SCP-001-JP-J
アイテム番号: SCP-001-JP-J
オブジェクトクラス: Safe Delicious Neutralized
特別収容プロトコル SCP-001-JP-Jは現在サイト-81██カウンセリングルームの戸棚の裏にこっそり隠してあります。 更なるSCP-001-JP-Jを購買部で購入する試みは、購買部の営業時間終了により失敗しました。
SCP-001-JP-Jは現在サイト-81██に進行中のK1クラスシナリオの主原因であると考えられます。よってKクラスシナリオ影響下にあるサイト-8181全職員は、SCP-001-JP-Jを摂取する必要があります。
SCP-001-JP-Jは摂食されました。
説明: SCP-001-JP-Jは██社製のシーフード味インスタント麺です。分解の試みはもったいないことから回避されました。
SCP-001-JP-Jは熱湯を注いで3分ほど待機することで丁度良くなります。10〜20秒程度の誤差であれば、対象の美味しさに影響はありません。この挙動は熱湯を入れていない状態では行われません。
摂食実験の際美味しかったことから2、SCP-001-JP-Jは飯尾博士の個人的な非常食としてサイト-81██のカウンセリングルームの戸棚の裏にこっそり保管されることになりました3しかし、先日発生した緊急度の高いインシデントにより、サイト-81██全体にKクラスシナリオが発生、SCP-001-JP-Jは公のものとなりました4。
サイト-81██に現存するSCP-001-JP-Jは現在12 11 105 9 8 7 6 56 4 3 27 1 ありません。
追記1: SCP-001-JP-Jを摂食することで摂食者はKクラスシナリオの対象外となります。
追記2: SCP-001-JP-Jの摂食者を決定するため、多くの職員が遊戯を持ち込みました。それらの勝者がSCP-001-JP-Jを摂取することが決定しました。
補遺: 実験記録
記録1
とりあえず、思考の整理と勝敗の整理のために記録を取ることにした。ここから色々追記していくつもりだ。
まずは今日(日付変わったから正確には昨日)のことを整理しよう。サイト-81██は過去一で忙しかった。収容違反にオブジェクト引渡し、初期収容やら人事異動。エージェントも機動部隊も研究者も、とにかく忙しかった。飯を食う余裕すらないほどに。
で、ようやく作業がひと段落したのがついさっき、時刻は深夜一時を回ったあたり。そこで俺たちは空腹を思い出して、一斉に購買部に向かった。
閉まってやがった。
開けてもらうことも考えたが、購買部員もサイト管理官も、とにかくその権限があるやつは全員まだ仕事中だった。流石にそいつらに迷惑はかけられない、仕方ないから空腹のまま寝るか、となったわけだ。
だが俺は違え。こんなこともあろうかとカウンセリングルームにカップ麺を置いておいた。みんなが自室に帰って仮眠をとった後にそれを食える。
そう思った矢先に、思い出したように俺の部下である座布田が言うわけだ。『飯尾博士この前カップ麺経費で落としてましたよね?』って。そういえばこいつ購買部に出向してやがった。ただ、それを思い出しても、もう誤魔化せない。みんなの目が獣に変わった。
そっから全員でカウンセリングルームに押しかけた。でも、集まったのは13人。カップ麺は一ダース。一人食えない奴が出てくる。適当な勝負で決めようとなるのは(深夜なら)当然の流れだった。
最初はUNO。まあいいだろう。
記録2
順当に負けた。最終的な手札は20枚くらいあったが、まあ運が悪かっただけだ、仕方ない。小手調べと思おう。2グループに分けて行ったので、カップ麺は残り10。
それに、次は俺が提案した将棋。アマチュア三段の俺が負けるわけがない。さっさとあのスープを飲み干してやる。
記録3
見立てが甘かった。ここは財団、知識人集う場所。なんか見たこともない速攻でハメられて終わった。
カップヌードルは残り9つ。残量が確認できるのは安心できる反面、命綱が少しずつ千切れていくような、終わりが可視化される恐怖も感じる。
記録4
カップヌードルはついに半分、残り6つ。
幾つか策も立てた。結託してのイカサマやカードの積み込みを目論んだりもしたが、どれも飢えた職員たちの目は誤魔化せなかった。『カップ麺を取っておくような抜け目ないやつ』として、序盤からかなり警戒されているのも、理由の一つだろう。
おかしい。俺がこのKクラスシナリオの救世主なんだぞ。分け与えなくてもよかったんだぞ。なんで俺も勝負する流れになってるんだ。ああ、涎を垂らすなんて何年ぶりだ? ゲームコントローラーに垂れたので慌てて拭いた。
記録5
2時間経過。カップ麺、残り2つ。
麻雀も何もかも勝てない。負けまくっていたので、現実逃避のために食堂のメニューを見ていた。その写真からは何も得られず、ただ腹が減るだけだった。美味しいものを思い出した。
スカーレット・チキン。前例が存在しないほどハチャメチャにDeliciousなチキン。知った時は存在意義を疑ったものだが、今考えると、この状況で食ったら美味いだろうなぁ。
暗闇の中にチキンが潜んでいて、ただ俺に食べさせてくれればいいのに。購買部のシャッターは馬鹿みたいに動きを止めている。
記録6
無駄だった。運ゲーで確実に勝つ手段なんてあるわけがない。俺もそれはわかっていた筈だ。ただカウンセリングルームが散らかっただけだった。
いや、それだけではない。俺は取っておいたカップ麺を全て失った。俺は昨日から何も食べていない。ただタスクを消化しただけだった。
俺は全力を尽くし、1人で戦い、そして負けた。それでいいだろう、(腹の)限界だ。俺が悪いんじゃない、あの配牌が悪い。俺のプレイングが悪いんじゃない、乱数が悪い。何も悪くない。嘘、やっぱこいつらが悪い。わざわざ俺の目の前で食い散らかしやがって。
食ったらみんな自室に帰って仮眠を取りだした。空腹で寝れそうにないけど、他にやることもないから、俺も寝る。
俺は負けた。
おやすみ。
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