以下の手紙は私的な収集物から回収され、SCP-2833に関連する追加情報として収蔵されたものです。
1909年5月12日、ベナレスより
親愛なる従姉妹のエミリーへ、イギリス領インド帝国からご挨拶申し上げます!なんて恐ろしい響きでしょうね。私たちがこんなに故郷や、学校、そして世界の普通のものからこんなに遠く離れているのが信じられないわ。私たち抜きで、イギリスがどんな様子なのか書いて教えてくれないかしら?
旅の詳細(とにかく長かったわ)を書いてあなたを退屈させようとは思わないわ。特にエレナ―がずっと言っていた愚痴。お母様は私にもっと聞き分けのある子になりなさいと言うけれど、ドレスと男の子のことしか考えていないお姉様なんて嫌よ。彼女があなたみたいに頭が良ければいいのに。
それはそうと、私たちは今ベナレスにいます。ここでは何もかも違うわ ― 猛烈に暑くて埃っぽくて、蝿があらゆるところにいて、泥と腐った果物(そしてもっと悪いものも)の臭いがするけど、全てがエキサイティングで目新しいわ。私たちは街中を車で走ったけど、男性たちはターバンを巻いていて、女性たちはピンクやオレンジや青のシルクの服を来ていたわ。道の真ん中に大きな牛がいて運転手のヴィノードは車を止めたの。それとマンゴーラッシーを飲んだわ ― あなたは飲んだことあるかしら?とても美味しいわ。
私たちは新しい家に着いたわ。白くて細工が彫られていて、木陰のための木で囲まれているの。そして祝福されたみたいに涼しくて、お母様の回復にも良いでしょう。お父様はこの家は大使の家と呼ばれていると言っているわ。お父様はマハラジャとの唯一の連絡役よ。そう、ここにはマハラジャがいるの。信じられる?
そしてもっと良いことに、私たちには専属のグルがついたの!もちろん、彼はそんな風には呼ばれてなくて、サドゥーか何かだけど。でもエレナ―と私は彼をグルと呼ぶことにしたわ。風体もサフラン色のローブを胴に巻いて、腕輪をして白い髭をたくわえているみたいな感じで ― とても印象的だわ。私たちは門の前で彼に出会って、お父様はいくらかのお金をあげようとしたわ。でも彼はとても貧しそうに見えたけど、それを断って、ただ家を祝福したいだけだと言ったの。だからもちろん私たちは彼を招いて、お茶を振る舞ったわ。彼はとても手の込んだ儀式をして、これで悪い霊を退けられると言って、お母様は彼にいつでも戻ってきて、このあたりの風習について聞かせてほしいと言ったわ。
私はこのことにとても興奮したけど、ここではすべてが面白いわ。続きをあなたに書いて送るのが待ちきれないわ。
帝国の端より、かしこ
バイオレット
1909年8月22日、ベナレスより
親愛なる従姉妹のエミリーへ、あなたからの手紙を受け取って、私の手紙が届いたことがわかってとても嬉しかったわ。あなたが元気と聞いたことも嬉しかったし、あなたの教会での仕事も面白そうね。時間のあるときにもっと詳しく書いてちょうだい。
こちらでは物凄い雷雨の数週間のあと、また暑くて乾いた気候になりました。季節が変わるたびに、天気には不思議な事が起きるわ。でないとオーブンで焼いたじゃがいもみたいに私たちの肌も茶色でひび割れるまで焼かれてしまうわ。
ああ、そうそう、あまりにも素晴らしいことがあったわ。2週間前、母様とエレナ―と私はいくらか景色を見るために街へ行ったわ。ガンジス川を渡る船に乗りもしたわ。本当に変わった所だった。川はとても広くてゆっくり流れていて、まるで街をうろつく象のようで、あちらこちらへと漕いでいる小さな舟でいっぱいだったわ。水は深緑色で、両側に黄色と砂色の建物が立っていたわ。水際は全体に広い階段になっていて、あらゆるところに人がいて ― 洗濯をしたり、水浴びをしたり、祈っている人もいたわ。
グルも勿論私たちと一緒に来て、彼は船頭にマニカルニカー・ガートへ私たちを連れて行くように言ったわ。彼はそこはとても神聖な宗教的な場所で、ヒンズー教徒が亡くなった人を火葬するために来ると言ったわ。煙が見えてくる前に、煙の匂いが街全体の匂いと一緒に感じられたの。それともう一種類の、なにか甘いような匂い。近くに来ると、煙で黒くなった、丸いヘルメットみたいな尖塔のある寺院があったわ。川への階段では3つの炎が燃えていて、人々は白い服を身に着けて周りを囲んでいたわ。
私たちはあまり近づかなかったけど、グルは儀式について説明してくれたの。彼はヒンズー教徒は遺体を破壊することにより魂は別の形に輪廻転生すると信じているのだと言ったわ。私がキリスト教徒は肉体の生き返りを信じているというと、彼は笑ってそれはいいアイデアに聞こえる、元の体を長く生かすことに挑戦すべきかもねと言ったわ。彼は私をからかっただけだと思うけど、彼は健康のためにヨガを教えたいと言って、お母様はイエスと言ったわ。
その後私はヴィノードに、マニカルニカー・ガートの綴りを聞いたけど、彼は変な顔をしていたわ。そして私は、彼がお母様に、グルに私たちをそのような場所に連れて行かせないように言っているのを偶然聞いてしまったの。グルは墓場に住んで、奇妙なものを信仰していると。でもお母様は全てが自然なものよと言っていた。よく聞こえなかったけど、ヴィノードはエレナーの名前も出していたわ。彼は彼女に恋してるのかしら?いつもこうなのよ ― イングランドじゃあ、男の子はみんな彼女に恋してたわ。ここでも同じみたいね。
彼女じゃなくて、あなたが付いてきていればとどれほど思ったかしら!どんな様子でいるか、聞かせてほしいわ。
敬具、
バイオレット
1909年12月3日、ベナレスより
親愛なるエミリーへ、あなたの手紙をとても興味深く読んだわ。特にあなたの教会のサウスダウンズへの旅行について。秋の果物とクリームティーがとても素敵だったでしょうね。きっと最高の日々だったでしょう。
こちらの生活は変わらず続いています。お父様は勉強を続けるための家庭教師を見つけてくださったけど、悪いけど彼はひどく退屈だわ。幸いなことにグルの訪問から活力をもらっているわ。
彼は私たちにずっとヨガを教えてくれていて、お父様もできるときには加わるわ。私たちはマットの上や、外の菩提樹の樹の下でゆったりしたリネンを着て脚を組んで座ります。あなたはびっくりするでしょうね。でもここでは何もかもが形式張ってはいないわ。私が思うには暑さのせいね。
私は他の誰よりも熱心にヨガのレッスンを受けているわ。'ヨガ'は"加わる"とか"くっつく"という意味なのを知ってる?ヨガとは全て、体の一部を成長させて、引き伸ばし、そしてお互いに加わり、そして額の真ん中に第三の眼を持つように新しい体の一部を開くことに関することよ。そして ― ごめんなさい、うまく説明できないわ。
もう一度説明させてね。最初のレッスンで、グルは私たちを座らせて、深い息をつくように言ったわ。彼は私はとても上手いと言って、私が左利きだと知ってとても喜んだわ。明らかに、彼が誰もが追求すべきと考える左利きの道があるのね。だから私は笑って、エレナーにすでに私は先に進んでいると言ったわ。
それからマントラについても言わなくちゃいけないわね。"アヨム"みたいな音を、でもとてもゆっくり息をしながら発音するの。そしてグルは私たちの中に住む魔法の蛇について語ったわ。マントラを唱えるのは、その蛇を体から立ち上らせて、頭から飛び出させてサマーディと呼ばれるものに達するためなの。サマーディというのは、ニルバーナみたいなものだと思うわ。それについてうまく書くのはとても難しいけど、とても魅力的なもので、グルはとても解りやすくそれを語るわ。
一度、みんなでストレッチをしている間、グルがお母様の腫瘍を切り取る手術の傷跡を見たの。彼はとてもうろたえて、イングランドの医者は自分たちが何をしているのかわかっていない、自分はもっと良い医療を知っていると言ったわ。こんなに怒った彼を見たのは初めてだったけど、すぐに彼は謝って、皆がもっと健康になれると言いたかっただけだと言ったわ。
あなたにも健康と幸せなクリスマスがあることを祈って手紙を終えるわ。私はクリスマスには、あの幽霊みたいな奴らをやっつけるためにハエたたきをお願いしたわ!
愛をこめて、今後ともよろしくね、
バイオレット
1910年3月1日、ベナレスより
親愛なる従姉妹へ、お手紙ありがとう。"東洋の哲学"に関してのあなたの警告は少し頑固すぎるように聞こえるわ。教会で仕事をしていると魂の導きに関して懸念しがちになるのでしょうけど、心配いらないわエミリー ― 全てはちょっとしたおふざけよ。ここでの日々をやり過ごすためのね。そしてグルはとても面白い視点を持っているわ ― お父様ですらそう言うのよ。
昨日、彼は街はずれにある寺院へ私たちを連れて行ったわ。ベナレスには2万もの寺院がある。そしてお母様とエレナーと私はその多くを見たわ。でもグルはこれは違うと言った。ひとつには、それはジャングルの中にあって、入り口は丘の側面の岩を掘ったものだったわ。ヴィノードがそこまで私たちを乗せていってくれたのは驚きだった。でも彼は最近グルに対して好意的になってきたの。他の召使いたちは彼の訪問に反対で、何人かやめたものすらいるけど ― あなたは信じられる?
でも寺院の話に戻ると、中では上の何処かからか透けてくる光があったけど、それはとてもかすかで、部屋は深緑色で暗かったわ。石の壁には彫り込みがあって、とても古くてミステリアスだった。その一部はラーマヤーナの戦いのようで、ジャガーノートやランカ島からの悪魔たちがみんな戦っていた。長い象の胴体を持つように見える男性を見つけて、私はグルにそれはガネーシャなのか聞いたわ。彼は笑って、この寺院ではガネーシャは信仰されていないと言ったわ。古い彫り込みの一部はそれほど良くはなかったわ ― 人々はみんなおかしく見えて、まるでうまく描かれていないみたいだった。
私たちはメインの部屋に入ったけど、そこには床に穴があって、その底は見えなかった。とても暗かったの。中に声が響くか確かめたいと思ったけど、グルが私たちに座って目を閉じて、みんなでマントラを唱えるように言ったわ。
ええ、告白しなくてはならないわ。そこが一番奇妙なところだった。私たちがマントラを唱えると、残響がその穴から返ってくるようで、空気はハミングしているみたいに感じられたわ。体が震えてきたけど、むしろそれはまるで体が目覚めたかのように元気が湧いてくる感じだった。お母様とエレナーも同じように感じたと思うわ。
あなたもそこにいればよかったのにと思うわ。でもそろそろ夕食に行かなくちゃ ― 羊のローストよ!菜食主義者だったヴィノードも、心変わりしたわ。グルは肉は食べられるように意図されていて、真の知識への最初のステップだって。彼は本当にいろいろなことを知っているわ。
真の知識の探索の中で、
バイオレット
PS ― お母様にこの手紙を見せなくちゃいけなかったので、このことは前には書けなかったわ。ショッキングなニュースがあるの ― エレナーは赤ちゃんを生むわ。お父様とお母様はひどく怒るでしょうけど、まだ知らないわ。私はエレナーが泣いているのを見て、そして彼女は私に誰にも言わないように約束させたわ。でもあなたには言っていいと思うの。彼女は言わないでしょうけど、とても狼狽して混乱してるように見えたわ。相手はヴィノードかしら?お父様はどうするのかしら?
1910年3月30日、ベナレスより
最も親愛なるエミリーへ、あなたがこちらを訪問すると聞いてとても嬉しいわ。この手紙があなたが出発する前に届くかわからないけど、ただあなたに伝えなくちゃと思ったの。あなたは私たちみなが素晴らしい形をしているところを見るでしょう ― グルのアドバイスと食事法で、私たちの健康に凄い事が起きたわ。正直、あなたが私を見ても、ほとんど私だとわからないでしょうね!
エレナーでさえ成長しているわ。彼女がすでにいい出来栄えになっているのを信じられるかしら?グルと話して、お母様もお父様も私たちの新しい姿をとても喜んで受け入れたわ。彼は私たちに生まれてくる男の子(彼はそれが男の子だと確信している)は輪廻のサイクルが続くという祝福への道だと語ったわ。考えてみて、エミリー、私たちの家族の新たな一員 ― 私たち自身の肉と血よ。
あなたが到着したら、私たちの家へまっすぐ来てね。まだ残っている召使いたちはあなたの到着の準備で忙しいから、迎えを待つ必要はないわ。ここにいる皆があなたの到着をとても待ちわびています。あなたを私たちの成長する一族に迎えることは至上の喜びだわ。
あなたを、激しく求めて
バイオレット
FROM: HMTELOFF-3346A ヘ゛ナレス イント゛
TO: ロック シキョウ、 ワレラカ゛ カイカクノ シュクシ゛ョ、 ハックニー、 ロント゛ン1910/7/10
シ゛ョウキョウハ ヨソウノ トオリ イッカハ カイシュウ フノウ。 ムサ゛ンナ カシ゛ノ サ゛ンカ゛イハ コト゛モヲ フクメ フカッセイ。
ク゛ルノ ショサ゛イハ フメイナレト゛ チョウサ ソ゛ッコウチュウ。 イント゛ニ ハケンサル タントウシャハ テ゛ント゛ウシャ カラノ シシ゛ヲ ヨウス。
M-F エミリー・カハ゛ナフ
エミリー・カバナフは1961年に公的な役職から退き、死亡したと考えられます。上記文書の関連物とともに回収された一連の所有物は、イギリス連邦の様々な国での壊れた神の教会の活動と関連付けた分析のために保持されています。