メリー・クリスマス

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クリスマスイブのその日、ジョージ君はある秘密を知りました。

その晩、パパとママはいつも通り、彼のおでこにキスをして、おやすみなさいと言いました。でも、ジョージ君は一向に眠ろうとしません。ジョージ君は、サンタクロースがいったいどんな姿をしているのか、しきりに見たがっていたのです。

ジョージ君の身体はベッドに横たわっています。しかし、彼の小さな目は不真面目に、キラリと光っていました。 ジョージ君はこっそり薄目を開け、サンタさんを捕まえるべく待ち構えました。

どのくらい経ったのでしょう。ジョージ君はおぼろげに、玄関ドアが開いたり閉じたりする音を耳にしました。 しばらくすると、煙突の中でガサゴソと音がしたように感じました。一瞬の動きも逃すまいと、ジョージ君はいっそう耳を澄ましました。

やがて、2組の足音が、彼の小部屋へと向かってきました。

カチャリ──

ドアが開きます。

ジョージ君は慌てて右目を閉じますが、左目は糸のように細く開け、誰よりもはっきり捉えようとしました。彼はしてやったりと思いつつ、そおっとドアの方を見やりました。

ちょうどその時、ジョージ君は秘密を知ったのです。

それは、彼のパパとママでした。彼らは部屋の入り口に並んで立っていました。ママの手には、ジョージ君のベッドに掛けられた厚手の靴下に入れるプレゼントが、パパの肩には、ジョージ君が見たこともないような大きな袋が担がれていました。2人とも、赤いモコモコの外套を着込んでいるものですから、何だか太って滑稽に見えました。

ジョージ君は今年、5歳になります。これまで毎年、両親は彼に嘘をついていたのです。

ジョージ君は不意に、怒りを覚えました。ベッドを飛び起きて、2人を叱りつけたくなりました。2人は今までずっと、彼を騙していたのです!どれだけの子どもが、同じように騙されているのでしょう!

ジョージ君が動き出す寸前、両親は手袋をはめた手を一斉に伸ばし、顔に貼ってあるダミーの人皮を剥がしました。 2人の動きは不思議にも、ピタリと連動していました。皮の下から、毛むくじゃらの白いヒゲが飛び出します。それはさながら、好奇心旺盛な2匹のウサギのように見えました。ヒゲの上に、2人の顔が現れます。まったく同じシワシワの肌に、まったく同じ赤ら鼻、子どものような笑顔を浮かべた、同じ老人の顔がそこにはありました。

親に扮していた2つの物体が、ジョージ君のベッドに近づいてきます。ジョージ君はふと、彼らから昔、悪い子の末路について聞かされたことを思い出しました。

彼らは以前、しばしばこのように話していました。なかなか寝ない悪い子は、サンタさんのプレゼントを貰えない。貰えないばかりか……

ジョージのパパとママは、始めから存在しませんでした。すべては、サンタさんの変装だったのです。

ジョージはぎゅっと両眼を瞑りました。息を漏らすことさえ怖くなりました。

サンタの足元で、床板がゆっくりと軋む音だけが聞こえてきます。

いたずら好きの子どもは、サンタさんの空っぽの袋に入れられるといいます。

サンタはどこかのポケットから小さい鈴を取り出すと、お祝いのジングルを鳴らしました。

ベッドに掛けられた靴下が手に取られる音を、ジョージ君は耳にしました。これからプレゼントを入れるのでしょう。彼は想像したくありませんでした。これと同じ手が毎朝、朝食を作ってくれているということを。彼はもう、ほとんど震えを抑えることができなくなっていました。

プレゼントが入る音はしませんでした。サンタの動きが止まります。早く寝ろ、早く寝ろ……心の中でジョージ君は、大声で自分に言い聞かせていました。

おおよそ5分ほど経った頃、サンタは音を出さなくなりました。

この頃、ジョージ君は考えを巡らせていました。サンタはもう、こっそり帰っちゃったのでしょうか。パパとママの皮を着直して、次のクリスマスまでずっと、家族ごっこをやり通すのでしょうか。

ひょっとすると、あれはイブの夜に見た、不可思議な夢だったのかもしれません。

ふいに、ジョージ君は気づきました。自分のちっちゃな耳のそばに張り付く、ぬるく湿った鼻息を。荒々しくしゃがれた声がポツリ、彼の耳元で響きました。

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