ある日の午後、マーシャル・カーター&ダーク株式会社の瀟洒なクラブハウスにて。
「俺が作った物を見ろっ!」
「素敵ですね、サー。あなた様は真に才能豊かなお方です。これは何なのか、お伺いしても宜しいでしょうか?」
「君らから昨年買ったキットと、事故に遭う数年前のダチに君らが売った工具で作った! あと君らに借りた地図で辿り着いた秘密の湖に浮かぶ例の秘密の島の樹から採れた木材と、あと—」
「素晴らしいですね、サー。ですが、これは何ですか?」
「鏡写しのヴードゥー人形だ!」
「申し訳ありません、サー、何ですと?」
「鏡写しの操りヴードゥー人形だ!」
「鏡のヴードゥー—」
「鏡写しの!」
「ですが、サー、鏡とはそもそも… はい、サー。鏡写しの操りヴードゥー人形。非常に感動いたしました。あなた様は真の芸術家です」
「そうとも! で、幾らになる?」
「…何と仰いました?」
「これを君らに売ろうって話さ! 幾らで買い取ってくれる!」
「それは、その、サー、私は… 私には雇用主の代わりに買い取る権限がありません、サー。まず上司と相談する必要があります」
「いいとも、そうしてくれ。この可愛い坊やは800万、いや900万はするかな?」
「あの。サー… どうかご理解いただきたいのですが、我々が商品を販売する価格と、購入する価格は異なります。それに—」
「ああ、ああ、分かったよ。すると… 8万か9万?」
「サー、ですから、私には代理購入の権限がありま — サー、まず、この鏡写しの操りヴードゥー人形とはどういう事をする物でございますか?」
「手に取ってみろ」
「えぇ…」
「いや違う、タオルから出すんだ。肌で触れてみろって!」
「サー、私はお客様との交流担当役であって、被検体ではありません。実演用ヒト被検体のご購入をご希望であれば、別途お取引を承ります」
11年後
「あー、えっと、どうも。ちょっと気になったんだけどさ… あれ… その… 今回は俺の人形に誰か入札してくれた?」
「実を申しますと、サー、その機会さえ得られませんでした!」
「…は?」
「競売が始まらないうちに、SCP財団が会場を襲撃して、あなた様の人形を盗んだのです!」
「…マジで?!?!?」