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識別コードナンバー確認 : 0992437/831
ようこそ、事務次長補 "龍笛" 様。
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脅威存在データベースエントリ
遠距離から撮影されたLTE-5481。
脅威ID: LTE-5481-Cyan-Typhon1 "首の無い自転車乗り"
認可レスポンスレベル: 3 (中度脅威) N/A (粛清確認済み、記録書庫入り)
概要:
LTE-5481-Cyan-Typhonは夜間の高速道路上に出現するType Cyan脅威存在である。LTE-5481はナップザックを背負った上下黒の服装で自転車を運転しており、顕著な特徴として第三頸椎より上が切断され頭部を欠落しているように見える。
LTE-5481の主な脅威性は、その行動が引き起こす運動力学的法則の崩壊である。サブジェクトの走行速度は60km/h〜300km/hまでの範囲で不定であり、0.9秒で0-100km/hまで加速した事例が確認されている。これは外見上のペダルの回転数と自転車の機構から生み出される推進力を遥かに超えており、当該脅威性を用いてLTE-5481は同じ高速道路上を走行中の自動車を追い越すまで加速する。
その際、追い越された自動車は瞬間的に由来不明の外力によって水平方向に両断される。断面は鋭利であり、材質の差異によって切断速度が変化する様子は見られない。この現象は追い越した際に能動的に行使されるのみならず、LTE-5481の近傍に接近したあらゆる物体に対しても無差別に発生し、特にそれが人間であった場合は必ず第三頸椎付近が切断されていることが確認されている。
また、LTE-5481は実体から非実体へ任意で性質遷移することが可能な霊的存在でありながら、エーテル共鳴結像(ERI)の技術が用いられていない標準的な光学機器によっても撮影されるとともに、一般人の肉眼により目視することが可能な性質を持っている。外見的特異性及び自転車で高速道路を移動する特徴的な習性のため、LTE-5481は単純な破壊的行動の危険性のみならず、連合の第二任務:「一般市民からの超脅威存在の隠蔽」にも大きく抵触する脅威と言える。
沿革と粛清:
極東部門日本地区にて初確認。LTE-5481-Cyan-Typhonは目撃した一般人からの通報、及びその直後に相次いで発生した事故により、首都高速道路4号新宿線にて発見された。初期発見に続き現着した連合の723評価班"爆発炎上"と偶発的に交戦。その後日本超常組織平和友好条約(JAGPAT)規定に基づき、連合に関連事案の対応優先権が移行されている。
当該サブジェクトの脅威性と活動範囲、並びに一般社会への露見可能性の高さから、当該脅威存在を可及的速やかに排除するのが望ましい目標であることは即時に結論付けられた。しかしながら108評議会の加盟組織"五行結社"は、連合排撃班の保有する車両からの対Type Cyan兵装投射では高速で移動する当該サブジェクトを捉えきれないだろう、と極東部門メインステーション-FE-392に前触れなく送付された書簡にて提言した。
また同書簡ではType Cyan存在特有の非実体性に加えLTE-5481の高い移動能力から、バリケードの設置などの物理的な走行妨害手法、及びハイズビル幽体固定法などの強力ではあるが即時性の無い拘束手法も効果が薄いとの考察がなされていた。動的霊災に関する五行結社の深い知見を鑑み、この提言には妥当性があると判断された。従って、粛清プロシージャの草稿として以下のような概要が用意されている。
- 関係諸機関と交渉のもとで高速道の特定区間を封鎖し、LTE-5481粛清のための待ち伏せアンブッシュ地点と指定する。
- アンブッシュ地点には排撃班の配備を行い、LTE-5481の出現・接近まで待機する。
- 接近が確認され次第排撃班は切断能力の範囲外から大規模な対Type Cyan兵器の投射を行い、以ってLTE-5481を粛清する。
なお、五行結社は既知脅威団体との継続的な交戦、及び近畿地方におけるいくつかの超常事案への対応を理由に本作戦への参加・資産投入を拒否した。
物理部門の記録
LTE-5481-Cyan-Typhon出現時の走行ルート及び再出現ポイントが首都高速道路を北上していることを確認した物理PHYSICS部門は、次なる当該サブジェクトの出現ポイントを埼玉県道242号高速葛飾川口線付近と予測。適切な偽情報流布とともに同区間を封鎖したのち、計画されていた粛清作戦を執行した。以下はその記録である。
| AT/ST作戦報告(デブリーフ) |
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作戦時の映像キャプチャ。
関与した評価/排撃班:
0819排撃班"墓掘りグール"
提出した工作員:
"棺桶運び(Pallbearer)" 52383717/0819
任務(場所/目的):
既知脅威存在(KTE)-5481-Cyan-Typhonの粛清。
遭遇報告/敵対存在の概要:
俺たちはゴーストバスター2を据え付けて待機していた。KTE-5481が出現したのは02:23、無人の高速にギッ、ギッと音を響かせながらこちらへ走ってきたことを覚えている。奴がペダルを漕ぐ動作にあわせ、油を差していないギアとチェーンが軋むような音だ。
路面上には特定のゾーンが指定され、KTE-5481がそこに入った瞬間にゴーストバスターを5方向から投射する手はずになっていた。だが俺がタイミングを見極め指示を出したその時、奴は急停車した。急ブレーキだとか制動能力だとかの話じゃない。それまで奴を動かしていたエネルギーが突然ゼロになってしまったかのような、気味の悪い止まり方だった。
投射されたエネルギーは無人のゾーンに炸裂し、スパークマン反響の火花を辺り一面に飛び散らせた。当然、KTE-5481はまだそこに健在だった。
結果:
初撃が躱された時点でこの作戦の失敗は確定していたと言っていい。さらに投射を続けたが、KTE-5481はそのことごとくを自転車では実現不可能な、ありえない挙動で避けた。速度を保ったまま真横へとスライドするように移動する、反動無く後ろに飛びのくなど、恐らくは慣性制御に近いことを行っていたのだろう。
最終的に、奴は曲乗りのような要領で俺たちが居た待機地点に飛び移り、その瞬間あらゆるものが横一文字に切り裂かれた。間をおいて、班員たちの首は重たい音を立てながら次々とアスファルトに落ちて転がった。スーツの防刃素材など何の役にも立たなかった。
俺たちの任務は残存班員の救助活動に変わり、直ちに切断現象が確認された領域外へと退避した後、順次現場からの撤退を行った。KTE-5481はその間、転がった首を眺めているかのようにそこに停まったままだったが、ふいに走行を再開し、そのまま川口本線料金所付近で消失した。
職員状況:
損耗17人 (死傷者11人、負傷者6人)
結論/提言:
俺たちはKTE-5481の性質を読み誤っていた。レスポンスレベルを2から3に引き上げるべきだと提言する。奴にはある程度の知性があり、自らの障害になるものを察知し積極的に破壊することができる。次に戦闘する際はより大掛かりな仕掛けで包囲し、確実に奴の動きを食い止めた上で再殺するべきだ。
精神部門の記録
第一回粛清作戦の後、LTE-5481-Cyan-Typhonが新たに東北自動車道の国道122号線へと出現する様子が確認された。これによりLTE-5481が首都高速道路内のみを活動範囲としている脅威存在ではなく、独立性を持って長距離を移動する存在であることは確実視された。隠蔽すべき被害範囲の拡大が予想されることから、極東部門事務次長補局は認可レスポンスレベルを3に引き上げた。
この発覚に続き、精神PSYCHE部門使節部は、SCP財団の施設"サイト-81UO"からの通知を受信した。通知の内容はLTE-5481に関する情報共有と対応策の至急策定を目的とする財団・連合・その他関係諸機関による会合の開催を希望するものであり、連合は協議の末これに応じた。会合の出席者を以下に列挙する。
- [GOC] 極東部門使節部、エージェント "調緒しらべお"
- [GOC] ICSUT3恐山キャンパス、ジョナサン・スバル・ウェストコット教授
- [SCP] 財団サイト-81UO、墨谷 佳澄 副管理官
- [SCP] 財団サイト-81UO、稲生 一成 編纂官
- [NEX] NEXCO超事態対応班(NEX-US)4、萱場 糺 主任
会合記録 [██/██/20██]
十和田八幡平 外交用非公開オフィス5
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[精神部門により編集 — 挨拶、会合出席者の紹介 等]
[SCP] 墨谷副管理官: それでは今日の本題に入りましょう。財団側から皆さんに共有したい事項は、連合によってKTE-5481と指定されている実体についての「背景情報」及び「発生しうるシナリオ」の2つです。一部はすでに連合側も把握されているかとは思いますが、これらの情報を前提として協調的な対応を行うことを目的としてこの場を設けさせていただきました。
まずは前者の「背景情報」についてこちらの稲生から。
[SCP] 稲生編纂官: はい、稲生です。財団の神話・民俗学部門では、デュラハン、スリーピー・ホロウなど、古今東西さまざまな伝承や伝説の中からKTE-5481との関連性が疑われる存在が指摘されました。その中で特に注目されたのが"首無しライダー"ですね。
[NEX] 萱場主任: ええと、口を挟んですみません。首無しライダーというと、オートバイに乗った、あの?
[SCP] 稲生編纂官: そう、その首無しライダー。元は1970年代から流行し始めた都市伝説で、走行中のバイクが何者かのいたずらで夜間の道路を横断するように張られていたピアノ線に引っ掛かり、しかもそのピアノ線がちょうどヒトの首の高さにあったことから乗っていたバイクライダーの首は切断されて死亡。その後ライダーは亡霊として蘇り、自分の首を探してあちこちに出没するという話でした。
酷似する死亡事故が1984/05/24に東京都葛飾区の水元公園付近で実際に発生しており、当該事故に関連して発生した異常実体がこの都市伝説の火付け役となったと推測されています。といっても、この事件で道路に張られていたのはロープであり、事故原因はバイクの転倒だったようですが。
[GOC] 使節 "調緒": それとサブジェクトに何の関係が? KTE-5481の出現は70でも80年代でもなく今年初めて確認されました。それに
[GOC] ウェストコット: それに、奴さんバイクには乗ってはらへんやろ。 自転車やないの。
[SCP] 稲生編纂官: ええ。なのでKTE-5481はこの都市伝説と類似する別の個体だと思われます。ウチの巷説部門が同様の実体を収容した例もありますしね。
[NEX] 萱場主任: その、都市伝説との類似というのは?
[SCP] 稲生編纂官: KTE-5481の乗っている自転車の防犯登録番号を調査したところ、明治大学に在籍していた大学生、小坂 博信氏の所有物であることが判明したんです。小坂氏は過去に発生した……ええーと……"超常的な事故"によって、既に死亡しています。なのでKTE-5481は既存の首無しライダーとは別に、小坂氏の死をトリガーに発生した可能性が高いかと思われます。
[GOC] 使節 "調緒": 防犯登録番号はこちらでも調査しましたが、氏の死因が超脅威の関わる事例だとは関知していませんでした。……財団のカバーと隠蔽はよほど優秀らしい。
[SCP] 墨谷副管理官: その点についてはご容赦を。事故の詳細についてはまた別の機密事項ですのでここでの説明は差し控えさせていただきます。
[SCP] 稲生編纂官: まあともかく、この事故に関連して小坂氏は自転車通学中に"斬首"され死亡したらしいんですが、事後処理の際に現場から小坂氏の頭部は発見されませんでした。仮説ではありますが、ヒトが首無しライダーとして死後出現する未特定の条件が存在し、小坂氏の死に方は偶然それに合致してしまったのではないかと。
[NEX] 萱場主任: 確かに、バイクに乗るのも自転車に乗るのも"ライド"ではありますが……。
[GOC] ウェストコット: "観測は現実を変える"って話でもあらへんのやろけど、大衆的な認知に乗った結果で首無しライダーがああやって出現したてこともあるんやろか。興味深いわぁ。
[SCP] 稲生編纂官: はい。ですので首無しライダーに関連するもの、例えば死因として伝えられる張られたロープやピアノ線のようなひも状のものは、KTE-5481も警戒する可能性が大いにあり得るってことですね。
[SCP] 墨谷副管理官: では2つ目、「発生しうるシナリオ」についてです。このままKTE-5481が東北自動車道の北上を続けた場合どういった影響が懸念されるかをこちらで独自に予測しました。そして、導かれた結果は我々にとって非常に好ましくないものでした。今回の会合も、当事案の速やかな解決のために財団が連合側へ支援を行うことが望ましいと判断されたために開催したものです。
その懸念とは、オブジェクト・クロス。アノマリー同士の相互作用が生み出す予測不可能な反応です。
[GOC] 使節 "調緒": 相互作用、ですか。脅威存在の1つはKTE-5481だとして、もう1体は?
[NEX] 萱場主任: 思い当たる候補は多いですよ。トンネル内には"もくもくさん"が出ますし、東北自動車道には不定期に"100キロババア"の出現が確認されています。他に奴と高速道路上で接触しかねないものでは以前F号案件6として関わった特異例699号、山形で確認された特異例830号あたりが思いつきますが……。
[SCP] 墨谷副管理官: いえ、高速道路だけには限りません。連合の報告ではKTE-5481にはある程度の知性があるとのことでした。ではKTE-5481が"なぜ"高速のみに出現し、そこを移動し続けているのか。我々はその理由を気にかけています。KTE-5481には、たどり着くべき目的地があるのではないかと。
[GOC] ウェストコット: 最初から東北を目指すために移動しとったってことか? そやけども、帝が西に居た時代から奇ッ怪なもんの本場はこの地方やわ。全部は特定しきれへんよ。おっきいとこで言えば遠野の隠れ里が妖怪や幽霊を迎え入れてはるけど、あすこも暴力的な輩を侵入させるんは土地神ゲニウス・ロキが好まんやろしなぁ。
[SCP] 墨谷副管理官: ええ、問題はまさにその点なのです。遠野が目的地ではなかった場合、KTE-5481はどこへ向かうか。東北自動車道の最果てである青森県には、心霊現象と霊的実体の温床……すなわち、皆さんご存じ「四十八町よそはちまち」が存在します。
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KTE-2648の風景。
KTE-2648-Templum-Cyanbooster7 "四十八町"は、青森県に存在する奇跡論的超心理ポテンシャルの高い領域である。主たる領域の統括組織は財団であり、"ネクサス(Nx)-54"の名で管理指定され監視施設サイト-81UOが設置されている。
KTE-2648-Templum-Cyanboosterでは同領域内での死亡者に比してType Cyan実体の出現率が高く、またその活動も他の領域と比べ活発であることが確認されていた。
財団は脅威性の高いType Cyan実体であるLTE-5481-Cyan-Typhonが自身の管理するKTE-2648内に侵入することでLTE-5481、KTE-2648双方に予期しない相互作用が発生することを危惧し、またそれを未然に防ぐために支援を提案したと考えられる。
幽霊が得る地の利とは
季刊 統一奇跡論 Vol. ██, No. 1, January 20██, pp. 28-42
国際統一奇跡論学センター
恐山 キャンパス
J. S. ウェストコット 著
要旨
墓地、殺人現場、廃墟、凶家、忌み地、古屋敷、その他ありとあらゆる呪われし建物や土地。これらの多くには幽霊の噂が付きまといます。暗所や湿度の高い地点が幽霊に好まれるというだけでなく、しばしば場所そのものに死者の霊魂が囚われているためです[1]。これらはいわばベクトルの定まっていない力の束であり、雑多かつ纏まりのない心霊現象のトリガーとなっています。
強い意志(人類の最も強い感情 — 即ち、欲望と必要性に関連する)を持つ単一の存在がその場所に侵入した場合、囚われた霊魂の思念力は一方向に制限され、操ることが可能となります[2]。この原理を用いているのが死霊奇跡論ですが、その主体が幽霊であれば、思念力の収束は事実上の霊魂の吸収を引き起こす場合があります。
感情がそれと対応する影響を現実世界に及ぼすという原則に従えば、一体の幽霊に多数の霊魂が集約されるという状況は現実歪曲能力の急激な上昇という形で現れます[3]。過去の研究成果によれば、非常に激しく破壊的なEVEスパイクを伴うことが予想され、その場所全体の奇跡論的安定性をも損なう結果となるでしょう。
[…]
会合内でサイト-81UO側が提示したこのシナリオは事務次長補局内で検討され、最終的に連合はLTE-5481-Cyan-Typhonに対応するための財団との協力体制に合意した。
天地部門の記録
LTE-5481-Cyan-Typhonが岩手県遠野市周辺に向かう釜石自動車道へ入らず花巻ジャンクションを通過したことが確認されたため、連合及び財団は秋田県と青森県の境に存在する坂梨トンネルを最終防衛ラインと定め、それまでの複数の地点に第二次粛清作戦のための拠点を置くことを決定した。
第二次粛清作戦に備え、天地PTOLEMY部門は財団からの装備提供を受け入れ、各作戦地点へと配備している。
需品課-AOD-5481 番号 指定 機材名 数量 1 +1Gen-SPC 標準人員輸送車Standard Personnel Carrier(ブラック・ハンヴィー) 14 注: 各作戦地点への人員及び兵装の運搬に使用。 2 +2Gen-MNeRG メトカーフ非実体反射力場発生装置(MNeRG) 6 注: 財団からの提供。幽体作用力(Ectoagency)の反射投影により、非実体的性質を持つサブジェクトに対する物理的干渉/影響を可能とする力場を発生させる装置。 3 +2Gen-SLANT スラント霊素固着波生成器 8 注: 財団からの提供。実体化したType Cyan実体に働きかけ、その構成要素を固化して物理的活動を制限する事を意図した装置。 4 AltGen-TKB MkⅡ.奇跡論式調律投光灯 8 注: 特定範囲内のType Cyan実体に対する分解作用を引き起こす。サブジェクトの進路妨害のために用いられる。 5 AltGen-ETR 電機奇跡論式祓除レイル砲 6 注: エクソシズム力場を単一ライン上に集約投射し、Type Cyan実体を効果的に撃滅することを目的として開発された兵装。
物理部門の記録
| AT/ST作戦報告(デブリーフ) |
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各作戦地点。
関与した評価/排撃班:
0819排撃班"墓掘りグール"、0837排撃班"虎落笛"、0844排撃班"牛の角矯め"
提出した工作員:
"棺桶運び(Pallbearer)" 52383717/0819
任務(場所/目的):
既知脅威存在(KTE)-5481-Cyan-Typhonの粛清。
遭遇報告/敵対存在の概要:
第二次粛清作戦で最終防衛ライン手前のP-3への配備がアサインされた時、俺が安堵しなかったと言えば嘘になる。川口での第一次作戦の時、目の前で首を斬られていった部下と生き残った俺との違いは何か? たった半歩だけKTE-5481に近かった、それだけだ。その十数センチの死線を、2度も潜り抜けられる幸運があるとは思えなかった。
だからP-1に続いてP-2が突破されたと連絡が入った時、俺は覚悟を決めた。KTE-5481と刺し違えてでも散っていった班員の仇を討つ覚悟を。果たして、奴の姿が目視確認されたのもまさにその時だった。ここまでの攻撃によりかなり消耗させられたのだろう、奴は損傷部からエクトプラズムを垂れ流しながら、1度目の接敵と同じくギッ、ギッとチェーンの軋む音を響かせてこちらに向かってきていた。
だがその音は前回より明らかに激しいものだった。漏出するエクトプラズムは進むごとに増大し、もはや霊体を維持することも困難であるに違いない。それでも奴はペダルを加速し続け、邪魔をするもの全てを無差別に斬り裂き続けた。鬼気迫るその姿は、まさしく"怨霊"だった。目的地に到達するという執念、それのみが奴を突き動かしているように見えた。
結果:
点ではなく面での波状攻撃。それこそがKTE-5481のイカれた回避能力を圧倒する唯一の手段であることは連合と財団の共通認識だった。だから用意したありったけを食らわせた。メトカーフとスラントで動きを止め、調律投光灯を浴びせながら祓除レイル砲を集中投射した。作戦の全てだ。だが、それらが奴を完全に停止させることはなかった。
気付けば、KTE-5481は俺のすぐ目の前にまで迫っていた。前回と同じだった。辺りは切断されたヒトやモノで散らばり、ゴーストバスターが俺の手の中にある。そして、奴にそれを当てることなどできないということまで、腹立たしいほどに同じだった。幽体を崩壊させつつもなお荒ぶる首無しライダーは攻撃のことごとくを避けながらこちらへ飛び掛かり、形の無い首狩りの刃が俺の喉元に触れたのを感じた。
その時、視界の端に何かが映った。財団の支援車から高速道路の夜空に放り投げられたそれは、ある種のType Cyanに特有の青白い炎に包まれていて、見間違いでなければヒトの頭蓋骨の形をしていた。瞬間KTE-5481の動きがピタリと止まった。自転車を放り捨て駆けだした奴は、宙を舞うドクロを受け止めるかのように手を伸ばした。
隙を見て取った俺はトリガーを引き、祓除レイル砲の最大出力を投射した。奴は避けることができなかった。エクソシズムの力場が収束しKTE-5481のことごとくを灼き尽くしたのは、奴が両手でドクロを抱きかかえるのと同時だった。
職員状況:
損耗25人 (死傷者4人、負傷者21人)
結論/提言:
最後の決め手となったあのドクロについて俺たちは何も聞かされていなかった。Type Cyanを惹き付ける類いの隠し玉であれば、財団を信用するべきではないという教訓がまた1つ増えたことになる。あれの存在に気が付いたKTE-5481の反応は異常だった サイト-81UO、連中が幽体を捏ね繰り回してどんなおぞましい研究をしているのか知りたくもない。
だが、少なくともKTE-5481は成功裏に粛清された。俺たちは任務をやり遂げた。今のところは、それだけで十分だ。
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極東部門司令部記録
[データが入力されていません]
通話記録
対象: [データが入力されていません]
[██/██/20██] (00:00 - 09:27)
メインステーション-FE-392・使節部デスク
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[記録開始: (00:00)]
[GOC] 使節 "調緒": こんばんは、副管理官。
[SCP] 墨谷副管理官: やあどうも、まずはおめでとうございます。KTE……失礼、そちらのデータベースでは無力化達成時点でLTE-5481に再分類されるのでしたね?ともかく作戦が成功したことは私も既に把握していますよ。
[GOC] 使節 "調緒": ええ。ご協力については感謝します。つきましてはその内容で少々確認したいことがあるのです。作戦中に投入された、例の頭蓋骨について。
[SCP] 墨谷副管理官: ああ!申し訳ありません。アレについて事前に通達を行えなかったのはこちらの不手際ですね。確認を取らずに用いたことに関してはお気を悪くなさらないでいただければ幸いです。何せ緊急事態だったもので。
[GOC] 使節 "調緒": ほう、では現時点でもこちらに詳細情報が共有されていないことも不手際だと。
[SCP] 墨谷副管理官: もちろんです。たとえ後処理などに時間を要するため共有が著しく遅れる可能性があるとしても、我々が連合側に協力を惜しむわけがないではありませんか。
[GOC] 使節 "調緒": ……それはなによりです。では、この場を借りて我々の見解を述べさせていただいても?
[SCP] 墨谷副管理官: どうぞ。述べるだけでしたら。
[GOC] 使節 "調緒": あの頭蓋骨はLTE-5481の"首"ですね。首無しライダーは自分の首を探してさまよう サブジェクトがその都市伝説に沿って動く存在であったのなら、交戦中にもかかわらずあそこまで明確な隙を見せたことにも合点がいきます。どうにかまがい物を作り上げたのか、それとも元になった人物の死体か魂でも使ったんですか?
[SCP] 墨谷副管理官: さあ、何のことでしょう。研究が専門ではないので詳しいことはどうにも。
[GOC] 使節 "調緒": いずれにせよ、あなた方は事実としてそれを用意してみせた……重要なのはですね、副管理官。因果関係が「逆」の可能性もあるということですよ。
[SCP] 墨谷副管理官: と言いますと?
[GOC] 使節 "調緒": 襲来に備えて首を調達したのではなく、あなた方81UOが"首"を保有していたがためにLTE-5481が四十八町まで引き寄せられてきたのではないか。我々はそう考えています。偶発的であれ意図的であれ、連合はその状況に巻き込まれたことになる。
[SCP] 墨谷副管理官: そうですね。もし仮にその憶測が事実であれば、ですが。
[GOC] 使節 "調緒": 原因となった事故は機密、頭蓋骨についてもはぐらかす。あなた方が秘密主義を貫くのは結構ですが、隠している以上は痛くもない腹を探られ、下種な勘繰りをされるのもご理解いただきたい。四十八町が非常に危うい緊張の上で連合の不干渉地域となっていることを前提としてお聞きしますが、本当に、そのような事実はないんですね?
[SCP] 墨谷副管理官: はい、もちろん。我々のホームタウンへと迫りくる敵にあまりにも手こずっていたものですから、見るに見かねたというだけですよ。首都高で財団より先に優先権を主張したのはあなた方だ。
[沈黙]
[GOC] 使節 "調緒": それを訊けて安心しました。では今度似たような事例が引き起こされた場合に、また共同戦線が組めることを願っておきましょう。
[SCP] 墨谷副管理官: ええ、是非とも向かい合う形でないことを。良い夜をお過ごしください。
[記録終了 (09:27)]
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お疲れさまでした、事務次長補。
文書ステータス - 閉架
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