兎にも角にも情報の整理だ
ここに来てからワケのわからないことが多すぎる
日本の夏を味わおうとしただけなのに
基本形はこれだ どうして包丁なんか持たせた?
頭が痛い
別名: Keteru Yamiko、消照 闇子、闇子様、財団日本支部のアイドル(他にも数人いるらしいが、日本の財団は芸能事務所でもやってるのか?)
概要: 美しくも恐ろしげな女の子。長い黒髪で、学生服を着用。雰囲気は『キル・ビル』の女子高生に似ている。暗所から暗所への転移能力を有し、大型の包丁で標的を殺害する。財団の敵対組織により暗殺者として育てられており、感情の起伏は少なく無口。
◎ という設定のキャラクターである。
◎ 日本支部職員の考案らしいが、支部内での熱の入れようが異常。広報誌や支給品に頻繁に登場するほか、小説や漫画が盛んに作られており、単独の販売会が成立するほど。
◎ しまいにはフロント企業にオリジナル・ビデオ・アニメーションまで作らせている。なんともイカれた連中だ。
脅威: 未知数。所詮は創作だけの存在、かと思われたが、噂では実際に存在し、サイトの各所で職員を襲っているらしい。被害を訴える職員を何人か見てきた。潜伏中の私にも危害が及ぶ恐れあり。
◎ 一方、昨日行われた財団のアイドルライブ(??)において、なんと生身の彼女が登場した。俗に言う「コスプレ」というやつか?殺し屋がアイドルをやって良いのか?得体の知れなさがますます深まる。
注目点 - Yamikoと私の間に接点はあるか。類似性:
あるわけないだろう。
いや、冷静に考えると多少はあるかもしれない。
1) 財団と関わりが深いが、私も財団に入り浸っている。
2) キャラなので死が曖昧。私は何者でもないので死が曖昧。
3) 闇に隠れて活動するが、私も日陰でコソコソと活動する。
若干の親近感を抱いたものの、大枠の設定がどうも受け付けない。
◎ 暗殺者ならばもっと、露出の少ない服装にすべきではないか?最低でも下にボディタイツでも着込むべきだ。
◎ 財団を相手取る場合、武器は銃、とりわけ奇跡論弾入りのSMGあたりにした方が有効ではないか?
リアリティが気になるあまり、アニメの展開はあまり楽しめなかった。作画はまあ、それなりに良かったのだが。
活用: ライブ会場で晩飯を頂戴している際、訝しげな目の研究員に「アイム・フロム・サイト-19。ヤミコ・イズ・マイ・ワイフ。ニンジャ・ガール……」などと繕ったところ、何だかんだで打ち解け、酒まで奢られ盛り上がった。日本人が自国の作品を褒められると弱いことはよく知られている。少なくとも、身分をはぐらかす時の話のタネにはなりそうだ。
考え: 規律で凝り固まった財団が、この手のいかがわしいキャラクター創作を推進して良いのだろうか?だいたいこういう時は、何らかのカバーストーリー、裏があるのが定番だ。そんなことを考えながら、仮住まいであるCクラス宿舎に帰ると、明かりの無い部屋に薄っすらと人の輪郭が浮かび上がった。
そうか、ここも暗い闇の中、というわけか。さしずめ、口封じにでも来たのだろう。早くもしてやられた私に、彼女は柔らかな物腰で語りかけてきた。
「日本の職員でもないのに、随分と私に入れ込んでるようね。
あなた、何者なの?」
——私は、何者でもない。無名の人間。そういう存在だ。
そちらこそ、いったい何者なんだ?
「私はKeteru Yamiko。闇間を行き交う漆黒の暗殺者」
——違う。それは表面上のものだろう。
君は何を目的に、どこの誰が生み出したんだ?
それとも、自然に生じたアノマリーのようなものか?
「私は一職員の妄想から生まれたキャラクター。
職員の間で人気となり、慰労を目的として財団に公認された」
——凶器をひけらかす女学生にして、財団の敵対者。
こんなヘンタイな存在、大組織がおいそれと推せないだろう。
きっと、何か裏があるはずだ。
「…」
彼女はしばらく押し黙ると、吹っ切れたかのように切り出した。
「そうね。私の正体は……SCP-XXX-JP。
闇への恐怖、不詳の怪物、keterクラスのオブジェクト」
なるほど、そうか。これで繋がったぞ。
常軌を逸した祭り上げは、脅威を鎮めるためのプロトコルで──
「──ツクヨミノミコト、妖怪、妖刀、くの一、集団幻覚、アンチ財団派閥、形而上存在、丸くないやつの親戚、05-JK、第五ヒトデ、ファクトリーの殺人マシン、黒の女王、女隠将軍、日奉某、ミズ・星泉、有村組の懐刀、PAMWACの工作嫁、闇寿司の意思子、鮫の擬人──
いや待て待て待て。正体が混み入りすぎやしないか…?
困惑する私を尻目に、彼女はつらつらと話を続ける。
「私は何者でもあるの。誰かがそう思えば、私はそうなる。
皆が広くそう思えば、私は強く強くそうなる。
財団は"公式設定"を広めることで、
皆に私を"そうあるもの"だと認知させたってわけ。
でもね。
人ってよく、公式設定からズレた、変な想像に走る時があるの。
疑り深い人とか、いっつも何か知りたがっている人とか。
あなたみたいなXenophobia、未知嫌いさんには特にね。
だから、外枠を定められても、真の正体は一向に定まらない。
私はKeteru Yamikoだけど、やっぱり何者でもあるのよ」
どこか私と対比しているような、そんな口ぶりだった。
——認識によって左右される、概念存在のようなものか。
……君は何が理由で、私に正体を打ち明けたんだ?
極めて受動的な存在に、自由意志はあるのか?
「"あなた"のせい、だとしたら?」
——どういうことだ?
個人でしかない私に、君を呼び寄せる力なんて無いはずだ。
「そもそも、私はこんな長々と喋るようなキャラじゃない。
公式では無口のはずでしょう。妙に都合が良いと思わない?」
——確かに、アニメでは基本、最低限しか喋らなかった。
しかし、ライブでは思いっきり歌っていたじゃないか。
必要に駆られれば喋る、そういう認識で広まっているのだろう。
「なら、私の正体が超常組織界隈に偏ってるのはどうして?」
——考察する者が皆、財団の職員だからだ。
いや、財団に潜り込んだ工作員も、少数含まれるかもしれない。
「ふーん。それじゃあ、私は今、どんな姿をしてる?」
——イメージ通りだ。白い肌に黒い髪、セーラー服に黒タイツ。
右手には巨大な包丁、左手にはH&K MP5 Thaumatology custom。
ん?
んん?
混乱を見透かすかのように、彼女は小さく微笑んだ。
「ご覧なさい。暗闇は暗闇でも、ここは瞼の裏。
私はただの、あなたの思念にもとづいた夢、想像よ」
「私が気になるあまり、夢の中でも考察しちゃうとはね。
概念だの鮫だのブライトだの、随分と逞しい想像力ね、あなた」
——いや、それは、超常的知見と財団の組織事情を加味した、確証の高い推論であって──
ヤミヤミヤミヤミ(ヤミヤミヤミヤミ)……
ヤミヤミヤミヤミ(ヤミヤミヤミヤミ)……
影に闇にと隠れて忍び あなたのハートをロックオン!
暗闇宵闇ひっそり近寄り あなたを狙うの闇子さん!
(I from Darkness…)
脳内に頭のおかしいOP曲が流れ、はっと飛び起きる。刺されてもいないのに、心臓が激しく脈打っている。身体が熱い。午前3時。私はライブで酔い潰れ、ぐったりと眠り落ちていたようだ。
あのYamikoは夢だったのか?それにしては、嫌にはっきりと覚えている。数ページにわたってだらだら書き殴られるくらいには、彼女とのやりとりを鮮明に記憶していた。
ふと横に目をやる。傍らには研究員から分けて貰ったらしき「闇子ちゃんドキドキ抱き枕 v1.0」が転がっていた。薄暗いシーツにぼんやりと浮かぶ、鋭い目つきの少女の姿。これはまさか、ミームオブジェクトの類か?職員に正体を見破られ、何らかの精神攻撃を盛られている?
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私はそっと枕を裏返し、Yamikoの放つ正体不明の脅威から逃れようとした。
枕の裏にはあられもない姿のYamikoがプリントされていた。
…
◎ こんないかがわしい格好、彼女が見せるはずないだろう。
◎ いや、ハニートラップくらい、暗殺者なら当たり前に仕掛けるのでは?
◎ これは僅かな数の同人グッズに過ぎない。よって、大衆認識への影響は軽微である。
↑タグに「公式専売品」とあったので取り消し →なぜ作った?奴らいくつ売りやがった?
◎ そもそもこんなもの、財団の倫理規定とは明確に反しており、、
◎ されど、ここはあの日本支部であるわけで、
◎ 私の見解では、 、、 、、、
高鳴る鼓動。上がる体温。
いま、私は言い表し難い脅威から逃れようと、平凡な脳みそをフル回転させている……。
これからの計画:
無傷で日本を脱出し、ベース拠点へ帰還する。一番の問題は手荷物検査であり、このような機密の塊は確実に 私は何を書いている?
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