ラムネ色の空はどこまでも
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からん、とビー玉が鳴った。

「随分時間が経っちまったな、ケンジ」

墓石を拭きながらそう呟く。わずかに水滴が流れていった。

「今でもさ、ああ、この瞬間にお前がいればなって思う事があるよ」

蝉の声だけが響いている。線香の煙がふっと吹いた風で揺らめいた。
急に姿を消した友人は、橋の下で見つかった。自殺だ、そう先生が説明した。

まだまだ蒸し暑い、夏休み明けの出来事だった。

結局のところなんであいつがその決断をしたのかはわからない。あいつにしかわからない。
ただ、どこかで、どこかで手を差し出せたのかもしれない、それを見逃したのかもしれない、と思ってしまう。


「お前はさ」

もう一本のラムネ瓶をバッグから取り出して、そっと開ける。

「これでも、まだ”友達”だったことを許してくれるのかな」

持ち上げてからん、と鳴った瓶は、透き通った空と一つになっていく。


陽炎で揺らめく中に一瞬見えた君は、「当たり前だよ」と呟いた気がした。


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説明: 視認した際、”自身の親しい友人の墓”と認識する無縁塚。記憶処理にて以上の認識は除去可能。
回収日: 20██/██/██
回収場所: 宮城県██市
現状: サイト-81KN、低危険物収容ロッカーにて保管中。

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