◆前提 『エチオピア飢饉(1983~1985)』

犠牲者が多かった地域は濃い赤で着色されている。北部の山岳地帯を中心に被害が多かった。
危機概要: エチオピア北部を中心としてで発生した旱魃を起因として発生した大飢饉であり、MCFがエチオピアで活動する切っ掛けとなった危機。エチオピアにおける農業は天水農業が主流であり、この旱魃は雇用の80%を農業に依存するエチオピアに壊滅的被害を与えた。当時の権力者であるメンギスツ・ハイレ・マリアムは軍部増強を優先し、南部の物資を北部へ送らなかった。また、北部に多く存在する国内の反政府組織を壊滅させる目的で、旱魃地域への物資の輸送を意図的に制限した。これらメンギスツ政権の行動により飢餓は更に拡大し、約100万人の死者が発生したとされる。

メンギスツ・ハイレ・マリアム
この飢饉を解決するために、各国NGOはこれに応じ支援物資を送付したが、エチオピア政府がこの支援物資に関税を掛けたことで飢饉の解決には至らなかった。この他にもライヴエイドなど国際的に支援しようとする動きがあったが、前述の意図的な妨害や、政権による横領や浪費により物資のほとんどは消滅し、僅かに残った物資も国内の貧困なインフラが原因となり国民に届けるのは絶望的であった。このような状態が解消されたのはメンギスツ政権が打倒され、メレス・ゼナウィが大統領に就任する1991年になってからだった。
救済計画: 以下の3つを目標とし、エチオピアの社会基盤の修復・発展を行う。
- 食糧支援による差し迫った飢饉の解決。
- 農業技術の刷新を支援し、天水農業から近代的な農業への発展。
- 市場とインフラを整備し、農作物による経済発展を実現。
エチオピアでの飢饉は記録に残っているだけでも9世紀まで遡ることができ、メンギスツ政権が発足できた理由も飢饉が要因となっているなどエチオピアと飢饉の歴史は深い。故に安易に食糧支援を行うだけでは根本的な救済には繋がらず、同様の危機を繰り返しかねない。そのため、農業技術の伝授やインフラの整備を行うなど、エチオピアが農業を柱に経済的に自立できるように支援することがこの危機の解決ならびに救済に繋がると判断された。
◆ 食糧支援作戦”ハニービー"(1983)
支援概要: エチオピア危機に対しMCF日本支部主導で行われた支援作戦。ガモウ支部長が作戦指揮を執り、約800万円の予算が投じられた。恋昏崎新聞社など複数の企業が協賛した他、支援を断念した各国NGOからも寄付があった。支援には"ロレンツ・エルドリッヂ第百十七寄贈品"が利用された。
ロレンツ・エルドリッヂ様からご寄贈いただきました。
注意事項: 食糧、詳細不明、高栄養食品、寄贈品、寄贈者死去。
資産概要: ロレンツ・エルドリッヂ様の著作”紀行5巻”の内容より抜粋。
私が亡霊たちから墓荒らしと認定されたのは間違いない。昨晩の猛烈な嵐から目が覚めたと思ったら、この地獄のような小島だ。草木1本生えておらず、波打ち際には雇った船員たちの死体が転がっている。なんとか脱出したいところだが、私の愛船はどうやってそこまで行ったのか解らないが島の中心で座礁している。たまたま商船が通りかかりでもしない限り脱出は不可能だろう。
不幸は続く。こんな目にあってまで手に入れた石棺が破損してしまったのだ。側面下部に小さな穴が開いてしまっており、中より黄金色の液体が流れ出てしまっている。私がこれを手に入れるためにあれだけのリスクを侵したというのに、液体だけではなく涙まで流れてくる。しかし、私はこの液体が救いの神であったことを後に知ることになる。
[中略]
この小島での遭難生活は長く続くこととなった。釣り竿を垂らすも何もかからず、備蓄の食料は帰路の途中だったこともあって底をつき、飲み水もままならない。船員たちの死体を食うことも検討したが、寸前であの黄金色の液体を思い出した。私は流れ出続ける液体を掬うと口へ運び飲み込んだ。味、食感ともに蜂蜜に近い、口にしてから数分で力が湧きあふれ、一切の空腹感が無くなった。石棺の側面に刻まれた"諸人を救いし神薬"の名に恥じない効能だ。見たところ液体はほぼ無限に湧き出るようだが、無くなっても困るので、何かで穴を塞ごうと思ったところ、ラム酒のタルについていた蛇口が綺麗に嵌ったので栓の代用とした。
メンテナンスと使用法: 特別なメンテナンスは不要です。運搬の際は破損に注意し、緩衝材等で厳重に保護してください。
保安懸念事項: 寄贈者は特殊物品の収拾家であり、他界直前にMCFへ膨大な量の特殊物品を寄贈した背景があり、1つ1つの物品に詳しい説明がありませんでした。そのため、当寄贈品の持つ効果も寄贈者の著書以外に情報が無く、誇張や誤りが含まれる場合が考えられます。
割り当て: マナの慈善財団の日本支部が当物品に関する救済計画の実行と回収責任を負います。
メンギスツ政権からの妨害を防ぐため、不正に入国し、反政府組織の多いアスマラへ拠点を設営。現地ゲリラ達へは、彼らの支援者であるアメリカ合衆国へ仲介を依頼し、理解と協力を得た。この拠点から、飢饉の中心地である北部の州や、物資を求めて南下した難民たちも多く存在し、オガデン戦争以降緊張状態の続くソマリ州周辺へ食糧支援を行う。結果的にこの計画は複数のアクシデントに見舞われ、MCFはメンギスツ政権下のエチオピアから一時撤退することとなった。
アクシデント①: 多くの住民達から効果が確認できず、逆に死亡しているのが確認された。特に初日から多くの支給が行われたソマリ州では甚大な被害が出た。医療スタッフは急性溶血による腎不全であると診断し、原因は不明であると結論付けた。一部の住民からは効果が確認されており、効果が確認された住民は数日以内に栄養失調から回復した。メンギスツ政権による無差別的な破壊工作の可能性も否定できず、必ずしも寄贈品により死者が出たとは言えないものの、ガモウ支部長の判断により寄贈品を利用しての作戦は中止され、通常の食糧支援作戦を開始した。
アクシデント②: 約2年後の1985年、アスマラのMCF拠点が国籍不明の武装勢力に襲撃され、寄贈品が奪取された。この武装勢力について目撃証言が複数存在し、高い戦闘力と統率力に関する証言が多く寄せられた。そのため、この武装勢力はエチオピア所属の勢力ではなく、エチオピアを支援するソ連や中国、またはそれ以外の第三勢力であると予想されている。この襲撃によりアスマラMCF拠点は壊滅し、ガモウ支部長はエチオピアからの撤退を決定した。
備考: ロレンツ・エルドリッヂ第百十七寄贈品を利用した支援は良い結果とはならなかったが、エチオピア国内ではあまり注目されなかった。要因としては、寄贈品を起因としない死者が多すぎることや、そもそも不正入国による非公式な支援だったことが挙げられる。
◆ SG2000協賛支援(1991)

SG2000により整備されたアズ家のトウモロコシ畑。
支援概要: メンギスツ政権が打倒されメレス政権が発足した直後より日本財団主導のもと行われた農業開発プロジェクト。飢餓からの脱却を目的に、インドやパキスタンで成功を収めた"緑の改革"に倣い、天水農業からの脱却を目指したものであり、エチオピアにおいては農作物の収穫量が200%~300%増加する成功を収め、当初の目的であった飢餓から脱却を大きく飛び越え、1997年には外国への農作物の輸出に成功した。エチオピアにおける日本財団とMCFの関係は、前述のエチオピア飢饉の際に行った食糧支援から始まっており、当プロジェクトにも協力要請があった。
農作物の収穫量は大きく改善されたものの、識字率の低いエチオピアにおいて農家が農作物や肥料の相場を知らず、不当な取引を強いられるケースが多く確認されている。また、劣悪な道路インフラにより輸送コストが嵩むため、農作物を出荷しても利益を得にくい環境になっている。これらの要素は、農家が不作に備えることができないことや、肥料や土地整備へ投資した金を農家が回収できず、投資を断念し天水農業へ戻っていってしまうなど複数の問題に発展している。MCFはワルシャワ支部より、1994年にインフラ整備の国際的な責任者へ就任したシー・ハオランを招集し、インフラ整備への支援を開始している。エチオピアのメレス首相はMCFの活動に称賛を送っており、継続的な支援を要請された。
◆ "アフリカの角食糧危機"緊急支援(2006)
支援概要: 東アフリカ広域に発生した食糧危機、通称"アフリカの角食糧危機"に対しエチオピアでMCFが行った食糧支援。"アフリカの角食糧危機"は東アフリカ特有の旱魃に加え、2003年~2005年に発生した大蝗害や、ソマリア内戦以降続く緊張、家畜にリフトバレー熱が流行したことを起因とする湾岸諸国による家畜輸入禁止令、SG2000以降過密傾向にあった人口密度など、複数の要素が重なったことで農作物の価格が急上昇したことを起因としており、東アフリカ全域で1,100万人が旱魃の食糧危機に晒される大飢饉となった。支援作戦には日本生類創研が協賛し、迅速な支援をコンセプトにトウモロコシを改良した日本生類創研第七寄贈品が寄贈された。この寄贈品は、この食糧支援以外にも、SG2000以降も中々解決しない農家への不当取引問題における肥料の価格吊り上げに対する解決策としても期待されていた。
日本生類創研 堀川様からご寄贈いただきました。
注意事項: 食糧、農耕、寄贈品。
資産概要: 寄贈品に添付されていた文書。
マナによる慈善財団日本支部
アフリカの角食糧危機救援プロジェクト日本支部担当者 様この度、貴財団が主催する『アフリカの角食糧危機救援プロジェクト』に弊社が参加することができ大変光栄であり、感謝の極みであります。
さて近年、アフリカ東部において飢饉、食糧危機が発生しており弊社としても当地域の現状に胸を痛めております。以前から貴財団の理念と活動には感銘を受けており、そのような最中、貴財団を主催するプロジェクトを知り、弊社としても自身が持つ技術力が貴財団と現地住民のお力になればと考え、弊社が開発しました新品種のトウモロコシ『パーフェクトコーン14号™(HCX-1213-14)』を無償で提供しました。
弊社のパーフェクトコーン14号™は高い栄養価と繁殖力、超々極早生、過酷な環境でも育ち、耐病性、耐害虫性、耐害獣性、耐除草剤性に大変優れたトウモロコシで現在過酷な状況下に置かれてるアフリカ東部の農業と食糧不足から救うのには相応しい品種であり、食用はもちろん家畜用飼料や工業用やバイオエタノールの原料としても利用可能です。
しかしながら、当製品が完全に実を結ぶためと繁殖をコントロールのためのパーフェクトコーン14号™専用の液体肥料『LFX-1213(仮称)』の量産技術が未完成であり、量産体制が出来次第この液体肥料もそちらへ寄贈します。
是非とも弊社の製品が貴財団のプロジェクトを成功に導くこと心よりお祈りします。
なお当製品はテスト製品のため、本製品を使用したことによって発生したいかなる責任も弊社は負いかねます。予めご了承ください。平成18年1月28日
日本生類創研 農業部門責任者 堀川 合
保安懸念事項: この寄贈品は、別の寄贈品との併用が必要であり、その寄贈品は未完成です。現状での利用はできません。
割り当て: マナの慈善財団の日本支部が当物品に関する救済計画の実行と回収責任を負います。
上記文書の通り、当寄贈品は未完成であり、寄贈品を利用した支援には時間がかかる状態であったが、現地スタッフは当寄贈品を"繁殖量の高いトウモロコシ"程度に認識しており、現地の惨状を目の当たりにしたことで支援を焦り、当寄贈品を使用してしまった。これにより複数のアクシデントが発生し、甚大な被害を生んでしまった。
アクシデント①: 寄贈品が爆発的に増殖し、周辺地域に甚大な被害が発生した。寄贈品はMCFの所有するソマリ州の農園に播種したが、寄贈品は農園の外部にまで増殖し、周囲の農村を破壊しながら結果的に20万ヘクタールの面積まで増殖した。現地スタッフにより寄贈品の回収が試みられたが失敗に終わった。寄贈品を配布すること自体には成功したが、寄贈品が農地や輸送路を破壊したことで飲料水や衣料品の支援が途絶えてしまった。
アクシデント②: 寄贈品の繁殖域に対し、国籍不明の武装勢力により空爆、放火、未知の毒薬の散布などによる攻撃が発生した。この武装勢力の身柄については明らかになっていないが、結果的に寄贈品の増殖は食い止められた。この攻撃はその規模から周辺地域でも話題になり、同年12月のエチオピア軍侵攻の原因の1つとなってしまった。また、散布された毒物の影響により、再度の農耕が困難となってしまった。現在でも毒物の除染作業が行われている。
アクシデント③: 上記武装勢力と思われる組織により、MCF現地エージェントが拉致され、人権を無視した尋問を受けた。この現地エージェントはMCF日本支部のロッヂの場所を武装勢力へ暴露してしまい、この武装勢力はMCF日本支部を襲撃した。この襲撃で死者は発生しなかったものの、日本生類創研第七寄贈品を含む複数の寄贈品が奪取されてしまった。これら武装勢力の攻撃について、各国は関与を否定している。
◆ "東アフリカ大旱魃緊急支援"(現在作戦立案中)
支援概要: 2010年末に発生し、2011年以降被害が拡大している東アフリカ広域に発生した食糧危機、通称"東アフリカ大旱魃"に対しエチオピアでMCFが行う食糧支援。ここ60年で最悪の旱魃であり、既に800万人が食糧危機に瀕している。特に内戦により消耗している南部ソマリアにおける被害が甚大であり、MCFソマリア拠点は、他の地域に先だって食糧支援を開始している。現在エチオピア地域での支援作戦は計画段階であり、GOC第五十六寄贈品、夜宵園芸第二寄贈品、イェンロン料理研究会第八寄贈品、GpLG社第六寄贈品などの利用が検討されている。
▼プロジェクト破棄の決定
通告(2011/2/5): MCF本部は当プロジェクトの破棄を決定。前年下半期より発生している東アフリカ地域の旱魃における飢饉において、エチオピア政府内でMCFによる支援の拒否を検討しているという情報があった。SG2000以降、MCF日本支部と親交のあったメレス首相はベルギーで闘病中であり、仲介は期待できない。エチオピア政府は拒否に向けてMCFに関する資料の集積を始めているという情報があるため、MCF本部は当プロジェクト、並びに当文書を完全に抹消し、今回の危機への支援へ是が非でも参加する方針を決定した。本日付けをもってガモウ日本支部長を解任し、当プロジェクトを破棄・隠匿する。