
初期回収作業中に撮影されたSCP-638の写真。
アイテム番号: SCP-638
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-638は常時、サイト33において厳重に監禁してください。女性職員はSCP-638とどんな形であれ接触してはならず、SCP-638の収容セルの30メートル以内に立ち入ることも禁止されています。SCP-638の収容セルは10メートル×15メートルのものとします。部屋の内装に関する賞罰を通したSCP-638へのオペラント条件付けが現在行われています。SCP-638はこの条件付けの内容を理解すると激怒しましたが、現在はよく適応してきています。これらの物品はSCP-638の違反行為に対する罰として撤去されることがあります。SCP-638の収容セルには現在、以下のようなものが設置されています:
- コンクリートの床の上に敷かれた、草で覆われている厚さ20インチの土。
- オリーブ(Olea europaea)の木の鉢植え3つ。
- 一般的なツタ(Hedera helix)で覆われた格子垣1つ。
- 草や他の植物を維持するための植物生育ライトと自動給水システム。
SCP-638は食事に特別な配慮が必要です。SCP-638はあらゆる種類の調理済みの食品を摂取したがらない、もしくは摂取できません。実験によって、SCP-638は哺乳類の生肉ならば摂取できるということが判明しています。またSCP-638は常にワインを要求してきますが、これは特別報酬として制限されて取り扱われます。
説明: SCP-638はやせた体型の人間の男性のような外見をしており、毛髪は無く、広範囲に瘢痕が見られます。SCP-638は[データ抹消]にために生じる火傷でほぼ全身が覆われています。SCP-638は生肉とワインの摂取量に直接比例する異常な速さの治癒能力を見せますが、瘢痕はそのままで毛髪も再生しません。SCP-638は英語を理解しているようで、指示に反応することもできるようですが、それに対する返答をすることはできないか、するつもりがありません。SCP-638は古代ギリシャ・アイオリス方言のボイオティア下位方言で一つか二つの単語を叫ぶという形式で要求を行ってきました。現在までに、SCP-638はワイン、ツタ、オリーブの木、床面に草を植えること、女性、生きた動物、太鼓、フルート、そして空を見ることを要求してきました。当初SCP-638は要求が満たされないと暴力的になり、短時間に爆発的な力と速度を発揮してみせました。SCP-638は██████████博士などの職員や保安要員の死を引き起こしています。怒りが頂点に達すると、鋼鉄を殴ってへこませたり、大人の男性を軽々と持ち上げて放り投げたり、拘束を破ることができるようになります。SCP-638は激怒すると、ガラスを割ったり人を難聴状態にさせるほどの大きな音量と破壊力を持った咆哮を発します。この咆哮はいくつかの強度があり、もっとも強力なものは鋼鉄のドアのヒンジを吹き飛ばすほどです。音響解析によると、SCP-638の声や咆哮には、オスのライオンや熊、特定の鳥類といった動物の鳴き声と類似した響きが見られます。こうした怒りの爆発を経ても空腹や渇きが満たされないとSCP-638は無気力状態に陥るので、強制措置が失敗した場合は対象を飢餓状態に置くことで効果的に行動を制御できます。
SCP-638は推定半径20メートル以内にいる女性に、強い精神性あるいは共感性の影響を及ぼします。この範囲内にいる女性は必ずSCP-638の影響下に入り、いかなる抑制も効かなくなります。現れる影響は対象になる人物によって異なり、それぞれの人格や経歴によって変化します。共通点としては、乱れた格好で踊ったり、跳ねたり、叫んだりする傾向が挙げられます。妨害されない場合、対象となった女性は疲れ果てるまで、あるいは物理的に継続が不可能となるまで踊り続けます。SCP-638の影響下から女性を引き離そうとする試みは、SCP-638および影響を受けたすべての女性からの暴力的な反応を招きます。影響範囲から引き離すことに成功すると、対象は自分の行為をすべて覚えており、自分がするつもりではなかった行為をした場合、つまりほとんどの場合においては、彼らはひどく恥ずかしがり、SCP-638に再び近付こうとはしなくなります。SCP-638は脱走を行うべく、影響を受けた対象を利用したことが何度かあります。影響を受けた対象は通常以上の物理的な力や敏捷性を見せ、検死ではアドレナリン量の上昇と[データ抹消]からなる未知の化合物が発見されました。口頭によるコミュニケーションは行われていないため、SCP-638はなんらかの精神的な暗示によって対象の行動を制御していると考えられます。テレパシーの可能性についての研究が進められています。
SCP-638は[データ抹消]にある山中の屋敷の焼け跡で、かろうじて生きているところを発見されました。他の生存者は発見されませんでしたが、15体の(おそらくは)人間の女性の遺体が瓦礫の中から発見されました。[データ抹消]を経て残存した遺体は完全な検死を行うには少なすぎましたが、残された骨からは不審な点は発見されませんでした。SCP-638はこの屋敷に彼と同じような存在がいたことを示唆したことはありませんが、実際どうであったかは不明瞭です。極端な飢餓状態に置いた上で尋問を行った結果、同様の存在は確かに実在しているものの、その魅了した女性たちによるグループ以外のコミュニティを形成することはないということでした。現在まで対象は他の存在の居場所を明らかにしていませんが、尋問は継続して行われています。