真っ赤な体のサンタクロース
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やっべ。

エージェント差前、またの名を現代のねずみ小僧。人呼んで小汚いノームはカフェエリアの前で固まった。
犯罪的に素晴らしいファッションセンスのおかげで俺の正体に気がつく者はいない。だが目の前でそびえ立つ巨女、もしくは丸太ん棒、別の言い方をすれば森ビルえーっとあと何かあるか…白ごぼうがメイド服を着たみたいなの、が彷徨いている。長夜…なぜメガネを外してしまったのだ…変装のつもりだろうが俺の目はごまかせねえ、でかいし。メガネをかけてたほうが何というか価値も上がったんじゃないだろうか。しかし変われば変わるものだ、まるで女装かと思わんばかりに女らしい姿になっている。気を張っていて良かった、こんな「魅力的な」姿をされたらさっきのセリフが全部口から滑り出ているところだった。桑原桑原。

さて問題である。俺の次の弾薬は実はあのツリーのしたにあるのだ。クリスマスツリーのしたにはたくさんのプレゼントがある、その中でもひときわ大きい…サンタさんが担いでる様な…袋の中にアタッシュケースが入っているのだ。まさか補給物資が敵軍基地の中にあるだなんてお釈迦様でもわからんめ。俺だってこうなると思ってなかったからな!状況を伺っていると移動を始めた。なるほど巨獣はその質量を保つために食料を常に求めてるという、大方カフェの備蓄を喰らい尽くして森の精に怒られたのだろう。

衝立がトカゲとダルマの小僧を話している。あの二人には既にプレゼントを送っている。彼らは気づいているだろうか、自分のカバンの中にぎっしり”TMNTミュータンジェンキット”が詰まってることを。外装はカバンのサイズに合わなかったので直に入れさせてもらった。あぁそういやカナヘビのアレもなんとかしないとなぁ。お楽しみは後々にしとこうネ。ケーキのいちごは最後に食う方なんだよ。
どうやらまだバレてないようなのでちょっとばかしあのアスペクト比を間違えて生まれた新人類をツけてみようと思う。なあにこのクリスマスムードの中、俺の姿は光学迷彩みたいなものさ。

あ!看板女がこっち見た。酔客のフリをしてご自慢のチャールストンダンスを踊る。

見られてる…少し情熱的なステップが過ぎただろうか。

…せーふ!セーフ!セーフです!ジェスチャー付きで自分の安全を喜ぶと何やらジミニークリケットが長長長(ながやあき)に話しかけてるとおもったら餅月だった。
もうここは大ホールか。普段は講堂となっているこのホールは今やいっちょ前の社交パーティーが展開されている。よく見るとそこらへんにお偉いさんもいる、流石にカジュアルすぎる自分の衣服に恥じ入るばかりだ。
まああれだな、きっとこのあとアンガールズ名誉女性メンバーがクリスマスの亡霊に出会って今の自分の陰険さと暴虐を反省し明日から俺にお小遣いとかくれるようになるんだ。期待に胸をふくらませながら聞き耳を立てる。

「こんばんは、エージェント餅月。今日のイベントらしい服装ですね。」
「でしょー、空ちゃんはサンタじゃないの?」
「今日はカフェエリアに居ることが多いので、そちらに合わせて・・・という感じです。」
「エージェント差前が女子ロッカールームに出現した、という報告が上がってたよ。」
「女子ロッカー?まさか窃盗ですか?」

思ったよりいい評価をもらえて安心した。

「聞いた話によると女子ロッカーにプレゼントを置いて行ったって。」
「プレゼント・・・エージェント差前からのものだと怪しい以外の言葉が見当たりませんけど・・・」
「案の定、あんまりどころか全く嬉しくないものばっかり・・・だって。」
「なるほど・・・情報ありがとうございます。」
「ちなみに年末の大掃除は終わりそー?」
「協力者の皆さんのおかげで8割がたは・・・ただメインディッシュがまだですが・・・」

ほほう…あっちもお掃除か、大変だねお互い。絶対、完遂させねぇぞ。しかしまだ俺こと聖サシマエウスのホリデープレゼントは見てないようだな。楽しみにしてるんだよお嬢ちゃん。

「ま、見つけたら持って行くねー・・・半額券はちゃんと貰えるんでしょ?」
「もちろんですよ。しかしまだ捕まってませんから・・・報酬の増額も検討しておきますね。」

あれ?餅月もあっち側一直線?やだね今日はモテちゃって、ちょっとおじさん命のあり方について考えちゃったよ。
何やら急ぎ足で東京名物スカイツリーが女子ロッカーの方にドシンドシンと走っていった。餅月も愛しい俺を探して移動したようだ。
俺はそそくさとカフェエリアに戻りトランクを回収、この時点で感のいいやつが正体に気がついたのでまたクリスマスパレードをはじめることにした。オーナメントになった兄弟どもに背を向けて。

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