超高次元マンション、欠陥工事相次ぐ 慎重な制定が裏目に出たか
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経済

超高次元マンション、欠陥工事相次ぐ 慎重な制定が裏目に出たか

公開日 2072年12月21日20:30

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欠陥工事の発覚したリビング(6次元層)

もしうちのマンションもそうだったら──相次ぐ欠陥工事の発覚にマンションの住民らは不安の声を上げている。国交省次元管理局は19日、国内における12次元層以上の超高次元マンションを対象とした随意検査により、新たに2棟の定常軸保護法違反を発見したことを同局ホームページ内で発表した。違反事例は総計47件となり、中央地検特捜部も月内にさらなる追求をする姿勢を示した。

定常軸保護法は、2069年9月に制定された、我々が通常存在する基底次元の保護を目的とした法律である。Kクラスシナリオの発生防止、他次元旅行者の取扱、通常タイムラインの改変禁止の他、今回話題となった高次元・超高次元マンションの建築基準及び安全管理についても厳格に規定している。制定を巡っては、国会での議論は紛糾し、8年間もの時間を要した。遅延の一因と推測されるのがかの未曾有の大災害、東京事変だ。

まだ元号制度が採用されていた平成29年(2017年)12月17日、東京(現 次元管理局前線基地)を中心として概念震災が発生した。超常災害に対して全くの無力であった当時の日本は人的・経済的に大規模な被害を受けたが、それ以上に深刻だったのがポータリング技術の脆弱性だ。

当時既に存在していた次元路は同一次元内に散在するアクセスポイントを経由して高速移動を可能とするものだったのに対し、積み重なって存在する各次元層にY軸方向のポータル兼アクセスルートを開通して高次元への移動を可能とするのがポータリング技術だ。幾度の調査により高次元であればあるほど新たな体感や有用な概念を獲得できることが証明され、その拡張的な世界観は様々な業界の興味を引いた。中でも慢性的な技術停滞に陥っていた建設業は大きな期待を寄せていた。

基底次元との物理的な接続に乏しいことから、次元路は災害に強い交通経路として日本各地に拡がり、補助金を交付するなどして政府も強く支持していた。しかし、東京事変によりアクセスポイントは歪に変形し、災害発生時に利用していた1200名以上の人間が次元路内に永遠に閉じ込められることとなった。その結果「次元路神話」は打ち砕かれ、発展が望まれていたポータリング技術にも同様に陰りが見えた。国民からの多くの非難を受け、翌年には政府は次元路及びポータリング技術への支援を打ち切り、その後一切の公的事業から排除した。

そのような経緯で政府から見放されたポータリング技術だったが、ごく少数の企業によって存続・発展を遂げ、膨大な時を経て2048年2月愛知県にて世界初となる2次元層建て(3次元・4次元)高次元ハウスが登場し、建築業界に激震を与えた。ポータリング技術の特許を取得した如月工務店(後のMOON’sホールディングス)は事業を大幅に拡大し、並次元干渉性建築物に関する法令が整備されていないのを良いことに粗雑な建築を繰り返した。具体的な事例としては、タキオン時流(次元層の狭間に流れる超光速の概念流。次元同士の浸潤を妨げる隔壁として機能する。)に対応した防壁の一部亀裂、オーパーツ漂流防止ネットの未設置、抗理加工(短期間での次元間移動による身体への負担軽減のため、肉体のみを物理的透過状態にする技術。)の施された多次元対応型エレベーターの不備など、いずれも致命的な欠陥工事である。

その当時、国により基底次元の維持を目的としたガイドラインが示されていたが、公的機関の調査権限を付与するものではなく、遵守根拠として極めて弱いものであった。先般の定常軸保護法の施行によりようやく暴かれた如月工務店の蛮行だったが、制定の遅延がそもそもの原因であるとの見方をする者も少なくない。会見では、次元管理局の船川 義光(ふねかわ よしみつ)副局長は欠陥工事の多発事由について積極的な言及を避ける姿勢を見せ、これに対し「当時の政府の判断に対する忖度だ。」と一部メディアでは批判的に報じられている。


財団は語る

「定常軸保護法を制定することはポータリング技術の存在を公然と認めるのと同義であり、一度拒絶した要素を受け入れるのは公的機関の性質上厳しい部分もある。また、当時の次元理論には未解明な点も多々あり、制定材料の少なさから慎重な審議を繰り返すのは仕方がない。しかし、図らずも無法地帯を形成したことは確かな事実であり、現状の結果を見るにその姿勢は失敗だったと言わざるを得ない。」と財団職員(時空間異常部門所属)は語る。

如月工務店による超高次元マンションの建築が目立ち始めた頃、基底次元を保護する法律自体は複数存在した。これらを総括し、並次元干渉性建造物の取扱を追加したのが定常軸保護法であるが、当該建造物のみを規定した法律を制定しなかったのは先の理由、いわば国のプライドではないかとも財団職員は語った。

複数の次元に跨がって存在する超高次元マンションが万が一倒壊した場合、概念のスクランブル状態、タキオン時流の破壊的な流入などの次元崩壊に繋がる危険性がある。だからこそ超高次元マンションの建築において、一級時間軸建築士による現場監督・リスクマネジメントの徹底が求められる。

人類が基底次元を越えて手を伸ばすことができる昨今。さらなる発展のためにも、建設企業には消費者の安全確保に努めていただきたい。


関連キーワード 定常軸保護法 ポータリング技術


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