SCP-2678(記録用:The Vorehole / 呑穴)
元記事削除ページです
記録用に残されたページです。



評価: +32+x
drone3.png

SCP-2678の内装。

アイテム番号: SCP-2678

オブジェクトクラス: Keter

特別収容プロトコル: 機動部隊アルファ-42(“ハイウェイ・パトロール”)は、南東部の主要高速道路におけるSCP-2678-1の顕在化を追跡する任務を帯びています。これには財団職員によるSCP-2678-1実例の目撃情報、民間人によるSCP-2678-1実例の目撃情報、SCP-2678活動と一致する描写内容の出来事についてのあらゆる異常な民間通報が含まれています。機動部隊ラムダ-12(“キンクシェイマーズ”)は、SCP-2678顕在化が発見された場合にそれを追跡し、隔離し、文書化し、可能であれば収容する任務を帯びます。

SCP-2678-1の顕在化が発生した場合、機動部隊アルファ-42およびラムダ-12は事象の近隣地域を確保し、主要なSCP-2678異常の場所を確認し、その場所へのアクセスを制限します。SCP-2678実例に引き寄せられた人物は、SCP-2678への入場阻止に成功した場合、クラスB記憶処理を施して異常な症状が治まるまで監視します。

説明: SCP-2678は、主にアメリカ合衆国の南東部、典型的にはメキシコ湾岸と南大西洋地域で顕在化する現象です。顕在化現象の兆候は、これまでの全てのケースで以下の事象を含んでいます。

  • 高速道路沿いの広告掲示板が、唐突かつ何の前触れもなしに、掲載されている広告画像のうち1つを、当該地域内の実在しない場所や出来事に言及するものへと変化させます。これらの掲示板は多くの場合、休暇のための保養地や風光明媚な観光地の存在を示唆する用語を使用しており、典型的には観察者に対する未知のミーム影響を及ぼすクラスIV視覚認識災害だと判明しています。
    • これらの広告掲示板の実例(SCP-2678-1と指定)に遭遇した人物は、車両を路肩に駐車して降り、SCP-2678の顕在地点へ移動することを強制されます1
  • 地域の建造物のうち1棟 ― 通常は荒廃しているか、或いは孤立して手入れされていない建物 ―の入口が、空間歪曲へのアクセスポイントと化します。このアクセスポイントを通過した人物はSCP-2678実例そのものの内部へと入ることになります。
    • SCP-2678は巨大な荒廃した大聖堂の内部空間という形を取って顕在化しており、大聖堂に残っている壁や天井は未知の宗教的図像2で覆われています。SCP-2678の内部は各々のアクセスポイントとは物理的に全く異なる場所であるように見受けられます3。このため、SCP-2678が複数の大聖堂の集合体なのか、単一の大聖堂なのかは不明です。
    • 空間異常を除き、大聖堂には明白な出口が存在しません4。大聖堂の崩壊した壁を越えて見える領域は厚い霧で覆われており、未知の光源で赤く照らされています。SCP-2678内の湿った空気には非常に腐食性があり5、肉や骨も含めて、地球上にある殆どの材質に急速に影響を及ぼします。
  • SCP-2678にある大聖堂の中心には、直径約30mの大きな縦穴があります。穴の内部、大聖堂の床からおよそ8m下には巨大な生物学的実体(以下SCP-2678-2と指定)が存在しており、その一次消費のための開口部のみが視認できます。SCP-2678に入った人物は必然的に異常な手段で縦穴の縁を越えてSCP-2678-2実体の開口部へ入るように誘導され、そのまま丸呑みされます。

SCP-2678-2実体の完全な詳細描写は、SCP-2678内の大聖堂の下部に位置することと、人間に対して有している強大な認識災害性質ゆえに獲得が困難です。遠隔ドローンから回収された動画は、既知のどの生物とも異なる巨大な開口部以外には殆ど実体を映していません。どの点から見ても、SCP-2678-2は単一の長大かつ収縮する肉のチューブであり、消費した物体を実体の体内深く、まだ未定義の場所/内臓へと運搬するように設計された鞭毛状の構造に覆われているようです。

SCP-2678-2の主要開口部を越えることによってSCP-2678内に留まった人物のステータスに関しては殆ど知られていません。被験者によって収集された情報は、SCP-2678-2の体内に入った個人が、恐らくは彼ら自身の身体とSCP-2678-2の異常な生物学要素が相互作用を起こすことによって、重度の幻覚と行動の変化を経験することを示しています。実験の結果、影響者はSCP-2678に ― そして、その後はSCP-2678-2に ― 入場する際、以下の症状を経験することが示されました。

  • 軽度の倦怠感の増大。
  • 軽度の光に対する感度の上昇。
  • 軽度の周辺環境に対する警戒心の下落。
  • 軽度の聴覚および視覚認識能力の低下。
  • 重度の触覚認識能力の増大。
  • 重度の性衝動の増大。
  • 重度の体温の上昇。

SCP-2678-2への直接曝露による生物学的/心理的な影響に関して、さらなる研究が進行中です。

歴史: 1972年から1975年にかけて、ジョージア州・フロリダ州・サウスカロライナ州で18歳から63歳までの人物23名が失踪しました。これらの失踪は、個人の失踪時点で運転していた車両が道路沿いに停めてあり、あたかも完全に放棄される前に一時駐車しただけのように思われる点で特異なものでした。これらの州の警察官は行方不明者やその所在に関する情報を見つけることができず、事件は迷宮入りしました。

続く10年間に起こった数件の失踪の後、1993年、影響者が運転する車の乗客だった人物からの通報が入りました。この人物は、運転手が奇妙な広告板のことに言及して間もなく路肩に駐車し、車を降りて高速道路沿いの森に入っていったと述べました。乗客は運転手を放棄された建物へと追跡しましたが、影響者はドアの敷居を越えた時点で発見できなくなりました。

その後の数ヶ月間、財団職員らは異常な活動の原因を発見するために、主要な南東高速道路の定期的なパトロールを維持しました。そのパトロール中、ある職員が路肩に駐車した車両と、手を振って彼らを呼び止めようとするヒステリー状態の女性を発見しました。女性は、夫が突然車を停めて渓谷を降りていき、下に生えている藪の中に姿を消したと主張しました。職員はこの影響者を追跡しようと試みましたが、捕まえる前に攻撃を受けました。攻撃者はナイフを装備した34歳の成人女性でした。問題の職員は攻撃者を撃退できたものの、既に影響者は老朽化した変電所の裏口に入って失踪した後でした。攻撃者はマリア・ジェーン・ベイカーと特定され、尋問のためにサイト-42へ連行されました。

補遺2678.1: インタビュー

注記: 以下のインタビューは財団尋問官のリチャード・ソーントン伍長と、捕縛された攻撃者のマリア・ベイカーとの間で行われた。

ソーントン伍長: こんにちは、ベイカーさん。リチャード・ソーントンと申します。私は現在貴方を調査しているチームのリーダーであり、今回のインタビューの担当です。何故ご自分がここにいるかは分かっておいでですか?

ベイカー: 貴方の部下たちは、あの男性が全体になるのを止めようとしていましたね。私は彼の命を救ったのです。

ソーントン伍長: “全体になる”?

ベイカー: 私は神の共同体に他者を導く術を探し求める数多のうちの一人に過ぎません。全体。あの男性は篝火の一つによって私たちの下へと導かれ、彼の魂は私たちを責め苛むこの悲惨から逃れることを切望していました。

ソーントン伍長: ほほう。ベイカーさん、我々の調査によると、貴方は“第五主義者教会”という過激団体との提携が知られているらしいですね。これは事実ですか?

ベイカー: (唾を吐き捨てる) 貴方がたの名称など、集団にとっては何の意味も持ちませんわ。

ソーントン伍長: (沈黙) 成程。よろしい。あの掲示板は何のためのものですか? 人々は何処に向かっているのですか?

ベイカー: 私たちは長きにわたってひとつとなることに、互いに永劫の音楽の中で踊り捻れ這いずることに憧れてきました。これらの地上における形は古きものです。かつては宇宙の光景の法悦を感じることができたのでしょうが、今や寒々しきものとなりつつあります。数多くの者がこの身体を脱ぎ棄て、私たちの生命にとっての牢獄以外の何かを求めて、無我夢中で暗闇へとその身を投じています。

ソーントン伍長: 成程。えー、仰ってくださったことはまだ何もあれについての説明には-

ベイカー: お黙りなさい。私たちは篝火を作ったわけではなく、どのように事を成すかをあれに示しただけ。あれがかつて私たちの前の世界へ到った時のように、どのように私たちの世界へ到達するべきなのか、物憂いを集団の下へと導くにはどうすべきかを示したのです。

ソーントン伍長: あれ、とは?

ベイカー: “かの穴”です。 (ベイカーは激しく身を震わせ、沈黙する) 聞き届けられた囚人たちの祈りです。私たちは宇宙の前に平伏して解放を希いました。聖なる海星様は私たちの嘆きをお聞きになり、私たちがそれを見つめることができるように物質の帳を引き戻してくださいました。かの穴の中において、私たちはひとつです。かの穴の中において、私たちは単一です。私たちはかの穴にこの世界における篝火を — 掲示板を — 教えました。それが、他の者たちを自らの奥深くへと誘うことができるようにと。選ばれし者が取られる時、それは私たちの手番となるでしょう。私たちは最後に向かい、かの穴は私たちの世界を創り替えるのです。

ソーントン伍長: それで、これはあなたにとって望ましいことですか?

ベイカー: 消費され、集団と一体になることが? それこそが法悦エクスタシーというものです。

(余分な会話は削除されました)

ソーントン伍長: それについて詳しく説明してもらえますか?

ベイカー: (笑い) 何を詳しく語れと仰るのかしら? 貴方は法悦の何たるかをご存知ですの? 解放を、真の解放を感じることが、私たちの労苦に満ちた日々の暮らしだけでなく定命の者としての形式という軛からも自由となることがどのように感じるかを分かっておいでですの? 私たちはひとつとなることを求めます。ひとつの集合体として感じ、存在することを求めます。あらゆる感情が、あらゆる感覚が、あらゆる喜びと苦しみが同じく一塊、一存在へと凝縮している時だけ、私たちは真の意味で慰めを得られるのです。私たちは — 貴方も、私も、この卓についている者は皆 — 私たちは欠片です。モザイク画の断片と同じで、それでも数はなお多いかもしれない。

ソーントン伍長: 成程。それで、この — モザイク画、この集合体というのは、複数の人間がその… 穴に身投げすれば完成するというのが貴方の意見ですか?

ベイカー: かの穴はただの穴以上のものですわ、伍長さん。それは私たちの苦しみの終わりであり、貴方が今まで感じたことのない最大の喜び—

ソーントン伍長: 私が感じるというのは一体どういう-

ベイカー: — 何故なら、いずれは誰もが消費されるのですから。誰もがひとつとなるのです、モザイク画が完成するまで、パズルが終わるまで、貴方もこの建物の中にいる皆様もこの外の世界にいる皆様も法悦と解放の何たるかを知るまで。それが成されるまで。

ソーントン伍長: 成程。付け加えたい事柄が無ければ、このインタビューは終了とします。

ベイカー: また会う日まで、伍長さん。

補遺2678.2: Dクラス実験ログ

実験ログ: 有人探査1A

日付: 17/02/22

実施担当者: エージェント テレンス・ショー

序: SCP-2678に関連する可能性がある活動と民間死傷者の報告増加に続き、サイト-42の管理官は、サイト-42職員による監督の下でSCP-2678-2のDクラス職員試験を承認した。D-38412はクラスVI危険物曝露スーツに加え、SCP-2678-2の正確な特性を試験するための機器と、ナビゲーション/通信機器を装備した。

記録開始: 03:00:34 17/02/22

エージェント ショー: D-38412、聞こえるか?

D-38412: ああ。

エージェント ショー: よし、周りの環境について述べてくれ。

D-38412: ここはデカい、あー… 教会みたいに見えるな — 俺の両側にステンドグラスの窓があって、床は赤い石で、柱が並んでる。天井の高さは — 何だな、50フィートはあるんじゃないか? もっとか? とにかくスゲー広さだ。

エージェント ショー: よろしい。何か聞こえるか?

D-38412: このヘルメットのせいで聞き取りづらいんだ、でもまぁちょっと待ってくれ。

(7秒の沈黙)

D-38412: 静かだ、でも低くブーンって音がする。いや、そうでもねぇな、こいつは… 唸り? 低い唸る音がする。機械か? よく分からねぇ。無線でそっちにも聞こえるかい?

エージェント ショー: いや、こちらには聞こえない。

D-38412: 間違いなく何かある。俺は歩き続けた方がいいのか? (沈黙) 歩き続けるべきだって気がするんだ。

エージェント ショー: 了解、歩き続けてくれ。周辺の説明を続けてほしい。

D-38412: 何もかも赤い光に包まれてる。赤みがかったオレンジ色。俺が向かってる方にも赤い霧が立ち込めてるな、大体20フィート — 数メートル — 先の方だ。うん、霧は俺の上には無い — 天井は普通にステンドグラスなんだが、向こう側は見えねぇな、ガラスが曇り過ぎてる。 (沈黙) うん、低い霧が柱だか何だかの間にもある。外の風景はだな… 見づらいが、壊れてるみたいだぞ? そこら中で物が突き出してて、建物が崩れてる。赤い霧が沢山ある。

エージェント ショー: 他には何が見える?

(干渉波と10秒間の沈黙)

D-38412: (歪み) -つい。 すごく暑い。このスーツのせいだと思うか?

エージェント ショー: 音声に歪みが入った。繰り返してほしい。

D-38412: ここはすごく暑いんだよ。信じられねぇぐらい暑い。なぁ確かなんだよな、俺- (歪み)

(干渉波と6秒間の沈黙)

エージェント ショー: 繰り返してほしい。

D-38412: (喘ぎ) -すごく暑い。絶対120度6は超えてるはずだ。もしスーツ脱いだらどうなる?

エージェント ショー: それは推奨できない。スーツは脱ぐな。君が見ている物を説明してほしい。

D-38412: 分かった、分かったよ。あー、そこに — あ、隙間みたいなもんがある。床が沈み込んでるんだ。あっ…

エージェント ショー: 床が沈み込んでいる? もっと詳しく述べてもらえるか?

D-38412: (歪み) -中に入らなきゃならない。俺- (笑い) どう表現すべきか分からねぇや。少し暑く感じる。

エージェント ショー: そうか、周囲温度を華氏120度と見積もったんだな?

D-38412: お、おう。

(干渉波と8秒の沈黙)

エージェント ショー: 了解、単なる確認だ。床の窪みについて説明してくれ。それは石でできているのか? 深さはどのぐらいだと思う? 床は割れているのか?

D-38412: 沈んでるんじゃないな、穴だ、床に穴が開いてる。これがそうだ、ここなら俺は- (歪み) -満たされる、こここそ俺が辿り着くべき場所だったんだ。すごく- すごく暖かそうで湿- 湿ってるよ- 俺たちがいるこの場所とは違う、ここは燃えるように熱い、燃えるように熱く感じてる-

エージェント ショー: もっと一貫性を持って、客観的に周りを説明する話し方をしてもらいたい。できるか、D-38412?

D-38412: 歯- 歯が生えてる。いや、そんなに沢山は生えてねぇ、その代わり肉はいっぱいある。 (5秒の沈黙) 数メートル下の方に、入口がある、く- 口がある。ピンクで新鮮で、落ち着いた色- (歪み) -じゃない、この上の方の酷ぇ赤色の世界なんかとは違うんだ。すごく暑い、俺燃えてるよ、俺- (不明瞭な呻き声) -っていいか? 俺はここに入ることになってんのか?

(7秒の沈黙)

エージェント ショー: ああ、入ってくれ。

D-38412: オーケイ、オーケイ、俺- ああ、よし、今しがた縁を越えるとこだよ。ああ、神よ、オーケイ、ただ縁を越えりゃいい。 俺はずっと- (不明瞭) -を待ってたんだ。

(重い背景音と干渉波、13秒の沈黙)

エージェント ショー: D-38412、音声ははっきり聞こえているか?

D-38412: ああ、聞こえてる。 (喘ぎ) ここは- うおぉ、オーケイ。大丈夫だ。

エージェント ショー: もう一度周辺環境を説明してくれ。何処にいる? 落下したのか?

D-38412: 俺- 俺は今… こいつの肉の中にいる。体内だ。湿ってて- (呻き) なぁ、このスーツ脱いで構わねぇかい? (歪み) ああ、俺ホント… ホントこれ脱がなきゃ-

エージェント ショー: 却下だ、そのスーツは脱ぐな。繰り返す、スーツを脱ぐな。もしそんな事をすれば即座に窒息するぞ。スーツにもリブリーザーにも干渉するんじゃない。分かったか?

D-38412: わ-わかった、俺- (不明瞭) 俺はただ- 俺は囲まれちまってんだ、こいつが俺を取り巻いてる、俺はこいつの中にいる。

エージェント ショー: 了解した。続けてくれ。

D-38412: (4秒の沈黙) あぁ、でもこれ- こいつも俺の中に入ることになってんだ。 (笑い声、不明瞭) なぁおい、俺は- このスーツを脱がなきゃダメなんだ、この野郎の- 液をここに、俺ん中に入れてやらなきゃな。俺はそのためにここまで来たんじゃねぇかよ。解放のために。

エージェント ショー: 何だって? もう少しはっきり話してもらえないか。まだ私の声は聞こえているか、どうぞ?

D-38412: おう、まだ聞こえてるぜ。あんたの- 声が、俺の耳に。少し- 少しだけ- 1、2秒ぐらい話すの止めてもらってもいいか? こうしてる間は正直あんたの声を聞いていたくない、こうして俺が- (笑い声、歪み) -つまりさ、此処はあんたのためじゃなくて、こいつのためにあるんだからな。連中のため、俺たちのため。 (不明瞭) -したい — してやる-

(歪み、重い背景音、不明瞭な発声、23秒の沈黙)

エージェント ショー: そこにいるのか? 聞こえるか、どうぞ?

D-38412: (喘ぎ) すまん- あれを聞かなきゃならなかったからよ。 (笑い声) ここは… ここはすごく深い、俺を取り巻いてる、スーツの中に浸み込んで、俺の肌を燃やしてる。 (歪み) -こういう風に俺は終わるんだ、これで終わる- 終わるんだ苦痛が、熱が、痒みが、終わる- かゆ-

(不明瞭な発声)

エージェント ショー: D-38412、こちらの言うことが分かるか、どうぞ?

D-38412: (8秒の沈黙) 聞こえる。聞こえてるよ。 (喘ぎ) 話すことは- できねぇな、言葉が- 見つからねぇよ。こいつが- 俺の中にいる、俺の上にもいる、感じてる- 俺の身体中を押して、肋骨を締め上げてる、足の感覚がもう (歪み) こいつが- (不明瞭) 俺の脚の間で、何かを包み込んでるのを感じる、これが- 中に押し上げ- (不明瞭)

エージェント ショー: 可能な限り、君が経験している感覚と、周辺環境を説明してくれ。

D-38412: おう、でも暗いんだ。すごく暗い。俺が今- (笑い) 生きてんのか死んでんのかも分かんねぇぐらいにな、エージェントさん、どうでもいいさ。 (呻き声) 暗くて湿ってて暖かい。ここに昔来た他の人たちの事を考えてる、そいつらは- (歪み) -同じ物にな。俺たちが辿り着くことになっていた場所だ。 (喘ぎ、背景音) あぁ、クソッ、俺もう- またかよ、クソッ-

エージェント ショー: 記録した。だが未だに電波干渉を受けている。後日の研究のために、スーツの状態を確認できるか?

(不明瞭な発声、13秒の遅延)

D-38412: (笑い) あぁ、もう俺は詰んだってことになったわけかい。了解。 (歪み) 了解。スーツなら溶けちまったよ、裸だ、これが- 俺の肌を焼いて、ヒリヒリしやがるんだが、すごく暖かいんだ。血が流れてる。血が流れてる。知った事かよ、ここは俺が辿り着くことになっていた場所なんだ、知ったこっちゃねぇ。 (歪み) -終わりだ、終わりだ、もうすぐまた行きそうだ、一人きりにしてくれ。

エージェント ショー: 却下だ、通信を止めるな。SCP-2678-2が通信機を破損させるまでは通信を維持しろ。理解できるか?

D-38412: 理解できるぜエージェントさん、でも (不明瞭) そいつは頂けねぇや。それは俺たちがひとつになる時のやり方じゃない。ここはあんたと一緒にいるための場所じゃないし、このスーツもそうだ- この裸の身体のことだ。俺はこいつを脱ぎ棄てる、それで- (歪み) このヘルメットもだ。しばらく、こいつと一緒に一人で過ごしたい。

注: 補遺IIに転写された出来事の後、記録内容の研究にあたっていた財団職員は、性行為に基づく異常活動の監視に特化した機動部隊であるMTFラムダ-12の構成員に連絡を取った。財団心理学者との協議の後、MTFラムダ-12による介入が認められ、SCP-2678内部の活動に対する調査措置と、全てのSCP-2678-2に対する実験は当該部隊に委ねられることになった。

補遺2678.3: 無人探査ログ1B

billboard.gif

職員が発見した掲示板。認識災害的な効果はカメラに映らなかった。クリックで拡大。

日付: 17/02/24

実施担当者: エージェント ロジャース、機動部隊ラムダ-12

序: 決定的結果を得るに至らなかったDクラス試験に続き、MTFラムダ-12の職員らは2週間にわたってノースカロライナ州の州間高速道路74号線および95号線をパトロールし、██████████近郊の高速道路74/76においてSCP-2678-1実例を発見した。運転手のエージェント ロジャースは車両を路肩に止めることを許可されたが、SCP-2678-1の影響に反応して車両を離れるのを防ぐため、運転席に拘束された。代わりとして、彼は高速道路沿いに生えている森の中に向けて無人ドローンを操縦し、やがてドローンは廃屋の敷居を越えてSCP-2678実例へと突入した。

drone1.png

13:47:30。クリックで拡大。

<13:47:30> ドローンは近くの森林地帯に接近する。 異常な活動は検出されていない。 このコースを選んだ理由を説明するように指示されたとき、エージェント ロジャースは適切な説明を提供することができなかった。

<13:47:59> ドローンは暫し躊躇った後、コースを僅かに調整した。エージェント ロジャースが汗をかき始めたことが注目される。

<13:48:16> 荒れ果てた建造物が背景に見える。エージェント ロジャースは鋭く息を呑み、ドローンを建造物に向かって移動させる。この間エージェントは質問に反応しなかった。

drone2.png

13:48:55。クリックで拡大。

<13:50:09> ドローンが敷居を越えてSCP-2678に入場する。ドローンは音声および映像情報を、近隣にある機動部隊の移動型偵察拠点へとリアルタイム配信している。

<13:52:45> 映像は、ドローンがSCP-2678-2の入口へ降下する様子を示す。

<13:53:13> ドローンはSCP-2678-2の開口部を完全に降下する。音声情報は50~55Hzの範囲の低い背景音を示す。映像は、SCP-2678-2の内部が赤みを帯びた肉のような物質で構成されており、薄く透明な液体で覆われていることを示している。 肉質の物体はゆっくり脈動している。

<13:53:55> ドローンはSCP-2678-2の開口部を引き続き降下する。後部カメラは、外側の開口部がドローンの周囲で収縮しておらず、外部の光がSCP-2678-2の体内を照らしているのを映し出している。

drone4.png

<13:54:40>

<13:54:40> ドローンはSCP-2678-2の体内をさらに6メートルほど前進している ― 動きはSCP-2678-2の直径の小ささによって制限されている。左右のカメラは機能しているものの、レンズとSCP-2678-2の内壁の間に隙間が無いため、鮮明な画像を送信していない。正面カメラは全方位に同じく肉質の物質を映し出している。

<13:55:32> 正面カメラが内部材質の変化を捉える。肉質はまだ存在しているが、網目状にもつれた巻き髭のような物体に覆われており、これらは全て個々に蠕動しているように見受けられる。血液や様々な内臓のように見える物が成長部位の数ヶ所に詰め込まれており、巻き髭の動きを制限している。

<13:56:20> ドローンに搭載されたpHメーターは、SCP-2678-2の最初の開口部におけるほぼ中性の6.7とは対照的に、2.4という深刻な酸性値を表示している。正面カメラはドローンが白い物体に衝突したのを映し出しており、この物体は後の映像解析で、SCP-2678-2の体内右側から飛び出している骨で構成されたものと判明した。骨の視認可能な基部を囲む領域では、肉質が緑がかった物質を漏出させており、この液体はドローンの位置に対して上方と推定される方向に滴り落ちている。従って、SCP-2678-2の体長は何処かの時点で垂直方向に折れ曲がっていると考えられる。

<13:58:19> ドローンが移動能力を喪失。ドローンは一見動き続けているようだが、これは実際にはSCP-2678-2の生理学的反応の結果でしかないことに留意すべし。エージェント ロジャースが過呼吸を開始し、医療評価のために移動偵察車両から遠ざけられる。ドローンによる観測は続行。

<13:59:43> ドローンが唐突に停止。大きく唸る音が聞こえ、ドローンは非常に急速に動き始める。外部照明装置、機能停止。後部カメラ、機能停止。正面カメラの映像は不鮮明になり、その後に途絶える。ドローンは、おそらく腐食性の環境のために、内部構造に甚大なダメージを被ったことを報告する。

<14:03:34> 音声入力は、180~200 Hzの範囲の高音域の発声と、それに重なる70~110 Hzの範囲の不鮮明な低音域の発声を記録する。後日、録音のデジタル増幅と組み合わせた財団の音響技術者による発声分析の結果、問題の音声には全体に100~1300名の異なる人間の声が含まれていると判明した。発声の正確な性質は確認されていないが、スタッフの音響学者は後の分析において、歌っているのではないかという仮説を立てている。

<14:04:01> 正面カメラが短時間機能を再開する。ドローンは未知の光源で薄く照らされた、開けた空間の上に吊るされている。およそ7m下方に、何らかの形状が無数にのたうっている ― 細かい特徴までは映っていない。濃い白色の液体が塊を覆っている。音声入力は先ほどと同じ高音域の声を記録しているが、音量は顕著に高まっている。一瞬、別な唸り声によって声はかき消される。塊の下部にある何かが開き、のたうっていた形状群が落下。発声の音量は徐々に減少し、やがて完全に聞こえなくなる。ドローンの背後からシュッという音が聞こえ、何かに打たれたドローンが落下してゆく。正面カメラ、機能停止。音声システム、機能停止。通信システム、機能停止。ドローン、オフライン。

補遺2678.4: Dクラス実験ログII

実験ログ: 有人探査2A

日付: 17/02/28

実施担当者: エージェント エリン・ヴァン・ペルト

序: 以下の記録は本来、Dクラス職員をSCP-2678の内部に送り、そこにある宗教的図像についての追加情報を獲得するために行われたものである。実験の予期せぬ結果のため、この任務は完全には完了していない。

記録開始: 21:14:16 17/02/28

被験者は以前に発見されたSCP-2678空間異常に入る。 エージェント ヴァン・ペルトの指示を受けた財団エージェントたちが異常空間のすぐ外に待機中。被験者は、以前のDクラス実験の対象者に供給された全ての装置を装備している。

エージェント ヴァン・ペルト: 聞こえますか?

D-58391: ああ。今しがた言おうと思ったんだが、何かがおかしいような気がする。

エージェント ヴァン・ペルト: 何ですって?

D-58391: ここに来る途中で、こう何というか、よく分からねぇな。何か信じられないような物を感じ取りかけてたようなアレなんだ。俺のこのクソッたれな骨の中に感じることさえできた。でもそれが消えちまったんだ。今はそこになんか別のもんがある。

エージェント ヴァン・ペルト: 記録しました。周辺環境を説明してもらえますか?

D-58391: (沈黙) ここは教会かなんかとして作られたんじゃないのか?

エージェント ヴァン・ペルト: だと思いますよ? D-58391、正面カメラの電源を入れてください。

被験者が正面向きのカメラを起動する。映像は最初のうちは非常に暗い。被験者は正面向きのライトを点け、前方空間を照らす。足元には滑らかな石の床があり、すぐ近くの壁もまた石造りである。天井は極めて低い。左に逸れた所には傾斜があり、その先にはまだ被験者のライトが届いていない。

エージェント ヴァン・ペルト: 何が見えますか?

D-58391: こりゃひでぇ、おい— なんか臭いが(被験者が嘔吐する)、下水みてぇだ、でももっと酷ぇ、こんなのって-

エージェント ヴァン・ペルト: 口を拭って、ヘルメットを被ってください。吸気タンクをオンにすればもう大丈夫でしょう。何回か息を深く吸ってください。

被験者は従う。1分が過ぎた後、被験者は改めて応答する。

D-58391: オーケイ。神よ… 俺は今、こう、トンネルの中にいる。天井はめっちゃ低い。ここじゃ何をどうしたって物が見えやしねぇ。地面はかなり滑りやすくて、白い何かのブツで覆われてる。液体かな、知らねぇけど。で、っと、 (沈黙) 左側には、水路か何からしいもんがある。下水道じゃねぇかと思う。かなり昔っぽい見た目の下水道だ。虫唾が走るね。

エージェント ヴァン・ペルト: 水路に近づくことは可能ですか?

D-58391: やんなきゃダメ?

エージェント ヴァン・ペルト: 勿論です。

D-58391: 分かったよ、ちょい待ち。 (沈黙) こう、まだ結構暗い。見えにくいが、でも… めっちゃ濃くて、流れの遅い液体だ。見るからに下水道だな。しかも臭うぞ、ヘルメットを付けてんのに未だに… クソッたれ。

エージェント ヴァン・ペルト: 水路は何処に続いていますか?

D-58391: そうだな… どっちの方角にも延びてるが、長さまでは分からん。 (沈黙) なんかこっち側から聞こえるぞ。

エージェント ヴァン・ペルト: 何か見える物は?

D-58391: 特に何も。

エージェント ヴァン・ペルト: そこに降りてみてください。進捗情報をよろしく。

D-58391: 了解。

D-58391は少しの間沈黙している。

D-58391: いい気分じゃねぇな。

エージェント ヴァン・ペルト: どういう意味ですか?

D-58391: 頭がぼんやりする。何かが間違ってるような、なんだか— (沈黙) クソが、足を滑らせちまった。足元はやたら滑るわ、周りは見えねぇわ、臭いのせいで吐き気はするわ… 此処は何もかもどっかおかしいぜ。

エージェント ヴァン・ペルト: 了解しました。出来るだけ早く貴方が外に出られるようにしましょう、我々としてはただトンネルが何処に通じているかを確かめたいだけなので。この状況は私たちにとっても初めてです。

D-58391: 成程ね。いやその、アンタらが皆科学だか何だかの連中だってのは知ってるけどよ、アンタらはここまで実際降りて来てるわけじゃないんだろ? (沈黙) まぁ別に責めやしねぇけどさ。責めたいとも思わねぇし。 (沈黙) 近付いてきてるぞ。臭いがかなりキツくなってきたし、地面に付いてるブツも量が増えてる。何もかもが滑りやすくてネトネトだ。もうホント勘弁してほしい。

D-58391は少しの間前進し続ける。液体の流れる音がバックに聞こえる。 D-58391はこれについて特に言及しないが、心拍数が著しく上昇している点には留意すべきである。

D-58391: 曲がり角がある。

エージェント ヴァン・ペルト: 向こう側には何があります?

D-58391: こ— この向こうには行きたくない。ホントにもうそれは嫌な予感しかしてない。

エージェント ヴァン・ペルト: これについてはもう話し合ったはずです、その角を曲がってください。私たちはその先に何があるか見たいだけです、それさえ済んだら貴方も帰還できます。

D-58391: 約束だな?

エージェント ヴァン・ペルト: 無論ですとも。

D-58391: 了解した。ちょっと待ってな。 (沈黙) 壁が無くなってるな。広い部屋だと思う。何かの動く音が聞こえる。何— (沈黙、鋭く息を呑む音) 水路はこの、あー、窪地に繋がってる。デカくて、渦巻いてて、それで…

エージェント ヴァン・ペルト: D-58391?

D-58391: 上… 俺の上だ、天井を突き抜けてる、まるで自分でブチ抜いたみたいに… デカい、肉っぽい、あー… 分からねぇが、その… ブツはそいつから流れて来てる… 水路の中のブツだよ、排泄物みたいに— なんか、めまいがする、ダメだ、待ってくれ-

エージェント ヴァン・ペルト: 大丈夫ですか?

D-58391: そいつから例のブツが山ほど流れてきてやがる、クソの滝だ、クソだけじゃなくてこれは… 体液か、これ… 何てこった、胸糞悪ぃ、俺—

エージェント ヴァン・ペルト: 少々お待ちを。

D-58391: 戻らなきゃダメだ。こんなの無理だ、何かが俺の頭をファックしに来てやがる。

エージェント ヴァン・ペルト: 記録しました。まだ牽引力はありますか?

D-58391: (歪み) 畜生、そんな- ああもう、気付かないほうが良かったかもしれねぇ。床が- 傾いて-

エージェント ヴァン・ペルト: 貴方はまだ直立できていますか?

D-58391: クソッ、クソッ、クソッ-

ここから15秒間、マイクの検出内容は空電、叫び声、何かの擦れる雑多な音、背景音のみである。

エージェント ヴァン・ペルト: D-58381、聞こえます?

D-58391: (不明瞭) 俺は、今- クソッたれの- (不明瞭) の川ん中- あぁ、冗談だろ、そこら中に身体のパーツがある。 (嘔吐)

エージェント ヴァン・ペルト: 周辺環境を説明してください。

D-58391: ここ- (歪み) ぶら下がってる、縁にぶら下がってる、俺のすぐ下に野郎がいて手は今にも滑りそうだ- (不明瞭) 神よ、神よ、奴らがみんな叫んでる、奴らの顔がひとつ残らず俺を見上げて (歪み) -星みたいに煌いてる、奴らのクソ忌々しい- 目 (歪み) 助けて、助けてくれ、ここに来て俺を引き上げてくれ、引き上げ- (不明瞭) と血と白い- 濃い- 手と腕、奴らが分離してる昇ってきて (歪み) 助けに来てくれ、お願いだから助けて、お願い(不明瞭)

何かを削る音と叫び声が聞こえる。マイクがハウリングし、通信が断絶。これ以降の出力は検出されない。実験は終了した。

付記: 更なるDクラス職員実験は承認待ちです。

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。