SCP-076-ΩK

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財団記録情報セキュリティ管理室(RAISA)からの通達

以下の文書における当SCPオブジェクトの記述はΩKイベント群を受けて大幅に改訂されたものです。オリジナルの文書のコピーはこちらに保存されています。何か質問がある場合は現在のSCP-076の研究主任であるDr.アンジェラ・ラングレーまで連絡してください。

— エミリオ・レオナルド、RAISA文書キュレーション部門主任


SCP-076

アイテム番号: SCP-076

オブジェクトクラス: Keter Safe

特別収容プロトコル: SCP-076-1が収容される収容エリア25bは海抜マイナス200m、地震学的に安定な地域の強固な岩盤層をくりぬいた内部に位置しています。収容施設への出入り口は垂直エレベータのみで50m毎に厚さ20cmの壁で作られたブラストドアが設けられています。エレベータシャフトは使用時以外は海水で満たしておきます。

収容エリア25bの構成は以下の通りです:

  • 1.5mの強化物質により囲まれた一辺7mの立方体空間からなるPrimary Containment Zone(PCZ)。PCZは必要に応じて浸水および排水できるよう設計されています。アクセスが必要でない限り海水で満たされたままにすべきです。
  • 150mのPCZへの唯一の出入り口"殺害通路"(水、電力、排水口、換気口含む)。通路の壁と床はPCZと同様の補強と20000Vの電気ショックを流せるシステムが施されています。浸水機構を除いたこの構造のメンテナンスは現時点では優先度が低いと見なされています。

SCP-076-2はサイト-17の標準人型収容房へ収容され、歩行を補助するための杖など日常生活を送るために十分かつ適切な介護用支援が提供されます。収容房の出入り口には最低2名の武装職員を配置し、SCP-076-2の首には遠隔起動・干渉された際に瞬時に頸部を切断し無力化することを目的とした首輪型デバイスを装着してください。

セキュリティ違反と見なされない限り、SCP-076-2の精神的健康を維持するため、担当研究主任及びサイト管理官の裁量で対象の娯楽的な要求を受理することが許可されています。

説明: SCP-076は2つの構成要素から成り立ちます。立方体の石(SCP-076-1)と実体を伴った人型(SCP-076-2)です。

SCP-076-1は3m立方の黒い変成岩です。SCP-076-1の内外の表面全体にどの既知の文明とも一致しない模様が深く刻まれています。放射性同位元素分析によりおよそ10000年前の物と判明しています。一面だけ扉がついており、幅0.5mの鍵で施錠されていて、20個の小さな錠前が周りを円を描くように付けられています。施錠するための鍵は見つかっていないため、扉を閉めてしまえば施錠することはできません。

内部の温度は93Kで、内部、外部から中の温度を変えることはできません。内部の中央には高さ2.13mの直立した石棺がSCP-076-1の内側の角からのびた未知の材質、製法の鎖で封印されています。

SCP-076-2は20代後半の痩せたセム人男性の見た目をしています。髪は黒く、目は灰色、肌はオリーブ色。身長1.96mで体重81.65kgです。全身に多くの不可解で魔術的な刺青(大部分は嫌らしい目つきで睨む悪魔のような顔の形)が刻まれており、目立たないものから見るからに仰々しいものまで様々なものが存在します。

かつてSCP-076-2は超人的な膂力と速さを持ち、傷つきはするが普通の人間では動けなくなるような痛みと衝撃でも無視することができました。過去の出来事より、SCP-076-2は以下の能力を保有していたことが分かっています:

  • 4分間の攻撃を耐え、強化鉄鋼製の安全扉を引き裂きます。
  • 64m以上の距離を3秒以内に詰めることができます。
  • 複数の12.7x99mm NATO弾を頭部に受け脳にひどい損傷があるにもかかわらず、数分間殺し続けます。
  • 鉄の棒で拳銃やアサルトライフルの弾をはたき落とします。
  • 酸素がない状態でも窒息するまで1時間以上生存します。
  • SCP-076-2の最も目立った特徴として、どこからともなくブレード状の武器を実体化させます。スローモーションビデオによれば、ブレードは"空間上の小さな穴"と形容される小規模な次元の亀裂を通じて引き出されています。この亀裂がどこに繋がっているか、またどのようにしてSCP-076-2が次元の亀裂を生み出しているのかは不明です。映像によれば、ブレードは「空間上の黒い虚空」に見える完全に無光沢の黒色物質から構成されているようです。SCP-076-2から離れると直ぐに消えるためブレードの構造分析は現時点では不可能です。
  • 死亡後、その肉体は即座に腐敗し塵になります。またSCP-076-1の棺は勢い良く閉まり、全ての鍵が締まり封印された状態となります。その後SCP-076-2は棺の中で6時間から25年かけて肉体を再生します。

しかしながらこれらの特異な能力(運動機能・物体生成・肉体再生)は現在、後述する事件報告K39867S7W以後SCP-076-2が負った恒常的な脳機能障害によって大きく制限されているか、その行使がほぼ不可能であると見なされています。

また、過去にはSCP-076-2は生きている人間に接触すると興奮状態になり、上記の異常性を用いて自身が死亡するまで出会う人間全てを殺害し続けるという特徴的な行動で知られていました。これらの特性はΩKの開始以来発現が観察されていません。

補遺076.2020.1: 事件報告K39867S7W

2020年9月12日、SCP-076-2の収容違反が発生しました。事件当時SCP-076が収容されていたエリア25bに配置されていた武装職員は全てSCP-076-2に突破され、現場のレベル4職員は規定プロトコルに基づき最終フェイルセーフ手段として海水を収容エリア全域に浸水させることを決定しました。1

24時間後に施設機能復旧のためエリア25bの封鎖が解かれた際、探査斑はアクセス・シャフト内において水中に沈んだ状態のSCP-076-2を発見しました。発見当時、SCP-076-2の肉体は一見溺死したように見受けられる状態であったにもかかわらず、過去SCP-076-2が死亡した際その死体に確認されたような異常な腐敗を示していませんでした。

これをイレギュラーな事態だと判断した探査斑は厳重な拘束を施した上でSCP-076-2を確保し、検死研究室へと移送した結果、SCP-076-2の肉体が心肺機能の停止による重大な機能障害を起こしており、かつ脳レベルでは意識を保ち続けているという医学・生物学上の矛盾した状態にあることが明らかになりました。2

担当医療班はオブジェクト保護の観点から、救命・延命を目的としたSCP-076-2の治療措置の許可を要求しました。前例の無い事態に対する約20分の審議の結果、要求は承認されました。

補遺076.2020.2

治療による心肺機能の回復後、SCP-076-2は抵抗の意思を見せること無く財団の保護下にあります。現在SCP-076-2は広範な脳機能障害を負っており、これは溺水によって晒された長時間の酸素欠乏状態に起因すると考えられるものです。以下のような複数の症状が確認されています:

  • 下半身の軽度な麻痺
  • 協調運動障害 - 歩行時のふらつき、手足の震え
  • 記憶の混濁 - 特に長期的過去におけるエピソード記憶の欠落
  • 複数の操作処理を含む手順(複雑なボードゲームなど)の解決能力の喪失・減衰
  • 反射運動能力の低下
  • 獲得性神経原性吃音 - 非流暢な難発(言葉を出すのに間隔を要する)

以前であればSCP-076-2はこうした重度の負傷を負った場合、自身に致死傷を与えて意図的に死亡することで、死亡後SCP-076-1から健康な状態で復活する異常性により、その負傷による負の影響下から能動的に脱することが可能でした。しかしながらΩKイベントの発生により全生物の生物学的死亡が不可能となったため3、現在SCP-076-2はこれらの症状を回復させる能動的手段を保有していないものとみなされています。

またSCP-076-2の顕著な変化として、過去確認されていた人類に対する攻撃性を表面上喪失したことが確認されています。これは、上記の脳機能障害によりSCP-076-2が人間を殺害する能力を大きく減じたこととの大きな関連性を持っていないようです。以下は、SCP-076-2に対するインタビュー記録です。

日付: 2020/09/20

質問者: Dr.アンジェラ・ラングレー、精神分析学者

回答者: SCP-076-2

序文: SCP-076-2は自身に割り当てられた介護用ベッドから身体を起こし、ラングレーに顔を向けていました。SCP-076-2の状態は落ち着いておりインタビューにも協力的でしたが、回復後から継続して確認されている催眠状態に似た虚脱的な様子を示し、しばしば質問への応答に時間を要しました。

[記録開始]

ラングレー: こんにちは、076。気分はどうですか?

SCP-076-2: [数秒の沈黙] ああ、悪くない。こうして、清い布の上で [数秒の沈黙] 憩うというのは。

ラングレー: 良ければ、いくつかあなたに質問をしたいの。構わない?

SCP-076-2: [数秒の沈黙] 答えられること、であれば。

ラングレー: あの……事故の後、あなたは明らかに変わったわ。それは身体のことだけじゃ無くて、その内面、心が。自覚はある?

SCP-076-2: ああ。[数秒の沈黙] どう、変わったよう、見える?

ラングレー: そうね、以前と比べてかなり落ち着いている……暴力的で無くなったように感じる。理由に心当たりはある?

SCP-076-2: 私を、駆り立てていた、ものが、遠ざかった。

ラングレー: それは何?

SCP-076-2: [数秒の沈黙] 殺戮の欲求、衝動。誰かを、殺さなければならない、という、焦りが、今は無い。鼻を通っていた、血混じりの風も、いまは清々しく、さわやかだ。私は今、安静の中に居る。

ラングレー: それが無くなったのは何故?

SCP-076-2: もはや、無意味、であるから。

ラングレー: "無意味"?

SCP-076-2: そう、無意味だ。私が殺すべき者は、もう居ない。私はもはや、衝動の奴隷では、無い。

[数十秒の沈黙の後、SCP-076-2は僅かに微笑む]

SCP-076-2: 私は、自由だ。

[これ以降、SCP-076-2は質問への明確な応答を示さなかった]

補遺076.2022.3

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  • ΩK
  • safe
  • scp
  • 人間型
  • 刻印
  • 生命
  • 異次元
  • 自我

ページリビジョン: 85, 最終更新日時: 28 Oct 2022, 23:32 (5 days 前)


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アンジェラ・ラングレーはタイピングの手を止め、小さくため息をついた。ΩKがSCP-076-2に精神的変化を与えたのは間違いない。では、その性質の何が変化を引き起こしたのか?

遠い昔にも思える過去、オメガ-7("パンドラの箱")が現役だった頃に、SCP-076-2とアンジェラは接触したことがある。たった1回。だがその1回は暴力的で、過剰に印象的だった。彼は退屈な財団の手続きへ苛立ったというだけの理由で、アンジェラの目の前でサイトの一角を引き裂かれた鉄と臓物の混合プールへと変えたのだ。

財団が彼の殺人欲求を押さえ込むため、首輪爆弾によるオペラント条件付けからロボトミー手術、古代の呪術儀式に至るまであらゆる封印と制限を施していたにもかかわらず、それは起きた。人の形をした狂乱。予測不可能な原始的恐怖。人知では制御することの出来ない、怒りに満ちた咆哮。財団は最終的にSCP-076-2を海の底へと閉じ込めることを選んだ。SCP-076-2自身の衝動以上に、彼を飼い慣らすことが出来ずに。

そう、単なる脳機能障害だけでは、あの穏やかさに説明が付かない。

アンジェラはもう一度インタビューを思い返し、脳内でSCP-076-2の1つの言葉に下線を引く。

"無意味"

収容から長らく、SCP-076-2の興味は人の虐殺に向けられてきた。人が死ななくなったことで、彼の目的は永久に達成できなくなったと言えるだろう。ならば、それこそが"無意味"の意味なのだろうか。

あるいは……。
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しかし、SCP-076-2は時折目を覚まし(事実上の「蘇生」)、人間が生きるのに必要な生体機能を完全に取り戻します。その後SCP-076-1から出ようとします。外に出ると催眠状態に入り、他の生命全てを無視し一番近くの人間を探し始めます。生きている人間に接触するとSCP-076-2は興奮状態になり、出会う人間全てを殺し始めます。

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永劫の生に捕われた私たちこそが、もはや人間という枠から解き放たれてしまったのだろうか?
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