天空の都アウダパウパドポリス
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財団映像部門管理番号:1448940
再生時間:124分149秒
最終閲覧日:2019年8月30日

以下は、SCP-3790の第六層の入り口ドアのドアノブにビニール袋にはいった状態で発見された、████████の状態の悪いVHSテープに上書きされていた内容の抜粋です。テープは爪の部分に剥がすことのできない黄ばんだセロハンテープが貼られ、分解ができず、しかし縁の溝には開こうとしたらしい無数の引っかき傷がついています。画質は、テープにひどくカビが生えているためか極めて低質です。

[シーン1]

航空機上で女性の身体的特徴を持ったSCP-073に似た存在(以下、簡便化のためにSCP-073と表記するが、厳密には異なる存在であろうことは留意せよ)が護送されている様子が描写される。航空機内に配置されている人員は、かつての機動部隊オメガ-7隊員と特徴が一致する。しばらくしてSCP-073は金属製の移動収容房の扉を引き裂いて収容を突破し、おそらく監督目的で同行しているとみられる、ケイン・パトス・クロウ(ブロンドのマッシュヘアのウイッグを被っている)を近くにおいてあったペリエの空ペットボトルで脈絡なく殴打してから、航空機の窓を破壊して脱出する。

気圧差で混乱する機内の様子とともに、財団へ収容違反を警告するクロウの様子が描写されてシーンが終了する。

[オープニング]

ゆるく結ばれた円環の中に描かれた太陽と、少し離れた位置にある小さな丸が特徴的なオープニングロゴが映像内に浮かび上がる。

次の場面ではブルーの背景の中に白い筆致で描かれたSCP-2254とSCP-4840-Bが肩を組み親指を立てているデフォルメイラストと共に、ADAMAというスタジオ名と思しきものが表示される。

そしてSCP-4840壁画群を背景に特徴的なフォントで「天空の都アウダパウパドポリス」というタイトルらしき文字列が日本語で浮かび上がり、シーン2へ続く。

天空の都_R.jpg

[シーン2]

SCP-076-2が不特定の牧場のような場所で、黒い牧杖を手に羊を柵の中に追い込んでいる。
カメラの視界外から牧場主と思しき中年男性がSCP-076-2に古代シュメール語で罵倒を加えながら頭部を打つ。SCP-076-2は反撃し、牧杖を用いて男性の頭部を殴打する。昏倒した男性をよそに、SCP-076-2は近寄ってきた羊の頭を軽くなでたあと、奥に見えている農家に向かおうとするがなにかに気づいたように空を見上げる。

SCP-076-2の見上げる先に、青く光る何かが点滅しながら降下しているのが見え、それは映像分析により音速の三倍程度の速度でSCP-076-2に接近していたことがわかる。
物体は近づくにつれてヒューマノイド型のなにかであるのが明らかとなり、古代シュメール語で「[上官/職業集団の長]、[空/星]から[女/妹]が」と叫ぶSCP-076-2に直撃し、SCP-076-2の身体の70%を吹き飛ばす。SCP-076-2はその場で塵となった。

落下してきたのはシーン1で登場したSCP-073であり、落下の衝撃を受けたようには見えず、外見上無傷である。SCP-073はスカートの裾とお下げ髪から塵を地面に払い落とす。
そしてSCP-076-1が地面の下から現れ、SCP-076-2が再出現するのが映像から確認できる。
再出現したSCP-076-2が古代シュメール語で罵倒しながらSCP-073に詰め寄ると、SCP-073は口の端を歪めて肩をすくめる。

ほどなく周辺環境はSCP-073の異常性を受けて腐敗と植物の枯死に包まれ、SCP-076-2はそれを見て更に怒りを強める様子が見受けられる。
しばらく古代シュメール語での会話が続いたものの、SCP-073が不可解であるというような表情を浮かべて、SCP-076-2に質問を行った。

SCP-073: それで戦士たちの長よ、あなたは何も覚えていないと?

SCP-076-2: 賢しらぶった女?よ、お前の額をみているとイライラするのは確かだが、私はお前の話が何一つわからんしなにも思い出さない。

SCP-073: 通りで私を見ても殺しにかからないわけですね。なぜでしょうね?

SCP-076-2: 知らん、気がつけばそこの男が倒れていた私を介抱していて、その分働けと言われたから働いていた。

SCP-073: 何がなんだかさっぱりですね。

SCP-076-2: [古代シュメール語の罵倒]、いや、それよりお前はなぜ私のことを知っている?

SCP-073: ああ、あなたのことはよく知っていますし、私のことをあなたもよく知っていたのですよ。

SCP-076-2: なるほど、私の縁者か何かか。

SCP-073: ……ええ。

SCP-076-2: ほう、ようやく共通の要素ができたというわけだ。

SCP-073: そういうことです。それで提案なのですが、これからあるところに向かいましょう。そこに答えがある。

SCP-076-2: なんだと?

SCP-073: まずはその手段を手に入れましょう……おっと。

[現地に機動部隊が到着し、牧場が包囲される]

SCP-076-2: あいつらはなんなんだ……ほお、面白そうな強者の匂いがする。

SCP-073: 遊びに付き合ってはいられませんよ、この囲みを抜けてまず身を隠しましょう

上記会話の後、黒い剣を抜いたSCP-076-2と鶴の構えをとったSCP-073が機動部隊と対峙するところで映像は暗転する。

[シーン3~72の抜粋]

SCP-073とSCP-076-2を追う財団と数種類のGOIの様子が描かれるとともに、「高所から落ちる際、SCP-073の下敷きになり意図せずSCP-073の臀部に触れ顔をしかめるSCP-076-2」「気風の良い魔女とその娘たちとともに、再収容されたSCP-076-2を収容施設から物品を強奪しつつ救出するSCP-073」や「古代シュメール語で互いを罵倒しながら財団機動部隊を全滅させる」などの展開を経て先述の展開に登場した魔女の提供した熱気球によってSCP-4840へ向かう。

[シーン73]

SCP-073とSCP-076-2がSCP-4840の存在する座標付近に到達する。

SCP-073: 考えてみれば、ここまで来るだけであればごく簡単なことでした。

SCP-076-2: 何を。追手の大半は虫ケラだったが、戦士と呼ぶに足る傑物もいた。並ならぬ苦難だったではないか。

SCP-073: ああいや、あれこれと考えて実行は控えていましたが、そんなことは関係なく最初からこうして飛び出してしまえばよかったのだと思って。

SCP-076-2: 財団の話か、そういえばお前はあそこで何をしていたんだ?

SCP-073: 時を待っていました。彼らがあの都の位置を突き止め、「真実」の在り処まで私を導いてくれるまでね

SCP-076-2: 分かるような分からぬような言い回しばかりするな、何が言いたい?

SCP-073: 答えならほら、もうすぐそこですよ。彼は衰え、秘匿はすでに破られている。他でもない己の種子によって

SCP-073: 心正しいセス、エジプトに「大いなる不滅のセス」と呼ばれた男。我らの内で最後まで民とともにあったもの。その種子でさえ多くの悪を生んだ。実に皮肉ですよね。

SCP-073が指さした方向には、蜃気楼のように揺らめくSCP-4840の姿がある。
映像の中では都市中央にそびえる日の出の寺院の姿が、夕日に照らされて黄金色に輝いているのが強調されている。
SCP-076-2が、それを見た瞬間から茫洋とした表情を浮かべているのが確認できる。

[シーン74]

SCP-4840の外縁部分に熱気球をおろし、SCP-073とSCP-076-2が都市内部を中央に向かって進み始める。SCP-073は薄くほほ笑みを浮かべたままであるのと対象的に、SCP-076-2は押し黙り、SCP-073の背中をじっと見ている。しばらくして、日没の寺院にまで到達するとSCP-076-2は完全に足を止める。SCP-076-2にも見えないはずのSCP-4840-Bの存在している方向に向かって「お前もあるいは、すべてを得ようとして何もかも失ったのか」と呟くのが聞き取れる。

[シーン75]

SCP-4840中央区、両実体がSCP-4840内で権力者の座と推定された大広間へ到達する。
大広間の扉を抜けると、そこにはSCP-4840-Aが両実体を待ち構えていた。
映像からSCP-4840-Aは、黒ずんだなにかを握り込んでいるのが分かる。

SCP-4840-A: あなた方が来るのは分かっていた。失われた兄たちよ。

SCP-4840-AはSCP-073の姿を見て瞠目するが、すぐに気を取り直して握り込んでいたものを懐にしまった。

SCP-073: ごきげんよう、我が弟、冠の簒奪者よ。それで、あの冠はどこにあるのでしょうか?

SCP-076-2: 冠……冠?

SCP-4840-A: それがどこにあるのか、俺も知らない。ただ、いかなる光も届かぬ深みに沈んでいるだろうよ。

SCP-073: 知らないでしょうね。それはよいのですよ。最初の人間。万物が彼から成ったもの、万物が彼へと成るもの。あれが隠れているいまなら。

SCP-073が下方を指差す。

SCP-073: 「然る」そして「然るに非ず」その結実に触れることができる。全ての有り得べきもの、その外部の暗闇にも手が伸ばせる。冠はその後にゆっくり探せばいい。

SCP-4840-A: 兄?よ、たしかに我らの全てに勝って賢かったあなたなら叶うかもしれないが……。

SCP-4840-Aはこれまでに観察されたことのない、打ちのめされたような表情をし、うなだれる。

SCP-4840-A: そうか……結局はそれか、アポリオンの鉄冠。全ての悪なるものの根。今までの全てを見届けてなおそれを求めるというのか。

SCP-073: アブラハムの子どもたちによれば、私は神と弟の血に呪われる不義者ですので。さあ、そこをどいてください。

SCP-4840-A: 無論、そんな事はできない。

SCP-4840-Aが手を振り下ろすと、天井から大量の瓦礫が降り注ぎSCP-073を覆い尽くす。
その間にSCP-4840-Aが瞬間的に間を詰め、SCP-076-2の顎に掌底を叩き込み16mほど吹き飛ばす。
そして腰から、虹色の遊色が表面に観察できる長剣、短剣をそれぞれ抜き放つ。

SCP-4840-A: さあ、このまま大地に降りていけ。この都はもはやあなた方になにをも与えない。去れ。

それまで茫洋としていたSCP-076-2が、ふと正気を取り戻したように黒い剣を出現させるとSCP-4840-Aに斬りかかる。
SCP-4840-Aは短剣と長剣を交差させてそれを受け止めると、そのまま勢いを横に逃し、瞬時にSCP-076-2の右手首を切り落とす。

SCP-076-2は表情一つ変えずに左手に先程より大きな剣を出現させ、これまで観察された速度の1.73倍の速度と精妙さでSCP-4840-Aに攻撃を加えた。SCP-4840-Aはその攻撃の全てを防ぎきったが、右腕で剣の柄による殴打を防御した際に低くうめいたのが聞き取れる。

SCP-4840-Aは最後に大ぶりの袈裟斬りを放ったSCP-076-2の懐に潜り込むと、そのまま背負投げのような要領で大広間上方の壁へSCP-076-2を投げ飛ばし、長剣を投擲してSCP-076-2の胸部と壁を貫き、そこへSCP-076-2を縫い止める。SCP-076-2は、急所を外されているのか塵になる気配はない。

SCP-4840-A: さあ、もう良いだろう。老いたとて俺もあの男の息子であるのに違いはない。始原の諸力は未だこの身に残っている。呪われて萎びたあなた方に易々と屠れると思うな。

SCP-4840-Aがそのように言い終わるか否かというところで、突然背後に現れたSCP-073が凄まじい速度でSCP-4840-Aに手刀による突きを放つが、SCP-4840-Aは軽く身を捻ってこれを回避し、短剣でSCP-073の首筋を狙った。しかし驚愕の表情を浮かべたののちに、剣を翻して後方に飛びずさった。

SCP-4840-A: 今のは危うかった。だが、恥を知られよ!その呪詛はまたあの男の慈悲でもある。それをあなたは……。

SCP-073: 「罪ゆえに追われず、討たれぬための七倍の復讐」か、あれのとおりなら良かったが。慈悲、慈悲か。いや、これはやはり呪いだよセス。全ては呪わしい、醒めない夢なんだよ。

SCP-073: 今こそ皆目をさます時なんだ、君も一緒に来い。この美しい世界に蔓延っている悪を一掃しよう。汚らわしい肉の神や機神の残骸にすがりつく者たち、暗い隙間に潜む矮小な者ども……全てを見た君こそうんざりしてるんじゃないか?

SCP-4840-A: 何度でも言おう、そんな事はできない。全ては然るべきところに行き着き、あるべきところに流れ行くのみ。俺たちの役目はもう遥か昔に終わっているんだよ、兄さん。先に来たものたちが、後のものを行く手を塞ぐなどあっちゃいけないんだ。それにかつて星に手を伸ばしたときの俺達のように、闇の中から光に手を伸ばすもの達。彼らのことをもう少し見ていたいのさ。

SCP-073: つまらない感傷だと切って捨てるつもりはないけれど、君はいくつか見落としをしているね。彼らが光を求めれば求めるほど、闇とその種子は海辺の砂よりもなおその数を増していくんだ。それにね。

SCP-073: 後ろをごらんよ。

SCP-4840-A: なに?

SCP-4840-Aの後ろには長剣が刺さったままのSCP-076-2が立っており、SCP-4840-Aの首めがけて剣を振り下ろすが、SCP-4840-Aはとっさに短剣で弾き、SCP-076-2に刺さった長剣を引き抜きざま鉄山靠でSCP-076-2をよろめかせて距離をとった。SCP-076-2は直ちに態勢を立て直すと、剣を横薙ぎに振るい、攻撃を防ごうとしたSCP-4840-Aが繰り出した長剣をへし折る。

SCP-4840-A: おのれ。夜の子らが虫どもの殻から鍛えた武具をやすやすと毀つか!

SCP-073: 腐っても彼は彼さ、いや「呪われて萎び」てもかな。引き続き仲良くしてくださいね。

そう言い放つとSCP-073は、大広間の地下に向かって走り去っていく。
SCP-4840-Aが最初と同様に瓦礫を念動力のようなものでSCP-073の頭上に降らせるが、それは全て回避される。
後を追おうとしたSCP-4840-Aの前に、SCP-076-2が立ちはだかる。

SCP-076-2: どこへ行く。

SCP-4840-A: くっ、待て!かくなるはやむを得んか……。

SCP-076-2: なにをごちゃごちゃと……ぐっ。

SCP-4840-Aは懐から黒い金属片を取り出すと、SCP-076-2の手から巻技の要領で剣を吹き飛ばし、懐に潜ってSCP-076-2の額に金属片を押し当てる。そして古代シュメール語とは異なる言語で数語の言葉をつぶやくと、SCP-076-2の全身を覆う入れ墨が光を発しながら消滅する。SCP-076-2は唖然とした様子で、少しの間立ち尽くしていたが、ややあってSCP-4840-Aが声をかける。

SCP-4840-A: 兄よ、私がわかるか?

SCP-076-2: セス、私は、全て思い出した。これは何だ?これは。奇妙な、感覚がある。私を淀ませていたものが退いていく……。

SCP-4840-A: 鉄冠だ。その断片を使って呪いを押し留め、一時とはいえ癒やした。長くは持たんが……それどころではない。カインがあの「結実」のもとに向かっている。

SCP-076-2: そうだ、私とともにカインはここに来た……カイン?あの女がカイン?

SCP-4840-A: この世界はいつからか歪んでいる。長兄はその煽りを食らったのだろう。そんな状態の彼が結実に触れれば……。

SCP-076-2: どうなるというのだ?

SCP-4840-A: なんとも言えん。ただ我らで止めなければならないのは確かだ。済まないが昔の遺恨は置いて、手を貸してほしい。

SCP-076-2: なにがなんだか私にはもう分からない……とにかくカインのところまで連れて行ってくれ……。

SCP-4840-A: ああ、分かった。

[シーン76]

SCP-4840内の未知の空間と見られる、脈動する植物に満たされた広大な空間が描写される。
画面手前から現れたSCP-073の異常性の影響が空間全てに波及し、植物は一瞬にして枯死を始める。

SCP-073: 夜の類猿どもが、くだらぬ小細工で偉大な蔵書庫を汚そうとしたか。この呪いにも感謝しなくてはいけないかな。

キューブ型の移動用設備に乗ったSCP-073が空間中央部に配置された台座の上にある光を放つ物体に接近していく。この物体の形状は不詳。本映像を確認した職員でこの物体の形状を具体的に説明できたものは現在までいない。その物体を包むように繁茂していたであろう枯れた蔓を引きちぎりながら、SCP-073が物体に接触を試みる。

SCP-073: かつては父のみが触れるのを許された「結実」。結晶化したこの世界のイデア。創造の神秘、この世の真が私の手に……。

光を放つ物体に触れたSCP-073が、微笑みを湛えながらも猛烈な眼振を示す。
だがすぐに物体から手を離すと目に見えて動揺を見せ、額に手を当てたまま荒く息をしはじめる。
この後のSCP-073の発言は、十全に録音されていない。

SCP-073: 娼婦……バカな……ジ………初めからずっと……?

SCP-073がその場に崩れ落ちる。
そこへSCP-4840-AとSCP-076-2が現れ、SCP-073に駆け寄った。

SCP-4840-A: 兄さん!おのれ……間に合わなかったか。

SCP-076-2: これはどうしたことか。カイン?なぜうずくまっている?

SCP-073: 弟たちか……まったくお笑いだ。いや私は、私達はずっと道化だったな。

SCP-4840-A: 見たか、この世の真実を。

SCP-076-2: どういうことだ。セス。

SCP-4840-A: 照応性と符合。すべての魔術と奇跡はここからの流出を捕らえるものだ。「然る」もそのようにある。空に浮かぶ島、その上に築かれた王国。そのような合致が、遠い時間、遥かな果てからある結果を呼び寄せたのだ。

SCP-073: くだらない……こんなことのために!私のあの永遠に等しい彷徨は何だったというんだ!?

SCP-073は光り輝く物体に全力で殴りかかる。
物体から放たれる光が不安定なちらつきを見せ始め、映像からは低ヒューム空間に特有の歪みが観察できる。

SCP-4840-A: まずい、やめろ兄さん!「結実」がほどけていく……彼を止めるぞ!

SCP-076-2: はあ、分かった。

SCP-073: 来るな!こんなくだらない世界、今すぐ拭い去られればいい!

SCP-4840-AとSCP-076-2がSCP-073を無力化しようと試みるが、SCP-073は体術・異常性を利用した戦術を駆使して両実体を寄せ付けない。物体は殴られるたびに損なわれていることが見れ取れ、光が弱まっていく。

SCP-4840-A: このままでは、まずい……ええいままよ!兄さん……アベル!こっちに来てくれ!

SCP-076-2: ああ、それでどうする?

SCP-4840-A: 結実を、始まりの大蛇に返還する。俺の手をとれ、冠の断片に触れろ。貴方と俺に残された力で、結実をこの都から去らしめる!

SCP-076-2: ……うん?

SCP-073: 消えろ!消えろ!おのれ!消え去れ!

SCP-076-2は不思議そうな顔をしながら、SCP-4840-Aの手を握りそれを光り輝く物体に向かって二人で伸ばす。
SCP-4840-Aは低い囁きでSCP-076-2に何事か伝えると、物体を睨む。

SCP-4840-A: 偉大なりし黄金の都よ!神々が行き交った誉れある大路よ!墓所に眠る者たちよ!許したまえ!さあ滅びよ来たれ!

SCP-076-2・SCP-4840-A: [人間には認識できない内容の、3 音から構成される呪文]

その瞬間、光り輝く物体は輝きを取り戻し画面上の方向に急速に上昇したかと思えば、天井を透過するように通りぬけてその場から姿を消す。それを追うようにして、暗い色の物体がゆっくりと上昇し、同じように姿を消した。SCP-4840-A、SCP-076-2の両実体はやりきったような表情を浮かべているがSCP-073は愕然とした様子で動けなくなり、以降は動きを見せなくなる。画面は空間全体の猛烈な振動を示しており、それを見たSCP-4840-Aが光を放つ物体の乗っていた台座に指を滑らせる。すると近くの床がぱっくりと開き、小さな街明かりしかない暗い地上がそこから見える。SCP-4840-Aは、その穴を見ようともせずに座り込んで台座に寄りかかり瞑目する。

SCP-4840-A: さあ行け、アベル。カインを連れて。力を使い果たした俺では、もはやこの都を維持できん……はっ……年には勝てんな。

SCP-076-2: さらばだ兄弟。

SCP-4840-A: ああ……またな。せめてこの下りを忘れて、他のなにかのために生きよ。

SCP-076-2: 分かった。

SCP-073: ありえない、ありえない……。

SCP-076-2がカインを抱えて穴に飛び込む。
そして数十秒をかけて地上まで自由落下し、他には誰もいない荒野に着地する。背景の映像には、瓦礫を撒き散らしながら崩壊し、遠景の山の中腹に墜落するSCP-4840と、天に登りゆく光るなにかが映し出されている。

SCP-076-2: 一体、何だったんだ。これは。

SCP-076-2は、不思議そうに空を見ている。
その背後で、SCP-073が立ち上がる。その顔は、暗闇で確認することができない。

SCP-076-2: どうした。起きたか……一体、お前はあの「然る」ものの結実になにを見た?

SCP-073: 失望だ。この世界に、初めから行きつく先などなかった。

SCP-076-2: それはどういう……。

問い詰めるSCP-076-2に、SCP-073が凄まじい速度で肉薄しSCP-076-2になにかを突き刺す。
SCP-076-2の胴を貫通したそれは月明かりに照らされ、血まみれの槍に見える。
SCP-076-2は一瞬、驚愕の表情を浮かべ地面にどうと倒れる。

SCP-076-2: 父上の、か。なぜ、お前が。

SCP-073: 財団から返してもらった。まさかこれが必要になるとは。

SCP-076-2: なにを。

SCP-073: すべてを無に帰す。これが、本当の滅びだ……くたばれ!

SCP-073は絶叫しながら、SCP-076-2から引き抜いた血濡れの槍を天に向かって登っていく光に向けて投擲する。凄まじい速度で飛んでいく槍がソニックブームを発生させ、軌道上にあった雲を吹き散らす。しばらく間をおいてから甲高く砕け散るような音を伴って光が消え、画面上の空間すべてが暗闇に飲み込まれ始める。

SCP-073: これでいい。

SCP-076-2: カイン、お前は……結局、こうなるのか。

SCP-073: これがドラマツルギー、チェーホフの銃というやつだよ。

SCP-076-2: 終わりがくる……。

SCP-073: そうですね。

画面を闇が覆い尽くし、SCP-076-2が何事かをつぶやくが、内容は不明瞭である。
それから149秒間無音のまま映像が続くが、その後に唐突に映像が終了する。

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