Shooting Startillery
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ゴーレムが曳く自動人力車は朝日のほとんど入らない狭い路地を進む。早朝であるがゆえに人通りも少なく、路地にはゴーレムの硬質な足音と車輪が路面の凹凸に当たる音だけが響いていた。屋根と窓付きのドアが設けられた自動人力車の車内には2人の人間が乗車している。

「今日の仕事もいつも通りですか?」少女が眠そうな声で口に手を当てつつ話し掛ける。
「そうだよ。君は指定された通りの場所に能力を使う。それだけで良い」警備員の制服を着た男がハッキリとした口調で答える。
「それだけしか求められてないんですね」少女は拗ねるように唇を尖らせた。
「君こそ殆どのものに期待してないじゃないか」男は嫌味に対して苦笑しつつ答える。
「否定しません」少女の声音には諦観が滲んでいた。

自動人力車は酒場の前で停止する。本来ならば乗車距離に応じて料金が請求される──自動人力車がゴーレムタクシーと呼ばれる所以はここにあった──はずなのだが、ゴーレムは降車した少女に料金を請求しない。

「タクシー会社の人力車に偽装した人員輸送ユニットは便利ですね」
「誰もがゴーレムより早く走れるわけじゃないからな。"参謀"殿のおかげで小隊スクワッドの行動範囲は格段に向上した。それじゃ行ってくるよ」

中等教育も終えていない少女は酒場の入り口に吸い込まれ、男を乗せた自動人力車は再び路地を走り始める。

酒場は閑散としており、コップを拭いているバーテンダーと端の方に座るガスマスクを着けたモッズコート姿の人物以外に人影は見えない。扉を開けて少女が入ってきても2人は反応を示さなかった。

「おはようございます。"参謀"殿」少女が気を付けの姿勢で挨拶した。
「おはよう。楽にしていいぞ。"ガンナー"」ガスマスクを着けた人物は顔だけを少女に向ける。

椅子へ座るよう促された少女は素直に従いバーテンダーに水を注文した。頼んでから冷え切った水が出てくるまで5秒と経っていない。

「今回の作戦をおさらいしても?」少女が参謀を見上げる。
「構わん。本作戦の要は君だ」参謀の前に置かれたグラスからは大量の煙が噴き出しており中身を伺うことは出来ない。不定期的に煙はガスマスクの口部へ吸い込まれていく。

「スリー・ポートランド銀行襲撃はもう頭の中に情報を叩きこんであります」
「"スポッター"が何度も声を掛けていたな。あいつが1人に固執するなど珍しい」
「そうなんですか?ガキが足手まといになる事を避けたかっただけとか、そんなことだと思いますけど」
「自己肯定感の欠如は相変わらずだな。気になっているのは、地方局長狙撃の方かね」

少女は頷いてグラスを傾けた。冷えた水が喉を通り抜ける。

「銀行襲撃は活動資金の調達と同業者たちへのアピールって分かりやすい目的があるじゃないですか。でも連邦捜査局の地方局長1人始末して、私たちにどういうリターンがあるのかイマイチ分からないんです」
「そう思われても仕方あるまい。これはまだ"ヘッド"と私、それにモグラしか知り得ない情報を元に立案されたからな。UIUスリー・ポートランド地方局長はスクワッド狩りの準備を進めている」
「それ、私が聞いちゃって大丈夫なんですか?」

組織ファミリーの上層部と連邦捜査局に送り込まれたスパイのみが知る情報を与えられ、少女は分かりやすく驚いた顔を見せた。

「安心してくれ。時期が多少前後したに過ぎない」
「なら良かったです」
「思考盗聴器によって得られた情報は地方局長がまだ計画を水面下でしか進めていないと示していた。特に重要な情報は誰にも話していないようだ。計画の全貌を掴むには至らなかったが、プランが奴の脳内にしか無いならやり様はある」

参謀は話を区切ると酒場内の時計に顔を向ける。

「作戦開始まで少し時間がある。必要な物は上の部屋に置いてあるから暫く休んでいたらどうだ?」

「お気遣いありがとうございます、"参謀"殿」

水を飲み終えた少女が階段を昇っていく。その背中が見えなくなるまでガスマスクの人物は表情の分からない顔を少女に向けていた。


スリー・ポートランド銀行は強盗を仕掛けるのに向いていない。いかなる類の自動車もこの町では逮捕の口実となり、これはたんまり袋に詰めた金品、債券、株式、スパイス、魔法を徒歩で持ち帰る必要があるという事を示していた。もう一つの理由として強固な超常的防衛システムの存在がある。資格無き者に対して無限の長さを提供する通路に、扉の前で問答を仕掛ける重装備のスフィンクス・ゴーレム、現実改変すら無効化する希少な金属を贅沢に使った60センチの重厚な扉、超音速のミサイルすら迎撃可能な防空システム。脱出不可能と謳われるユーテック銀行に劣りこそすれ並大抵の犯罪者が手を出せるような代物では無かった。

スリー・ポートランド銀行、その金庫室の真上に位置する第2警備員室では休憩時間を持て余した暇人が集まってポーカーを繰り広げている。

「レイズ」顔は平静を装いつつ息を荒げた様子で背の高い男は掛け金を上乗せする。
「……フォール」今日はもう切り上げよう、手札を伏せるくたびれた男の顔は口より雄弁に心境を語っていた。
「コール」面白くも無ければつまらなくも無いといった顔で手札を眺めながら若い女はチップを乗せる。

4人目の参加者が手札を眺めて難しい顔をしていると部屋に『きらきら星』のジャズアレンジが流れ始めた。

「すみません。すぐ戻ります」4人目は制服のポケットから携帯を取り出し、部屋の外へ駆け足で向かっていく。その背中を眺めて先ほど降りた男がため息を吐いた。

「あの新入り、またかよ。今日で3回目だぞ」指でテーブルを何度かつつく。
「うるさい彼女でもいるんだろ。前に聞こえた相手の声は女だったし」少し落ち着いたのだろうか、背の高い男が思案顔で答える。
「どうでもいい」若い女は露骨に顔をしかめて吐き捨てるように言い放った。沈黙がその場を支配する。

スリー・ポートランド銀行の屋上には緑色の球体が存在する。より正確には銀行の防空システムの要であるレーダーサイトを覆うように球状の奇跡論的フィールドが存在し、可視化されたアスペクト放射が緑色に見えるというだけだ。清掃員の雇用条件として補助なしでアスペクト放射を目視可能と付けるより、アスペクト放射を可視化するよう術式を改変する方が経済的だと銀行の経営陣は考えたらしい。

屋上の扉から現れた警備員姿の男は携帯をポケットにしまうとメリケンサックを装着し、人差し指に噛みついた。拳に付けられた金属の輪は指から流れ出た装着者の血液に含まれる遺伝情報を読み取り、奇跡術的変換によって右腕を覆う銀色のガントレットへと変貌する。男は感触を確かめるように何度か手を握って開いた。

警備員姿の男は駆け出してレーダーサイトを中心とした魔法陣の一角を構成する台座を殴打した。見た目からは想像の出来ない質量を持つガントレットと超常的肉体改造によって強化された筋力から繰り出される打撃は石製の台座を容易に粉砕する。レーダーサイトを覆っていたフィールドが消滅すると同時に、未知の脅威を感知した防衛システムが起動した。それは男の前に2体の旧式警備ゴーレムという形で現れる。男が驚愕の表情を示すと同時にゴーレムの肩に取り付けられた多連装機関砲が緑色の糸を吐き出した。男は素早く飛び退くとレーダーサイトを盾にするような形で着地する。触れた者を拘束する糸の雨が停止し、2体のゴーレムは男を挟み込むような形で移動する。

先に顔を出した片方のゴーレムの股下をくぐるようにスライディングした男は飛び上がって背中へと張り付いた。後から顔を出したゴーレムの機関砲が糸を放つ。味方からの攻撃にさらされたゴーレムは緑色の糸に覆われ動きを止めた。機関砲が動作を止め、ゴーレムが味方の元へ近づくと緑の糸に覆われた石製の胴体を突き破るように男が飛び出してきた。機関砲が動き始める前に、男は無傷のゴーレムの胴体へ右腕を突っ込み引き抜く。引き抜かれた腕には青色の光を放つ羊皮紙が握られており、そこには警備ゴーレムを動かすための術式が刻まれていた。男が羊皮紙を握りつぶすとプログラムを失ったゴーレムは機能停止した。男は床に降り立ち、レーダーサイトを右腕で思い切り殴りつけた。科学と魔法の精密な組み合わせで空の守りを担っていたレーダーサイトは屑鉄の塊へと姿を変え、行き場を失ったEVEの奔流によってガントレットが粉々に粉砕される。

男は屋上のある一点を見つめると、ポケットから携帯を取り出し耳に当てた。

「"ガンナー"へ、こちらの準備は終わったよ。座標は──」彼は電話越しの相手にアルファベットと数字を告げた。

警備員室の雰囲気が限度を超えて重苦しくなり、背の高い男が口を開こうとした瞬間、トランシーバーから連絡が入る。

「なに?レーダーの反応が消えた?」困惑した顔で背の高い男は第1警備員室からの連絡に対応している。
「そろそろ交換時期なんですかねえ」くたびれた様子の男は女に視線を送る。
「経年劣化のはずがない。防空システムの導入は去年からだ。何か嫌な感じがする」女は立ち上がって警備員室の外へ歩き出そうとした。

3人にはそれぞれの人生があり、未来があった。生活があり趣味があり仕事があった。思想があったり無かったりした。そんな色とりどりの三者三様な人生は、警備員室の天井を突き破り床にめり込んで爆発した巨大な岩石によって終わりを告げ、意思を失った肉片がそこら中に撒き散らされる。

「良くやったね。"ガンナー"」警備員姿の男は屋上から金庫室まで続く穴を見下ろしながら電話越しの相手へ称賛を送る。


スリー・ポートランド・プラザホテルの最上階に位置するスイートルームでナイトガウン姿の男がテレビを眺めている。それは今朝発生したスリー・ポートランド銀行襲撃事件に関する報道であり、現場から凄まじい俊足で逃走した犯人を取り逃した事実を連邦捜査局異常事件課UIUの怠慢として名指しで批判していた。男はため息を吐いてテレビの電源を落とし窓際の椅子に腰掛ける。

「とうとう動き出したか……」男は数枚の書類を眺めてから額に指を当てて考え込むような仕草をする。彼は以前に行われたUIU上層部の極秘会議にスリー・ポートランド地方局長として出席していた。会議には様々なUIU地方局のトップが集められ、これほどの面子を揃えるに相応しい出来事を想像して誰もが口を閉ざしていた。全員の出席確認を終えると勲章付き制服を着た年配の男がテーブルの遠端から声を発する。

「今日は皆よく集まってくれた。さっそくで悪いが本題に入らせてもらう。シカゴ・スピリットの亡霊たちが息を吹き返し"我こそはチャペルの正統後継者なり"と息巻いている。奴らはこちらの都合など無視して大っぴらに活動を再開するだろう。各自十分に警戒し捜査員にも凶悪な超常犯罪者との遭遇を警告せよ。詳細は各地方局に送付したネオ・スピリットの資料を参照してくれ。以上だ」
(どうせ時代遅れの死にぞこないギャングども。ヴェール崩壊によって捜査権限の拡大したUIUにとって大した脅威ではない)ハッキリ言って、当時の彼はスピリットの残党たちを軽く見ていた。

実際のところ数多の新装備や超常科学捜査の制限撤廃によりUIUの捜査能力は以前と比べ物にならないほど向上しており、仮にシカゴ・スピリットの後継組織が活動を始めたところで迅速に鎮圧出来るというのが当時のUIU各地方局長の間では一般的な意見だった。その自信は世界各地で名を上げたネオ・スピリット関連組織の超常犯罪によってUIUが多大な被害を受けた事実により崩れ去る。幸いにもスリー・ポートランドではネオ・スピリット関連組織が声を上げてこそいなかったが、都市の規模から組織が存在しないという楽観的な考えを抱くことは出来なかった。他の都市で引き起こされた凶悪な超常犯罪の資料に目を通したUIUスリー・ポートランド地方局長は、組織が活動を始める前に対策を立案・実行しようと考えた。しかしながら計画の事前準備が完了した段階で鉄壁を誇るスリー・ポートランド銀行が白昼堂々襲撃されてしまう。

男が意気消沈した表情で眼下に広がる街並みを眺めていると視界に動くモノが入る。彼がそちらへ目を向ければ向かい側のホテルから窓越しに手を振っている少女がいた。男にとっては見覚えの無い顔だが、テレビ番組への出演機会があった彼の顔を市民が知っていても不思議ではない。男は愛想よく微笑んで少女に手を振り返しつつこれからの事を考えていた。(明日にでも記者会見を開き、UIUがネオ・スピリット関連組織への対抗手段を用意していた事を公表しなければならない。スパイ対策の為に伏せていた重要事項も各部署の職員に伝達しよう)

ネオ・スピリット関連の資料を頭に叩き込んでいたこの男が指揮を執れば対策は速やかに実行されていただろう。しかしそうはならなかった。平和と安寧の未来を不都合に感じる者達がいる。その者達に不都合をもたらす人間はいつだって表舞台から消えていった。そのルールは現在も有効であり、正義の炎は宙より飛来した小石に荒々しく消し飛ばされる。

男の視界にチカチカと輝く光が映り込む。光の元を辿るように目を凝らせば、光源は男の客室から丁度向かい側に位置するホテルで手を振る少女の左目であった。不自然なほど長時間振られている腕と瞳に輝く光を見た男は本能がけたたましく警鐘を鳴らしていることに気付く。彼が椅子から腰を浮かすのと同時に少女の瞳がひと際強い輝きを放った。

翌朝ベッドシーツの取り換えに来た従業員が見つけたのは、砕け散って床に広がったガラスの破片と、カーペットの小さな焦げ跡、椅子の背もたれに脳漿をまき散らしてピクリとも動かないUIUスリー・ポートランド地方局長の物言わぬ死体だった。


ホテルからチェックアウトした少女の前に自動人力車が停車する。ゆっくりと下がったウィンドウを覗き込んだ彼女は嬉しそうに顔を歪ませ素早く飛び乗った。扉が勢いよく閉じられ、自動人力車が目的地に向かって再び走り出す。

「疲れは取れたかい?"ガンナー"」筋肉質な男が語り掛ける。その声音は外見と不釣り合いに穏和なもので、まるでエレキギターがハープの真似事をしているかのようなある種の滑稽さを醸し出していた。
「すっかり取れました。ありがとう。"スポッター"」笑顔を浮かべて少女は言葉を返した。彼女の言葉、声音に不安や怯えは見えない。

2人を乗せて走る自動人力車へ通行人たちは煙たげな視線を送っている。なぜならスリー・ポートランドは歩行者の町であり、いかなる類の自動車も禁止されているからだ。例外は自動人力車と路面電車だけ。合法である事と一般に受け入れられている事はイコールの関係に無く、実力行使とはいかずとも不快感を隠そうともしない人々はそれなりにいた。

「それは良かった。もうすぐ次の仕事だから情報を共有するね」不釣り合いな雰囲気を崩さないまま、スポッターと呼ばれた男は食い気味に言葉を繋げる。そのやり方は、暗に反論の余地はないと告げているようなものだ。
「私の仕事は一区切りついたと思うんですけど」ガンナーと呼ばれた少女は驚愕と不満の入り混じった声音で疑問を言い放つ。
「急に上からの指示があってね。申し訳ない」優しげな口調でスポッターが謝罪を口にする。普段の彼を知っている者が聞けば大層驚くか頭を打ったかと心配するかもしれない。
「ああ、そうですか。分かりました。別に良いですよ」ガンナーはあっけらかんとした声音で言葉を紡いでいるが、その内容は諦観に満ちている。

スポッターからガンナーに伝えられた仕事内容はそれほど難しいものではなく、打ち合わせが終わっても次の仕事場に着くまでまだまだ時間的余裕があった。

「そういえば君はどうしてスクワッドに参加したのかな。まだ若いのに」
「聞いたところでつまんないと思います。若いACがアウトローに落ちる典型的なアレですから」
「あー能力を怖がられて孤立したとかそんな感じ?」
「そうそう。そんな感じ」

暫くの間どちらも口を閉ざし、車内に何とも言えない沈黙が漂う。

「俺はね」
「ターン性?」
「あっごめん。聞きたくなかったかな」
「良いですよ。別に、面白い話は期待していません」

少女の辛辣な物言いに苦笑しつつ、男は改めて口を開いた。

「人類の守護者気取りどもに一泡吹かせたい」
「へえ。何があったんですか?」
「……少し長くなるよ」少女が興味を示したことに気付いたのか男の顔は綻んでいた。
「良いですよ。まだ時間が掛かりそうですから」
「分かった。むかし、妹みたいに思ってた年下の幼馴染がいたんだ。その子は楽器とか手を使わずに色んな音楽を奏でられた──」

1998年、ポーランドに降臨した神格存在はショパンの顔を持ち不可思議な音色を響かせたという。正常性維持機関の情報統制も完全ではなく、漏れ出た情報を根拠とする誤った認識が一般大衆に広まった時期がある。ヴェール崩壊初期に超常能力者は苛烈な迫害に晒され、特に音楽と関係する異常性を持つ者への仕打ちは中世の魔女狩りを彷彿とさせるものであったと後世に伝えられている。

2人を乗せた自動人力車は大勢の通行人で賑わう大通りから、日の沈む前でも暗い路地裏の細い道へ入っていった。


その日にやるべき仕事を全て終え、2人は暗くなった空を見上げながら寝床を目指して歩いていた。道のあちこちではスリー・ポートランドに不慣れな観光客たちを相手にがめつい業者が怪しげな商売を繰り広げている。

「何処か行きたいところはある?」スリー・ポートランドの熱狂的ファンのために開発された巨大な"スリー・ポートランド・マスク"を付け、顔面に町の推しスポットを表示しながらスポッターは語り掛ける。
「特にないかな」ガンナーはスリー・ポートランド内外で極一般的に普及している使い捨てマスクを着けていた。
「そっか」マスクで顔を伺うことは出来ないものの、声音に残念さが滲み出ていた。

スポッターは顔面から町の推しスポットとその理由を説明する機械音声を垂れ流しながら無言で歩いている。

「ねえ。何かしてほしい事ってあります?」
「え、良いの?」
「まあ、良いですよ。だけど大した事出来ないから、あんま期待しないで下さいね」

スポッターはマスクの電源を切る。光と音が止まると辺りには遠くで響く話し声を除いて静けさに包まれた。

「流れ星が見たいかな」
「えっ……あ、うん。わかった。流れ星ですね!えっと、ちょっと待ってて……すぐに、すぐに出来るから!」

余りにも露骨な態度の変化に気付かないほど鈍感なスポッターでは無い。

「大丈夫だから落ち着いて。出来なくても良いんだよ」
「……ありがとう、ございます。あの私、着弾点は指定できるけど軌道自体は弄れないから、その」
「なるほどね、分かった。教えてくれてありがとう」

暫くゆっくりと歩いていた2人だったが、スポッターが突然立ち止まる。ガンナーは振り向いて彼に問いかけた。「どうかしたんですか?もしかして……」青褪めたガンナーにスポッターが駆け寄り耳打ちする。それを聞いたガンナーは顔色を回復させると共に困惑した表情を浮かべた。ガンナーは納得のいかない顔で空を見上げたままスポッターの指定した座標に能力を発動させる。

ガンナーの右目に夜空を駆ける一筋の光が煌めいた。それは彼女が生まれて初めて見る、自分の力で生み出した流れ星であった。

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