企画案2024-159
名前: ナルコフ・アクソン
タイトル: 死因放送
必要素材:
- 霊素エネルギーを供給し続けられる設備
- 誕生日に買ってもらったラジオ
- 空の単3電池2本
- ネクロマンス魔術書
要旨: 死因放送は壊れちまったラジオに、ネクロマンス的奇跡術を展開し、霊素供給設備を取り付けたものだ。ラジオは俺の6歳の誕生日プレゼントとして買ってもらったものを使用している。
ラジオにネクロマンス的奇跡術を展開することで、ラジオからは該当する人物の死因や死亡状況等の死者に関する情報が1日に一度、0時13分に発せられる。一度に発せられる死因等の情報は5名程度のものである。また、死者の死因が他殺か自殺によって、発する情報量は異なる。具体的には、他殺の場合は犯人や凶器、動機等の情報が語られるが、自殺や自然死の場合は遺書の内容が語られるのだ。
また、空の単3電池は常に霊素によって満たされている。ネクロマンス的奇跡術を展開する条件として、霊素の供給を欠かすわけにはいかないのだ。これは一種の取り引きであり、霊素の供給が無くなったとき、俺は死ぬ。
死後の俺は輪廻転生の輪に入ることは出来ず、死を冒涜した者として無に迎え入れられるだろう。
意図: 俺の家系は代々異常芸術家として活動してきた。歴史的にも、芸術的にも深い歴史を持つアナーティストの名家の一員として、それはそれは期待されていただろう。幼少期には、絵画やパズル等でアートを表現し、それなりに評価されてきたもんだ。双子の弟であるアルバートと共に、将来有望なアナーティストとして期待されていた。
そして、記憶に鮮明に残っている、6歳の誕生日の時。俺は地域で開催された芸術コンクールで金賞を獲得した。それはそれはとても嬉しかった、思わず弟や母と抱擁を交わすほどには。そして、金賞を獲得したことや誕生日だったことも相まって、俺は覚えている中ではじめての誕生日プレゼント───作品に使ったラジオを買ってもらった。宝物のように大切にしていたこのラジオは、どこに行くにも一緒だった。
それから10年の月日が経ち、アマチュアアナーティストとして活動していく中、俺はスランプに陥っていた。どれを描いても、創っても駄作。クリシェを抜けきれず、誰かの焼き直しと言われる日々が続いた。それは弟も同じで、いつしか期待の目は消え、皆が呆れ返り、“駄作”と呼ばれるようになった。
そんな曇った心で過ごしていき、何年経った時だろうか。
弟、母、父が───家族が、何者かに殺された。死因は窒息死だったという。身体には多くの引っ掻き傷が付いていて、爪は剥がれていた。目はくり抜かれ、舌は切り取られてガラス瓶の中に入れられていた。正しくそれは“異様な”光景だった。
明らかに、こちら側の人間による犯行というのは一目瞭然で、俺はそいつを心から憎んだ。いくら“駄作”と呼ばれていても愛すべき家族には変わりなかったからだ。しかし、犯人は分からなかった。いくら探しても、いくら聞き込みをしても見つからない。事件の日、怪しげな人を見たという話は一切浮かんでこなかった。
だから、俺はやむを得ずアナーティストとして、超常作品で犯人を見つけることにした。他のメンバーから復讐に囚われるな、と言われたが、愛する者を殺されて黙っていられるほど俺は大人しくない。そして───出来たのがこの死因放送だ。これで、家族の名が呼ばれた時が犯人の最期となるだろう。
すまない。母さん、父さん。教えてもらったアートを復讐に使ってしまって。
だが、命を売り飛ばしてでも、仇はとるよ。
……████州の一軒家から死体が発見されました。死体は首を吊った状態で発見されており、身元の調査の結果、一軒家に住む"ナルコフ・アクソン"氏のものであることが明らかになっています。死体の近くにはラジオが置かれていました。ラジオからは常に声が発せられていたとのことです。
死体は死後1週間が経過しており、近隣住民から"悪臭がする"や"返事がない"との通報をうけて発見されました。
───次のニュースです。
Distribution Art 号外
アナーティスト名家の遺書が発見
先日、アナーティスト名家であるアクソン家の長男であるナルコフ・アクソン氏(故・27)の親族が身辺整理を行った際にナルコフ氏の遺書が発見された。遺書には"怒り"の情動反応を引き起こすミーム効果が付与されており、ナルコフ氏の最期のアートであるとされている。これに対して巷では「こんなのアートじゃない」、「Not Cool」等の酷評があふれかえっている。遺書の内容は以下のとおりである。
ふざけるな、クソッタレが。
俺を置いて行って、エゴを押し付けるのか。
アートを台無しにさせる、という最悪の気分まで味合わせやがって。
俺の最期のアートは、この手紙になるだろう。ホントに何から何まで不本意でならない。
ナルコフ・アクソン
ナルコフ氏は先日自殺体として発見されている。死体の近くには一台のラジオがおかれていたという。ラジオはナルコフ氏の作成したアートとして親族のもとで保管されるとのことである。
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