メモ: エレベーターの怪人
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別称: 下りエレベーターのピエロ

脅威: 現在のところ、小。

概要: 2000年代後半に広まった都市伝説。降下中のエレベーターの窓からピエロが奇行を行っているのが見えるというもの。

怪人の外見はピエロという以外はまちまち。
↑だいたいは赤髪。最初がそうだったから?

いきなりピエロが現れるだけでも普通に不気味だがこちらを更に脅かしてくる。よくある例としてはエレベータードアに張り付きガンガン叩いてくるというもの。
↑具体例は後述の目撃例メモ参照。


目的: 不明。人を怖がらせる愉快犯であるとしていいと思う。

注目点: 怪人と目撃者は壁を隔てて接することはない。

  • 必ず窓越し。
  • よって目撃者が物理的な危害を加えられることはない。
  • エレベーターの途中階にしか出ない。エレベーターが開く階にはいない。
  • エレベーターを降りてから怪人がいた階に戻ってももういない。
  • 監視カメラには基本的に映らない。

   ↑ただしエレベーターの監視カメラからは映ったことも
   ↑ガラス越しではないといけないのか

下りエレベーターだけ。上りではない。
下から出てきたおかしなピエロを上へと見送っていく。
→逃げ場のない密室。1階で怪人がいるのではと怯える。


懸念: 実際のところ、エレベーターでなくても発生する。
↑「発生するようになってしまった」が正しいか。

エレベーターに近似、あるいはその拡張といえる動作であれば怪人が姿を現すことがある。

具体的な出現条件は今のところ以下を考えている。



目撃者視点で鉛直上方向に移動する空間群が眼前にあり、目撃者と空間群とは透明な板で隔てられている。


解説: 上記推論を説明する。

「空間」とは要するに建物のひと階。5階からエレベーターに乗っていて、4階、3階、2階が目の前を通り過ぎる。そういうことを言いたい。
↑3次元空間に生きている我々だから空間と書いたが映るのが平面でも出てきそう

「群」である必要は今のところありそう。1フロアだけの移動では怪人は現れない。空間群という言葉が正しいか定かではないが、要するに四角い窓で切り取られた光景、世界がパッパッパッパと切り替わっていく感じ。


最初は「鉛直下方向に移動する目撃者」にしていた。エレベーターとはそういうものだから。
けど目撃者が動かず、見える風景の方が動く場合でも怪人がでるパターンが出てきたのでこの表現に変えた。
↑怪人のルールが拡張される例。本当に厄介。


経緯: 詳細は以下の目撃例メモに記載。

少々分量があるので軽く流し読み程度でもいい。

















発生初期: 最初は2008年。神奈川県湘南地区で十数例ほど発生。目撃者の一人がネットの匿名掲示板に書き込んだことで都市伝説として流布。
↑流布といってもかなりマイナー。当時掲示板にいた人間なら知ってるくらい。
↑八尺様とかの方がよっぽど有名。

湘南地区での目撃は2008年中には収まる。しかし別の場所で何件か目撃例。
↑初期のピエロとは違う姿。
↑空中浮遊など科学では説明できない挙動も。
 →創作の可能性が高い

財団も調査していた模様。結果として異常性なしと判断。
↑実例として乏しくネットの噂話程度で収まっていたため
↑初期の目撃例は小規模なグループが悪戯で行っていたと推察された
 ↑正解


ドラマ放映: 2018年10月頭、テレビ番組「噂のコワ~イ話」でエレベーターの怪人が取り上げられる。
↑再現ドラマ形式の怪談番組


あらすじ: 主人公は社会人の独身男性。ある日エレベーターに乗ると怪人ピエロに遭遇する。それから何度も遭遇し、周囲の人間に相談するも相手にしてもらえない。次第に精神を病んでいきエレベーターに恐怖を覚えるようになる。とうとうエレベーターに乗るのが嫌になって飛び降りると、ビルの中にいた怪人が窓越しにこちらを指さして笑っていた。


主演俳優の精神を病んでいく演技が鬼気迫るものとして大評判。
↑主演は特撮畑出身イケメン俳優。ヒーローの時には見せなかった弱っていく様子に「守ってあげたい」「もっと苦しんでほしい」と女性層による支持が増えたとか。

怪人ピエロの演出も好評。人外じみた挙動が関わってはならない存在として滲み出ていた。
↑特に中盤、今回はいないと安心している主人公をよそにひょっこり顔を出すシーンは、SNSに上げられた切り抜きがトラウマシーンとしてバズる。
↑オチの主人公をあざ笑うシーンも狂気的で一見の価値あり。
↑演じた俳優は明かされておらず、一説ではベテラン俳優のS氏とも。

このドラマのせいで「エレベーターの怪人」の知名度が大きく上がる。過去のネットの都市伝説が掘り起こされて広まる。
↑余計なことをしてくれたものだがドラマは紛うことなき傑作であった。


問題点: 飛び降りでも怪人が発生しうるというエピソードが共有されてしまった。
↑これまではエレベーターだけ。

飛び降りも降下しながら窓を覗くという点では同じ。
↑怪人出現ルールの拡張



放映後:

その年のハロウィーンイベントでドラマに出てくる怪人の仮装をする人多数。
↑ドラマ放送が10月頭、ハロウィーンはちょうど話題になった時期。
↑話題性に加え怪人はピエロの恰好なので既存のパーティーグッズで簡単に真似ができる手軽さも追い風か

ハロウィーンの高揚で実際にエレベーターで人を脅かす馬鹿が出現。
↑こういう事件を見ると「目撃者に危害を加えない」という設定があってよかった
↑住居不法侵入などで逮捕者が出た報道もあり、さらに怪人の知名度上がる
↑「ひとりでエレベーターにのらないようにしましょう」というお触れが出た小学校もあったとかないとか
↑逮捕報道を受けて馬鹿の模倣は収まりはした


現状: たびたび目撃例が匿名掲示板やSNSで報告されている。
↑人の噂も七十五日とはいかなかった

明らかに人間には不可能な挙動が多い。
目撃者の創作では片づけられない点も多い。


実際に怪異として顕現してしまっている。


自然発生的な怪異か、何者かの能力によって創り出された怪異なのかは不明。
↑広く世間に認知された怪異は現実に姿を持って現れることがある。
↑財団の土橋博士は怪異の発生を現実改変で説明したようだが、ここまで日本中に広まってれば現実性希薄領域でなくとも発生しうる

現状は危害を及ぼさない怪異であるからネットの噂話程度
→出現ルールは変わっていっている (エレベーターだけ→飛び降りも)
→いつ異常性が拡張して被害がでるかわからない  危険


再確認:
初期の出現条件
⇒エレベーターに目撃者が乗っている。

現在の出現条件 (推測)
⇒目撃者視点で鉛直上方向に移動する空間群が眼前にあり、目撃者と空間群とは透明な板で隔てられている。

↑明らかに条件が緩和されている。
↑今後また上記条件に当てはまらない出現が起こる可能性あり。確認でき次第ルールを書き換える必要。
↑ないことを祈る


原因: 初期のピエロに扮した悪戯がすべての根源である。馬鹿どもの他愛もない悪戯であったのだろうが、それが拡散し、日本中に広まり、こうして怪異にまで成長した。










そして、その馬鹿は私だ。


まだ私がNobodyでもない本当に何者でもなかった頃の話だ。若気の至りという陳腐な言葉がまさしく適切だろう。当時悪ガキ仲間でつるんでいた一人がつぶれた雑貨屋からピエロの仮装セットをもらってきた。ぶかぶかのジャンプスーツにラバー製の赤いピエロの被り物。これで人をビビらせに行こうと誰かが言った。

いきなり路上で驚かすには反撃されたり追いかけられて捕まったりする可能性もある (好き勝手やっていたくせにそういうところは恐れていた)。ならエレベーターに乗ってくるやつを脅かせばいいと私が提案した。マンションのエレベーターは基本的に1Fと居住フロアの往復だ。下がるエレベーターが途中で開くことはなく、こちらに向かってくることはできない。ピエロの仮装は簡単に脱ぎ着できるものだったし、紙袋1つに収まった。エレベーターを降りて追いかけようとしてもピエロはいない。さらに悪戯を仕掛けるエレベーターは仲間が住んでいるマンションで行っていた。つまり脅かしてすぐに仲間の家に逃げ込むという安心安全な計略だった。

本当に馬鹿であった。若さは馬鹿さだと誰かが言っていたがその通りだ。あのころの私たちはネットで噂になってることに無邪気にはしゃいでいた。まさかここまでの怪異が生み出されるなんて誰一人予想していなかった。


計画: エレベーターの怪人を産み出したのはこの私だ。私はその責任を取らなくてはならない。変容していく怪異がこれ以上力をつける前に奴を仕留めなくてはならない。怪異を創り出すことができたなら、怪異を消し去ることもできるはずだ。

正直ここまで広まった都市伝説に対して対処できるのか自信はない。それでも私は奴の息の根を止めるためにできることがあるなら、それをせずにはいられない。

何者でもない私でも、何かできることはある。









































このメモは前のメモを書いたNobodyとは別のNobodyが書いている。前のメモの持ち主がどうなったかは知らないが、おそらく関係性のある新聞記事を見つけたので添付しておく。



2019年6月12日

エレベーターの怪人死亡…自殺か 


11日午後5時10分頃、神奈川県藤沢市藤沢の路上で、身元不明男性が死亡しているのが発見された。男性は直前に隣接する7階建てマンションの5階で目撃されており、飛び降りた可能性が高いとみて神奈川県警は詳しい状況や身元などを調べている。

男性はピエロのラバーマスクとつなぎ状の衣服を身に着けており、「エレベーターの怪人」を模した格好をしていたという。警察に通報したマンション在住の女性 (31) は、マンションのエレベーターから1Fに下りる途中、5Fで男性が階段から身を乗り出しているのを見たと語っている。周辺に設置されていた監視カメラには男性の姿は確認されておらず、マンションに現れた方法やマンションで自殺を図った動機についても調査が進められている。

なお、このマンションでは12年前にも「エレベーターの怪人」が目撃されており、本物の「エレベーターの怪人」ではないかと地域住民から噂されている。









あなたの献身が怪人を何者でもなくしてくれることを願って。

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