注意: 以下のファイルには、当該文書を夢ベースの実体からアクセス不可能にするために設計されている、イケロス-クラスのオネイリック・フィルタリング・エージェントが含まれます。この処置は特定の異常存在から影響を受けた人物への有害な認知効果を引き起こすことが判明しています。以下に挙げる条件のいずれかが当てはまる場合は閲覧を停止してください。
- 最近、夢に基づく異常存在からの影響を受けている。
- 最近、明晰夢を経験している。
- 認知抵抗値(CRV)が13以下である。
- 現在、この警告文を夢の中で閲覧している。
[ 夢界実体は検出されませんでした。文書を復号します ]
アイテム番号: SCP-3969
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: 現在、ヒトにおけるSCP-3969の発生を完全に防ぐための実現可能な手段は存在していません。現在の処置はその影響に対する民間の曝露を最小化することを重視しています。これを達成するために、以下の収容プロトコルが制定されます。
- 財団Webクローラは、SCP-3969に関連する情報がオンライン・コミュニティやディスカッション掲示板に現れていないかを監視します。対象となるサイトでは、SCP-3969に関する虚偽の情報を広めることを意図した偽情報活動が確立されます。学術出版業界に潜入している財団資産も同様に、SCP-3969の性質に関する誤った総意の促進を行います。
- SCP-3969が発生する確率を最小限に抑えるよう設計された睡眠テクニックを、特定の睡眠関連活動(明晰夢、誘発性入眠など)に興味を持っている層に導入します。
- 病院その他の医療機関に潜入しているエージェントは、昏睡状態の患者の記録に、SCP-3969-Aの関連する睡眠段階と一致する症状が無いかを監視します。影響されていた患者は最寄りの財団施設に移送し、治療と記憶処理を行います。
SCP-3969が関与する全ての実験はADRX-3969で実施されます。SCP-3969は実験目的であれば、長期的な入眠時感覚を促進するヒュプノス-クラス睡眠感覚誘発剤オネイロゲンを用いて引き起こすことができます。データの記録や被験者との意思疎通には、手順3969-04(補遺01を参照)に詳述されているプロトコルを遵守しなければいけません。
説明: SCP-3969は睡眠開始時のヒトに影響する現象です。当該異常現象の症状は入眠段階ヒプナゴギア1において最も顕著であり、異常なまでに長期間の睡眠麻痺と幻覚を伴います。影響者は典型的には、SCP-3969の主要な効果を意識することなく睡眠開始状態から移行します。しかしながら、入眠段階時の意識が90~120分間保たれ続けた場合、対象者は過去に記録上知られていなかった睡眠段階へと入ります。この睡眠段階は、SCP-3969-Aと指定される再発性の夢の経験を特徴とします。
SCP-3969-Aは対象者が眠っている場所に類似しています。夢の中の物品や構造物は、現実世界における相似物の位置・外見・状態を反映します。このような類似性は睡眠者が最初の領域から遠ざかるにつれて減少していき、周辺環境は不穏さと一貫性の無さを増していきます。
SCP-3969-Aを経験した人物は、一貫して夢の中における高レベルの明晰性を報告します。この睡眠段階中に行われた電子画像的な計測は、影響者がREM睡眠に留まっており、睡眠サイクルの進行やNREM睡眠への移行が発生していないことを示します。対象者はSCP-3969-Aが発生した際の睡眠からは休息を得られず、疲労感と共に目覚めると報告しています。明晰性が高いにも拘らず、睡眠者はSCP-3969-Aの状態にコントロールを及ぼすことができません。
SCP-3969によって誘発された夢を見ている人物は、疼痛刺激を含む正常な手段によって覚醒させることができません。身体的な必要性が満たされているという条件下であれば、対象者は夢の中に長期間留まることができます。Dクラス職員に行われた耐久実験では、睡眠者は医療問題が発生するまでの7日間にわたってSCP-3969-Aに留まることができました。SCP-3969-A内での自己終了が、夢を終わらせる唯一の効果的な方法のようです。
補遺01: 更なる実験は、SCP-3969影響者の覚醒後の記憶保持度が減少することを明らかにしました。SCP-3969実験に関与した全被験者の平均推定想起度は10%未満と見積もられています。このため、見た夢の内容想起に依存している夢日記などの記録手段は信頼性が低いと見做され、実験プロトコルから除外されています。
手順3969-04は、SCP-3969-Aの夢を記録する代用方法として考案された実験手順であり、REM睡眠状態の睡眠者との間で感覚データの送受信を可能とするものです。当手順は以下の2つに分かれます。
- 被験者からオペレーターへのデータ伝達。ここには、課題を達成するために、テレパシー能力を有する複数の異常存在2から派生した超感覚的伝送手段の使用が関与します。これらの方法を使用して訓練された被験者は、夢の中における自分の聴覚および視覚を受動的に伝達し、使用可能なデータを特殊記録装置に出力できます。
- オペレーターから被験者へのデータ伝達。これは、通常の人間の発話を受け取り、SCP-3969-Aの被験者が知覚可能な形態に変換するミーム的符号化装置によって達成されます。このように符号化された音声の受信は、被験者からは“頭の中に声が響く”ように感じられます。
当手順は認知抵抗値が13を下回る人物に使用されるべきではありません。そのような運用は被験者に即時の感覚過負荷を引き起こすことが判明しています。なぜこれが発生するのかについては、まだ完全には理解されていません。
補遺02:
夢報告3969-01
オペレーター: アシュリン・リンチ博士
被験者: D-6782
序: この実験の目的は、SCP-3969-A夢世界における手順3969-04の信頼性を断定することである。異常性の無い夢の中で被験者との間に行われた以前の試行では、成功した結果が得られている。
映像には、おそらく被験者の瞼の内側と思われる、暗い灰色しか映っていない。鈍い音が背景に聞こえる。
リンチ博士: もしもし?
被験者の目が開き、自分が横たわっているベッドを見た後、部屋の周囲に視線を走らせる。室内は、実験が行われている試験室5Aに類似している。
リンチ博士: 聞こえますか?
D-6782: おい、うるせぇよ… すごくうるさい。声の調子を落としてくれねぇか?
オペレーターは符号装置を調整する。被験者はベッドから立ち上がる。
リンチ博士: これでどうです?
D-6782: 大分マシだ。で… アンタが頭の中で話してるってことは、こいつは夢の中だと考えていいんだな。
リンチ博士: その通りです。実際には、貴方が慣れている夢とは違う種類なんですがね。今までのところの感覚を教えて頂けますか?
D-6782: 感覚は… かなりしっかりしてる。明晰夢ってのが普段こう、ビリビリ来るというか、肌寒い感覚があるってのは分かるか? 今はそれを感じない。スゲェなこれは、どこまで鮮やかなんだ。
リンチ博士: 記録しました。部屋の周囲を見て回って、何か奇妙に見えたり感じたりした点があれば教えてくれませんか?
D-6782: 了解。
リンチ博士: ありがとう。
被験者は部屋を歩き回り、家具を調べる。部屋は、現実世界の相似物の外観を正確に反映しているように見受けられる。被験者は手を伸ばし、テーブルの溝に指を走らせる。
D-6782: 正直なところ、何だろうな、こいつは少しリアルすぎる。俺が今寝てるのは確かなんだな?
リンチ博士: 全く以て確かです。では、外に出て右側2つ目のドアに向かってください。
D-6782: オーケイ。
被験者は暗い廊下に踏み出して右に曲がり、隣に“試験室5C”というプラカードが付いたドアへ向かう。被験者はドアを開けて入室。室内には、入口の反対側に大きな長方形の鏡があり、中央にテーブルがある。3枚のインデックスカードが卓上に並んでいる。
D-6782: 今度は何だ?
リンチ博士: そのインデックスカードを見てください。
D-6782: 白紙だ。
リンチ博士: いえ、裏返しなのです。表面を見て、内容を読み上げてください。
被験者はカードを裏返す。それぞれ"Szechuan(四川)"、"Chickadee(コガラ)"、"penalize(罰する)"という言葉が書かれている。
D-6782: “四… 川”、“コガラ”、“罰する”。だよな?
リンチ博士: ええ。
D-6782: そうかい、そりゃ良かった。これで俺が文字を読めるってことが分かるな。次は?
リンチ博士: もう一つ別な事を頼もうと思っています。貴方は恐らく気に入らないでしょうが、これも実験の一環なので、私のためと思って実行してください。
D-6782: 何をだよ?
リンチ博士: テーブルの横にあるファイルキャビネットを開けてください。
被験者はキャビネットを開く。中には9mm拳銃とマガジンがある。
D-6782: 銃か?
リンチ博士: そうです。装填して自分を撃ってください。
D-6782: 何?
リンチ博士: マガジンを銃の内部に装填し、スライドを引いてから —
D-6782: 装填の仕方なら分かってる。ただ… なんでそんな事をさせたいのかが気になる。
リンチ博士: 退出プロトコルの一環です。夢から覚めるための手段ですね。
D-6782: つまりだな、俺にはそれが上手くいくと思えないんだ。それに今はすごく鮮やかに物事を感じてる。こいつは実際に痛むだろうってはっきり分かるんだよ… 酷く痛むってな。
リンチ博士: 信用してください、全く何も感じないはずです。
D-6782: 確かなんだな?
リンチ博士: はい。
D-6782: オーケイ、分かった。アンタを信用しよう。
被験者は拳銃に装填し、銃が視界を離れる。
映像終了。
結: 手順は意図した通りに機能した。被験者は覚醒直後に群発頭痛の症状を訴えたため、回復のために48時間の試験延期が許可された。
補遺03:
夢報告3969-02
オペレーター: アシュリン・リンチ博士
被験者: D-6782
序: この実験の目的は、ADRX-3969に最も近い都市の夢世界バージョンを探索し、特筆に値する不同性を記録することである。輸送設備はSCP-3969-A内の被験者にも利用できるように準備済である。
[記録前略。被験者は4輪バギーで近場の街へ移動した。]
被験者は歩道を歩きながら、周囲の建物を調べている。時間帯は夜間のように思われる。
リンチ博士: あのですね、数日前に貴方に嘘をついたことの埋め合わせがしたくて、貴方のキットに付け加えたものがあるんです。
被験者が立ち止まる。
D-6782: 何だ?
リンチ博士: フロントポーチを開けてください。
被験者がサバイバルキットのフロントポーチを開いて手を入れ、指でポーチの中身を探るのが映っている。数秒後、彼は円筒形の物体を掴んで引き出す。処方容量の丸薬が入った瓶である。
D-6782: こりゃ何だ、青酸カリか?
リンチ博士: もっとマシなものです — ペントバルビタールですよ。素早く、苦痛を伴わずに夢を終えることが可能です。貴方はもう拳銃自殺を望んではいないでしょうから、もっと良い方法を提供すべきだと思ったもので。
被験者は瓶をポーチに戻す。
D-6782: あー、まぁ… ありがとよ? [沈黙] それで、俺はここで何をすればいいんだ?
リンチ博士: 今、貴方は奇妙なことや注目に値するものを探していますね。この夢はサイトから貴方が遠ざかるほどに崩壊していくはずです。貴方は大体… サイトから30km離れているので、何かしらおかしな物が見え始める頃です。
D-6782: それじゃ、目を光らせておく。
被験者は歩き続け、やがて“REST INSIDE”という雑に書かれた看板を掲げた建物に到着する。
D-6782: ハッ。“なかでやすめ”だとよ。
リンチ博士: 私にもそのように読めます。
D-6782: 中に入ってみるか?
リンチ博士: ええ。建物内に入場してください。
被験者は懐中電灯を点けて建物へ入る。内部には金属製のベッドが並んでいる。室内にあるベッドの複数が歪み、鋭角に曲がっているように思われる。凝固した黄色い物質の層が床とベッドのフレームを覆っているのが見て取れる。
D-6782: 一体こりゃ何だ?
被験者は膝をついて床を指で擦り、臭いを嗅ぐ。被験者はひるみ、咳き込み始める。
D-6782: ウッ、クソッたれ。クソみてぇな臭いがしやがる。
被験者は懐中電灯の明かりを部屋に走らせてから、天井を照らす。黄色の物質は通気孔の格子から漏れているように見える。
リンチ博士: 換気口に従ってください。
被験者は通気孔が通っている部屋の後壁を懐中電灯で照らす。彼は後壁に近づき始めるが、“SLEEP INSIDE(なかでねむれ)”という語句が書かれたドアに気付いて立ち止まる。
D-6782: ったく。
被験者はドアを開けて入室する。黄色の物質が次第に量を減らしつつ、入口から1mの所まで円形に広がっている。天井から通気孔が下り、オープンクローゼットの上にある壁へと曲がっているのが見える。クローゼットの後壁に“DREAM INSIDE(なかでゆめをみろ)”という語句が書かれている。
D-6782: 何だか… 何だか窒息しそうだ。外に出ていいか?
リンチ博士: クローゼットの中を一目見てからなら退出して構いません。
D-6782: オーケイ、オーケイ。ただ… ただちょっと見るだけだからな。
被験者はクローゼットに入り、天井を見上げる。通気孔の端は天井から下り、被験者の頭上数メートルの位置で終わっている。懐中電灯で中を照らすと、黄色の物質が通気孔の内壁を滴り落ちているのが見て取れる。
D-6782: 何もねぇな。
リンチ博士: 了解です。それでは —
D-6782; 待て、何か聞こえた。
金属を擦る音、水を掻きまわすような音が聞こえる。少しして、女性に似た人間の頭部が天井を下り、通気孔の終端から突き出す。
D-6782: 何だ? 何が起こってんだ?
リンチ博士: そこを出てください!
被験者はクローゼットの入口を振り返るが、そこには壁しかない。
D-6782: おい冗談止せよ、ここから出せ!
頭部は被験者に向かって回転し、口を開く。口は急速にねじ曲がり始め、クローゼットの寸法に合うサイズまで拡大して、被験者を完全に飲みこむ。大きく飲み下す音が聞こえ、映像は暗い赤色で埋め尽くされる。
映像終了。
結: 被験者は集中治療室へ移転された。現時点では、回復可能かどうか判明していない。
補遺04:
夢報告3969-03
オペレーター: アシュリン・リンチ博士
被験者: D-6782
序: この実験の目的は、手順3969-04を使用し、被験者との意思疎通を再度確立することである。
リンチ博士: もしもし?
リンチ博士: 聞こえますか?
映像が始まり、明るい赤色の風景を映す。巨大な台形のプリズム構造が遠くに見える。被験者はうつ伏せで地面に横わたっているようである。
D-6782: 博士? ア… アンタか?
リンチ博士: 私です。何が起こったのですか?
D-6782: あの薬… 効かなかった。離れられない… 離れられないんだ! 助けてくれ!
リンチ博士: 貴方を目覚めさせるために最善を尽くしています。自殺を試みていますか?
D-6782: 死んでもダメだ。悪くなる一方さ。俺… 俺はもう完全に詰んじまったんじゃないかと思う… 俺はもう起きることなんかできないと思うんだ。
リンチ博士: いえ、しかし… 持ち堪えてください、いいですね? 私たちは貴方をそこから連れ出します。貴方は回復できるんです。
遠くに女性の姿が現れる。被験者が這って後ずさりし始める。
D-6782: クソッ、クソッ! 博士!
リンチ博士: 何てこと…
女性の姿が被験者に向かって走り始める。
D-6782: 嫌だ、嫌だ、嫌だ、いやだ、いやだぁ!
女性は被験者に突進しつつ、被験者の口に収まるように自身の身体を歪曲し始める。被験者は目に見えてもがいているが、抵抗できていない。
映像終了。
結: 被験者は依然として蘇生の試みに無反応であり続けている。手順3969-04を用いた更なる通信試行もまた、同様に失敗している。
補遺05:
夢報告3969-04
オペレーター: N/A
被験者: N/A
序: N/A
………… |
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