企画案2024-701: "クールの灯明"
評価: +85+x
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名前: オーヴァル・シャルム

タイトル: クールの灯明

必要素材:

  • iPhone14
  • 今までにサロンの連中が提出した企画案のデータ
  • プレハブ小屋を元に装飾した、簡易的な会堂
  • メノーラー、端的に言えば純金製の燭台
  • 光学的オーグメント・ミーム因子

要旨: こいつはシンプルな仕掛けになる。まずは会堂内のメノーラーに設置されたiPhone14の画面上に、提供された企画案のスクリーンショットをスライド形式で表示させる。入場した鑑賞者にはその内容が見えずとも、液晶から放たれるオーグメント・ミームによって直接対象の脳内に文章が刻み込まれる。

“クールの灯明”を身体に浴びた人間は、2つの異なる反応を見せるだろう。つまり、光源となった企画案に連なる作品を実際に観賞した経験があるパターンと、そうではないパターンだ。前者であれば、鑑賞者はそれらの作品に込められた芸術家の意図を完璧に理解する。そして以前の解釈に何かしらの“見当違い”があったのならば、彼らの望む望まないに関わらず、その過ちは不可逆的に修正される。

ある意味では悲劇だが、気の置けないギャラリーの手前、余計な恥を掻く心配はしないで済む。

後者の方に関して言えば、鑑賞者は企画案の内容から各々が思い描いた形での“作品の姿”を、自ずと瞼の内側で作り出すことになるだろう。こうなってしまえば、彼らは仮に"本物"を目の当たりにしたとしても、それらの作品を“クールの灯明”で知り得た企画案と結び付けることはできなくなる。だが、この独りよがりな妄想の産物は彼らにとって魅力的な、生涯の心象に残り続ける名作の1つになる筈だ。

まさしく、御大層な聖典の記述によってのみ彼の素晴らしき神々の存在を盲信する愚かに近い。

意図: 芸術それ自体の持つメッセージ性は、往々にして理解されづらいものだ。いや、そうではないと言うのなら、そもそもの話、企画案に“意図”のセクションなど必要ないとは思わないか? ふんぞり返った“批評家”や“後援者”ですら、その作品の概要だけでアナーティストの思惑を読み取ることは難しい。

“クールの灯明”は、そんな迷える子羊たちを正しき道に導くための光となる。アイディアという名の昏き根源に根差し、あなた方が我々の飽くなき創作を望む限りに於いて、それは永遠に輝き続けるだろう。

風の穏やかな夜、ふかふかのベッドで仰向けになり、 矢庭に次なる企画案を思い付いた時、俺たちは起き上がって楽しげに口笛を吹きながら “批評家”へのラブレターを書き上げる。

そいつを読むのは、きっと楽しい。フラれたものなら、尚更だ。








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