錦ノ御旗計画、昭和一七年
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計画名 錦ノ御旗計画

立案年 昭和一七年

主導者 草鹿将軍

目的

 昨今の帝国は勢い凄まじく、いまや西はビルマ、東はギルバート諸島までをその版図に収めている。米国の要衝・ミッドウェーの陥落も間近ということから、局員達の士気も鰻登りの様相だ。そんな中、調査局に水を指すような出来事が起きた。切っ掛けは数週間前、松代総司令部で隊旗の定期点検を行った時のことだ。監督のために現場を訪れると、兵士達が真っ赤な顔で騒ぎ立てていた。話を聞くと、旗の多くに厄介な汚れがこびり付いており、洗浄にすこぶる難儀しているという。

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 確認してみると、たしかに黄色い染みのようなものが付着していた。不可思議なのは、局で管理していたすべての旗で染みが見られる点、洗剤を使っても全く落ちないという点だ。初めは管理者の不届きか、不逞な輩のイタズラかと思われていた。ところが、詳しい調査の結果、遠方の基地でも同様の事例が見られたこと、染みの形状が徐々に変化していることが発覚したため、分析班は本件が同時多発的な異常現象だと判断。ここに、異常の除去と原因究明を目的とする「錦ノ御旗計画」が策定されるに至った。

資産

  • 超自然的な汚れに対する除染技術。必要とあらば、理外研等の外部組織にも支援を求める。
  • 各地より回収した数百枚の汚染旗。
  • 四~八名の指揮官。
  • 二〇~三〇名の工兵。
  • 調査に必要な人員、物資および資金。

 軍事面への寄与が薄い今次作戦について、永井蒼一朗局長を始めとする上層部は消極的な態度を示した。しかし、米津元帥大佐大淀辰雄中尉ら一部将校による「御国より預かった隊旗を汚すことは断じて許されぬ」「いま見逃せば末代までの恥となる」という言説が最終的には押し勝ち、投入資産の増強が認められることとなった。

結果

 失敗。旗の汚れは強固に癒着しており、内地の諸組織が持つ技術でも、染みの色を薄めることすら能わなかった。超常的な洗浄技術で名高い、台湾の夢蘭花洗濯社にも除染を打診してみたものの、戻ってきた回答は次のようなものであった。

(前略)当旗を分析しましたところ、付着している汚物は明確な物理的性質を持たないことが分かりました。誠に遺憾ながら、今回の御用命は我々の業務範囲をゆうに越えるものであります。(後略)

 物理的な除染が不可能ならば、霊的な手段ではどうだろうか。我々は超常社会の人脈を通して、全国より呪い破りの精鋭をかき集めた。神職や仏僧、ユタといった国内の人材はもちろんのこと、満洲の道士、香港の司祭、泰国の降頭術士など、東亜中からその道の巧者を招聘した。五月十三日、香川・金刀比羅宮にて解呪の儀が開かれ、宗派と民族を越えた祈祷が夜通し執り行われた。しかし、旗は飄々とはためくのみで一切の反応を示さず、代わりに一帯の霊や妖怪、調査局の基地が吹き飛ぶという結果に終わった1

 我々が躍起になっている間も、旗の染みは不気味な伸縮を繰り返し、形状を日々変化させた。六月一日、染みは意味のある文字を形作ると、局員へ堂々見せつけるかのように、遂にその動きを止めた。

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 常異……いや、これは異常?異常と言いたいのか?浮かび上がった文字に、局員一同は困惑の色を隠せずにいた。とにもかくにも、数百枚もの旗に高度に干渉できる以上、何らかの大勢力が関わっているに違いない。我々は推理に推理を重ねた末、一つの恐るべき解を導き出した。

  • 現在、帝国は英米蘭支およびその付随国と交戦している。
  • 文字が逆なのは右書きに習熟していない証左である。
    • なお、支那は我が国と同じ右書き文化であり、犯人である可能性は低い。
  • 均等で飾り気のない字体をしており、これは欧米で広く使われるサンセリフ体に近似する。
  • オランダは既に死に体であり、大規模な工作を仕掛けられるとは考えにくい。

──よって、犯人は米英のいずれかである。

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"常異"旗を高らかに掲げる局員達。

御国の未来は明るい。


 許すまじ鬼畜米英。縁起の良い旭日の意匠に対し、異常などという罰当たりな文字を刻みつけるとは、万死に値する愚業と言えよう。しかし、対抗を続けては奴らの思う壺であり、いたずらに資産を浪費するばかりである。永井局長は局員に向け、「敵に弱気を見せぬよう、"常異"旗を堂々掲げ続けるべし」との訓示を行った。

 毒を食らわば皿まで。我々の大和魂をもってすれば、かような呪いの一つや二つ、容易に乗り越えられるはずである。"常異"の名の下に進撃し、毛唐共を後悔と絶望の淵へ叩き落とすのだ。

 牡丹江前哨地、草鹿将軍の机にて書す。




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吉敷将軍による手記、令和二年一月

 縁起というものは上官達が想像した以上に重要なものであった。視界にちらつく"常異"の二文字に対し、現場の士気は水面下でだだ下がりとなっており、ミッドウェーでの支援ミスを皮切りに、調査局は転落の道をひた走ることとなった。業を煮やした局は旗を回収し、信州奥地のウツロ穴で処分する事態に発展したが、新たな旗も三日としないうちに"常異"化してしまった。遂には旗の使用自体を控える通告が出されたものの、今度は行く先々で勝手に旗が"生えてくる"始末であり、底の知れなさに慄き、局を脱走する者まで出るという有様であった。

 ……令和の世になっても、旗の呪縛は健在である。皇軍の血脈を保つべく、局は目下世代交代を進めており、他所ではすでに4代目、5代目の"将軍"が生まれていると聞く。我が基地・メゾン西新井でもこれに倣い、娘のサチエに引き継ぎのための教育を始めている。しかし、備品の旗を見るやいなや、サチエはにやけ顔で口を滑らせた。

「だっさ。なにこれ超ウケるんですけど」

 そう。七十五年が経ってもなお、"常異"旗を心良く感じる者は居ないのである。この問題は、調査局の活動に由々しき影響を与えている。超常社会で若者を勧誘しようにも、旗の印象が広く浸透しているため、「ダサい」「ヤバい」「変人集団」等、謂れのない反感をもたれ、避けられてしまうのだ。

 これほどまでの呪いを放ったのは一体誰なのか。米英政府に探りを入れてはいるものの、それらしき証拠は未だ見つかっていないのが現状である。しかし先日、電子戦の専門家である寿明将軍より、我が高機能携帯へ一通の機密電報がもたらされた。

フカミニテ ハタノシラセアリ クラゲヲアタレ

 ここでのフカミとは、近年電子上で目覚ましい発展を続けている「深淵網Deep web」のことを指す。そこではありとあらゆる無法がのさばっており、我々も武器の調達や要人との接触、情報収集に活用している。深淵網の情報源で最も信頼しているのが、クラゲ……「jellyfish」と名乗る利用者だ。

jellyfish
Today at ざぃだんの ろぐ おとしちゃた PM

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 彼の暴露する資料は非常に幅が広く、晩飯のメモから核弾頭の暗証番号まで、見たところ無差別にばら撒いている。僅かを除き、利用価値に乏しいものがほとんどだが、すべての資料は何処かの端末より盗み出した"本物"であるとされ、我々のような潜伏市民には大変重宝されている存在だ。

 さて、今回上げられたのは「財団」より拾得した資料らしい。財団と言うと、局の資産を根こそぎ奪った財団劣等人種の殲滅を目指す財団エチオピアを混沌に陥れた財団など、ろくでもない連中ばかりが思い浮かんでくる。果たして、旗を手にかけたのは何処の財団なのか。私は怒りと興奮に震えながら、添付された資料を展開した。




 

dummyaccount4.pngDr Solo 6 May 2017 00:44

Finally! Here's the IJAMEA hub, a collaborative project between MrWrong and myself over the last few weeks. This piece is littered with all sorts of history, and one of my favorite aspects is our many nods to entities and concepts created over on the Japanese branch of the wiki. Hope you like it.

The IJAMEA ensign was made by me for the wiki, and released under our CC license

(機械翻訳)

遂にできました!これがIJAMEAハブで、私とWrong氏による数週間がかりの共同プロジェクトです。この作品にはあらゆる種類の歴史が散りばめられていますが、私の好きな側面の一つは、wikiの日本支部で作成された実体や概念への多くの言及です。気に入っていただけると嬉しいです。

IJAMEAの旗はwikiのために私が作成したもので、CCライセンスの下でリリースされています。





Dr Soloと名乗る者による怪文書。此奴は何を言っているのか?wiki?日本支部とは一体?

私は熟慮に熟慮を重ねた末、一つの恐るべき解を導き出した。

  • IJAMEAハブとは「IJAMEAに対する毒蛇」、つまり、何らかの攻撃計画を示唆する隠語である。
  • 局の旗を自作したと主張しているが、投稿年は2017年であり、明らかに矛盾している。
    • 過去改変を行えば可能?
    • 調査の結果、ウィンドウズにて「常異」の字体に酷似したフォントを発見。信憑性が高まる。
    • 蒐集院が過去改変装置を持っていたように、敵方も同様の存在を擁していた可能性。
  • 「財団」でありながら、自分達のことを「wiki」と呼称している。

──つまるところ、米帝の息のかかった組織が過去改変を起こし、調査局を攻撃したのではないか?

 許すまじウィキメディア財団。臣民から珈琲代を強請りとる裏で、このような悪行までしでかした疑いがあるとは。調査局の名誉のためにも、本案件は早急に究明しなければならない。悪の親玉ジミー・ウェールズを引っ張り出し、事の真相を問い質すことを提案する。

長老会としては貴君の提案に賛成である。

旗の改変から数十年。我々は耐え難きを耐え、忍び難きを忍んできた。
四方に散った将軍達よ。ソローとロング、ジミーを捕らえ、必ずや報いを受けさせるのだ。

歌妻大将軍、グループホーム「銃後」にて書す。

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