脅威存在データベースエントリ
脅威ID:
LTE-2712-Bosch "地を喰らう巨獣"
認可レスポンスレベル:
5 (即時脅威) N/A (破壊確認済み、記録書庫入り)
概要:
2███年4月8日、北極海の海中と上空に一揃いの歯(40実体を確認)が突如として出現した。実体はオオカミ (Canis lupus) の成体のものに類似していたが巨大であり、犬歯は基部から先端まで約3キロメートルと推定された。(衛星画像と海底地形探査による)広範なマッピングにより、歯は解剖学的に正確に配列していることが明らかとなった。
上顎歯列弓の門歯は対流圏上部(海抜10キロメートル)、下顎歯列弓の門歯は深度およそ2.3キロメートルの海中に位置していた。双方の門歯は座標80°N 147°W近くに位置し、後臼歯はそこから300キロメートル離れた座標82°N 160°Wで発見された。
各実体はその基部で終端しており、我々の次元に歯肉は存在しなかった。しかし後の粛清プロセス中に、脅威存在は少なくとも表面的には巨大なオオカミ (Canis lupus) 個体に類似していることが確認された。この存在は全長7200キロメートル、肩高3200キロメートルと推定された。注目すべきことに、この存在の首には細い鎖が巻き付いており、これは明らかに切断されていた。切断箇所は青い光沢のある物質で覆われていた。
エージェントは脅威存在の生息地を、明らかな陸地や地平線のない、霧に包まれ無限に広がる海として説明した。
粛清:
注目すべきイベントの時系列
2███年4月12日 03:32- ICSUTブルー資産は実体の主要次元にアクセスする作業を開始する。このプロセスは1時間で完了。
2███年4月12日 04:39- ミュー-90とAT-743の搭乗する SCPSクアランティン がゲートを通過。観察と報告のみに留めるよう命令が下されていた。ゲートの通過時点で通信は直ちに途絶。
2███年4月12日 05:17- SCPS クアランティン が帰還し、実体とその存在する次元について報告を行う。
2███年4月12日 07:20- UHECユニットとエータ-5が GOCAレガシー に搭乗。
2███年4月12日 15:35- LTE-2712の下側の牙は急速に引き込まれ、何の痕跡も残さず消失する。しかしこの事象はICSUTの生成したゲートに影響を与え不安定化する。
2███年4月12日 15:48-LTE-2712の上側の牙は徐々に引き込まれ、やはり何の痕跡も残さず消失する。この時点で粛清は完了と見なされたが、ゲートは完全に崩壊し レガシー 乗組員は帰還が不可能となる。
2███年4月12日 20:58- ICSUTブルー資産はゲートの再構築に失敗し続けている。任務部隊は喪失と見なされる。
2███年4月12日 23:02- 事務次長"パパ・ロメロ"は、 レガシー 乗組員で任務中死亡と考えられていた特殊工作員シェリル・█████████から連絡を受ける。█████████は現在位置がノースカロライナ州の放棄された団地の外であることを報告し、生存した職員の即時回収を要請した。
注: レガシー の4000名以上の乗組員のうち112名のみが生存した。生存者は米国前哨基地-██に移送され、医療処置を受け任務後報告を行った。
合同任務部隊2861-オメガ("ラグナ-ブロック")の生存者からの証言により、長時間の戦闘において脅威存在はあらゆる通常兵器、邪径兵器に耐性を示したことが明らかとなった。
首脳部からの指令に従い、UHEC操縦者は各々の圧縮熱核弾頭を埋め込むために実体の内部に進入することを試みた。不幸にもスーツの故障により前進は阻まれ、UHEC-656は喪われた。スーツは実体の下顎に着地して押し下げ、歯は基底次元から引き抜かれた。
マイケル・ハウアーの助言に従って レガシー のパイロットは艦をその口内へと進め、乗組員は1機のGOC反重力タービンを口蓋に設置した。続いてタービンを遠隔起動することで脅威存在は下顎を激しく引き裂かれて失血死し、粛清は成功した。実体は断末魔を上げ レガシー を襲撃し、船体を損傷させ船上の人員の大半を殺害した。生存者はエータ-5メンバー所有の装置によって生成された次元間移動リフトを用いて脱出した。
粛清の成功に続いて首脳部は状況調査を開始した。これにより、ある未知脅威存在が終末論的シナリオの開始を試みていたと推測するに足る十分な根拠が存在すると判断された。この存在の素性と動機は不明である。しかし、以前にLTE-2712が存在していた次元にアクセスする手段を有しているのが財団のみであるという事実により、これ以上の研究は妨げられている。
PSYCHE部門の記録
LTE-2712の出現前に、次の信書がGOC事務総長、D. C. アル・フィーネに送付された。この個人は以前に根拠のない主張を行っていたために、当初はこれに対する行動は取られなかった。
書状の抜粋: 2███年4月7日
送信者: シンシア・フューム(話し手: アース神族信仰同盟)
受信者: D. C. アル・フィーネ
…
私は任期の全期間を通じてセイズ1を実践してきましたが、これは前回の神託とは全くかけ離れたものでした。私はそのアース神族の真の容貌をこの目で見たことは未だありませんでしたが、彼女の顔は知っていました。彼女は敬愛すべき者にして運命の紡ぎ手、我らの母フリッガでした。
彼女は終末の時、万物の秩序の冒涜について私に語りました。彼女の言明を全て覚えているわけではありません。その詳細は意識が様々な様相を飛び回る間に失われてしまい、私の記憶に残されたのはこれだけです。
……グレイプニルは崩れ去り、偉大な鎖は最早無し
飢えたるフェンリルは解き放たれ、思うがままに饗宴を繰り広げるであろう。
備えよ!彼の者は我らの次元を貫き、それは顕現する地獄の予兆なり
我が助言に従わば、崩壊は未だ防ぎ得る。
これ以上のものだったことを私は確信しています。フリッガは未来を予知しますが、その結果に直接影響を及ぼすことはできません。これが真の警告だったことに疑いはありません。これは今や私達の手に託されたのです。いかなる犠牲を払っても、連合はこの脅威の無力化に備えなければなりません。
…
2███年4月11日の02:10から03:30にかけて、ロシア、アラスカに加えヌナブット準州の北極諸島地域の北岸を津波が襲った。この日の終わりまでに、民間人の死者数は最大で約3000名に達したと推定された。
災害から数時間で、複数の北半球国家から複数の動画共有サイトに民間人が撮影した映像が投稿され、空に「UFOの群れ」が出現したことを主張していた。第二任務(隠蔽)への懸念に基づき、報道管制と検閲プロトコルが自動的に開始された。[この事件における情報保護態勢に関しては、DPRIC監督官のジュール・ウィテカーに問い合わせること]
事務次長"ウルサ・マヨル"の命を受け、現地に近かった評価班743"雪眼"が展開された。およそ04:20に現地に到着したAT-743は、SCPSクアランティン に搭乗し異常存在と接触する財団の戦力を発見した。AT-743は財団の通信を傍受することに成功し、財団工作員は完全な封じ込めを不可能と考え情報の隠蔽に焦点を当てたという事実が明らかとなった。
AT-743がこの情報を首脳部に伝達したことで緊急会合が開かれた。事務次長"パパ・ロメロ"はその立場を利用し、実体を無力化するという目的を表明して <GOC首脳部指令によりレベルQ機密> 財団と連携し任務部隊を結成するよう指示された。
財団司令部の承認を得て任務部隊が編成された。2861-オメガは次で構成される。
- 排撃班9999 "マックス・ダメージ"から2名。UHEC-656("ロボ頭")とUHEC-300("スパルタ根性")。
- 評価班743 "雪眼"
- 国際統一奇跡論研究センター(ICSUT)から20名のタイプ・ブルー資産
- マイケル・ハウアー、アース神族信仰同盟(伝承顧問)
- GOCAレガシー
- 財団機動部隊エータ-5("イェーガーボマー")から1名
- 財団機動部隊ミュー-90("水浸し")
- 財団船 SCPSクアランティン
PTOLEMY部門の記録
セクター-10所属、ホーレス・ウォレス主計下士官の書類によるAOD(Armaments Used in Destruction、破壊に使用された兵器)報告
需品課-AOD-2712 番号 指定 機材名 数量 1 +2Gen-AGB GOC反重力浮遊戦艦 レガシー 1 注: この任務は当該GOCAの3度目にして最後の配備だった。艦は脅威存在の次元に遺棄されている。 2 +1Gen-HRG 120メガジュール極超音速レールガン 8 注: レガシー には合計8基の極超音速レールガンが搭載されており、64発(片舷斉射8回)が射出されたが対象に被害は見られなかった。 3 +1Gen-GBU 誘導爆撃ユニット-77-C-大型貫通爆弾 15 注: 脅威存在の毛皮を貫通できなかったのみならず、弾頭はなぜか衝突時点で不活性化し起爆に失敗した。 4 +2Gen-CTD 100メガトン圧縮熱核弾頭("クズマの母"2と"夜が更けるまで") 2 注: 未使用。このCTDはUHEC操縦者によって脅威の内部に持ち込まれ起爆される予定だった。 5 Gen0/GenAlt-ABJ ティワズ・ルーンを彫り込んだ16インチ棄却/追放砲弾。 1 注: ティワズ・ルーンが選ばれたのは、脅威存在に関する伝承において有名な北欧神話の神(テュール)を意味しているからである。
広報、情報隠蔽部門 (DPRIC) | |||
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送信者 | ジュール・ウィテカー(DPRIC監督官) | 受信者 | エイプリル・██████(作戦主任) |
件名 | RE: 2712 | ||
事件後の諜報活動から、GOCと財団の共同活動は民間人によるLTE-2712の記録映像を完全に遮断するのに不十分だったことが示唆された。財団は既に出回ってしまった情報に対する信用低下活動を事件の後に始動することができたものの、これは第二任務(隠蔽)の目標達成には不十分と考えられている。このため、DPRICは手順-9102"デジャ・ウブリエ"の実施許可を要請中。データからの推定では、これによって影響を受けた人口の98%は事件を目撃した記憶を想起不能となり、LTE-2712は人々の認識から消去されると示唆されている。適用中の情報隠蔽手法と財団の標的型反ミームによりLTE-2712の直接目撃報告が即座に退けられることと併せれば、これは許容範囲内であると見なされている。 |
PHYSICS部門の記録
AT/ST哨戒報告 関与した評価/排撃班:
AT-743
提出した工作員:
"野兎" 20947361/743
任務(場所/目的):
脅威存在は外部から俺達の世界に侵入し、北極圏に位置していた。俺達のチームは観察と報告だけを指示されて、SCPSクアランティン に乗って展開した。
遭遇報告/敵対存在の概要:
こいつをよく見るにはかなり離れて航行しなきゃならなかった。確実に狼の一種だったが、大きさは小さな国くらいありそうだった。VERITASは獣の千切れた鎖に付着していた何かから、強力なARad放射を拾った。4100キロキャスパー、サファイア、フラット、ロックド。
結果:
財団研究員は何とかして実体の一部を測定できた。だがARadは検出されないようだった。それ以外?俺達は中に入って、無事に出てきた。文句は言えないだろう。
職員条件:
最適。脅威とは交戦しなかった。俺達がそこにいることにすら気付いていたとは思えない。考えてみれば、あの可哀想な奴は立ち往生してたみたいだ。
結論/提言:
隊長は俺達にUTE報告書を正式に提出させ、首脳部にこいつをもっとよく調べるよう促したいと考えている。俺達がこれまでに見てきたものからして、こいつが自分の力で自由になったわけではないことは絶対に確実だ。