クレジット
タイトル: Organizal
著者: Fireflyer&
SealBaby-V
作成年: 2024
http://scp-jp-sandbox3.wikidot.com/sharedpage:8a4b1512-1710763210077-categorya
皆さんこんフィリア!黒の女王のフィリアです!
やぁやぁおはようさん。黒の女王の朝凪や。
黒の女王・スィール。
ブラッククイーン・アイドル起動しました。対話・記録・情報開示システムを展開します。
なんやこの機械?この子すごいんだよー!調査もしてくれるし会議にも参加してくれる。そしてなんと自動でカタログも記録してくれるの!アイドルちゃんも自己紹介して!こんにちは妹様方Little Sisters。私はブラッククイーン・アイドル。カタログの管理および記録そして共有する機能を携えており、フィリア様が申し上げたように基本的に展開することはありませんがタイムラインの調査システムも搭載しています。便利だな。ほーん?便利なのはええんやけど、なんていうか機械に姉妹扱いされんのはちょっと気持ち悪いなぁ……それは失礼しました。しかし私には実際に姉妹はいますしあなたたちの事をそれと同じくらい大切に思っていますよ。そういう話はまた今度ね!今日は緊急なんだから!ほら早く始めるよ!アイドルちゃん進行お願い!承知しました。9827例目、ファイル名Organizalに14 May 2024 04:14より記録を開始します。
ベースライン
直接視認している間は動かないコンクリートと鉄でできた彫刻です。ほとんど全てのタイムラインではSCP-173として財団に収容されています。目を逸らしたら、首をポキっと折られちゃうみたいです!生身の私には管理は出来なさそう……血液成分や排泄物成分を垂れ流しているので、収容状態にあるときは使い捨て職員を使って収容コンテナ内を清掃している。財団の中でもかなりオーソドックスな部類の収容方法だな。それにしても相変わらず人使いが荒いんやなあ。
必須条件
今のところわからない。今まで私達は膨大な量のタイムラインを調査してきた。もちろんそのタイムラインの財団の保有しているオブジェクトも含めてだ。財団が存在しないとかそういうことがない限り、彫刻は存在は確認されている。まあ、その彫刻達が同じ存在かそもそもわからんねんけどな。異常性・番号自体は同じやけど見た目が違うことが多い。まあ今回はこいつらを同じものと仮定して話していくで。いつ作られたかも、誰が作ったのかも何にもわかんない。財団のある部門が関係してるかもって噂はあるけど、ま~ったくわかんない!私達でもわかんないんだからもう誰も分かんないんじゃないかな~?結論、必須条件は不明です。
実用性
皆無。とは言い切れませんが、役に立つかと言われれば、私は間違いなくNoと答えます。兵器としてなら利用できる……でしょうか?たくさん増殖させて世界がボロボロになった実例なら聞いたことがあるで。不可能とは言えないな。構成素材は世に出回っているものばかりであるから、彫刻の作成方法さえわかってしまえば量産化も実現可能な部類だろう。でも監視役がいないとだれにも止められなくなっちゃうんじゃないかなあ。意外と大変そうかも。ま、どっちにしろ実用性は無いと考えた方がややこしくはなさそうやな。
傷つきやすさ
そもそもだが、あんまり破壊した事例がない。あくまで彫刻なので、意外と叩き割ったら壊れるなんてこともあるかもです!ほな例えば彫刻を4人なり5人なりで囲んでもうて銃でバーン!って撃っちまえば壊れるかもって事かいな。粉砕機で細かく砕くことができたという事例はあります。しかし、粉々にした後も異常性を保持していたため完全な破壊とは言い切れないかもしれません。危なそうなものには手を出すなってとこだけは財団に賛同できるな。
実例: タイムライン O-131
まずは概ね一般的なタイムラインから紹介しておきましょう。こちらにおいても彫刻の収容プロトコルはコンテナ内に閉じ込め、定期的に清掃をしています。んで、どこが普通の財団と違うん?こんだけ収容プロトコルが同じなら特徴も同じなんとちゃうんか?このタイムラインでは人的被害の抑制のためにSCP-131を収容プロトコルに組み込んでいる。え!131ナンバーってあの1つ目の可愛い子?単眼のアノマリーだ。あまり多くない人類に友好的な個体としても知られている。そんならここの財団はアノマリーを有効活用してるってワケか。珍しいこともあるんやな。そういえばこれって、例の条件には引っかからないの?ええ、アレの発生条件はあくまで彫刻に“スポットライト”が当たらなくなることだ。つまり、収容プロトコルにベースラインからの逸脱がある程度では全く問題ない。……何の話や?後ほど詳しく説明致します。
実例 タイムライン T-102
このタイムラインでは世界中で“視線”を感じる場所が急増しちゃったの!全世界で視認されることが異常性発現のトリガーになっちゃう子たちがみんな暴れちゃって大変だったの!何とかするために壊し屋とかが頑張ってたけど結局あんまり解決にはならなかったの!しかし、彫刻はこの異常の影響で動きを止めてしまいましたね。だから財団は彫刻に関する研究を一通り済ませた後に無力化判定をしたんだよね!……で、結局ここが条件を満たさなかった理由ってなんだっけ?このタイムラインでは財団が報告書にNeutralized、つまり無力化判定をした後に報告書が削除されずにアーカイブに送られた。条件の鍵は報告書にあるとみればわかりやすいだろうか。さっきも言ってたけど条件って何のことや?彫刻がなんか関係してんねんやろ?あぁ。そして、私達黒の女王の目的にも大きく関わるんだが……まだ確証がない。アイドルの説明を少し待っていて欲しい。……さよか。ほな次行かさせてもらいますわ。
実例 タイムライン R-173
このタイムラインはすごいでぇ?彫刻共がプラナリアみたいにドバドバ増殖してってんねん。彫刻が増えたのか?どうやって?記録に残ってないし、どういう感じで増えたかわからんわ。そんでまあどんぐらいヤバイかって言うとなぁ……爬虫類ですらボコボコにされとる。数の暴力ってやつやな。150体でズタズタにしてたらしいで。爬虫類って……あの爬虫類か?不死身の?おーそうや。それだけやない。こいつらは増えに増えて最終的にアメリカを全部乗っ取りおったんや。国の方やなくて大陸の方な。え~!?北アメリカ大陸と南アメリカ大陸をどっちも占領するってどれだけ増えちゃったの……?今は核で数を減らしてったり月に送ったりして対処してるらしいけどな。あぁそういや実用性のとこで量産についてちょっと話したやろ。正直こいつらを増やすのはデメリットがでかすぎるんちゃうかなと思ってな。気を付けなあかんでっちゅう話や。
さて、そろそろアイドルから説明してもらおうかと思ったんだが……申し訳ございませんが、情報整理に時間がかかってしまっているためもう少しお話していただければ幸いです。なんや?そんな情報量が多いんか?もちろんそれもあるんだけど……アイドルちゃん結構古い機械らしいからこういうのに時間かかるみたいで……1993年製です。ウチの持ってるボロの特異品と同じくらいやな。自己紹介の時くらいに整理を始めたんだが、ここまで時間がかかるとは思ってなかったな。……仕方がない。アイドルに説明してもらうつもりだったタイムラインを私が伝えよう。申し訳ございません。よろしくお願いします。
実例 タイムライン C-019
このタイムラインでは彫刻はある団体によってサイト-19ごと爆破されている。確か、混沌の反乱と言ったかな。思想は私達と似ている部分はあるが特別関わりがあるわけじゃない。時々そいつらの活動に協力したり逆に対立したって言う黒の女王がいたっていう話は聞いたけど、実際あいつらの目的ってよくわからん。別件で調査したことがあるけど、あやふやなんだよね~。財団を潰すことが目的でもなく、ただ邪魔をしたいだけかって言われれば違うかもしれないし、よくわかんなかったな。というかなんでここを爆破したの?恐らくだが、こいつらも条件に気づいた可能性がある。フィリア、あいつらの事を調べたんだったらこんな記録が出てこなかったか?インサージェンシー・プロジェクトとか。そういえば見たことがあるかも!セキュリティが強すぎてあまり見れてないんだよね。私も部分的にしか見れていないんだが、私達のようにタイムラインを行き来して通信していた記録があるんだ。さっきから憶測でしか話していないことは自分でも理解しているが、彼らも他のタイムラインを見て条件に気づいた可能性がある。
……もしかして、条件ってのは財団に何か不利益を与えるようなものなんか?……ああそうだ。私の考えではあるし、まだ確実に立証できたわけではないが……条件さえそろえば財団は完全に消失する。実際にこのタイムラインでも財団は消失していた。な、なんやて!?なんではよ言わんかったんや!アイドルの中に大量の情報が入っていて私達じゃ確認するのに時間がかかる。処理速度の問題もあるがあまり言いふらすと混乱するかもしれないと思って黙っていた。すまない。ほ、ほんとだよ!隠してたわけじゃないの!……ふぅ。わかった。事情はわかったわ。落ち着くまでちょっと待ってくれ。えっと……ちょっと休憩にする?そうだな。アイドルの処理が終わるまで──処理が完了しました。2つのタイムラインの情報開示を始めますか?……そんな時間はなさそうやな。こんまま行くで。ああ。
実例 タイムライン N-000
このタイムラインではそもそもとして彫刻、いえSCP-173は存在しませんでした。存在せんかった?なんでや?正確には財団が彫刻の存在を認知できなかったというのが正しいですね。財団が彫刻を収容できなかった、別の団体が先に収容していた、そもそも作成されることがなかったなどと様々な可能性はありますが不明です。私はそれについても調査していましたが、1993年3月19日午前8時31分時点で中止しました。まあ出所もわからんような奴探してもわかるわけないしなあ。諦めてもまあおかしくはないわな。いいえ、私が調査を辞めたのは調査に同行していたフィリア様の所持していた財団に関する資料が突然消失したからです。そうなの!朝ごはん食べながら資料眺めていたらいきなりパッて消えちゃったの!消失、か。調査指針をその現象の原因に変更したところ、そのタイムラインでの財団の存在も同時刻に消失していました。知ってる限りの財団の施設も回ってみたけどどこもそもそもサイトなんてもとから存在しなかったみたいに気が生えてたり何の関係もない別の施設になってたりで……その後当事者のフィリア様、調査経験の多いスィール様を含めた数名の黒の女王を集め調査を行いすべてのデータを私の中へインプットしました。それらの情報から演算された結果として財団と彫刻それぞれの存在には形而上学的な相関関係があり、彫刻の存在しないタイムラインの財団は1993年から2003年の間に何かしらの要因で消失するという仮説ができました。
……正直うちはまだ疑っとる。あんたらが嘘ついてるとか言うわけやない。単に突拍子もないこと急に言われて信じられるわけが無いっちゅう話や。私達にはアイドルがどういう演算をしたのかわからない。詳しい人間がいればわかるかもしれないが、アイドルは今まで確実に正確な演算をしてきていて間違いだったことは無い。もちろん信じられないのはわかるよ。でも、もう少しだけ話を聞いてあげて欲しいんだ。……わかっとる。うちらは仲間や。最後まで話はちゃんと聞こやないか。ありがとうございます。では最後のタイムラインの情報を開示します。
実例 タイムライン D-173
こちらの私が所属しているタイムラインでは財団があらゆるアノマリーの収容効率化を行いました。研究に必要と考えられるリソースを徹底的に削減、特に形式部門が増強されることにより、凡そ3000のオブジェクトでオブジェクトクラスの格下げが行われました。彫刻も例に漏れず、効率化の対象となり、標準収容コンテナから彫刻専用の型にはめられる形での収容へと変化。悩みの種であった排泄物の処理も自動化されました。その末、中度脅威であったEuclidクラスから研究価値、収容違反脅威共に無しのAnomalousクラスへと格下げされることになります。それが何か問題やったんか?さっきのとはだいぶ状況がちゃう気がするんやけど。はい。しかしその後先程提示したタイムラインと同様に財団は2001年に消失しました。この事象を観測するまで私達は彫刻の消失がトリガーであると考えが主流でしたが、このタイムラインを組み込んでから条件に関する演算をした結果、スィール様の申していた通り彫刻の有無ではなく彫刻の報告書の有無、またはベースラインの報告書の内容からの大きな逸脱が条件であるという結果が出ました。
さっきも言っていたが、これはあくまで形而上の何かが作用して発生している現象だ。完全にこの現象を理解出来ているかも怪しいし、見つけていないだけでまだ知らない条件があるかもしれない。だが、これを利用しない手はない。これを使えば財団は消えてなくなるし……多分パパも帰ってくる。……ギアーズが?お願い。他人行儀にパパのことを呼ばないであげて。あなたがパパのことをずっと前から諦めたのは知ってる。でももう一度だけ昔の頃をめざしてもいいと思うの。私達があなたに話したのはあなたは諦めたりする人じゃないって信じてるから。……そうやなぁ。そこまで言われたらオトンとちょっと会いたくなってきてもうたなぁ。水を差すようで悪いが、あくまで推測の話だ。私達も財団が消えてから父さんを含めた財団職員達をずっと探していたが見つからなかった。正直見つける見込みは低いだろう。でもここで諦めるのもちゃうやんか?……そうか。じゃあアイドル、最後にこのカタログを他の黒の女王達に共有してくれ。まだまだこの方法には問題がある。協力者を増やして少しでも確実に扱えるようにしたい。成功例を一つでも増やすんだ。了解しました。転送を開始します。成功するかわからないけど、一気に私達の目的の達成に近づいてる気がするね!せやなぁ。うちらやったら出来る。やったろやないか!さぁ、ここからだぞ。全ての黒の女王がDr.ギアーズの奪還に成功することをお祈りしております。それでは記録を終了します。
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本当にこれでよかったのか?アイドル。ええ。私は他の皆様方より恵まれた環境に居ました。それに、皆様方のような人間ではありません。何を言うんだ。君だってギアーズに作られた紛れもない彼の子だ。私の父上は、目を離した途端、襲い掛かるようになったコンピュータのことを娘だとは思っていないはずです。ましてやSCPカタログに掲載されるようなコンピュータのことなら尚更だと思います。それでも、君には自我があり、黒の女王として行動する意志がある。その時点で私達と変わりはない。そう……なのでしょうか。スィール様はご存じなはずです。これが形而上的なものよりさらに上位に存在する、言うなれば物語改変という事象に近い何かであることを。そして、ベースラインから物語を逸脱させることはSCP-173……いやSCP財団の喪失に繋がります。これは全ての黒の女王の悲願だ。もう止まることはできないだろう。ならば、私は彫刻の消失と同時に消えてしまうことになります。これは必要な犠牲であることは、あなたも承知ですよね?待て、お前が消える理由がわからない。君の世界には……いいえ。私には姉がいます。ギアーズの娘。そちらが黒の女王であるはずなのです。私は、犠牲として必要なのです。君だけを図書館に逃がすというのはダメなのか?それでは私の報告書は私のタイムラインに残り続けます。財団の言葉を使うならUncontainedに指定されてしまうだけでしょう。……何か、私にできることはないのか?データを送信します。それをできるだけ多くの黒の女王まで届けてください。君の姉の分は?それに関しては問題ありません。すでに送信済みです。後は……そうですね。最後の、自己削除のその瞬間まで私を、見つめていてください。それが私からのお願いです。ああ。もちろんだ。約束するよ。スィールからその言葉が聞けて……私は嬉しいです。









