様であり、限定的な全方位交戦能力を有するが、その追尾装置は主にジェット戦闘機の排気から発せられる赤外線を追尾するよう最適化されており、コンステレーション機の捕捉は困難であった。
5 Gen0-ADEN30 火器 ADEN30 2
イギリス製のADEN30㎜機関砲は、導入当初の主力機であったホーカー・ハンター戦闘機との相互運用性を高める為にUNICASE仕様のミラージュ戦闘機に於いてオリジナルのDEFA550から換装されている。サイドワインダー空対空ミサイルが目標を捕捉できなかった事から、本事象に於いてコンステレーション機に損傷を与える事が出来た唯一の手段であった。1機だけが射撃を行う事に成功し、複数の命中弾を与えている。
6 Gen0-Ord30MM/S-HEI 弾薬 30㎜×113㎜B弾(焼夷榴弾) 165
ADEN30から発射された弾薬で、空対空戦闘用として一般的に使用される弾種である。
7 AltGen-PARDTS 特殊機材 パッシブ型アスペクト放射検知・追尾システムPassive ARad Detection and Tracking System 2
飛行能力を有する超常性脅威の追尾に用いる為に開発された航空機搭載用のポッド型ARad受信装置である。ハンター機に搭載され、ミラージュ戦闘機に誘導指示を行う為に使用された。本デバイスはパイロットが位置する方位が死角となる欠点がある為、ハンター機はこれを両翼下に1基ずつ携行する事で水平方向での索敵範囲を確保した。
9 AltGen-L/DMECMS 特殊機材(試験) レーヴェンハウプト型遠隔式認識均衡装置Lewenhaup Distant Mental-model Equilibrium,Countervailing Measures Suit 2
ファルコン機に搭載された奇蹟論的対抗手段デバイスの一種で、超常性脅威によるサイオニック汚染性への防護措置を受けていない人員の心象概念を操作し、それらとの遭遇に際しても士気を維持する為のデバイスである。元々はAS-003SAの稼働率が大幅に低下していた1990年代前半より可搬型の装置として開発が進められていた。冷戦終結後にはUNICASE保有資産をGOCが活用できる自由度が低下した事により、GOC管轄外の人員を作戦に投入せざるを得ない状況が続いた事から、それらに対応しつつGOCに於ける軍事行動の秘匿性を維持する目的に転用された。なお、本機材はこの時点では試験段階であった。

⁂ PHYSICS部門記録 ⁂

LTE-0912/KTE-0934関連イベントに関する暫定報告
送信者 S.ヴァネサGRULAC支局長 受信者 D.ヴァンダム連携局事務次長補
件名 KTE-0934を巡る我々と諸機関の行動について
LTE-0912-Kapala-Einherjar-Moro及びKTE-0934-Einherjar-Goodrickchildを巡るGOCの活動を通じ、我々は多くを学ばねばならないというのが私の見解である。それは、GOCが即時動員できる装備や人員が余りに貧弱過ぎる事といった些細な問題ではない。事実、それらは幾つもの厄介な問題の原因とはなったが、この超常性脅威に我々が関わってから30年弱、いや、70年の間に我々を取り巻く世界の在り方について、我々は一度でも真剣になった事があっただろうか。

ましてや、必要な時に必要な資産が調達できなかった事、"ゲオルギウスの洗礼"の解散、AFGCASの代替手段への過度な期待、それらは我々が抱えているより本質的な問題が顕在化しただけなのではないだろうか、そう思えてならない。

我々は奇蹟論的邪怪技術を誰よりも深く理解し、魔導工学の大半さえももはや正常性の枠組みに含まれるものと看做してきた。それならば、なぜKTE-0934-Bosch Einherjar Goodrickchildの発生までの30年近い時間、それを予期する事さえできなかったのか。邪怪技術の兵器化に躍起になってきたのは、我々がこの余りに広すぎる世界を正常に調律する為に必要な手段を確保する為だった筈だ。

君なら分かるだろう、"ペンタグラム"が唐突に形振り構わず過去を清算し始めたのは、冷戦終結が原因ではない。彼らは我々よりも少しだけ早く気付いたのかもしれない。

PARDTSが記録したARadは3.8kCasp、トパーズ、フラット、タイトだった。アスペクト燐光測定の結果に誤りがあったとは思わない。肝心なのは、LTE-0912-Kapara-Einherjar-Moroが齎すARadのバックラッシュがどこに消えたのか、誰も疑問を抱かなかったという事だ。アレキサンダー=バウアー・スミス、いや、フォルカー=ゲオルク・シュミット以外は。正に目の前に答えがあった。あのコンステレーション機と哀れな乗員たちを襲った事象は、雛を孵すための熱源が齎したに違いない。例え操血術の使い手だろうと、彼の部下たちがCRITICS批評家どもの手に掛からなければ、いや、それ以前に"ペンタグラム"の血の粛清によって失われたであろう技術が少しでも私たちの手元にあれば、私たちは変わることなく人類の護り手であり続ける事が出来たのだろう。

この世界は我々にとってあまりに広すぎる。道を踏み外す前に、我々は一度立ち止まる必要があるかもしれない。我々はずっと" 団結すれば立ち、分裂すれば倒れるUnited we stand, divided we fall”と言い聞かせ続けてきたが、本当だろうか。

GOCは規模も理念も目的も、そして手段も異なる108の正常性維持機構を束ねてきた。それに加えてオブザーバー参加国の機関も、我々とは異なる形で連携を深めてきた。そしてSCP財団もだ。では我々は、そして彼らは勝ったのか?

私はそうは思わない。人類史上、最もシンプルな流血は、一方の”正常性”が他方にとって"異常性"である事による衝突によって起こされてきた。それが文化的或いは宗教的ミームであれ、兵器であれ、イデオロギーであれ。しかし、それらこそが今の世界を作っている。多様性に埋もれる事無く自らの正常性を主張し続ける事こそが求められているのかもしれない。

今こそ我々は、お互いの役割を正しく認識する必要がある。ピチカート手順に必要なのは邪な超常兵器ではなく、20基の戦術核弾頭じゃないのか?そしてそれを我々が取得できない以上、我々が為すべきことは他に有る筈だ。

具体的な報告については添付の通りだ。これを見て、高位司令部事務総局の誰かが、私と同じ結論に至る事を願って止まない。

追伸: これは辞意表明ではない。






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