黒い秋 II: ピットスロースの目覚め ハブ

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今年のハロウィンはホラー映画祭が開催される。去年のハロウィンは当然の理由で中止になったが— ポップコーンマシンの真ん中に祭のマネージャーの死体が詰まっていては映画祭を運営することは出来ないだろう。だが、今では新しい運営陣の元で運営されていた。

新しい運営になったということは、質の低い映画が出てきたということだ。ジャンプスケアに頼りすぎたもの、雰囲気があっても見返りがなかったもの、バケーション映像程度の怖さしかないいくつかの低予算映画(主にバケーション映像のように撮影されているため)、そして何かしらの理由で、誰かがHolders Seriesをベースにした映画を作るのは良いアイデアだと決めていた。スレンダーマンにやってきたことがそれほど悪いことではなかったかのように。

それでも注目を集めている映画がある— 第一弾を欠いているように見える続編だ。人々はポスターを見ようと群衆の間をすり抜けていく。

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チケットが手に入る頃にはほぼ完売だった。祭の目玉になるらしい。街の中で撮影されたという話さえもが耳に飛び込んできた。

辛うじて席を確保出来た。やがて照明が暗くなり、映画が始まった。

Opening Credits

アメリカのどこかのバーからシーンが始まる。女性がピニャ・コラーダで悲しみを紛らわしている。途中で何かが彼女をつけまわしている。彼女の過去の何かが。これはスラッシャー映画なのか? 後ろで誰かが静かにしていると、静かな憶測が口をついて出てしまう。

The Witch's Hut

別の女性は仮装屋の部屋で働いている。彼らはハロウィンの美学に全力で打ち込んでいる。隣に、新聞社の人が評価のためにメモを取っているのが見える。彼が女優を素人だと思っていることが画面の光でなんとか読み取れた。

From a Burning Screen

映写機が一瞬どもり、案内人が謝罪するために入ってくる。プロジェクターが再起動する前に、辛うじて彼の口から言葉が出た。残念なことだが、このシーンはイン・メディアス・レスであるから巻き戻さなければならないらしい。それでも、炎上している映画のスクリーンと、ゾンビの大群と思われるものを垣間見ることができる。一体これはどんな映画なんだ?

Of Goats and Sloths and Flu

また別の怪物が登場した。衣装が良いのか悪いのか、判断に迷うところだ— 顎の関節は整っているが、『ゴートマン』は数十枚の毛皮を失っているように見える。それでも、これまでのところはかなり面白い— 少しばかり安っぽい衣装は気にしないことにした。所詮、素人が作った映画だからだ。

Playing Dress-Up

下の席の幾人かの映画評論家がうめき声をあげた— この映画を作った女性がなぜか悪役になっているのだ。興味深いひねりだが、脚本家は確かにジョン・カーペンターではない。それでも興味深い視点を導入している— 死体泥棒か、面白い。

Holes Shaped Like People

またもやプロジェクター飛ばし。今度は何人かの人が返金を要求して去っていったが、またしてもすぐ元に戻ってしまった。飲み物が空になったと思ったら、また一杯のそれになっていた。ポップコーンの隣には買ったことのないキャンディーがある。なあ、これはタダなんだよな?タダだよな?

キャンディをつまみ上げてポップコーンに振り掛けると、座席の下を手が滑っていくのが見えたが、無視をした。

S&C Phonies

誰かの頭が爆発した拍子に画面から目が離れた。ロビーで騒ぎが起きている。サイレンが聞こえているような気がする。膀胱は満タンだから、ロビーに出て様子を見るのもいいかもしれないな。何か面白いことが起こるとは思えない。ポップコーンを食べ、劇場を後にした。

...and Knock 'em down

劇場を出るとホールには誰もいない。照明は落とされている。ホールを降りると、トイレの明かりがちらついている。下に歩いていった、だがそうしたところ、ロビーで何かが見えた。— 巨大なくちばしのような2対の目が、ハロウィンの夜の中外からこちらを見つめているのだ。

凍りつき、それに向き直った。そこには何もない。思った通りの恐怖を覚え、トイレへと向かった。

Set 'Em Up...

数分後、トイレから出る。映画館で上映されているピットスロースの目覚めのドアが、まるで誰かが入ってきたかのように揺れていた。ドアのところまで行き、映画がフラッシュバックの途中にあるのを見るために、丁度間に合うように再入場した。どれだけ失敗すれば自分は気が済むんだ?

疑問を投げかけると、映画は劇場を出た時の場面まで巻き戻されるようだ。劇場の外へと続くドアの方を見やる。そこにはもう存在しなかった。

「さ、席に座って。」

何かに手招きされている。

Movie Night

ポップコーンとキャンディが新しくなった。少なくとも快適だ、ここで死ぬまで…何かに拘束されている間は。ママが望んだようにミネソタに引っ越すべきだった。でもスロースピットに留まるしかなかった。

彼らがどの角度から撃っているのか分かるだろう、エピスコパル教会の頂上だ。そこから分かるのは角度だけではない。狙撃手は鐘楼にいて、家を狙っている。

Free Falling

劇場は暗闇に包まれている。 映写機がまた故障し、ドアに駆け寄る人々の声が聞こえた。立ち上がってみると、ドアがなくなっていた。人々が助けを求めている。何人かが電話を取り出し、911に電話する。

後ろには妙に落ち着いた二人組の— 男と女がいる。何かを見たような顔をしている。目が画面に釘付けになる。彼らはバカバカしい茶番を見てきた。 彼らは映画の中にいて、今、底なしの落とし穴に落ちている。

Rock Bottom

第四の壁を破ってきたかのような二人が席を立ち上がる。 女性がこちらを見る。

「やあ!」

彼女は言った。

「あなた、自分が役に立てると思う?」

「じ、自分?」

言葉を詰まらせる。

彼女は近づいてきて、自分のバッグを見せてきた。中からは薄い金属の円盤のようなものが出てきた。それはすぐに展開され、明らかに槌に見える形状になった。

「壁を壊せるなら壊しなさい。」

「オーケー。」

槌は重かったが、壁を壊すためそれを振り下ろした。

12 Hours in Sloth's Pit, Wisconsin

「ワン、ツー、スリー!」

ずっしりとしたゴツンという音を響かせながら、槌が壁に振り下ろされる。

「ワン、ツー、スリー!」

劇場の壁を覆う安物の布の下に隠れていたのはレンガ細工だった。出入り口を塞ぐために移動させられたことは明らかだ。

「ワン、ツー、スリー!」

壁からモルタルの雲が噴き出す。光が差し込んだ。

Family Reunion

槌で作った小さな穴から何人かが這い出てくる。穴からは赤と青の警察のサイレンが見えるが、きっと劇場の前にいるに違いない。最初に子供達が。次に数人の母親が出てきた。

もう一度槌を振る。壁に囲まれていて、背中に何かが這っているのを感じる。それは長い爪と10本の指を持っていた。

The Doom That Came To Theater Six

蹴ったり叫んだりしながら、他の全員も一緒に自分の席に引きずり戻され、毛皮のついた腕で拘束される。スクリーンには映画のシーンが点滅し、何かのリズムを刻んだような音が聞こえる。後ろを見ると、槌をくれた二人の姿が見えた。

次に何が起こるのか100%確実なことは分からないが、男は足を刺されて女と一緒に劇場から逃げ出したようだ。それからの数分間は、何も起こらなかった。見ることができるものは何もない。

そして、劇場の奥から死体が飛び出し、気味の悪いグチャリという音と共にスクリーンに着地する。最前列の誰かが悲鳴を上げると、スクリーンから何かが這い出してきた。

Roll Credits

映写機の方から来たらしき女性が横を通り過ぎていく。彼女は何かを叫びながら、男が着地した劇場の正面に向かっていく。そこから逃げ出す最初の機会を得た— 脱出の途中で、角があるらしき何かと肩がぶつかった。

そして正面へと出る。サイレンが鳴っている。銃を向けられ、手錠をかけられ、検査され、縁石に座らされる。悪夢は終わった。

10分ほどして、担架に乗せられた男が劇場の外に運び出されてきた。女が男の隣を走っている。無視された。

誰も自分を認識していなかった— じゃあ、どうして彼らは? 誰も自分の曽祖父、クインが母親と共に生き残ったことを知らなかった。血統を示す唯一の証拠は、ジャクソン・スロースと共通する髪の毛と目だけだった。

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