アイテム番号: SCP-001-JP/指定001
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: あらゆるアノマリーの封じ込めがSCP-001-JPの収容手順とされています。アノマリーの管理が財団の最優先事項である事を全職員に徹底的に周知してください。特に、破壊耐性を保有するアノマリーの取り扱いは厳重化されます。違反行為がみられる職員には、サイト管理官により適切な処罰が与えられます。これらの職員に対する教育は、O5-5の定めたマニュアルに則り行われます。
SCP-001-JPの発生、もしくはSCP-001-JPに関する情報が外部で確認された場合、機動部隊アルファ-1 ("レッド・ライト・ハンド")により情報の抹消と関係者への処置が行われます。また、財団管轄外でのSCP-001-JPの発生を未然に防ぐため、アノマリーの作成・拡散を行う組織の解体がアルファ-1の主導で遂行されます。この任務にあたり、アルファ-1には各要注意団体を専門とした機動部隊の指揮権が与えられます。
将来的に大規模なSCP-001-JPを引き起こすと判断され、なおかつ破壊耐性を保有するアノマリーが発見された場合、機動部隊カッパ-8 ("ブレイク・アンブレイカブル")により速やかな無力化が試みられます。無力化が困難であると結論付けられた場合、収容手順の確立の後に最寄りの遠隔隔離サイトにて収容します。GOCにより収容を委託された物品も同様に扱われます。
説明: SCP-001-JPは各種保存則がもたらす現象です。通常は拡張ネーターの定理により得られる方程式で記述された振る舞いを見せますが、アノマリーが無力化した際に特異な挙動を示します。この時、そのアノマリーが今まで違反してきた保存則の埋め合わせが周囲で行われます。
異常特性5大分類のそれぞれで発生するSCP-001-JPの傾向
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熱力学的な説明の付かない運動作用・エネルギー生成・物質生成等を生じさせるアノマリーが分類される。 |
異常性により消失/生成されていた物理量と同質の物理量が生成/消失する。典型的なSCP-001-JPの発生例であり、多くのアノマリーに共通して見られる。 |
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自発的行動を行う生物・無生物・或いはそれらに類する実体かつ、既知の存在ではないアノマリーが分類される。 |
実体が自発的行動を行うために生成したエネルギーおよび運動量が消失する。 |
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本来知性を持たないと考えられる実体が、何らかの知的活動を示す場合に分類される。 |
多くの場合で、知的活動を行う際に脳で使用した量と同等の電力量が消失する。脳の成長が確認されていた場合は、肥大化した量および過剰に消費されたグルコース等と同量の質量が生成/消失する。 |
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時空間異常を未知のプロセスにより引き起こすアノマリーが分類される。 |
時空間異常を形成するために必要とされる重力ポテンシャルと同等のエネルギーが生成/消失する。通常の重力と同様に余剰次元方向に希釈されるため、実質的なSCP-001-JPは小規模になる。 |
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通常の物理学的・化学的・心理学的・神経科学的作用での説明がつかないプロセスに因る、媒体を問わない情報記録・記憶等の改竄を引き起こすアノマリーが分類される。 |
原理的には分子・量子レベルでの異常運動効果に因ると考えられており、それに相当するエネルギーが生成/消失する。発生するSCP-001-JPは極めて小規模であるため、検出された例は少ない。 |
SCP-001-JPの性質から、破壊耐性を保有するアノマリーは大規模なSCP-001-JPの発生因子となる傾向にあります。加えて、破壊耐性はそのアノマリーの未解明な異常性に依拠する形となっているため、予期せぬ無力化に伴うSCP-001-JPが発生する恐れがあります。そのため、職員には破壊耐性を保有するアノマリーをより厳重に扱うように教育されます。以下は新人職員へのオリエンテーションスピーチからの抜粋です。
[途中省略]
ここからは、財団の存在意義とも言っていい、SCP-001-JPについて話していこう。
まずはこの画像を見てほしい。炭と、建物の残骸が見えると思う。今はもう復興しているが、こうなる前にもここには施設があった。なぜこうなったのかというと、あるアノマリーがその施設の水を賄っていたからだ。無限に水が出る蛇口。水源にしようと考えるのは自然だろう。だがある日、職員の不注意でその蛇口が破壊され、異常性を失った。その結果がこれだ。それまで蛇口が放出してきた量と同じだけのHとOが周囲から失われたというわけだな。
もうすでに君たちは物理法則に違反している存在をいくつか目にしただろうが、長期的に見れば保存則がそれらにも適用される。これがSCP-001-JPだ。こいつのせいで、アノマリーはそれ自身が脅威となりうる上に、どれだけ火薬が詰まっているか分からない爆弾になっている。しかもそれらは往々にして、非異常のものと見分けがつかない。そんなものが野放しになっていたら、世界中が地雷原になっているようなものだ。
だからこそ我々はアノマリーを確保し、収容し、保護する。先程言った、保護の対象が人類だけでなくアノマリーも含む理由はここにある。財団は爆弾を爆発しないように管理する道を選んだわけだ。制御下で爆発させて被害をコントロールする事も可能かもしれないが、それは世界オカルト連合が選んだ道だ。そう、アノマリーを破壊する事で人類を守っている組織だ。方針の違いで対立する事がたまにあるが、SCP-001-JPに関しては協力関係を築いている。というよりそれが前提で出来たわけだが、この辺りは担当に聞いてくれ。
さて、ここまでの話で、アノマリーの扱い方についてなんとなく理解してもらえたと思う。それじゃあここで1つ、君達に質問をしてみようと思う。まずこの映像を見てほしい。結構古いものなんだが、皿のアノマリーに色々やった実験記録だ。見ての通り、あの皿は実験中に決して傷つく事がなかった。我々はこれを破壊耐性と呼んでいる。アノマリーの中にはこの破壊耐性を同時に保有しているものが多々ある。これを踏まえた上で、先程言った質問をさせてもらおう。仕事をしていたらよく言われる事の1つにこんなものがある。「破壊耐性があるアノマリーほど厳重に扱え」だ。えーっと、君。そう。なぜこう言われるか分かるか?
そうだな。まぁ普通逆だと思うだろう。何故そんな事が言われてるかというと、我々は破壊耐性について何1つ解明できていないからだ。他の異常性もそうなんじゃないかと思うだろうが、いくつかの種類のものは理論建てて説明されていたりする。ヒュームや霊体のクラス分けに悪魔工学その他諸々。これから君たちも学んでいくはずだ。だが、こと破壊耐性については全くのブラックボックスなんだよ。ここまで言えば分かるだろう?何がきっかけで壊れるか予想できないんだ。実際、さっきの皿は1人や2人じゃ何も起きなかったが、3人で持った瞬間にパキッと割れてしまった。しかも、この時のSCP-001-JPが原因で、運んでいた3名を含む5名が死亡した。異常性が破壊耐性しかないような皿が割れただけで、だ。破壊耐性というのはそのメカニズムがどうであれ、自身が受けた"破壊に使われるはずだったエネルギー"を消失させる。つまり、SCP-001-JPによる"埋め合わせ"を溜めやすいんだよ。
不透明性と被害の規模。この2点を踏まえて、破壊耐性を持つアノマリーがイレギュラーを起こさないための努力がなされている。具体的に言うと、運ぶ時は前と同じように運んで、温度や気圧も一定にして扱う人員も同じ…という感じだな。このあたりの基準が破壊耐性を持たないものよりも幾分か高い。実験の許可も降りにくくなっている。
全てのアノマリーを厳重に扱うのが理想的だが、リソースには限界がある。「破壊耐性があるアノマリーほど厳重に扱え」、胸に留めておいてくれ。
それじゃあ次は、施設について話していこう。
[以下省略]
SCP-001-JPは財団が設立される以前から確認されていましたが、各アノマリー特有のものであると考えられていました。しかし、財団の前身組織が設立される事でアノマリーの遍歴が正確に記録される事となり、SCP-001-JPの法則性が体系化されました。これにより、アノマリーの収集と保管によって、SCP-001-JPの発生を防ぐ事を目的とした財団の設立に繋がりました。以下はSCP-001-JPに関わる事象のタイムラインです。
1936/02/21: 米英ソのアノマリーを扱う組織が行った合同実験により、SCP-001-JPの再現性が初めて確認される。
1936/07/28: 同3組織が、技術共有やアノマリーの扱いに一定の制限を設ける旨の内容を含んだ三国合意を締結。
1944/09/15: 超常現象の確保収容に関する王立財団(HMFSCP)本部襲撃事件。
1946/01/26: 財団設立。
1948/02/15: 世界オカルト連合設立。
1948/04/05: 合意:指定001締結。
1948/07/29: 機動部隊カッパ-8結成。
1961/10/31: インシデント001-JP発生。
2006/12/31: プロジェクト"ヘット・レーシュ・メム"立案。
2007/03/02: プロジェクト"ヘット・レーシュ・メム"開始。
HMFSCP本部襲撃事件: 本事件は、オブスクラ軍団が第七次オカルト大戦中に引き起こした事件です。財団の前身組織の1つであるHMFSCPは1944年に戦争へ介入し、オブスクラ軍団からいくつかの遺物を奪還しました。その遺物の再取得ならびに報復を目的とし、1944年9月15日にオブスクラ軍団によるHMFSCP本部への襲撃が行われました。襲撃は速やかに鎮圧されましたが、この際SON-032の無力化が引き起こされ、SCP-001-JPが発生しました。これにより8名の職員が死亡し、その中には当時のHMFSCPの代表が含まれていました。この事件および第七次オカルト大戦によりアノマリーに関して世界規模の管理が求められ、HMFSCPの副代表であったルーカス=ウィリアムズによる財団の設立、ならびにもう一人の副代表であったヘレン=カラエフによる世界オカルト連合の設立につながりました。
インシデント001-JP: 本インシデントは、財団が確認している中で最も一般社会への影響が大きなものとなったSCP-001-JPです。1961年10月31日、現ロシア連邦領ノヴァヤゼムリャにおいて水爆実験が行われました。実験に用いられていた多段階水爆ツァーリ・ボンバはTNT火薬15,000kt相当の威力で設計されていましたが、実際に起きた爆発の威力はその約3倍のTNT火薬50,000kt相当であると推定されています。当時の記録から、爆弾に使用されていた部品の一部に、破壊耐性を示す物品が用いられていた事が後の調査で判明しました。当該物品はソビエト連邦による兵器実験においてたびたび使用されており、その破壊耐性によって自身が受けたエネルギーを多量に消失させていたと考えられます。そして実験において当該部品が無力化し、発生したSCP-001-JPにより消失していたエネルギーが生成されたと推定されています。爆発の規模の大きさから隠ぺいは困難であると判断されたため、設計当初からTNT火薬50,000kt相当の威力を想定していたという偽装工作が施されました。インシデント当時は冷戦期にあり、想定外の規模の爆発は米ソ間の致命的な関係悪化に繋がる恐れがありました。また、技術力の発達などを原因として財団の管轄外におけるSCP-001-JPの発生件数が増加傾向にあった事も踏まえて、本インシデントを切っ掛けとしてSCP-001-JPならびにアノマリーのより徹底した管理が求められるようになりました。