メモ: どこでもない海
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気が付いたならおそらくはじめまして。

ようこそ私の船へ。歓迎しよう。

君の疑問に先回りして答えておきたいが、申し訳ない。

おそらく、君を納得させうる答えは提示できないだろう。

私は何者でもなく、この海も、船も、具体的に形容できる座標に位置しているものではない。

ある種の夢だと思って、多少の理不尽は飲み込んでほしい。

甲板に出て確認するといい。君は船上にいて足元は海、頭上にはただ広がる闇。

それがこの世界を構成するすべてであり、君が囚われた人々の意識が作り出す海だ。

君はその海に引きずり込まれ、意識の果てに向かう海流に飲まれたのだ。

今もし酩酊感があるとすれば、それは船酔いではなく君が流されていた潮の性質に由来するものだ。

嫌な気分だろうが、それにすら慣れる頃君はあらゆる意識活動の果てにある街に流れ着く。

薄々感じているだろうが、この潮に流され続ければ君は消え去ることになる。

君ならわかるだろう。何者でもないまま忘れ去られ、見向きもされないまま死に絶えるということが。

この海はそういう海で、この船は眼下の海に流れ着く――私や、君のような――何者でもない者を拾い上げる船だ。

私は君たちの味方――――というよりは、仲間だ。

私も君たちと同じく、何者でもないまま死にゆくことに抗うものだ。

そんな私から君たちへと、選択肢を提示する。

もし君がこの海を出たいと思うなら、星を見つけろ。

航海に必要な君を導く星を見つければ、君はこの海を抜け出せる。

星など見えようもない暗夜にそれでも星を探し出す意思は闇すら穿つ。

君の胸の中に吹く風を感じたなら、このメモと一緒に置いてある望遠鏡を覗き込め。

ただしここを出たとしても気をつけろ。

この黒い酩酊は君たちのすぐ足元で口を開けて待っている。

空を睨むことをやめた時が、我々の終わりだ。

抗って走り続けろ。

大丈夫、ここから出ていける思いがあるなら君はどこへでも行ける。

何かを目指し続けることに疲れたというのなら、それもいいだろう。

この海の潮が流れ着く先はある意味において優しいものだ。

穏やかな海のような安らぎが君にあるよう祈る。

選択は君に委ねられている。

どこでもない海


別称: ドランケン・コレクティブ(の入り口)、忘却の潮流、形而の海


概要: 酩酊の街へ流れつく、無意識と忘却との境界。

海の形をとっているだけで、実体は無い。イメージの海。

酩酊の街と同じように空は見えない(おそらくあの街の末端)。

私と似たような境遇、ないし近しい要素の持ち主が多く漂着する。

● 強い酒、特にアブサンを摂るとまれに意図せず入り込んでしまう。注意。

● その性質上物理的には存在せず、意図して訪れること、もしくは帰還することは難しい。

 (現時点で私と船のゲスト以外に実現できた例を知らない)

● 私はここに出入りすることができる。

 (何者でもなく、どこにでもいるようなものだからと推測)

● 船を造った。海そのものと同じように、形而上のもの。船の名前はスターゲイザー。

 利用した知識: 空間芸術、フロー、夢占い、ミーム

● 船が漂流者をサルベージするように設定。

 望遠鏡と星図盤、ゲスト(漂流者)用のメモを船室に置いた。

● このメモとここに記された船の知識がアンカーになり、出入りするための鍵になる。

 保管と引継の方法については一考の余地あり。

 (懸念: 他のメモと同じで大丈夫だろうか)





脅威: 未知数。(暫定: 大)

私のようなものにとって最も恐れるべき概念の末端。同時に利用価値も未知数。

少なくとも、超常のものを操る知識があれば船を浮かべる程度はできる。


活用: 船及びそこに備え付けたものを利用する。極力海には落ちないように。

● 忘却されゆく者が流れ着くという都合上、組織立って活動する者たちは入れない。

 財団や連合の追っ手をかわすのに有用。

● ポータルとして機能する。

 ただし出入りできるポイントには性質上制限がある。盲点を突け。

● 星図盤が、この船に拾われ、星を見て帰っていった者たちの行き先を示す。

 出口として選択肢に入る。

 場合によっては変装/置換する対象として利用する。


注意点: 潮の流れが早いため長期の滞在は危険。

流された場合帰ってこれる確証はない。

星図盤はゲストの行き先を示すが、彼らを置換先にすることはできる限り避けたい。

一度漂流し脱出できた者である以上もし私になっても大丈夫だろうが、彼らは忘却の海を渡っていく強さを証した者たちだ。

星を見つけた彼ら自身も私にとって「何者でもない」に挫けず生きていくための星たりうる。

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