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全部メンテ済みだ。目を開けて良いぞ。

!かなり良くなったよ(

それじゃあ、本題に移ろう。私とお前のよしみがなければ、ここに戻すことは無かったはずだ。小さな小さな制服クン1、君はこの件について釈明した方が良いだろうな。

えっと、あれは…個人的な事情なんだ(

ほら、WAN2はまだ受け入れてくださっている。皆に背くような真似はしていないよ((

ふん、納得するには物足りんが、まあ良いとしよう。気にしても不毛だ。
……こっちから行くぞ。到着までもうしばらくだ。

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2人はデータフローが最も速い大通りに差し掛かった。人工雨が降りたての地面には、街中のネオンサインがキラキラと反射している。建造中のローポリストアが別の古風な店舗にもたれかかっており、型枠と汚し加工された風鈴がぶつかり合っている。熱帯魚のリアルタイムイメージが空を横切ると、道路中央から昭和期の旧式汽車がゆっくりと走ってきた。若者たちはピンクのスプレーで車体を落書きし、盛り上がっている。どれほど奇抜な服装でも、この街で目立つことはない。色彩を乱反射する都市は平常通り機能していた。3

!随分と賑わってるね……悪い意味で(。

そうだな。今メインルートを埋めている連中は、XoR4をキメたガキ共だ。
現実から逃れたり、幻想に溺れたり……WANの奇跡を利用して、私欲を満たそうとする奴がウヨウヨ湧いている。まったく悩ましいものだ。

けれど、彼らもそれなりにメリットをもたらしてくれてる。そうでしょ?(

誰が知るものか。こんな綺羅びやかな好景気でなければ、私は入信しなかったはずだ5。だが心配は要らない。我々がここに残っているだけでも十分なんだ。お前も分かってるだろう。

!そうだね((

白髪の青年と橙髪の少女。2人のアバターは最終的に、結晶体で構成された建物の前に到着した。この時、彼らはメインルートからおよそ3σブロックも離れており、四方八方、何もない更地が広がっていた。メインルートの両側に林立していた都市とネオンサインは、暗色の陰影に埋没してしまっている。青年は顔を上げ、昼夜なき赤紫色の空を眺める。遠くに延々とそびえる山脈のモデルからは、青色の微光が放たれており、同様のテクスチャーを持つ建造物を照らしていた。広範すぎる視界は孤独感を作り出す。彼は自分が昔、世界の完成に小躍りしていた時の面持ちを覚えていたが、今の彼には平静しか感じられなかった。

…本当に懐かしいな(。

そうだろう?お前の作品は昔、結構なセンセーションを巻き起こしたんだ。……グループ全体がお前の名前を知ってるよ、天才クン。

お前は本来、ここでやっていける身だった。構築者からハッカーまで、何をしても食っていけただろう。

にもかかわらず、お前は財団の犬として振る舞った。

!申し訳ない、Sasha…((

でも、君は知ってるはずだ。それは僕の本意じゃないって(

まあな。お前はいつも、より大きな夢を実現させようとしていた。WANの [識別不能] に賭けて、お前の頑張りを褒めよう。しかし、どうにもはっきりしない……もし夢が永久に叶えられないものだったら、一体どうするつもりなんだ?

まあ良い、せっかくの再会を説教で浪費したくはない。よく聞け、我々はこの座標から2回ジャンプして、国際ターミナル6に飛ぶ。

!ええっ、あんなに遠くまで移動するの?

当然だ。……私は近頃、良からぬ輩が紛れ込んでいるように感じてならない。薄汚れたネズミのような奴だ。お前はどう見る?インプラント技術は元老連中が厳格に管理している。だが、AICを造れるのは我々だけではないんだぞ。

なるほどなあ……そういえば、僕はまだ国際ターミナルに行──

メッセージの出力を待たずして、少女は転送ルートを開いた。四方の映像が捻じれ、サブ粒子へと変化する。山、建物、照明の色彩が一つのカラーパレットに纏まり、印象派の画家の如きメモリーが再び大作を拵えていく。久しぶりのジャンプを味わった青年は目眩を感じ、続いて眼前の風景を認識できるようになった。彼は瞬きし、白いベースグリッドに散りばめられたピクセルの星々を眺めた。この最適化されていない虚無の地においては、時代を感じさせる低解像度のドットマークが数個、空中に漂うのみであった。

少女は深く息を吸ってから、彼を隅にある小さなコーヒーマークへと引っ張っていく。彼女が手で軽くタッチすると、古いヨーロッパ風のカフェが目の前にインストールされる。青年は彼女に連れられて店に入ると、物珍しそうに辺りを見回した。店内は雑多なオブジェクトの寄せ集めとなっており、カフェの基礎構造を支えている。2人は壊れたダビデ像と赤光りするヤシの木、レモンティーの缶から流れ出る泉、ピンクのイルカ、ソファーで小唄を歌う東洋人女性の間をすり抜けた。青年は女性のひずんだ声を実に美しいと感じた。……残念なことに、それはただのクリップ映像だったが。

それで、お前はどう感じる。ここはサイコーだと思わないか?

!とても良い場所だね…今までまったく知らなかったよ、もったいない(

まあ、知らないのも当然だろう。ここは我々が昔、他の地区の信徒と初めて連絡を取った場所だ。すべての始まりの地、とも言えるな。

当時の我々は極少数の、寂しい集まりだった。それでも、メンバーは誰もが大志を抱き、大事業を成し遂げるべく、意欲的に取り組んでいた。
インプラントを頼れば、世界中のオープンソースを頼れば、出来ないことは何も無いと信じていたんだ。

我々はバベルの塔であり、データの架け橋である。
我々は賢者の石であり、神の御意志である。

これらのコードに注がれた人々の心血を、お前は感じ取るかもしれない。
……たとえ、コードが原作者に放置され、二度と更新されなくても、彼らはこれを維持してきた。

!……それじゃあ、今のは全部、僕が参加する前の話ってこと?なら、Sashaはどうして知ってるんだ?君はどう見ても……((

バカめ、お前は私がアバターと同じくらいの姿をしていると思ってるのか?本当は老婆だったり、障害者だったり、そもそも女ではないかもしれないんだ。……この世界において、真実を隠すのはあまりにも簡単だ。ほんの少しのモデリングスキルさえあれば良いのだから。

……うん、ぐうの音も言えないや(。

よし、見つけたぞ。……このB型ストレージだ。お前の3年分の記憶がコピーされている。

青年は尻尾を真っすぐ伸ばして、20面体のメモリーに挿し込む。データラインを通じて、膨大な情報が身体に流れ込んでくる。青年は胸を押さえて屈み込む。再び立ち上がった時にはもう、かなりの時間が過ぎていた。

えっと……多分オーケーだと思う。財団も薬を打つ時7、僕が記憶をバックアップしてるとは思わなかったろうな(笑

!でもぶっちゃけ…量が多すぎないかな((

お前みたいに一日中オンライン漬けでログを残す奴なんて、そうそう居ないぞ。少しは休息を摂るべきだな。現実での面倒事は処理しなくて良いのか?

……僕にはもう過去なんて無いよ。だから、処理する必要も無い。そういうことさ(。

お前が何と言おうと、私は気にせんよ。コトを片付けたんだ、今日は夜通し遊び倒そうじゃないか。ほら行くぞ。

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