ポイント
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「つまり君は僕を殺したいわけだ」

山田はゆっくり、はっきりとそう言った。店内の音楽がテイク・ファイブに切り替わった。タバコの匂いがやってくる。タカハシは食器洗い用の洗剤を手に持ったまま早口で言った。

「そうよ、だからこの洗剤を飲んで。これで私にポイントが手に入るの。そして私はクイーンになるのよ」
「ポイント? 何だそれは? ゲームの話か?」
「そうよ。ゲームよ。ケイコが現在一位だから早く追い抜かないと。さあ、早く飲むのよ。そして死んでちょうだい」

冗談のつもりだろうか。しかし、彼女はそのようなタイプの人間ではない。もし、本当なら彼女はゲーム感覚で僕を殺すつもりらしい。現実と虚構の区別がついていないのか、それとも実は彼女は快楽殺人鬼だったのか。どっちにしたって正気じゃないことは確かだ。

山田はタカハシを注意深く見つめた。口元には糊で貼り付けたような微笑。他の客は彼らに注目していた。カメラで録画している者もいる。動画サイトにでも投稿するつもりなのだろうか。山田はふと思った。

「なあ、落ち着けよ。一旦帰ろうじゃないか。なあ」

そう言うとタカハシは目を輝かせてこう言った。

「じゃあ、戻ったら飲んでくれるの? 」
「いや……違う。ほら、周りを見渡してみろ。皆に見られているぞ」
「いいのよ、私はあなたしか見てないわ」

ああ、こんな状況でなければ! 他の客は黙ってこちらを見続けている。どうして見てるだけなんだ。助けてくれ。山田の形容し難い不安は怒りとなり他の客にその矛先が向いた。山田の手に汗が滲む。

「わかった。わかった。取り敢えず僕の家に来てくれ、話はそれからだ」

山田は素早く席を立ち、逃げるようにレジに向かって会計を済まそうとした。店員は大変ですねと言いたげに少し微笑む。山田は大きくため息をついた。タカハシは籠に入っている飴に手を伸ばす。

「はい、4280円ピッタシ。ご馳走さま」

山田は早足で店の外に出ようした。自動ドアが煩わしい。外に出ると一人のオトコが待っていたと言わんばかりに近づいてくる。そのオトコに見覚えがない。汚れ一つ無い白いシャツはこの人物の人柄を表している様にも見える。オトコは黒い塊を山田に差し出してこう言った。

「すみません。この鉛、金に変えることができますか? ポイントが必要なんです」

背後の自動ドアが開いた。

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