シンコンサン計画, 2020
rating: +84+x
blank.png

目的: 昨今の皇国における少子化は非常に憂慮すべき問題である。我がIJAMEAも幹部の高齢化と新兵の減少に歯止めが掛からず、活動の規模は縮小し続けている。

戦闘能力も減衰の一途を辿り、我が国に巣くうSCP財団やケイオス反逆者などの組織へ抗戦するには非常に心許ない。近年の目覚ましい戦果と呼べるものは鉄錆の果実などという小規模邪教集団の討滅のみであり、支持者による資金提供は次々と打ち切られ、後継者と目される子世代にまで白眼視されているありさまだ。

これは国全体を蝕む姿無き貧国弱兵病である。このまま蔓延らせておけば、日本は米英どころか支那とさえ戦争も出来ないようになってしまうだろう。必ずや少子化への特効薬を開発し、輝かしき帝国の威信と国益を取り戻さねばならない。

シンコンサン計画における重要目標は以下の通りである。

  • 若年~中年層の未婚化・晩婚化を防ぐ。
  • 日本国民の出産率を増加させる。
  • 最終的に、IJAMEA新規構成員の多数獲得。

シンコンサン計画は同様の問題解決を目的としているという点において、シンセイカツ計画の精神的後継である。1986年に立案されたシンセイカツ計画は、世間の我々の活動への関心低下に伴う人員不足を解消するために、異常技術や黒魔法によって新規構成員を獲得しようと試みたものである。

結果的にシンセイカツ計画は頓挫したが、この失敗はIJAMEAに教訓を与えた。  我々が社会の潮流に迎合してやり方を変えるのでは無く、皇国に忠義を尽くす我々へ社会が歩幅を合わせるべきなのである。シンコンサン計画はこの教訓に従い、この国にすばらしき変容をもたらすことを主題とする。

資産: 高齢な部隊長達のみならず数少ない新人の隊員を交えて議論した結果、まず未婚化・晩婚化は、男女ともに「出会い」が足りていないことが原因であるという点で我々は合意した。かつてのようにお見合いが一般的で無くなったために、夫婦の成立する数も少なくなっているという意見だ。

議題に挙がった有力案としては「国会内の隠将軍へ協力を呼びかけることで、法律によりお見合いを制度化する」「大規模洗脳コンパ開催」「出会い系アプリ"愛JAMEA"の配信」等があった。そうした中でもっとも興味が示されたのは「縁結びの儀式による運命操作」である。

旧蒐集院の資料をもとにしたこの計画は、伊邪那岐神と関係の深いとある神社の祭神(正式な名称は失伝している)の権能である「縁結びと子孫繁栄」の御利益にあやかり、複数の男女を強制的に恋仲にしてしまうというものだ。この超自然現象は当人とその周囲には不可思議に思われず、見知らぬ者同士でも交友が古くからあったかのように記憶を捏造される。この神を我らの作戦に動員するために必要な資産は以下の通りである。

  • 神との交信窓口として必要な、神社もしくは神棚を構築するための費用と資材。
  • 健康な男女の志願者と徴集兵。
  • 呼び出した神を留めておくための神霊縛鎖(MC&D社から提供予定)。
  • 儀式の対価として支払う供物。

結果: 我々の勝利である。シンコンサン計画は今のところIJAMEAにとってかなり望ましい結果を残している。「縁結び」することにによってすでに十数組のカップルが産まれ、現在も交際を続けている。以下はその一例である。

実験例 い-63号
男: 17歳、大きな体格。基本的には物静かで奥手である。 女: 19歳、合気道を習っている。強気な自信家。
被験者達は幼少期からの幼なじみとして関係性が改変された。また、「両者が高校生の時期に、女が暴漢に襲われたところを男が助けたことでお互いを男女として意識するようになっていった」というエピソードが挿入された。

この"縁結びの神"をもっと多くの日本人に接触させ、その御利益を広めることが出来れば少子高齢化の解決という目標へ到達するのもそう遠くはないだろう。

追記: MC&Dの営業社員によれば、この縁結びの神が起こしているのは"過去・未来改変"あるいは"現実改変"であり、このままの運用では制御が難しくなるだろうとのこと。これは危険を煽りあらたな商品を買わせようとする、いかにも西洋的な消費社会文化戦略である。口車に乗ってはいけない。我々は輝かしい未来に向かって進軍しているのだ。横槍は断固排除せよ。


"縁結びの神"が暴走した。「天罰を下す」として突如消失したのである。暫くした後に神は再び我々に応答したが、恋昏崎新聞社の報道によれば、その間に日本生類創研の研究所やグリーン・スパロウ財団の施設、アニメキャラクターと結婚するための研究計画局(PAMWAC)の拠点が何者かによって超自然的に破壊されたとのことだ。

日本生類創研は1982年頃から"ファーテリティ・ダウンフォール施術"と呼ばれる永久避妊術式を広めており、グリーン・スパロウ財団は亜細亜人大量殺戮を企てている人種差別的な危険組織であった。PAMWACが天罰を受けた理由は不明だが、これらの組織の行動が子孫繁栄の神格でもある"縁結びの神"の怒りを買ったことは間違いないだろう。

一時期、荒ぶる"縁結びの神"を兵器化することについて議論が為されたが、これは却下された。シンコンサン計画の元々の目標を見失うものであるし、何よりこのままではIJAMEAが戦場で敵を殺すことですら"縁結びの神"に子孫繁栄の障害として見なされかねない。

結局はMC&D営業の案を受け、肉職人たちの技術で作られた人の依り代へ"縁結びの神"を封印し、「縁結び」の権能だけを我々が活用できるようにした。高い買い物だったが、それだけの価値はあるだろう。


「縁結び」は順調に拡大している。しかし懸念点があるとすれば、我々が意図しない「縁結び」が発生していることだろうか。シンコンサン計画は異性の両人を恋愛関係にすることを目的としていたが、同性や異常存在を含めた異種族のカップルが誕生しつつある。また、異性間であっても単なる恋愛関係では無く友人関係に留まる者や怨恨などの敵対関係が発生することもある。

これについて"縁結びの神"は、「それもまた縁である」と回答した。我々が"縁結びの神"の「子孫繁栄」という一面を取り去り、「縁結び」のみにしてしまったことが原因なのであろうか?だが、"縁結びの神"の行動はシンコンサン計画の目標から大きく離れている上、神がもはや制御不能であることから、IJAMEAはシンコンサン計画を凍結し、"縁結びの神"を封印することにした。

非常に残念である。 — トシアキ将軍


"縁結びの神"が封印を解き、脱走した。長らくその行方は不明であったが、先日同一の人物と思しき存在が発見された。奴は佐藤 某という名でSCP財団に潜入し、職員同士のお見合いパーティーなどを開催しているようだ。恐らくは「縁結び」の改変能力によって、自身の経歴も偽装しているのであろう。

財団内の間諜の報告によると、佐藤 某は以下のようなカップルを成立させている。

報告例 03
男: 頭部が水槽となっている。他職員に悪戯を行うのが趣味。 女: 長髪。驚かされることに非常に弱い。
お見合いパーティーで出会ったというように改変された。「男は女に好意をもっているものの、それを口に出せずつい悪戯をしてしまい、女は毎回驚かされて怒るが、内心では男と交流が出来ることを快く思っている」というエピソードが追加された。
報告例 04
男?: ポリゴン状の群体生物。転がって移動する。 女?: 点眼薬。他職員に睡眠をとらせようとする。
関係性不明。しかし「目薬と発光するポリゴンが絡み合っている」という幻覚あるいは悪夢を訴える者が多数報告されているため、形而上でのみ確認される可能性がある。
報告例 09
男: 蒐集院に由来を持つエージェント。武闘派で荒っぽい性格。 女: 薬剤師。日本生類創研によって全身が蛇となっている。
戦闘での傷を治療してもらうためによく薬を処方してもらうという関係性に改変された。また「毎回合うたびに二人は惹かれあい、女のために男は日本生類創研へ復讐することを誓うが、女は復讐よりも男の身を案じている」というエピソードが追加された。

SCP財団構成員の魑魅魍魎さにも驚かされるが、"縁結びの神"がここまで大規模な影響を与えていることも異常である。財団は単純にこの事態を把握していないか、佐藤 某を有用だと判断し、野放しにしているのだろうか。いずれにしても、IJAMEAがこれ以上"縁結びの神"に干渉することは難しいだろう。

追記: 最近、佐藤 某によって成立した財団職員のカップルが次々と謎の爆発を遂げている。この事件との関連性は定かで無いが、我々はグリーン・スパロウ財団からある文書の断片を入手した。

これは明らかに、"縁結びの神"に対する報復活動だ。議論の結果、"縁結びの神"と我々の関係を秘匿し、この事態を暫く静観することがIJAMEAにとって最良だということが明らかになった。上手くいけば、我々にとって邪魔な組織がいくつか消滅することになるだろう。  それにしても、神も厄介な相手と縁が出来たものである!

特に指定がない限り、このサイトのすべてのコンテンツはクリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス の元で利用可能です。