つまるところ、全ては金に帰着する。
草分け時代、我々は資金を得ることができなかった。世界の各国政府は我々に対する資金供給を拒否し、我々は無尽蔵の金や宝石を生み出したり、株式市場を引っ掻き回せるようなSCPを保有していなかった。アメリカ合衆国大統領は「No」と言った。ツァーリも国王も口を揃えて「No」だ。連中は我々がやっていたことの正しさ、あるいは有用さを信じなかった。
資金不足にも関わらず、我々には利用できるものが一つあった。SCP-2013だ。君が先ほどSCP-2013として読んだファイルはどちらも本当のものではない。オリジナルのオリジナルファイルはもはや存在しないが、その要旨はこんなものだ。SCP-2013とは、1900年に我々が海底で発見し、トロール船によって引き揚げられた卵群です。卵はどれも死んでいましたが、財団は好奇心からそれらを保持していました。
黎明期において、財団はフランケンシュタインよろしく死者を蘇らせることに取り憑かれていた。我々は手を尽くして卵を復活させようと試みた。卵の外部で胚を維持したり(失敗した)、それらを感電させてみたり(調理してしまった)、ただ単純に孵卵してみたりした(懲りずに調理してしまった)。最終的に、我々は長い間歴史から失われていた実験化合物を試してみることにした。それは水銀、イリジウム、ラジウム、そして当時の科学では知られていなかったいくつかの元素から構成されていた。
その後、卵は孵った。
彼らはちょうど子供のように振る舞ったが、その外見はゴリラの混じったイグアナのようだった。彼らは我々がこれまでに見たことのない血液化学作用を有しており、驚くほどに人間の言葉や行動を模倣することができた。同時期に、財団は非友好的な土地においてエージェントたちの身を隠すための変装技術を開発していた。それらはすこぶる完成度が高く、50歳の男性が顔に纏えば18歳の少女のように見せかけることもできたので、おそらく身長を除いて、その違いを見分けることは不可能であっただろう。
SCP-2013から孵った生物たちは協力的で、我々を親として見ていた。また、彼らは非常に早く成熟し、6ヶ月以内には大人の体躯へと成長した。それを成すために我々が要したのは、彼らに世界全般についての教育を施し、彼らをスキンスーツの中へと入れたくらいで、その後、我々は任務に最善を尽くせるよう彼らを世界中へ送り出しだのだ。
彼らは政治家、作家、歌手、俳優、国王、女王、発明者、官吏… まあそんなものになった。彼らはそれぞれのやり方で、みな高い社会的地位を得た。2012年までの17名のアメリカ大統領の内、5名は彼らだった。イングランド女王はとうの昔に入れ替わっており、彼女の家族は未だそのことを知らない。我々の最大の成功はおそらく、1970年代にカオス・インサージェンシーの主要支部にまで浸透していたことだろう。
長年に渡って、我々は1500体以上のSCP-2013-A個体を繁殖させ、テクノロジーは彼らの変装をより説得力のあるものとするために改良された。我々は彼らの身長やDNAを変え、その外見を恒久的に改造することすらもできたので、彼らの正体が露見する恐れは無かった。そのようにして財団は運営資金の大部分を彼らの供給に頼ることとなった、単純な核分裂・核融合反応を用いて文字通り鉛から金を生み出す方法を彼らが発見するまでは。実はプラチナなども作るのは容易いのだが… 少し脱線してしまったかな。我々は最終的にSCP-2013計画を中止し、彼らを駆り集め、実質上その存在を抹消した。実験のために生かしておいたつがいを除き、我々は彼らを根絶やしにしたと思っていた。
その後、世界オカルト連合がSCP-2013-A個体に浸潤されていたことを我々は知った。彼らは相当の期間を経て高官へと出世し、チェコスロバキアの使節顧問という地位にまで達した。"エージェント"自体から踏査報告を受けるまで誰も知らなかったのだ。我々はGOCへ通知したものの、それは留め置かれ、単一の案件に過ぎないと決めつけられた。
あの選挙が起きるまで、我々はそれで終わったのだと思っていた。イングランドの小さな選挙区において、任期のために下院議員の選挙が行われた。その後、候補者全員が実際にはSCP-2013-A個体であったことが判明した。我々は選挙後までこのことを知らず、彼らを除外するには後の祭りだった。彼らは公人であり、メディアを通して知られていたので、彼らに対するいかなるアクションも疑惑を招いたことだろう。
我々は、SCP-2013-Aが世界全土に広がっていたことに気付いた。どの点から見ても、彼らは世界を支配していた。世界全体の半数以上4分の3未満の政府は彼らの統制下にあった。我々は彼らをKeter認定し、エイリアンと見なし、いかなる暗殺をも事実上阻害する彼らの不死性について話していた。しかし、希望が無い訳ではなかった。以前から知られていた副次作用があったのだ。
SCP-2013-Aは何らかの理由で、人に観測されると弱体化した。彼らを研究する研究員の1人はそれを"有害な反ミーム作用"、あるいは「彼らについてより多くの人が知るほど、その力は弱まっていく」と説明した。彼らの知性は衰え、筋肉量は失われ、骨粗しょう症は進行し、そしてあらゆる点で殺害することが容易になった。彼らの数が多いほど、全体的効果の有害性が薄れるという"ミーム希釈"は、我々を振り回したフレーズだ。
そうして、彼らの抹殺計画は始動した。虚構にほんの僅かなひびを入れ、ミーム希釈を打ち消すために世界中で彼らの存在を明らかにした。計画はしばらくの間、順調に進んでいた。周囲から変人と呼ばれていた人々は、真実 - 彼らの政府や世界が彼ら自身のものではないということ - を悟った。彼らは気違い扱いされたが、間もなく全世界が真実を直視することになった。
計画は中止され、「全てはただ奇妙なミームの仕業に過ぎなかった」という説明がそれを非難し、その後に死体が見つかった。"気違い陰謀論"と呼ばれるものへの人々の傾倒を防止するためにカーディフ化合物が開発され、飛行機によるケムトレイルを介してばら撒かれた。だが、それらは現実だ。
しかし、何らかの理由で、この指令は伝えられた。:
我々がSCP-2013を誤って文書化していたという話を耳にしている。SCP-2013-A個体であると主張されていた数人の人物の遺体発掘、並びにDNAサンプルと最近の解剖記録は、SCP-2013-Aが実在しないことを証明している。諸君、我々は一杯食わされていたようだ。
SCP-2013とは、集団パラノイアを引き起こし、名声や権力の座にある特定の人々をこの世界には存在しないナニカであると解釈させる無害なミーム媒介以上の何物でもない。どうしてこのようなことが起こったのか、我々は知らない。誰が、どのように作ったのかということさえ、我々には分からない。何故それが行われたのかも、我々は知らない。しかし、いずれ明らかとなるだろう。
SCP-2013はSafeとして再分類され、収容ファイルも改訂される。前後関係の把握のために、現行の収容手順は保管され、Level-4/2013以上のクリアランスを持つ研究員はアクセスを許される。
確保し、収容し、保護せよ。
- O5-2
そろそろ、君がこのページを開いてから60秒以上経った。君がこの文書を閲覧した結果として迎え得る結末については謝罪しておこう。だが、真実が外にあるという事実は、私を慰めてくれるのだよ。たとえ私が、狂人の1人に過ぎないとしても。
確保し、収容し、保護せよ。