ぼっちのジョージ
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黒の女王・アースライトよ。みんな、私に力を貸して。

黒の女王・エクスシア、馳せ参じました。秩序を乱す者に光の裁きあれ。

定命の者は儂を夜叉と呼ぶ…黒の女王・KISIMOなり。

ブラッククイーン・マッハ-コ-ライダー、発進!今日も飛ばしてくぜ!

黒の女王・モナムールがやってきたよ!よろしくね!


ベースライン

「ぼっちのジョージ」は一頭のガラパゴスゾウガメで、強力な自己隠蔽能力を有しているわ。 この実体は殆どの種類の他覚的な検知を欺きつつも、自身の気配を選択的に残す疑惑あり。儂等に認識可能なのは彼者の視線、並びに意図的な接触時の感触のみ。 奴が属する種のゾウガメはただ一つの島だけに暮らす固有種で、タイムラインの文明種が活動領域を世界的に拡大したことに影響されて個体数を大幅に減らしているの。彼らが持つ反ミーム特性は絶滅を回避するため急激に発達したものだと考えられるけど、普通のリクガメの世代交代速度と比較する限り、明らかに通常の進化適応とは異なる何かしらの異常なプロセスが混入しているわね。 恐ろしく速い適応スピード、オレたちでなきゃ見逃しちゃうね。 カタログ名に「ぼっち」とありますが、ジョージは本当に一頭なのですか?よほど特徴的な姿…失礼、気配と言った方が適切ですね…でない限り、同種のゾウガメの個体を簡単に識別できるとは思えませんが。 それは何とも言えないわね。知らない間に別の個体と入れ替わっているのかもしれない。でも少なくとも、奴と同じゾウガメの複数個体から同時に睨まれたことは私には一度もないわ、幸運なことにね。 個体数が不明なんだったら、ジョージ一頭だけじゃなくてカメの一種として全体をカタログに載せてあげた方が良いんじゃ? いいの、いま問題なのは奴だけなんだから。

必須条件

陸亀の存在。即ち、爬虫類に属する一つの科としての陸亀が出現しうる方向性を有する生物相の遷移。並びに、陸亀の種の生存を脅かす強大な生物種の出現。故に、三畳紀・白亜紀・完新世の三度の大量絶滅、またはこれらに相当する大規模な生態系撹乱現象の成立が必須。現状、これ以上の必須条件は発見できなんだ。 ガラパゴス諸島は必須じゃないのかな? そのはずよ。熱帯気候の島だったらどこでも暮らせるみたいだから、ちょっと種の名前が変わるだけ。島と島を泳いで渡ることはできないから、敵対者から逃げる場所がないのはどの場合でも同じね。

実用性

一部のタイムラインでは、ジョージの種のゾウガメの甲羅を適切に調整された高温に晒すことにより、記憶補強剤として用いられる成分を抽出することが可能であると知られています。 記憶補強剤!そりゃ数あるパラドラッグの中でもとびきりヤバいブツじゃねえか。準一級取締物品だぜ。 記憶補強剤の不適切な摂取が齎すは、知性体が有する記憶除去機構の永続的な破綻、思考能力の不可逆的な喪失、深刻な人格の荒廃なり。まっこと危険な品よ。 でも、反ミーム存在を検出するための最も確度の高い手段は記憶補強剤の服用なのよ。私は奴を絶対に見つけ出さなきゃいけないんだから。 悪いこと言わないから、薬を飲もうとするのはやめといた方がいいよ。君の身に何かあっても責任取れないもん。まして、その薬の用意のために探し物を捕まえなきゃならないって言うんじゃあね。 ブツ自体は他のタイムラインから取り寄せられると思うぜ。アンタらを薬物違法所持で御用にするわけにゃいかんけどな。 ちなみに生きているジョージの方は双方向コミュニケーションの可能な知性を有していない単なるリクガメである場合が殆どで、観賞に供する程度の用途しかないものと思われます。尤も、鑑賞者に認識できればの話ですが。 嫌だわ。出来ることなら奴なんて見たくもないし、見られ続けるなんて論外よ。

傷つきやすさ

私が知る限り、甲羅がちょっと硬いこと以外の物理的強度は普通のゾウガメ相応のはずよ。ノロマだからすぐ捕まえて始末できるし、19世紀の冒険家たちは実際そうやって航海の食料を得ていたはずなのよ。今でもそこは変わりないと思うけど、まず姿が見えないことには…。 協力します。私達はジョージをこの地から確実に排斥しなければなりません。 この陸亀の肉体的強度、並びに体格の大きさは、自身の同胞の残存個体数に概ね反比例するものなり。其奴の同胞が僅かである時間軸では、儂等の想像も及ばぬ恐るべき力を発露する場合あり…御主等もゆめゆめ油断すること莫れ。


実例: タイムライン B-102

最も典型的なタイムラインね。この世界におけるピンタゾウガメの個体数はざっと2,000頭、その全てが問題なく隠蔽されていると推測されるわ。高齢となって自己隠蔽能力に不全をきたした1個体が非超常社会の目に留まって、「ロンサム・ジョージ」として珍重されていたけど、彼が話題のジョージなのかどうかはちょっと微妙なところ。 二千という個体数は、彼等の物理的特徴の変化を通常の象亀から逸脱しない範疇に留めるに足る。 ガラパゴスに住んでない連中からすりゃ、可愛らしくもないゾウガメの絶滅なんて大して興味を唆らないニュースだろうよ。他のジョージ候補がいるにしろ、ソイツが発見される事態は暫くは起こりそうにないな。

実例: タイムライン C-256

このタイムラインでは古代超常生物学の研究が盛んに行われており、クリプトモルファ種の超大型生物の祖先から複数の系統への分岐が発生したことが知られています。これらの系統の大半は反ミーム形質の獲得後に物理的な隠蔽を必要としなくなった肉体を際限なく巨大化させていったのですが、その道を選択しなかった僅かな系統は非超常の爬虫類の系譜との交雑を繰り返していきました。その結果、財団をはじめとする超常研究団体から受けた情報侵襲により巨大な反ミーム実体のほぼ全数が根絶されたのと対照的に、通常の生物の体格を維持した異常カメたちは監視の目を逃れました。今でもサンタ・フェ島で彼等の繁栄を見ることができるでしょう…繰り返しますが、彼等を知覚可能であればの話です。 …これってジョージの一族全体の話であって、ジョージ自体の話じゃないような。いちいち探すわけにもいかないし別にいいか。 失礼しました。あくまで補足的な情報ですね。

実例: タイムライン D-038

オレがボーリングくんだりまで引っ張り出されたのは北極熊事件の時が最初だった。あそこの動物保護団体が財団や政府と協定を結んでからは妙ちきりんな動物達の騒ぎはそうそう起こらなくなったが、それでもUIUの連中はオレを含む幾らかの部署をボーリングに駐屯させることを決めたんで、お陰でオレはあの辺一帯の動物事情にはだいぶ明るくなった。このタイムラインのジョージは突発的な空間歪曲に巻き込まれてイサベラ島からアメリカの僻地まで遥々飛んできたらしい。保護下にあるアイツは生きていく分には苦労しなさそうだが、動物園の人気者にはなれそうもない。だって飼育員にすらしょっちゅう存在を忘れられてるからな。 「ぼっち」の名に相応しい実例じゃないの。 彼には落ち度はありませんし、騒ぎを起こしそうにも見えません。アースライトは各実例ごとにもう少し柔軟な態度を取る方が良いと思います。

実例: タイムライン F-625

このタイムラインの財団は比較的早くから反ミーム部門の増強に注力していた珍しい団体だよ。ガラパゴス中の大規模な島狩りでジョージも早々に殺されて、財団の誰も知らないところに保管されてる記憶補強剤のカプセルになっちゃったみたい。財団がこんな方針を取った理由は、ハイパー反ミームを中心とする多数の超常団体…というよりは、ミームによる傀儡の集合体だね、それがある時期を境に急激に増えたからなんだ。ヒトがヒトとしての尊厳を保つために、財団は今でも見えない敵との長い戦いを続けてるんだと思うよ。 この時間軸から獲得されし資料のうち、危険なく開示可能なのは“ ”の一文字のみ。定命の者がそれ以上を知ること能わず、否、知るべからず。其奴との無限の闘争に象亀が如何程の貢献を果たせしかは、畢竟、確かめる術なし。 反ミームって本当に恐ろしいわよ、事後になっても被害を受けたことさえ分からないんだもの。だから私はこの場に反ミーム実体が入り込んでるなんて事態には耐えられないわ、それが世界に対してどれだけちっぽけな存在であってもね。

実例: タイムライン G-777

儂の記憶領域に存在する限りでは最も強大な実例にして、この時間軸に於いて彼者は真に孤独なり。その甲羅は山の如く、その尾は第二の首として海の底を穿ち、双頭の霊亀は全ての認識を歪め、隠し、攪拌する力を有するに至れり。然れども、彼者に唯一の天敵あり…自らを認めし者全てを啄む緋色の鳥、認識の権化。両者が相見えし時、全ての生命は塵へと帰る…儂は一部始終を記録せり。死闘の末に霊亀はその長大な尾を両断されるに至り、巌の甲羅に身を隠せしのち、生命の再誕に臨むこと能わず、広大無辺の海に眠るものなり 面白い事にな、このタイムラインのジョージ…ジョージでいいよな…は、記憶補強剤じゃなくて記憶処理剤の方と繋がってんだ。切れて海底深くに沈んでいった尻尾の方が、認識改変能力を色濃く残してるんだとよ。言うまでもなく法的にも倫理的にもドス黒いブツだがな、オレは海の底にガサ入れするのは流石にゴメンだわ。色々錆びついちまう。

実例: タイムライン H-456

ねえ、そろそろ我慢の限界なんだけども。奴がさっきからずっと私を見つめてるのよ。みんなにも感じられない? 問題のジョージですね。彼はどこから“図書館”に侵入したのですか? それが全然分からないから尚更気味が悪いのよ。普段の“道”の開通時間は亀が歩いて通過できる長さじゃないし、それ以外の入り方なんて私も知らないわよ。 ジョージ側が瞬間移動とかの異能を獲得してるのかもね。H-456のガラパゴスは民間企業による土地開発が進んでるから、カメの個体数も減ってるはずだろうし。 ホントに助けてよ。奴は私をストーキングするだけじゃ飽き足らず、一人でいると脚に触ってくるのよ。 カメだけに出歯亀行為ってか。ついでに強制猥褻罪も取れそうだな、頭をズボッと- ちょっと!それは乙女の前で言っていい発言じゃないわよ。 オイオイ、それじゃオレが乙女じゃないみたいな言い方じゃねえか。これでもオレは前の主人からは一人娘みたいに大事にされてたんだ、立派な黒の女王だぜ。仕事の後は必ず口に突っ込まれてな- いい加減にしてよ! あまり不必要な言動をすると議論に差し支えます。 ちょっとそれはヒンシュク買っちゃうなあ。 悪いけど一度ここから出てってくれない? やんぬるかな。 チィッ、乙女じゃなくて悪かったな、そんじゃ卑猥なタートル・ヘッドの処理はアンタらでなんとかしな。オレは退散する時も全速力だアデエェェッッッ!? 今の爆発はなに!? あーあ、派手に事故っちゃって…流石はコライダーcolliderを名乗るだけあるわね。 コン畜生!オレが何したってんだよ!ちゃんと前に何もいないの確認してたのに!あとオレはコ-ライダーco-riderだ!ちゃんと区切れ! 見よ、この破片は甲羅ではないか。此処にも、彼処にも。 衝突した相手がジョージなのであれば、視認できなくて当然ですね。いずれにしろ、“図書館”の廊下は土足で走るべきではありませんし、当然ですが車輪は更に不適切です。やむを得ない場合は必ず徐行するように。 斯くして不埒な象亀は女王の手によって討たれり…もとい轢殺されり。何と呆気の無い幕切れであることか。 なんだろう…すごいモヤッとするんだけど、一件落着でいいのかしら。 良くねえよ!カウルがペシャンコだ!取り替えないと直んねえよ!どうすりゃいいんだ! バイクの修理なら女王の中にもできる人結構いるよ。今度のオフの日にホローポイントにでも頼めばいいさ。 その時には特上のハイオクも突っ込んでもらいなさいね、アンタの下品なお口とやらに。ジョージ討伐のお礼でガソリン代は奢ってあげるから。 畜生、覚えてやがれ。



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