道化師
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まだ私、大和が異常性を得て間もない時の話さ。あの頃の私の人事ファイルはオブジェクトの報告書みたいな硬い文章で私の異常性について語っていてね。「大和博士を直視した人間は例外なく大和博士の外見、容姿、一挙手一投足に不快感を抱きます」とか「長時間大和博士と接触した場合、不快感が肥大し続け最終的に大和博士を殺害する結果になります」とか「その直後大和博士は████の地点に復活します」とかね。じゃあなんで今の人事ファイルみたいになったか。それを知りたくないかい、君?

いや悪かったよ。挑発したつもりはないんだよ。だからさ、これ以上指を折ろうとしないで欲しいっていうか、いっそひと思いにだね……クソッ、手首がメカゴジラになりやがった!……メカゴジラの手首ってわかる?最初のメカゴジラの映画でさ、偽ゴジラからメカゴジラが出て来るんだけど……わかったよ。わかった。おとなしく話せばいいんだろ?

殺されて生き返って、殺されて生き返って……その繰り返しを体験するってのは当然心がおかしくなるものだ。自分の人間という部分に反吐を吐かれている。でも私は財団に職員として雇用されている。もしも私がヤケを起こして財団の業務を放棄しようものなら、財団は私をオブジェクト扱いにして収容してしまうだろう。収容されてしまえば今みたいにやたらめったら人間と会わなくなっていいんじゃないかって?でもオブジェクトは人間扱いされない。財団職員として人間性に反吐を吐かれ続けるか、それともオブジェクトとして人間であることを放棄するか。どちらかを選ぶのなら、私は吐かれる方を選んだってわけだよ。

ただまぁ、選んだのはいいけど嫌なことばかりだったね。

深夜だったかな。自分の研究室で担当しているオブジェクトの報告書を書いているときだった。同僚が入ってきたんだ。長身の奴さ。今思えばあの時から顔色がおかしかったんだな。そいつとオブジェクトの調査のために使ったDクラス職員の終了の方法について話してたんだ。

目を合わせた時から今度はこいつに殺されるんだろうなって思ったよ。案の定、話の途中でそいつは持ってた拳銃を私に向けた。私の眉の間に向かってね。ただすぐには撃ってこなかった。拳銃が震えて照準がめちゃくちゃになっていた。ただ私からは外しちゃいない。そいつは私を殺すことに抵抗していたんだ。

私はなんとも思わなかったよ。お前は私の人事ファイルを見ただろ?抗っても無意味だ。お前がどう考えようが私を殺さずにはいられない。どうせ君は私を殺すんだ。私は君に殺されるんだ。それだけじゃないか。やるんならさっさとやってくれってね。そいつが抵抗してる様子を無言で眺めてたよ。

どれくらい時間が経ったかな。無音の研究室にいきなり銃声が響いたからさ、死んだ後にびっくりしてね。まぁ結局いつもの場所に立ってたわけだから、自分の死体の処分を考えながら研究室に戻っていったわけなんだけど。

そいつ私の死体の前で首吊ってたんだよ。

それを見たとき面食らってね。で、その直後に吐いた。自分の死体は何とも思わないのに他人の死体は駄目っていうのは笑えるね。

それからは流れ作業さ。死体から個人識別できる奴剥ぎ取ってさ。そいつ名前はゴドーっていうらしいね。上にそいつが私を殺して自殺したってことを伝えたのさ。そして人事ファイルが私を殺しても罪悪感が無いようにちゃらけた文になったってわけだよ。

話は以上、って思ったけど今続きを思いついた。ああ、そうだとも続きだ。こんな作り話を最後まで聞くような奴なんて君ぐらいなものだよ。おめでたい人間だね。君本当に財団の職員かい?ンフフフフ、そうだその顔だ。そういう顔をしてる奴にこう言ってやるのさ。

そういう性格なんだ仕方がない。

直後、大和博士の顎は砕かれた。

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