ミスター・パーカー。
そんなに驚かないで、いつかはこの日が来ると分かっていたでしょう。ルームメイトの方が親切にも通してくれました。彼らは席を外していますから、どうか座って。
あなたが正しいジャクソン・パーカーかどうか確認させていただきます。
55歳。デトロイトの中心地生まれ。ベトナムでの複数回の勤務。警官殺しで死刑判決。処刑日は1979年5月19日。今はニューヨーク市の最上級のビストロでプロのウェイター。そして…誰かにアーニー・ハドソンに似てると言われたことは?あの黒人のゴーストバスターですよ。あと2週間ぐらいで新作が出るせいかもしれませんね。まあ忘れてください。
あなたにあって他の人が持たないのは、揺るぎなき信仰心です。あなたはすべては理由があって起きると思っている。他の人には滅多に真似できないやり方で。
終了を免れたまれなDクラスの一人だったなら、私もあなたと同じように思ったでしょう。本当に、あなたは自らの力でこのささやかな暮らしを築き上げましたね。
あの……イベントの後の映像と写真を見ました。あなたがあそこで起きたことについて完全な説明を受けたかどうかは存じません。我々の見地によれば、あなたが処分した生物は見る者の信念に反応します。我々のスタッフの1人が、それが全人類を殺すと思ってしまったのでしょう。そして彼がそう考えてしまったので、それはそうしたと。
もちろん、あなたと対面するまでのことです。
あなたの退職時調査からもう時間が経ってしまっているので、少し思い出していただきたいと思います。あなたが言った、"信念をよりどころにする"ことが関係しているという言い方。あの血塗れの怪異に直面して、あなたは揺るぐことのない生への信念を見せた。そしてあなたがそう考えたので、それは真実になった。
聞いてください……あなたに対しては同情いたします。
我々は非常に冷淡でした。ああ、ほとんど愚行と呼んでもいいほどに。
同じ部屋で瞬きしたら、あなたを殺すものがあるかもしれません―ないかもしれません。我々が知る限りでは、この物体は部屋中に排泄もします。ほとんど毎回、我々が清掃のためにスタッフを遣ると―ポキリ!人生の終わりです、丁度こんな具合に。数年前に、ようやく清掃作業が可能なロボットを生産できました。部屋から生きて出ることの叶わなかった人々のことを思えば、慙愧の念に堪えません、我々が彼らを人間と思わなかったばかりに。ただの文字と数字として。
しかし我々があなたを必要とすることに関しては、機械で代替はできません。このことについて最近ずっと考えていました……人間の心臓には目を瞠るべきところがあると。そう思いませんか?どんなにあなたが人生をあきらめていようが、どんなに拒もうが、心臓は鼓動を続けますね。それ以外のやり方を知らないのです。鼓動し続けます、"イエス-イエス、イエス-イエス"とね。ここまで己の仕事をやり抜く決心は天晴れなことではないでしょうか。
そしてあなたです、ミスター・パーカー。私が理由あってここにいるのを御存じでしょう。そして、あなたは沢山の命を救うことになるとお分かりだと思います。あなたが我々のために―私のために―働いてくれるなら、残りの日々に我々の全力でもってあなたの要望をすべてかなえましょう。
これが何を意味しているか、御理解いただけると思います。
準備ができたら教えてください、D-14134。