伝承部族連合軍がカイロ制圧を宣言 夏鳥テロ主導者は行方不明
公開日 2025年2月10日12:59
▲カイロ市街地とギーザのピラミッド
伝承部族連合軍は日本時間2月10日未明、記者団に対し会見を開き、サハラ夏鳥臨時軍事政府の首都・カイロの制圧を完了したと発表した。宣言では、昨年から続くサハラ戦争における伝承部族連合軍の優勢を決定づける重要な一戦になったことが強調された。
連合軍の発表によると、日本時間2月8日の夜に決行されたセクメト作戦により、カイロに籠城していた夏鳥人民軍の殆どが掃討されたことを確認したという。1月の中間報告では連合軍はカイロ内の夏鳥人民軍の総数を7万と見積もっており、それに相当する数の民兵が同作戦により排除されたものと見られる。一方で連合軍は、これらの人民軍の統率者として活動していた夏鳥思想過激派として知られるファイサル・バシャール氏(85)の消息を確認することができなかったと明かした。
ギリシャから連合軍に参加したヘリオス少佐は、現地のカイロから中継で会見に参加し、「セクメト作戦が成功したのは、エジプトの地の同胞が我が軍にもたらした計り知れない恩義によるものであり、彼らに深く感謝したい。この勝利の下に、彼らが再び我々と共に世界を歩んでゆける社会が戻ることを望む」とコメントした。以前からエジプト国内で夏鳥臨時軍事政府に対するレジスタンス活動を主導していた伝承部族であるラー氏を念頭に置いた発言と見られる。
連合軍は今後、カイロ市内の復旧を完了したのちに、改めて夏鳥臨時軍事政府の残存勢力をエジプト国内から排除し、軍事政府により占領されていたサハラ諸国の独立を支援する意向を示している。
会見におけるこれらの発表を受け、伝承部族からなる国際企業として知られるトリスメギストス・トランスレーション&トランスポーテーション(Ttt社)は伝承部族連合軍への支援を強化する姿勢を示しており、副社長のトート氏は近日中にギーザからカイロへ現地入りすることを表明している。
財団は語る
「サハラ戦争が伝承部族連合軍の勝利で幕を閉じることは、過去の正常性に拘泥するナツドリズム勢力が去り、エジプト神話に基づく伝承部族と強調路線を敷いていた時代が戻ってくることを意味する。しかし、これは国体変革のために超常世界史上でも有数の流血を強いた例でもある」と、中東支部の財団職員は語る。
ヴェール崩壊以前の伝承部族はヒト社会の目からは隠れて生活しており、エジプトでも例外ではなかった。しかし、1998年のヴェール崩壊後に大きく拡大したTtt社の支援を受けて、エジプト神話に基づく伝承部族はヒトと同じ社会で生きることをいち早く受容した。ホスニー・ムバーラク政権が2004年に成立させた「伝承部族平等法」により彼らの人権は保障されることとなり、両者は融和路線による発展を積み重ねていった。イスラム神族が教義上の理由により信徒から顕現を望まれていないこと、またアッシリア神話の伝承部族らが主君の外交力を不安視してヒトとの交流に消極的であったことなどが手伝い、エジプトは中東ではほぼ唯一と言って良い、世界でも有数の伝承部族先進国家となっていた。
ところが、2019年に発生した二大陸正常化事件により、在来の伝承部族との協調路線を取っていたそれまでのエジプト・アラブ共和国政府は跡形もなく消失してしまった。それに代わってナツドリズムに感化された大衆が世界各地から流入した結果として、サハラ夏鳥臨時軍事政府が樹立された。1998年から2019年までに醸造されたパラテクノロジー文化がアフリカと南米の二大陸から一掃され、過去の正常性に従って発展していた世界へと置換されたため、それらはヴェール崩壊以前の世界を志向するナツドリズム勢力にとっての聖地として扱われた。アフリカとユーラシアの玄関口であるカイロへと集結し、さらにその西方へと拡散していったナツドリズム勢力が、超常文化を知らない現地人に対して異常性への嫌悪感を喧伝した結果として、夏鳥臨時軍事政府はサハラ以北の国家間を超常排斥思想に基づく緩やかな連合国として統一するに至ったのである。
従って、二大陸正常化によりリセットされたエジプトの伝承部族の立場はヴェール崩壊前と比較しても大きく悪化し、彼らは常にナツドリズムによって命や棲家を危険に晒される状態となっていた。世界オカルト連合(GOC)の108評議会から脱退した「プル・アンク・ン・ジェフウティ」が、2022年にメンフィスのピラミッド複数を崩壊させ、集落の居住者を全滅させた事件は記憶に新しい。これに対しエジプト国内でもラー氏をトップとしたレジスタンス組織が設立されていたが、人数で大きく劣る彼らを取り巻く境遇は厳しいものであった。
これらの状況を受け、国連はエジプトをはじめとするサハラ北部の夏鳥臨時軍事政府に対する武力介入を行うことを決議し、下部組織であるGOCもそれに協力した。時を同じくして、エジプトと並ぶ伝承部族先進国であったギリシャが音頭を取り、国連軍と共に闘う伝承部族連合軍を結成した。ヨーロッパだけでなくアジアからも多数の参加を受けた連合軍は、2024年に開戦したサハラ戦争における実質的な主力部隊となった。
カイロ制圧会見で連合軍が公開したセクメト作戦の映像の中には、カイロ市街に向けて局地的に降り注ぐ真紅の太陽光が映されており、これは先述したラー氏が実行した攻撃であるとされている。GOCが自身から脱退したエジプトの元評議会組織を抑えたことにより、夏鳥政府軍に対する超常攻撃の有効性が大きく増したことを受け、連合軍とレジスタンス勢力が協力して作戦の決行に踏み切ったものと思われる。作戦後に連合軍はカイロ籠城勢力の掃討完了を公言しており、この攻撃が超常的な防御力を持たないナツドリズムの“一般人”たちに対し相当に有効なものであったことは想像に難くない。
サハラ戦争について夏鳥思想を一元的な悪として語ることを難しくしている要素が、この戦争が二大陸正常化事件の余波として発生している点である。開戦以前にナツドリズムがエジプト土着の伝承部族に対して行った仕打ちは国際社会の通念からして決して看過されるものではないのは周知の通りであるが、しかしそもそもエジプトにナツドリズムが浸透する余地が生まれたのはアフリカ正常化による既存国体の崩壊が原因である。従って夏鳥思想はヴェールなき国際社会の趨勢に楯突く加害者でありながら、誰にも阻止できない天災によって釣り出され、ヴェール崩壊以前であれば我々財団によって厳しく取り締まられたであろう苛烈な超常攻撃の直撃を受けて命を散らした被害者でもある。換言すれば、サハラ戦争の責を意思ある何者かに負わせることは不可能であるということだ。
埋めがたい思想の差異こそあれ、結果としてこの戦争ではカイロの民衆をはじめとする多数の犠牲が生じている。今後やってくるであろうエジプト伝承部族の再興が彼らを礎としてなされることを、我々は忘れ去ってはならないのではないだろうか。
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