ヴェールは重く
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財団は特徴的な認識災害をもたらす文章と画像のパターンを発見した。その効果は、肉体を機械に改造した人間の意識を一時的に停止させるというものである。上手く使えば、近代化と共に激的に数を増してきている機械的改造者達への対策となりうる技術だ。

そして、その技術を応用して生み出されたのが『視認式機械的改造者収容プログラム』である。このプログラムは認識災害用のとある短い文章と平凡な町中の様子に見せかけた画像、そして単純なプログラムから構成されている。プログラムは一定時間の操作がされないと財団に位置情報が送信されるというもので、意識を失った機械的改造者は派遣されたエージェントに収容されるという仕組みだ。

財団はこのプログラムを大量の利用者が存在するインターネットで使用する事により、より多くの機械的改造者を収容する気なのだ。その際に懸念されるのが一般人への異常技術の発覚、そしてそれに伴うヴェールの崩壊である。通常であればこの問題が浮上した時点で作戦は変更されていただろうが、今回はそうではなかった。その要因として挙げられるのが、冒頭でも述べた機械的改造者の爆発的な増加だろう。

効率的なエネルギー源である電気の普及、生活用品の機械化に伴う精神構造の変化、一般社会での機械の進化、インターネットの普及による異常コミュニティの拡大…近代化による様々な変化が起こった事で機械的改造者の数は増え続け、楽観的に見積もっても全人類の約0.9%が機械的改造者になっている。10年前の記録が約0.2%なので、これがどれだけ驚異的な数字なのかが分かる筈だ。

このような事情があった為に計画が凍結される事はなかったが、一般人への対処の必要性は依然として残っている。そこで提案されたのが、プログラムを隠蔽するのではなく、偽装して別のプログラムに誤認させるという方法だ。

このプログラムの偽装は、インターネット上で問題になっている自動化された動作、いわゆるbotの対策のためという建前を使うことで一般人への異常技術の発覚は防げるだろう。また、認識災害に使われる文章の違和感を拭うこともできる。

更に、不審に思った一部の異常コミュニティに調べられて計画が発覚するのを防ぐために、始めは異常性のないプログラムをインターネット上に適用して様子を伺い、常識に溶け込んだ時点で異常性のないプログラムを『画像式機械的改造者収容プログラム』に秘密裏に更新するという手段を取る。

この計画が上手くいき主要なサイトにプログラムを設置できれば、前時代的な蒸気機関を使用する一部の者達を除いた、大半の機械的改造者を収容する事ができるだろう。

既に異常性のないプログラムは多くのサイト上で適用されており、初期に違和感を覚えた少数の人間や異常コミュニティの者達ですら、プログラムを日常として受け入れて話題にも上がらなくなっている。

ここまで上手く計画が進んでいるのは、常識というヴェールを守ってきた成果だろう。『画像式機械的改造者収容プログラム』に使われている町中の様子を模した画像はともかく、文章の方は機械的改造者に言及しているのにも関わらず、誰一人として異常だと思わなかったのだから。

「私はロボットではありません」

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