
ことは始まっていた。財団が、人類の最初で最後の防衛線が、その責務を果たせなかった。それは財団の死角 — 監視が完全には行き届いていなかった死角で始まっていた。そして気付いたときには、すでに遅すぎた。
西暦2055年、サンフランシスコの2人の若き科学者が、異常な手段を用いたナノマシンの創造に漕ぎ着けた。2人の目的は — 狂信的と言えたが — 純然たる医療だった。ナノマシンはヒトに注射され、病原体を破壊することでヒトの免疫システムを補助するものだ。そしてナノマシンは被食者の材料を用いてエネルギーを生み出し、さらなるナノマシンを創造し、体から出て、世界中の病原体を破壊するのである。もちろん、ナノマシンはヒトの身体や無害な有機体を破壊しないようプログラムされていなければならない。これは2人の科学者が最初にしたことだった。不幸にも、2人は小さな、しかし致命的なミスを犯した。それが判明したのは、ナノマシンが初めて使用されたときだった。ナノマシンは何一つ破壊しなかった — ヒトゲノムを持った有機体を除いて。
ナノマシンが空気中に拡散したとき、終わりは訪れた。ヒトはすべて塵の塊に変わり、その塵の塊は別のヒトを攻撃した。超常的な治癒能力を持つ異常オブジェクトでさえ、夥しい量のナノマシンには長くは耐えられなかった。誰一人として逃れることはできず、また財団さえも、収容に向けた努力にもかかわらず、為す術を持たなかった。人類の時代は残り幾ばくもなかった。
しかしそれは終焉ではなかった。壊滅が差し迫る中にありながら財団は、自らの最低限の責務を、人類の未来を守ることであると考えた。もはや自分たちを守ることができなくても、である。その目的のもと、財団はその最後の数ヶ月に "プロジェクト・オートマトン" を始動した。
財団は少し前からすでに機能性アンドロイド、つまりヒト型機械の開発に着手していた。それらの知性はヒトに匹敵しうるか、凌駕する可能性すらある。アンドロイドたちは、もともとは宇宙ミッションに起用されたり、ヒトには危険ないし不可能な任務を遂行するはずだった。この発明が転用されたのだった。
最後のヒトが死ぬ3日前、最初のアンドロイドが起動された。彼の任務はプロジェクト・オートマトンを成功に導くこと、財団と財団が必要とする全ての機関とに人員を提供すること、そしてその後にこの惑星と宇宙をあらゆる脅威から、来るべき時が — ヒトが再びこの惑星に憩うことができるようになる時が来るまで保護することだった。
プロジェクト・オートマトンは成功した。第1世代のアンドロイドたちは財団の全サイトを掌握し、ナノマシンの犠牲とならなかったアノマリーの収容を再確立した。最終的に、アンドロイドたちはSCP-2000を用いて人類を復活させることができるところまで来た。
不幸なことに、ナノマシンは財団の計画にバグを潜ませていた。ナノマシンが太陽光からエネルギーを得ていたことが明らかになったのである。これにより、ナノマシンは永続的に活動することができた。さらに、ナノマシンは自己の存在にとっての脅威に反応するようプログラムされており、また欠陥品や破壊またはプログラムを書き換えられたユニットを分解・再構築するようになっていた。アンドロイドたちも、同様に自らに対抗するものに対して進化・適応することができると気付いていた。アンドロイドを造った者がこの機能を意図していたかどうか、確かなことは誰にも分からない。
自分たちの最後にして最大の目的が達成できないとなったアンドロイドたちは、他の任務に集中した。SCPオブジェクトはアンドロイドが策定したアノマリー保全プロトコル(Anomaly Secure Protocols)を与えられ、その時からASPオブジェクトと呼ばれるようになった。また、未知のもの、異常なものの研究はアンドロイドたちに引き継がれた。しかし、彼らがそうしたのは諦観ゆえではなかった。アンドロイドたちはヒトのために世界を維持した。ヒトのために万象を研究し、最終目標達成の唯一の障害であるナノマシンに対する対抗策を見つけようとしたのだ。
概説
西暦2052年、財団は収容下にあるラプターテック・インダストリーズ(RTI)製品のAIの解析と複製に漕ぎ着けた。それらは当時のRTI製品に匹敵しうるものだった。ところが財団は、この技術を公表はしなかった。一つはK-クラスシナリオの発生を抑制するため、もう一つはRTIを不用意に挑発しないためだ。これらの財団製AIは後にアンドロイドの最初のモデルに用いられ、そのアンドロイドたちによってさらに改良された。
アンドロイドたちはエネルギーを内蔵核融合反応炉から得ている。炉は遊離した同位体重水素で充填されているが、その重水素は経口摂取された重水の電気分解により生成されたものだ。電気分解により生じる酸素は鼻から吐き出される。エネルギーの出力は三重水素の原子核を加えることで飛躍的に増大するものの、三重水素水の利用は生産コストの高さゆえにごく限定的である。最大出力で、普通の活動を普通の重水を用いて行った場合、一度の充填でおよそ4週間持続する。多くのアンドロイドのタンクは6リットルの容量を持ち、掛け金がねおよび物理的・化学的フィルターシステム群で不純物から保護されている。このフィルターシステム群が万一機能不全に陥ると反応炉が損傷を受けうるので、フィルターは時々交換しなければならない。
財団製アンドロイドはすべてブラックボックスを備え付けている。ブラックボックスは防水で、電磁パルスや放射線に耐性があり、さらに10バールの圧力と最大50口径の射出の衝撃に耐えるものだ。アンドロイドに関するすべての情報、またその人格と記憶が書き込まれている。これにより、アンドロイドはボディが破壊されてもブラックボックスを別のボディに組み込むことで存在し続けることができる。ブラックボックスには非常用バッテリーも一体化されており、反応炉が機能不全に陥ってからも最大24時間エネルギーを供給できる。
財団アンドロイドは感情を持っている。財団のコンピューター科学者らとエンジニアらは、感情は思考プロセスと解決策の導出に多様性を確保するために必要な機能であると考えたのだ。これにより、アンドロイドたちには自由意志も与えられた。
アンドロイドたちはすべてヒトに似た容姿を持っており、これには相貌も含まれるが、耳介は持たない。男性的・女性的な見た目を持つ。このおかげでアンドロイドたちはヒトが作った道具、インフラ、機械を適切に使用することができ、同時に、これらのものが人類が復興するまでそのままであることが保証される。
アンドロイドたちの外装は飛沫と蒸気を防ぐが、水中に長時間滞在はできない。外装は柔軟性のあるプラスチックでできており、そのためアンドロイドたちは磁器製の人形のように見える。外装は自然に摩損するため、数年おきに交換しなければならない。色も様々であり、ヒトの肌を模した外装すらある。ところがそうした外装は高価であり、当のアンドロイドたちが定期的にメンテナンスしなければならない。これはオプションの頭髪やひげ、手足の爪にも同じことが言える。
アンドロイドたちは身体の一部が機能不全に陥ったとき、痛覚に似た感覚によってこれを察知することができる。ところがこの機能だけでは、機能不全を予見することはできない。財団は常に交換用の部品を用意しようとしているが、へき地では常に手に入るわけではない。
財団アンドロイドたちは左手に複数のポートがあり、自分のプロセスユニットにデータを転送し、また逆にプロセスユニットから取り出すことができる。ただし直接的なハッキングは不可能である。システムには特殊なアンドロイド・プロテクトがかけられており、アンドロイドによる無許可のアクセスを識別してブロックすることができるためである。
アンドロイドたちは通常の口話、表情やジェスチャーに加え、電波を使って意思疎通ができる。ただしこの機能を使うのはまれである。第三者による傍受の危険性が高いためだ。
社会
アンドロイドたちは世界中に住んでいる。直接財団で働いている者も多いが、大多数は新たな人類のためにインフラのメンテナンスを行ったり、アンドロイドや財団の継続運用に必要なあらゆるものの供給を行ったりといった仕事を課されている。アンドロイドたちは睡眠を必要としないため、労働シフトは14時間で、その後にある10時間の自由時間は別のアンドロイドがメンテナンスを行う。このような労働周期は初期に財団科学者が実装したもので、その目的は勤務エリア外の情報収集を可能にすることだ。その情報は将来の問題の解決策を導出するために使われる。こうした目標を達成するために、アンドロイドたちのほとんどは、程度に差はあれ好奇心を与えられている。この好奇心により、専用に設計されたモデル以外でも、正確さに差はあれ、ヒトのようなレクリエーション活動をしたりアートを創造したりすることができる。その後、音楽ジャンル、文学、ショーがいくつか現れ、広く大衆が楽しんだ。
アンドロイドたちは、彼らの資産が決められた上限に達しない場合に限り、労働に対価を受け取る。アンドロイドたちはすべて同じ給料を受け取る。その事実が受け入れられているのは、アンドロイドたちがそれぞれの仕事専用にデザインされているからだ。上限が定められているのは、贈収賄や外的要因による腐敗を防ぐため、また欠乏を通じて創造性を向上させるためだ。アンドロイドたちの通貨は「クレジット」と呼ばれ、完全に電子化されている。通貨に関するデータはすべて、厳重に警備されかつAIを備えたデータセンターで蓄積・処理され、改ざんのリスクをほぼ完全に排除している。アンドロイドたちはIDナンバーを読み取らせることで支払いを受ける。IDナンバーはブラックボックス内にハードコード化されており、ヒトでいう指紋のような固有の識別手段となっている。財団施設内ではIDナンバーとその持ち主の所在は逐一記録される。
すべてのアンドロイドには、モデルとシリアルナンバーからなる名前が与えられている。簡便化と時間の節約のため、ほどなくしてすべてのアンドロイドは自分だけのより短い名前を自分で選ぶようになった。さらに、すべてのアンドロイドはヒトのように服を着て外装を守っている。
ブラックボックスがアンドロイドの全モデル間で互換性があるとしても、アンドロイドたちは簡単に転職することはできない。フィールドワークを行うモデル間で仕事を変えるのはさして大ごとではないが、より大きな変更は該当のアンドロイドの改造なくしては不可能である。
アンドロイドのボディは平均で50年間稼働が可能であり、定期的なメンテナンスにより大幅に伸ばすことができる。古いボディは再利用される。各シリーズの新型の製造は、およそ10年毎に準備・承認される。
アンドロイドたちは共同体やカップルを形成する。しかしアンドロイドたち自身はジェンダーを持たないため、パートナーの外見が男性的であるか女性的であるかは気にしない。
宗教現象はアンドロイドたちにとっては不可解である。アンドロイドたちの中には自由時間に宗教的なならわしを実践し、執り行う者もいるが、どちらかというと好奇心によるものであり、信心から行うものではない。
アンドロイドたちのコミュニティは13機のAIの一団が統治している。このAI群はMCU-1からMCU-13と指定されており(MCUはマスター・コントロール・ユニットの略である)、また同時に財団のO5評議会の形態を採っている。この一団はアンドロイド社会の立法府である。アンドロイドたちはみなデータバンク内に法典を内蔵しているが、ガイドラインに反した行動をとることがある。この性質は規制が過剰となることを避け、またコミュニティの柔軟性を保つために実装されたものだ。MCUたちの権力の肥大化を制限するため、MCUたちは直接ファイルや実際の出来事を書き換えることはできず、指令の発出、承認の発行などのみを行うことができる。
身動きを取ることができないAIは他にも存在する。そうしたAIはアンドロイドたちと比べて遥かに優れた処理能力を有している。ただしそれらのAIは特殊な仕事のためだけに設計されているため、情緒を持たず、問題に直面したときに最も論理的なアプローチを選択することができない。その中でも最古のもの、例えばKIRAは非常に発達しており、その知性はアンドロイドの中で最も優れた者に匹敵するが、もともとのプログラムを無視あるいは上書きしたり財団にとって有害な決断をしたりしないよう、プログラムに制限がかけられている。このようなマシンは、潜在的リスクを孕んでいるため、大々的に使用されることはなく、厳重に監視されている。
財団
ほとんどのアンドロイドは財団の手によるものであり、財団の存在は、主に実用上の理由から秘匿されていない。すべてのアンドロイドは基本的に財団で働いているからだ。しかしほとんどのアンドロイドは、財団には滅多に直接接触せずに与えられた任務をこなしている。ただし、際立って優秀なアンドロイドはよりデリケートな仕事に従事する。また、そうしたアンドロイドたちの人格データは抽出され、新たなアンドロイドモデルに使用される。このルールはすべてのアンドロイドが知っており、特別な栄誉と見なされている。
今日、「SCP」という言葉は歴史を語る文脈にしか見られない。「特別収容プロトコル」はアンドロイドたちには全くもって適応されず、アンドロイドたちはデータベースの大規模な修正を避けるべく、これを速やかにアノマリー保全プロトコル(Anomaly Secure Protocols)に置き換えた。アノマリーの特別収容プロトコルは十分に警備されたデータベースに保管され、人類復興の後簡単に再適用することができる。
以下にリストアップされているのは、財団アンドロイドモデルの最も一般的なシリーズである。これらとは別に、特異性の高い任務のためのモデルも存在するが、ここでは扱わない。
MFUシリーズ
MFUは多機能ユニット(Multifunctional Unit)の略である。MFUモデルは男性的・女性的のいずれかの外見を有しており、アンドロイドコミュニティにおいて最も大きな部分を占めている。MFUモデルの仕事は、専門化の必要がない、例えば清掃、物流、あるいは重要でない管理業務などだ。とりわけ、MFU-Dモデルというシリーズは使い捨てのDクラス職員として財団に仕える。MFU-Dモデルはその起用目的に応じて様々な記憶と人格を植え付けられる。
CUシリーズ
CUは建築ユニット(Construction Unit)の略である。その大部分は男性的な外見をしており、専門によって様々な違いがある。例えば強力なモーターと頑丈なボディを持つモデルは過酷な建築業務を行うことができ、一方で繊細なボディとモーターシステムを持つアンドロイドは極めて緻密で精確な作業を課される。さらに、CUの前腕は取り外して建築・加工用具に置き換えることができる。CUシリーズのアンドロイドは建造物、施設、大通りその他のインフラの建築、また様々な道具の製造に起用される。
MUシリーズ
MUはメカニック・ユニット(Mechanic Unit)の略である。MUモデルのアンドロイドはその専門性に応じてさまざまな外見を有している。大型で頑丈なモデルはマシンの大型パーツの製造に起用され、小型のアンドロイドはマシンのメンテナンスや修理に起用される。MUモデルのボディには取付部があり、様々な道具を取り付けることができる。
AMUシリーズ
AMUはアンドロイド・メンテナンス・ユニット(Android Maintenance Unit)の略である。AMUシリーズのアンドロイドは、アンドロイドの組み立て・メンテナンスに特化している。このシリーズのモデルの多くは線の細い外見をしており、モーターは精確かつ繊細に駆動する。MUシリーズと同様に、この種のアンドロイドはモジュールになっており、精密工具を取り付けることができる。
MULBシリーズ
MULBは生体用医療ユニット(Medical Unit for Living Beings)の略である。MULBアンドロイドは極めて珍しい。その多くは生物系アノマリーの収容にのみ起用され、また家畜種の飼養管理のみを行うためである。AMUシリーズ同様、MULBシリーズも指が着脱式になっている。
TCUシリーズ
TCUは戦術戦闘ユニット(Tactical Combat Unit)の略である。TCUシリーズのアンドロイドは電磁気的汚染に耐性があり、すべてのアンドロイドの中で最も強力なモーターを持ち、プラスチック製外装の代わりに高強度チタン合金製、セラミックプレート、ケブラー繊維製の複合装甲を備えている。この装甲のため、このシリーズのモデルの大半の外見は、角ばっておりロボットに似ている。TCUのボディの形状および装甲の厚さは、その起用目的に応じて様々である。さらに、肩と前腕に取付部があり、追加の兵装を装備することができる。そうした兵装は緊急時には容易に破棄できる。TFUシリーズのアンドロイドのなかでも特別なクラスのものはTFU-Aシリーズとなる。これらのアンドロイドはMFUシリーズのアンドロイドと見分けるのが極めて困難であるが、他のTCUシリーズと同様の装備を備えている。このようなユニットは隠密エージェントや潜入要員に起用される。
FUシリーズ
FUは航空ユニット(Flight Unit)の略である。FUシリーズのアンドロイドはアンドロイドの中で最も軽く、繊細に造られている。様々な航空機械を操縦でき、あるいは背部と腕にある取付部によって航空機械そのものになることができる。このシリーズには軍事向けのバージョンもいくつかある。
NUシリーズ
NUは海軍ユニット(Naval Unit)の略である。このシリーズのアンドロイドは防水で、追加の機器無しで潜水ができる唯一のシリーズである。これは、内部に加圧室があり、またデザインが軽量化されていることで可能になったものだ。適切な装甲を持ったモデルは最大深度200メートルまでの潜水が可能である。NUモデルは海上の移動や海戦に起用される。
SUシリーズ
SUは宇宙ユニット(Space Unit)の略である。SUシリーズのアンドロイドは宇宙に適した素材で造られており、アンドロイドの中でも最もメンテナンスが低頻度でよい。宇宙での作戦に起用され、スペースステーションや月面基地に配置される。
RUシリーズ
RUは研究ユニット(Research Unit)の略である。このユニットは、その名の通り研究を任務とする。RUシリーズのアンドロイドはすべてのシリーズの中で最も強力なAIを持ち、外見も非常に多種多様である。研究ユニットの高度な演算力は、その演算システムが頭部に限らず、ボディの他の部位にも埋め込まれていることによる。
EUシリーズ
EUはエンターテインメント・ユニット(Entertainment Unit)の略である。このユニットはアンドロイドたちが発明したもので、もともとは特定のSCPオブジェクトの収容に携わっていた。現在はこれらのモデルはより広まりを見せ、他のアンドロイドたちのために芸術・文学作品・ゲーム・その他のエンターテインメントメディアを創出している。このアンドロイドたちはRUシリーズに次いで高い知性を持っており、最もヒトに近い見た目をしている。EUシリーズのアンドロイドはアンドロイドの中で最も多種多様な外見を有している。
アンドロイドたちが使用するテクノロジーを以下にリストアップする。
データ処理
ニューリスター: ニューリスター(neuristor)は最も基本的な電気素子であり、天然のニューロンの働きを真似たものである。そのためニューリスターは、アンドロイドのAIやその他のデータ処理機器に必要不可欠な人工ニューラルネットワークを構築する基礎となる。ラプターテック・インダストリーズ(RTI)のアノマリーをリバースエンジニアリングしたことで、そのシステムを能力はそのままに、省エネ・省スペースにデザインすることができるようになった。人工ニューラルネットワークは学習プロセスとパターン認識に適しているが、数値計算には向いておらず、したがって必ず従来型のプロセッサーと併用される。また、情報を貯蔵することもできないため、ストレージメディアに直結している必要がある。
メモリスター: メモリスター(memristor)は、過去に通過した電荷の量とその時の電荷の速さに応じて抵抗が変化する電気部品である。記憶素子として使用することで、従来型のストレージメディアより少ない電力で遥かに大量のデータを貯蔵することができる。これはメモリスターが他の記憶素子よりはるかに隙間なく詰め込むことができ、かつ消費電力が少ないことによる。メモリスターは主にアンドロイドたちのブラックボックスに使用されたり、その他AIやデータベースとして使用される。これはメモリスターが、RTIの製品をコピーすることで省スペースに設計されているためである。ニューリスター同様、メモリスターも大半のAIにとって必要不可欠である。
収容技術
ヴェーバー・アノマリー 財団はしばしば、収容が極端に困難なオブジェクトや実体を封じ込めるのにヴェーバー・アノマリーを使用する。BCIASが計画されたこともあるが、セキュリティ上の懸念を理由に中止された。したがって、現在のところ、ヴェーバー・アノマリーは最大で第3ランクまでが許可されている。
動力源
核融合反応炉: 核融合反応炉は重水素または三重水素の原子核の低温核融合を行うもので、軍事目的の車両やアンドロイドに使用される。最も大出力なもので、毎分1.7メガワットの供給が可能である。
急速充電型蓄電池: あるExplainedオブジェクトのおかげで、財団は最大120ギガワットのエネルギーを貯蔵できる蓄電池を製造できるようになった。こうした蓄電池は数時間、あるいはたった数分で充電でき、そのエネルギー容量に応じて用に供される。
物質
ベリリウム銅: この特殊な合金は、スクラントン現実錨の機能に最も重要なものだが、以前と比較すると非常に容易に製造できるようになったため、広範囲で用いられている。アンドロイドのブラックボックスはベリリウム銅製のかごを備えており、現実改変の影響をある程度防ぐようになっている。
メタマテリアル: メタマテリアルはその特殊な構造によって周囲の光を曲げることができる物質である。メタマテリアルはTCUアンドロイドの特殊なステルスに使用される。これは、メタマテリアルの特性によりアンドロイドが完全に不可視になるためである。そのようなアンドロイドは、不可視化することで光を捕捉できなくなるため、追加の測位用ソナーを備えている。メタマテリアルはさほど強くない力でも損傷を受け、またエコーロケーションなどの非光学的手段によって位置を特定される。
偵察技術
超小型飛行機: 超小型飛行機(Micro Air Vehicles, MAV)は5 mmサイズのドローンであり、偵察・諜報活動に使用される。MAVはカメラとマイクを備えており、これにより周囲の様子を観察することができる。モーターで動く羽によって飛行することができるが、これは昆虫の翅をもとに得られたものだ。ただし始動する際は、離陸のために頭頂部から展開される、小型プロペラの助けが必要である。この羽のために、MAVは僅かな風の流れからも脱出することができず、またホバリングすることすらできない。エネルギー貯蔵量による稼働可能時間は10分間であるが、充電する方法もいくつかあり、例えば太陽エネルギー、電気用品やアンドロイドの電場、または、電力線から拝借するといった方法がある。このようなドローンを兵器化する試みはごく一部のみしか成功しておらず、その原因の多くは、武装することにより重量が増すことである。
兵器
眩惑機: 眩惑機は強烈な閃光、また必要に応じて紫外光により敵を眩惑させるエネルギー兵器である。Machina世界では、この種の兵器は光を知覚する生物学的アノマリーに対して使用される。光度をより下げてランダムな明滅パターンを使用することで、短時間の間、光受容器を有する敵対者の脳に過負荷を与えて失神させることができる。眩惑機は長さ90 cm、直径25 cmである。
DIME榴弾: DIME(Dense Inert Metal Explosive / 高密度不活性金属爆薬)榴弾は、破壊作用の範囲が狭い代わりに破壊力が非常に強力な榴弾である。直撃した場合ほとんどの生体にとって致命的であり、また非軍事用アンドロイドや一部のTCUアンドロイドすら完全に破壊する。
外装甲: 外装甲は電力により可動する外骨格であり、アンドロイドの物理的パフォーマンスを向上させる。TCU向けのモデルはTCU兵器モジュールの取付部があり、小型レールガンの射撃にすら耐えることができる。外装甲を装備した重歩兵ユニットは最大500 kgまでのものを持ち上げることができる。
コイルガン: コイルガンは長さ6 mの筒状の兵器で、戦車砲として使用される。この兵器はコイルを用いて投射体を推進させるもので、砲口速度は4 km/sに達する。財団はかつてRTI製のコーティングの複製に成功し、投射体は、空気との摩擦熱への耐性を得たことにより射出後に発火することがなくなった。
HELW: HELW(High Energy Laser Weapon / 高エネルギーレーザー兵器)はレーザー光線を用いて標的を加熱する兵器だ。この兵器はミサイルや爆弾などの爆発性のデバイスに対して非常に効果的である。効果的に用いることでこれらを起爆することができるからだ。そのため、爆発物処理にも向いている。HEWLはモジュール機構によりTCUに装備させることができる。
誘導弾: 誘導弾は、砲身から発射されるレーザー光線に従って飛翔する長距離投射体であり、またその投射体はレーザー光線とともに弾道を変えることができる。TCUに対しては埋め込まれた電子機器により無効化されるため、このタイプの徹甲弾は存在しない。ただし、それ以外のアンドロイドはこの弾丸の直撃により重大または不可逆な損傷を受ける。
MRW: MRW(Microwave Radiation Weapons / マイクロ波照射兵器)は、コンピュータ制御されたマシンに対して使用されるのがほとんどであるが、生物を標的にして使用されることもある。ハンドガンとTCUにモジュールとして組み込めるものとがある。射程は最大500 mである。
プラズマ砲: プラズマ砲は投射体を音速の数倍まで加速し、投射体を強烈な摩擦熱によりプラズマ化する。プラズマ兵器の射程は最大100 mである。
プラズマレーザー: プラズマレーザーは空気を加熱してプラズマ化し、稲妻を生じさせて標的に直撃させる。この兵器の射程は5 mしかないが、エネルギー源に付属している手袋を用いて発射することができる。
レールガン: レールガンの形状とサイズは様々である。車両に組み込んだり、船舶にしっかりと取り付けたりすることができる。艦砲の砲口速度は最大で9 km/sにもなり、車両に組み込んだ場合で最大2.5 km/sである。車両はレールガンを発射する前に、反動で横転しないよう地面に錨を打つ必要がある。
音響砲: 音響砲は最大音量200 dB、1500 Hzから10000 Hzの音響を発することができる。この音はアンドロイドのマイクに過負荷をかけて機能不全にする。
遠心銃: 携帯型遠心銃は直径15 cmの回転機構を備えており、銃弾はその中で円運動によって加速する。そのため、この兵器は反動を起こさない。理論上、この銃は1分間に最大10,000発を撃つことができるが、回転機構の支持部は交換式で、1つあたり90発までに制限されている。ところが三脚に取付けられたキノコ型遠心銃というものもあり、これは銃弾ベルトを用いて理論上無限に銃弾を受け取ることができる。遠心銃は完全電動式であり、発射時にはかすかな「ブーン」という音がするだけで、「バン!」という音は起こさない。火薬を必要としないので銃口から火花は出ないが、伝統的なマシンガンと同程度の威力がある。射程はおよそ2 kmである。この兵器には多様なモジュールがない。回転機構支持部の交換が困難だからである。
第四帝国
第四帝国の統率者らはナノマシンによって全滅している。第四帝国の非ヒト型アノマリーは残存し、財団が収集したか、敵対団体の手に落ちた。
ラプターテック・インダストリーズ
ラプターテック・インダストリーズは人類が滅亡する前に自らアンドロイドを製造した。このアンドロイドたちの再優先事項は利益の創出であり、これを兵器その他の装置を他の要注意団体に販売することで成し遂げる。アンドロイドたちはクレジットにアクセスできないため、有形資産で支払いを受ける。
魔術師学会
魔術師学会は根絶されているが、西暦2035年にはすでにアストラル層のエネルギーを利用できるデバイスの構築に漕ぎ着けていた。アストラル層とは魔術の基礎となるものだ。そのようなデバイスはアストラル反応器と呼ばれている。財団のアンドロイドには、財団を離れて魔術を使役することでナノマシンとより渡り合えると考える者もいる。そのようなアンドロイドは全て、アンドロイド適応型のアストラル反応器を組み込まれ、魔術を使役できるようになり、それと同時にアノマリーとして財団に追われるようになった。
第25局
第25局はナノマシン出現のはるか昔に解散している。ところが少数のアンドロイドは第25局の理念に賛同し、そのアノマリーを用いて監視・統制ネットワークを構築しようとしている。このネットワークにより、彼らは人類復興後に二度と破滅が起こらないようにしようとしている。
カエクス・カーネリアナ・コレクティブ
ヒトゲノムを持つカエクス・カーネリアナ・コレクティブのメンバーは全滅したものの、その残党は全ての知性あるアノマリーの開放という目的を追い続けている。ただし、普通のアンドロイドでカエクス・カーネリアナ・コレクティブの成員となった者はいない。
ヒト教育開発研究機構(IMBW)
ヒト教育開発研究機構(IMBW / Institut für menschliche Bildung und Weiterentwicklung)はナノマシンに全滅させられているが、そのアノマリーと豊富な知識は失われなかった。アンドロイドたちの中には、アノマリーを用いることで、ヒトが復興した暁にはより欠点のない完璧な存在になれると信じている者がいる。そして、そうしたアンドロイドたちはIMBWやその他の要注意団体のアノマリーを収集して、彼らの言う "人類の進化" に使おうとしている。
人類復興イニシアチブ
人類復興イニシアチブはかつて財団のアンドロイドだった、財団とは異なる方法で人類を復活させようとしている者たちで構成されている。その達成のために、様々な有機体にヒトのような心を与えたり、ヒトに似た存在を創造しようとしている。それらの有機体ないし存在のゲノムはナノマシンの攻撃を受けることがない。その他に、アンドロイドを "ヒト化" するという試み等もなされており、成功度合いはまちまちである。人類復興イニシアチブ内には様々な陣営があり、その原動力はさまざまである。
反ヒト派
反ヒト派(あるいは反ヒト)は、かつて財団アンドロイドであったが、学習過程を通じてプログラムを克服し、あらゆる手段によって人類の復興を妨害しようとするようになった者の集団である。彼らがそうする理由は概して、ヒトが不完全なものであり、かつて罪を犯し、また生命の本質が制御不可能であることである。彼らの中でも特に狂信的な者は、感情をヒトの弱点だと考え、感情を真似て表出する能力を除去までしている。また、反ヒト派は、様々な動物種をモデルにした代替ボディを試している。
アンダーソン・ロボティクス
アンダーソン・ロボティクスは人類絶滅以前からすでにヒトレベルの知性を持つアンドロイドを製造しており、彼らの仕事は今やそれらのアンドロイドに引き継がれている。彼らは未だに自分たちの製品を売ろうとし続けているが、その焦点は自らの存続に当てられている。
壊れた神の教会
壊れた神の教会は、数名を除いて全滅している。それらの者は、すでに、生存可能なレベルまで機械化している。この生存者たちはナノマシンがもたらした緊急事態を「世界浄化」と捉えており、後にアンドロイドたちの洗脳を試みた。ところが、アンドロイドたちが宗教を理解できなかったため、その試みは失敗した。壊れた神の教会の目的は、今や、この惑星の全ての生命を攻撃する程度までナノマシンを変化させることとなっているが、現在まで成功には至っていない。
ASPs:
ASP-073 - "カイン"
ASP-076 - "アベル"
ASP-173 - 彫刻
ASP-128-DE - Die Invasoren
ASP-128-DE-EL - Herabgestürztes Linienschiff
ASP-156-DE-EX - 機械仕掛けの人類学者
Tales:
その他:
SCP-156-DE - 機械仕掛けの人類学者
SCP-296-DE - im Tod erblühen wir
SKP-128 - Die Invasoren
概説:
- ヒトは世界に一人も生き残っていません。ヒト型アノマリーも同様に破壊されており、例外は世界から厳重に隔離されている場合です。非異常のヒトがナノマシンで死ななかったとしても、そのようなヒトや大部分のヒト型アノマリーは飢餓と渇きにより死亡しています。例外はいません……まあ、いてもいいですが、あなたの物語の中で死ななければなりません。
- 広義の国家というものは存在しません。ほぼすべてのアンドロイドが財団製であり、財団に勤務しているからです。ただし、MCUによって承認された、サイト間の運営方針の差異はあります。
- 三重水素水は非常に需要過多であり、アンドロイドたちにとっては良質なワインのようなものです。
- このカノンの世界由来のものによる次元交差は問題なく可能です。ナノマシンは低ヒュームレベルによる量子効果によって破壊されます。
- 固定式AIは、MCUを除き、自分の人格を持たず、通常の状況で人格が発達することもありません。でも通常じゃない状況では……
- 人格を獲得した財団の固定式AI(MCUを除く)は財団によって削除されます。機能が正常に働かないおそれがあるからです。
- 財団は、財団が作成したマシンを全てモニタリングしています。ところがGoIはそうしたモニタリングを妨害する方法を見出しています。
- 財団は、世界中にある世界遺産や重要なインフラを保護することに特別神経を尖らせています。
- アンドロイドたちは、好奇心から時々ヒトの振る舞いや活動を真似ようとします。どれくらい正確に真似られるかは、大きく異なります。
- アンドロイドはヒトの文化を目撃して、挨拶として握手をする、モルモットやハムスターなどをペットとして飼うなど、非合理的なことに混乱することがたまにあります。
- どのアンドロイドにも、識別番号はただ一つだけです。もしも、どのような理由であれ、一体のアンドロイドから二つ以上の番号が読み取れた場合、そのアンドロイドはただちに拘束され、その事案の調査が行われます。
- 識別番号のパターンは、「モデルの名称、次に8桁の無作為な数字」です。
- 財団のアンドロイドたちの最大の目的は人類の復興です。その後何が起きるかについては様々な意見があります。
- ナノマシンを除去することは現状できません。また、ナノマシンは空気中と水中のいたるところに存在しています。ナノマシンの設計図は機密とされており、事前に徹底的にチェックを受けた選ばれたアンドロイドだけだアクセスできます。彼らも身元もまた機密とされます。
- アンドロイドの記憶の削除を行うには、ブラックボックス内にある関連データを書き換えます。
- アンドロイドに対する懲罰は、異動、労働時間増加、一時的な給料削減、そして極端なケースでは、ブラックボックスの破壊がありえます。
- ここで説明していない技術を自由に使用してもかまいません。ただし、そうした技術には現実的な背景がなくてはなりません。
- アンドロイドは固体の食品を摂りません。歯を持たないからです。
- これはメインカノンの宇宙に起こりうる未来の一つです。しかし、特殊な次元間経路(SCP-156-DEを参照)を通じて、他の宇宙と相互作用することもできます。
- このカノンに属する全ての記事には "machina" タグを付与してください。
ASP記事について:
- 肝に銘じてください。全ての作業はマシンが担います。すなわち、取り立てて言うなら、病原体、認識災害、ミームはもはや効果をもたらさず、かつ、このことに基づいた機密分類を受けています。ただし、情報災害は情報災害としての影響を残しています。
- アノマリーに影響を及ぼす異常なマルウェアや技術には特別な対抗策が与えられました。アンドロイドにはそうしたものに対する脆弱性があるからです。金属やプラスチックを操るアノマリーも同様です。
- 忘れないでください。アンドロイドは生物ではありません。したがって、SCPオブジェクトはそれに基づいた反応をします。
- 本質的に危険であっても、解放されたり破壊されたアノマリーはありません。財団は、ヒトの消滅以前にしていたのと同じようにアノマリーに対処します。
- 生きている、あるいは死亡しているヒトに対する効果を元記事から引用しても構いません。
- アンドロイドがASPオブジェクトによって破壊された場合、その残骸は当然、収容室から除去されます。これは既知の事実であり、記事内で言及する必要はありません。
- メインリストに関係のない、完全にオリジナルのASPオブジェクトを書くことは全く問題ありません。ただし、あなたがある番号をつかうことで、その番号のもとの持ち主はExplainedまたはEliminatedオブジェクトであることになり、その番号を使えなくなることに留意してください。
- ASPオブジェクトは、掲載前に
Dr Oreの承認を受けなくてはなりません。
- ASPオブジェクトは、"asp" タグを付与してください。
Eliminatedクラス:
- Eliminated(除去された、撤廃された)クラスのオブジェクトは、ASP指定番号の最後に接尾辞-ELを付与します。
- EliminatedクラスのASPは単に無力化されたのではなく、保安対策が必要なくなるほどに破壊されデータベースから削除されています。
- そのオブジェクトがどのようにして除去されたかは、そのオブジェクトが異常なものではなくなっている限り、重要ではありません。
質問はDr OreにPMかDiscordのメッセージを送ってください。ただし、前者の方法の場合、回答に最大5日かかることに留意してください。