蓬莱島における新たな民主主義の形 「創制」首長は本日解凍される予定
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政治

蓬莱島における新たな民主主義の形 「創制」首長は本日解凍される予定

公開日 2018年11月19日09:30

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蓬莱島都市部の風景

2015年に竣工した蓬莱人工島 (複合実施型埋立人工島、Hybrid Operative United Reclamation Artificial Island; HOURAI) は、実質的には特別地方行政区の性質をとっている。財団、日本、韓国、中華民国の間でしばらく共同運営されていた蓬莱島政府は、昨年11月10日に第一次住民首長創制大会を開催した。当時3000名の蓬莱島住民が共同で創制した蓬莱政府の首長は、1年間にわたり遠己バイオテクノおよびニッソ医機によって培養されてきたもので、人体培養器から排出する準備が整ったことが確認され、今晩中に解凍される予定だ。予定通りであれば翌11月20日に初公開となる。

蓬莱人工島を形作る技術には最先端のパラテクノロジーが採用されていることに加え、島内の自治政府構造および法制度も最先端のモデルが採用されている。島では最新の技術や社会システムのモデルテストのために建造された実験場であるとも言われている。現在、島内ではあらゆる分野で非常に優れたパラテク企業が構えており、その革新的な技術的開放性は蓬莱島の大きな魅力となっていることもあり、他国では未だ法制化されていない多くの製品やサービスをも島内では導入・販売することも可能である。これらは桁外れな資本市場を誘致する上での大きなインセンティブともなっている。

経済革新以外にも加えて、蓬莱島の政治システムもまた時代の最前線にある。「首長創制」は、その最も代表的なイノベーションの1つである。過去の政治システムにおいてほとんどの先進国は、統治体制にエリート代表制という間接民主制を採用してきた。しかしながら、今もますます複雑化していく世界における代議制の「選挙」制度では、有権者は投票を通じて政治的意向を示すことはますます難しくなってきている。そこで、財団の協力のもと、蓬莱島の主要管理業者である「アリス・マジカルミュージック・インターナショナル株式会社」は、全ての有権者が直接国家元首を創制するシステムを推進している。

首長を創制する上で必要な技術は、実のところバイオロイドを製造するプロセスと大差はない。首長の創制プロセスは、有権者自身が政治的要求、ニーズ、価値観、および欲求をバイオロイドのパーソナリティ・シードに導入する点にある。そして、パーソナリティ・シードを有したバイオロイドは、遠己バイオテクノとニッソ医機の共同作業によって、1年の歳月を掛けて独立した人格機能を持つバイオロイドへと生育していく。パーソナリティ・シードは法を犯さないようプロトコルが設定されており、これまでの政治家であれば起こりうる政治的腐敗や不祥事を引き起こさない。政治代表としての機能とタイミングを考慮し、首長バイオロイドの身体機能は4年後に自然に衰弱する。衰弱の前には新たな首長が培養され、創制される。

初代首長は当面は財団の監督下で行政運営を実施していくこととなっている。予定が順調に進めば財団の監督を段階的に緩和し、島全域のほぼ完全な自治を一任する予定である。それと同時に、多くの政治学者は、蓬莱島の創制首長制が始まったことによってもたらされる政治生態学上の変化に注目している。


財団は語る

バイオロイドテクノロジーが刻々と成熟した今、「人間」の製造については未だ倫理的な論争が続いているが、特定のニーズによる人間としてのアイデンティティを有さない「人体」の製造は、実のところ様々な分野で貢献している。しかし、蓬莱のようなバイオロイドを政治家として創制することは、いまだ前代未聞である。

これまでの人類社会においては、選挙や選挙制度といったボトムアップ型の仕組みはあれど、有権者に選出された者が権力を握ったとしても、ほとんどの場合はトップダウン型に指示が下されていた。民主主義国家は何世紀にもわたりこのギャップを埋めるため、一般市民が政治活動に対し積極的に参加できるようにすることで政治的効率を改善してきた。現在は政府のトップが脳に直接人々の意思を集約できるようになったことで、人と人とのコミュニケーションの距離を劇的に縮め、真の民主主義の持つ価値観に近づけることをも可能にしている。

しかし、パラテクノロジーには、我々はやはり慎重にならざるを得ない。このような形で作られたバイオロイドは、予測不能な欠陥を含んでいるのではないかと懸念する財団の専門家もいる。このため財団は、この新たな民主主義の形態が技術的な問題により深刻な欠陥が含まれていないかを検証するため、監督役が派遣されている。

一方、この実験により有用な結果が得られれば、それに追従する国々も現れることも予想される。その時、非常に巨大な影響が政治生態に与えられることになるだろう。


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