夢界学部門監修;フィールドエージェント向け明晰夢訓練概論
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皆さん初めまして、夢界学部門へようこそ。

私は第14研究班所属のミエル・サイアンス、主に人間の潜在意識下の空間 — つまりは「夢」へと影響を及ぼすオブジェクト全般の研究活動に参加しています。短い時間となるかもしれませんが、どうぞお見知りおきを。

さて、前置きはここまでにしましょう。本日、フィールドエージェントとして活躍されている、あるいは活躍される予定の皆さんにお越しいただいたのは、「明晰夢訓練」の重要性についてお話するためです。

いえ、別に夢界学部門所属の睡眠エージェントのような活動を、皆さんにも行えるようになってほしいわけではありません。「夢の中の出来事を記憶しておく」とか、「夢の中で自由に活動する」とか、「なんだかよく分からないオネイロイのことを調査する」といったことに興味をお持ちなら話は変わるかもですが。 — はい? なんですって? ふむ、「オネイロイって何?」ですか。ええ、ええ、予想通りの反応を嬉しい限りです、とっても。興味がお持ちなら、後で個別に説明しますよ。というか説明させてほしいくらいです。

失礼しました。話を戻しましょう。

フィールドエージェントの任務において、アノマリーの異常性に曝されるケースは「よくある」とまではいかずとも、その危険性が常について回るものだということを皆さんご存じでしょう。その中でもポピュラーな被害の1つに挙げられるのが、見た・聞いた・触ったことをトリガーとする「精神影響」の作用です。絶対有り得ないような出来事や思考を、真実もしくは最適解であると信じ込んでしまったり。このような形で、精神影響を受けた人間は、異常な状況に対して違和感を抱くことができなくなる場合があります。

さて、このような状況、何かに似ていると思いませんか? そう、「夢の中」です。夢の中において、皆さんが奇妙な現象や物体を目撃したり経験したとしても、大抵の場合は、それ自体に気が付いていない、もしくは気にも留めていないか、あるいはただ「奇妙な怪物がいるぞ。ああ、なるほど今日はハロウィンだから、きっと仮装なのだろう。いやあ、実に凝った衣装だなあ」なんて感じでスルーした、という経験があるかもしれません。

ええ、全ては強引に「その出来事は合理的であって異常でない」と再解釈してしまっているわけです。

「眼が沢山ついた人間が歩いている。なるほど、整形手術に失敗したのか、可哀そうに」
「この料理に気持ちの悪い食材が混ざっているな。きっと、料理人が間違えたに違いない」

こんな感じで異常という状態について、無意識的にありとあらゆる難癖を付けて自らの認識を捻じ曲げるのです。

では、ここで今回の議題に立ち返ってみましょう。「明晰夢訓練」を行うことで、先ほど述べたような夢の中で起こる違和感を、私たちは「正常ではなく異常である」と正しく認識することができるようになります。そして、これは現実でも同様。 — ああ、無論ですが、訓練の形は少し変わるでしょうが。

多くの場合、精神影響によって与えられた齟齬や誤認は、メインとなる別の異常性に被験者を招き込むための手段・導入部という役割を果たします。そのため、自分が経験している違和感の存在に気が付ける明晰夢訓練を受けてさえいれば、フィールドエージェントは次に曝される危険を回避することができるようになるわけですね。

さて、それではイントロダクションはここまでとして、次は実訓練に移っていきましょう。ただ、訓練によって明晰夢が見れるようになるのか、現実で言えば精神影響による違和感に気が付けるようになるのかは、個人の素養にも左右されます。つまり何が言いたいのかというと、素養のない者には訓練を施すだけ時間の無駄 — いえ、失礼。素養のない者は、明晰夢訓練をする時間を別の訓練時間に割り当てた方が有益ということです。

というわけで、振るい分けをしていきましょうか。いえいえ、ペーパーテストやカウンセリングなどはなく、とても簡単な判別方法ですので。では、まず皆さん、私の
の平を眺めてもらえますか? はい、そのままお願いします。

1人……2人……3人……4人……。

ふむ、今回の参加者は優秀ですね。機会が許せば、夢界学部門にヘッドハンティングしたいくらい。

OK。皆さん、そのままで結構です。えー、残念ながら、現在席に座られたままの方は素養がなさそうです。なぜって? 気が付いた方は皆、違和感に気が付いて目を醒ましたからです。彼らには、追って現実側から訓練指令が下ることでしょう。

そして、この夢に残られた皆さん。いえいえ、恥じる必要はありませんよ。全ては素養の問題ですので。 — まあ、大半の方は、意識の外で私が何を言っているのか分かっていないか、もしくは別の内容を話しているように聞こえているのでしょうがね。

それでは、これに解散です。ご清聴をありがとうございました。

5 …… 4 …… 3 …… 2 …… 1 …… 0




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