眠る心を苦しみのままに
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サイト-19の一室。白い壁、舞い上がる埃の匂い、虫の鳴くような蛍光灯の音 — いつも通りだ。

室内の人々はこの月並みな部屋の雰囲気とは対照的だった。室外の同僚ら — 問題が起こるとつま先立ちでそっと歩き去るような — は疑問を抱いていた。どうやって殺風景な部屋はずっと存在することに耐えていられるのかと。部屋の中から怒鳴り声が聞こえ始める度に。

今日も、昨日と一昨日も、立ち上がったのはサラザールという若い研究者だ。

「今すぐやめてもらえるか」

「別の記事が欲しいんだろ……アル・ジャジーラとかのさ?」サムソン中尉はそう答えると、新聞から目を離す。

「要らない」新しく昇進したばかりの雇われ人は呟いた。「機密情報が機能しているか確認したかっただけ。動いてよかったよ、さもないとスティーヴンの責任を背負わないといけなくなってたよ」

俺らの責任を、だろ。機密情報だけで通常の問題を解決させるのは無理な話だ。そこで、昔ながらの良い話を使ってってのはどうだろう。今から頭に入れとけよ、スティーヴンにこれを話すときは必ず涙しながら、とね」

サムソンは両手を合わせると、傲慢な子供のような声で言ってのけた。「ウォッチポイント部門の若造どもは、今回大失敗を犯した。明らかにな。あいつらが任されていたのが件のエリアだ。こういった若い悪党らが跋扈している現在、予防部門での俺の権限はほとんど無いに等しい。だからこそ、何らかの処分を下すべきだと俺は思う」

「どうだ?」サムソンは、はやる思いでそう口に出す。

サムソンの演説が半ばに差し掛かっていたところで、サラザールが両手で顔を覆った。「君は本気で上手くいくと思ってんだね。君も君のゲームも、上手くいくことは絶対ないよ。今までもそうだったし、これからもそうさ」

研究者として計画を立てるのは俺の役目じゃない。お前のアイデアだとスティーヴンをいつ何時でも好きなようにさせている。お前は消極的だって口酸っぱく言ってやっただろ、ったく、ここまでどうにもならねえ事だったとは初めて知ったよ。それで、忌々しいスティーヴンがこの話を知ったらどうすると思うか?」

サラザールは手を握りしめる。「彼が何をするかは分かってる、だからこそ自分の身は自分で守らなきゃいけない。いつも通りね」

サムソンはゆっくりと、静かに、そう口にした。「自分の身は自分で守らなくてもいいってのは分かってるだろ。オプションがある。もうちょっと楽しんだらどうだ? 責任感を紛らわすためにもさ、混沌を生み出してくれよ」

サムソンは机の角ばった輪郭をなぞりながら、サラザールへと距離を詰めていく。

「責任逃れのためにも、先週口にしていたバックアップの計画を終わらせるのはどうだ? 事業計画とかの面では手伝えるし……それに、もしお前がクビにでもなれば、俺も後を追う羽目になる」

サラザールはぐしゃぐしゃになった新聞を机に置くと、首を左右に振り、席についた。「問題ごとから抜け出したくてたまらないんだな、いつだってそうなんだろ」

「お前には俺が必要だ、サラ。実際何回お前を窮地から助けてやった思ってるんだ?」サムソンはだんだんと苛立ちを露にしていた。サラザールはサムソンの計画を無視する。だが時間が経過していけば、二人の間にある道にある覆いをサムソンは削りきれる。いつも自分にそうに言い聞かせていた。しかし今日は違った。

「私たちは互いにいつも協力してきたじゃないか、サムソン。私が心をもたらし、君は体をもたらす」

「おうよ、だが体が心を助けてるってのに、心はどうして未だに体を助けやしないんだ?」

「私は君を助けているじゃないか、それも一度きりじゃない。君がその地位を得るのを助け、尊敬されるように助け、さらには権力を得られるよう助けた。『中尉』という立場を見てごらん。君との話でもう充分時間は無駄にした。というよりも最初から君と話し合うことが時間の無駄かな。ここの主導権を握るのは誰か忘れないでくれよ。この研究室じゃあ、君は私の権限下にすぎない」サムソンが怒りを募らせていることは、サラザールにも感じ取れていた。

そうだな、流石に攻撃的に出すぎたか? ただでさえ眉間にしわを寄せていたサラザールが、さらに眉間へとしわを作りながら思ったことだ。「おい、そんな顔すんなよ、お前のことは信じてる。ここでこうしてお前と話しているだけで、充分に証明してるようなもんだろ」

サムソンとサラザールは眼を閉じた。

静寂が流れる

サムソンは笑った。「安心しろよ、お前が北京の事例でパニックになってんのくらい分かってる。それともあれか、持ち込むには激しい口論だったか?」

サムソンは席について気の抜けた様子で雑誌をめくりだすが、サラザールは歩き回ることをやめず、スティーヴンについて、機密情報について、そして北京での事例について思考を巡らせていた。


サムソンの怒りが収まると、サラザールは習慣としている自信喪失の儀式を始めた。実のところ、この儀式は彼が何をするべきか決める際に役立っている。

サラザールは連敗の最中に置かれているような心地がしていた。どれほど多くのSCP達が己の掌中へと落ちていき、それ故に破壊を引き起こしたのだろうか? もしくはむしろ、問題はサムソンとスティーヴン、そして自らを取り巻く人物らの愚劣さなのだろうか?

「願わくば、機動部隊の死者が30人を上回っていませんよう。私たちの上に立つあの厄介な管理官なら、有事の際は本当に殺すかもしれないからね、私たちを」この時、サラザールはスティーヴンに見られているような気がした。

時に感じるのだ。スティーヴンが視界の端からではなく、目の間に存在する死角からサラザールを見ているかのように。一瞬でも焦点を外すか、目をそらすかすれば、きっとスティーヴンはすぐ側だ。

サラザールはこの場で、いつも2人の失態を負わざるを得なくなる。同僚の目の前で。

サムソンは尋ねた。サラザールの考えを遮るような形で。「民間人はどうすんだ」サラザールが何を言うかなど、サムソンには分かりきっていたが、十分な相違の存在を確認しなければならなかった。

「ああ、そのことなら気にしなくていいよ」サラザールの考えというものは、民間人であればいつでもクローンを作ったり、同じものに交換したりすることが出来るというものだ。それが正しいことか否かなどサムソンの知るところではなかったが、優先順位の高いものではないと常に思いこんでおく。

暗号化されたサムソンの電話が鳴り響き、サラザールは振り向く。サムソンは血にまみれた大きな手で携帯をポケットから取り出した。

「奴をひっ捕らえたようだが」サムソンは不満そうに声をあげる。実のところサムソンは、北京へ行って面白いことが引き起こされるのを見物したいと考えていた。

サムソンは気取った笑みを浮かべる。「そっちはあれのインタビュー担当になってるんだろ。スティーヴンのことなら心配いらない。あれを捕まえて死んだ職員はたったの29人だ」

サラザールはポケットに携帯電話をしまった。

ストレスは積みあがることしか知らないらしい。


回答者: POI-654

質問者: サラザール研究員、東部侵犯防止部門副司令官

備考1: POI-654はイベント: ヴァーダント・アルファの伝搬者である。イベント: ヴァーダント・アルファとは北京に対する余剰次元的侵略を指す。POI-654は現在まで異常性のある能力を示していない。安全確認の実施後、サラザール研究員は2名の警備員と共に収容室に入った。

<記録開始>

POI-654: 誰だ? 私の前に座るお前は

サラザール研究員: そんなに怒鳴らないでください、私はただ……

POI-654: 誰だ!

サラザール研究員: ……私はサ……

POI-654: 話をするならクレフ博士とやらだけだ!

サラザール研究員: (名前を書く) この名前の人について教えてもらえますか?

POI-654: そいつは悪しき奴だ、SCP財団とかいう組織で働いているようなね!

サラザール研究員: どうしてこの人としか話さないと仰るのですか?

POI-654: 復讐するために来たんだ、なのにまた捕え損ねた! クレフを出せ!

サラザール研究員: どうして「クレフ博士」という方を探しているのですか?

POI-654: 敷地に入り込まれたうえに、杖まで盗まれたんだ! クレフを出せ!

サラザール研究員: 敷地というのは一体どちらに?

POI-654: 我が地に足を踏み入れる奴は全員殺してやる! クレフを出せ!

サラザール研究員: つまりはSCP財団で雇われている「クレフ博士」という方があなたの敷地内に入ってきて、私財を盗んでいった。だから復讐がしたくてこの地球まで来た。ということでよろしいですか?

POI-654: あーーーー、質問はあと1回だ!

サラザール研究員: もう少しだけ質問があります。話の要点を掴む前段階として……

POI-654: もういい! クレフを出せ!

サラザール研究員: どうか落ち着いてください。私は単に……

POI-654: もういい! クレフを出せ!

警備員ライル: (前へと歩み出ると、しゃがみ、質問者へと伝言を伝える) サラザール研究員、パロ博士から、南部の方で侵入行為が続いていると……

POI-654: (サラザール研究員に向かって) そもそも、お前の名は何だ?

サラザール研究員: 先ほど言った通り、こちらはサラザール研究員です。

POI-654: 面白い。まだそのような者があったとはな。

サラザール研究員: どういうことです?

POI-654: ああ、何でもないさ。クレフはここにはおらん! ネクサスにいるに違いないぞ! (POI-654は非物質化する)

<記録終了>

最終陳述: 「クレフ博士」という財団職員は在籍しておらず、SCP財団と関わった記録もない。さらなる情報が必要となっている。スティーヴン管理官はインタビュー記録の取り扱いが不適切であるという件について調査の必要性を勧告した。


超常現象ID: 762-865-091

現象説明: サイト19入口に出現した短い文書。金色で縁取られ、わずかに変更が加えられたSCP財団のロゴが押印されていた。

発生日: 2019/04/02

場所: サイト19

現象発生後実行された措置: この手紙は複数人の研究者と管理官によって精査された。████████との協議の結果、手紙に記されていた情報に基づき行動することが決定された。この現象に関するさらなる問い合わせ内容はレベル5機密となっている。


2人の男が、議論をしていた。2人の男が、長い間議論をしていた。とても長い間。実際にはスティーヴンに対する処分が保留になるのではないか、と思われたほどに。何故ならサムソンとサラザールは互いを叱責していたからだ。

途轍もない長さの時間を非常に激しい議論へと費やすと、2人の間にはとある風説が成立した。サムソンとサラザールが侵入防止部門で働いている間ずっと、同僚らは迫りくるだろう侵入者についてのジョークをいつもいつも話していたと。サラザール研究員の扉が開いている間は。

サムソンは一度たりともサラザールの研究室を離れたことはなかったが、同僚たちがサムソンのしわがれ声とサラザールの憂鬱そうでか細い声とを聴き分けることが出来なかった日はない。

「……部門の皆の前で、あの人は言ったんだ。インタビューの失敗は全ての私のせいだと」

別の日、別のミスをサラザール研究員は犯したのだろうか。いや、そもそもサラザール研究員はミスを犯したのか?

「調査はじきに始まる。そう心配するな」サムソンは顔に笑みを浮かべる。「奴らはいつも俺にインタビューをやらせてくれる。機会があればの話だが……俺は本物の情報を得ることが出来る」

「インタビューなら細かいところまで知り尽くしている、とでも言いたいみたいだね」

「分かったよ、お前の知ってることを教えてくれないか? 仮に被験者が反応を示さなかったら……」

多くのことを話したというのに、サラザールとサムソンは議論を続けている。

今回はインタビューについての話だが、昨日の話のテーマは朝に飲むとしたらコーヒーか紅茶、どちらが良いかというものだった。議論の間にも、サラザールの精神状態にまつわる噂話は広がっていく。しかしながらスティーヴン管理官 — サムソンとサラザールという2人組を憎みながらも、その存在無くしては生き残れない — がその噂を鎮めていた。

ストレスは積みあがることしか知らないらしい。


多元宇宙マルチバーサルSCP財団より

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確保、収容、保護

永遠に

分類に影響を及ぼす軽微なコンピューターエラーについて

こちらは多元宇宙SCP財団より宇宙4jm3-ioq86SCP財団に自動送信で送信された文書です。

SCP財団様、最近、スキャナーがそちらの宇宙にて複数の宇宙異常を検知しました。こうした宇宙異常の原因はそちらの宇宙の分類に関する小さな不具合であると特定しました。その原因とは、そちらの宇宙と宇宙4jm3-ioq85を混同してしまったことにあります。

この分類に関する小さな不具合を解決するには、現在の状況に関する基礎的な質問にお答えいただく必要があります。そのため、宇宙 4jm3-ioq86から代表者を1名派遣してください。

現在、多元宇宙SCP財団は3つのイプシロンレベルイベントに遭遇しています。ODGIJUMCの領域拡大第111次アラガッタ聖戦、あらゆる宇宙におけるSCPの指数関数的増加の3つです。

そのため、同盟関係にある456,994,556,986のSCP財団(全体の0.4%)は現在この調査に協力できないものとなっております。従って多元宇宙SCP財団はまた、いかなる宇宙間安全装置を貸し出すこともできません。

そちらの宇宙を簡潔に分析したところ、代表者として最も適切なのはサラザール・S・S研究員であると結論付けました。我々の記録によると Uni-Cluster 987内の宇宙において最も適した宇宙代表者はサラザール・S・S研究員となっております。

最寄りの多元宇宙財団ヘルプデスクへの転送の際は、担当者にこの文書を口述でお伝えください。サラザール・S・S研究員は問題の解決後、安全に転送されます。


ストレスは積みあがることしか知らないらしい。

「つまりそいつら、最終的には解放してくれるんだろ」サムソンの眼は真面目さを宿していた。「管理官どもは今お前を追い出したがっている。テストだ? 正常性の維持だ? そんなもん、俺らが他人を死地に送り出すためについた嘘にすぎん」

「分からないんだサムソン、私たちはこの文書を見た。これは私たちに直接言及してきている」サラザールは動揺していたが、表には出さないよう努める。感情的な人間2人では、状況を悪化させるのみと考えたからだ。「これを回避する方法は他にもあるはずだ。まあインタビュー送りにされたって、それはそれで悪くないかな」

「相応の皮肉だ。お前死ぬんだもんな。上司のブーツにキスをしながら生きてきたように。これ以上危ない意思決定を行えば、何が起こるかくらい分かってる、そうだろ?」サムソンはサラザールのデスク上に置かれたポケットミラーを覗きこむ。

「考えたくないよ、」サラザールは嗤った。「管理官にこの決定は知らされてなかったけれど、どうしてかは言うまでもないよね」

「俺なら管理官に電話するだろうな。しないといけねえ。下からは死が迫り、頭には銃が突きつけられて、他にできることがあるのかよ」

「いや、君にこのことを台無しにはさせない」

「そうだな、考えさせてくれ。お前にとっての解決策は上層部をぶち殺すことか? もしかして、逃げることか?」

「私のやろうとしていることそのものだね」

「えーっと、うーん、ひょっとすると実際に誰を疑っているのか」

「待て、マジか?」

「そんなわけないだろう、馬鹿が。私がこんなことで立場を危険に晒すと思うかい。苦労して昇進して、死ぬことから逃げ続けて、どこに辿り着いたと思う。今ではみたいな人々だけが僕の話す唯一の話題だ」

サムソンはサラザールのデスクから鏡を掴むと、壁に向かって投げつける。「おい、次俺のことを侮辱してみろ、お前なんか操り人形にしてやる。自分が何者かしっかり覚えとけよ」

「フン、管理官がそんなことを許すと思うかい。あの人は君のことを知っているんだよ、お間抜けさん」

部屋の扉がゆっくりと開き、そこから誰かの頭が出てくる。

「大丈夫でしょうか、サラ……」

「大丈夫だよ、エマ。コップを落としてしまっただけさ。ただいま電話中でね、また後で来てくれ」サラザールは秘書へ立ち去るよう合図を送った。

彼女はいつも通り立ち去ったが恐怖を覚えた。床にはカーペットが敷かれているのに、大きな音が響き渡ったからである。

サラ……サムソンは眼を閉じる。「親愛なるサラザールよ、どうか質問をさせてくれ」

サラザールは振り向くと目を見開いてしまう。スティーヴンが最後にサラザールの本名をフルネームで用いたのがいつだったか、思い出せない。

「もしトップの者が貴公に死刑宣告をしたら、どうする?」

「面白い質問です。けれど、その状況は適切とは言えないでしょう。出来ることはよりどりみどり。逃げようとする。死ぬまで戦う。はたまた、古い友人の1人や2人に電話をかけるかもしれません」

「という点において、あなたは間違っています」サラザールは首を横に振った。

「貴公作の偽シナリオで我々は死んでしまう! どうする? こんな時」

「管理官を助けたいと思います」

ストレスは積みあがることしか知らないらしい。

スティーヴンは前へと躓いてしまう。彼の視界はぼやけてきているのだ。

「管理官ならどうするんですか?」サラザールとサムソンは同時に尋ねた。

スティーヴンは立ち上がる。「真の道を示すまでだ」


探索映像ログの書き起こし

日時: 2019年4月3日

備考: 超常現象762-865-091の分析後、██・███████は受け取った文書に明記された条件を順守することに満場一致で同意した。主な動機は、異次元的側面を有していると思われる非一般的で異常な出来事を減少させることにある。サラザール研究員は宇宙外事項に関する全権を持つ連絡員となることを条件に、文書で定められたプロトコル全てに従うことを承諾した。

場所: 多元宇宙財団ヘルプデスク

チームリーダー: サラザール研究員


[記録開始]

サラザール研究員は文書の内容を話しだす。彼は非物質化し、白い部屋の中にいる様子がフィルム映像が映し出された。サラザール研究員は部屋の中を見回す。周囲の様子としては、白い光が部屋中に広がっている。しかし光源は見当たらない。部屋の中には金属製の椅子が1脚のみ、壁の突き出た部分の前に置かれている。

壁には小さな切れ込みの入ったテーブルが取り付けられており、大体10cmくらいの大きさである。テーブルの切れ込みからはゆらゆらと揺れている手と紙のような実体が見える。室内で他に特筆すべきものは見られない。

正体不明多元宇宙SCP財団職員2: (発信源不明の柔らかい声を、サラザール研究員の有する2台のマイクが受信する) お掛けになってください。数分で終わります。

サラザール研究員: 分かりました。 (サラザール研究員は金属製の椅子へ座る。切れ込みの下にある両手が紙に触れると同時に、記号が表示される。)

正体不明MSFE: ああ、ご心配なく。ペンを使うのがどうにも合わないだけなので。

サラザール研究員: 念のため確認したいのですが、質問に答え終わり次第、余剰次元SCPは現れなくなる、ということでよろしいですね?

正体不明MSFE: いずれはね、サラザール研究員。さあ、1つずつやっていきましょう。 (沈黙する) オーケイ、記録の為に簡単な質問を。あなたのフルネームと現在の勤務地を教えてください。

サラザール研究員: 私のフルネームはサラザール・S・サムソンです。サラザールの方が好きですけど。SCP財団という組織で働いています。

正体不明MSFE: 命名上で、ミドルネームの「S」は何の略になるのでしょう?

サラザール研究員: 実は分からないんです。私の知る限りではずっとミドルネームのSはありました。意味がないことだけは確かですけれど。

正体不明MSFE: よく分かった。本題の前に1つ説明を。知っての通りかもしれないが、多元宇宙SCP財団は必要に応じて共に働き支援をする、それだけの集団だ。

私の方の記録によれば、あなたの宇宙にあるSCP財団は既に外宇宙のSCPオブジェクトに働きかけているようですね。ならばそう驚くことでもないでしょう。あなたが今ここにいる一番のワケは、あなたのいる宇宙固有の宇宙IDコードにおける小さな分類エラーが、あなたの宇宙に干渉していると我々が考えているから。

いくつかの質問に答えてくれれば、我々は全てを秩序ある、通常の状態に戻すことができるのです。

正体不明MSFE: オーケイ、最初の質問にいきましょう。一般人はあなた達財団のことをご存じで?

サラザール研究員: いいえ。

正体不明MSFE: 次の質問を。SCP財団がそっちの世界に存在しはじめて何年に?

サラザール研究員: 私の記憶が正しければ、SCP財団は冷戦時代に様々な異常実体防止機構が合併することによって成立しました。

正体不明MSFE: あなたの宇宙がリセットされたこと、或いは人類が絶滅の危機に瀕したことは?

サラザール研究員: 確かなことは言えませんが、恐らくないかと。

正体不明MSFE: あなたの知る範囲で、SCP財団が開発した技術の中で最も最新のものは何ですか?

サラザール研究員: 現時点だと、技術部門が新しい現実安定装置のスクラントン現実錨というものを開発したばかりですね。

正体不明MSFE: あなたのSCP財団が他宇宙との接触を確立したことは?

サラザール研究員: ありません。

正体不明MSFE: もう少しだけ。あなた、今までに何度死んだことがおありで?

サラザール研究員: 一度たりとも、だといいんですけどね。

正体不明MSFE: そちらのSCP財団に「スティーヴン博士」という名前の職員はいますか?

サラザール研究員: (沈黙する) いません。

(後になりサラザール研究員は気付く。「彼はスティーヴン博士ではない、スティーヴン管理官だ」と)

正体不明MSFE: ところで、サムソン博士は最近どうです?

サラザール研究員: はい?

正体不明MSFE: ああ、失礼。サムソン中尉のことです。

サラザール研究員: 彼なら元気ですよ。鬱陶しいほど。何故そんなことを聞くんです? エラーとやらに彼が関係しているとお考えに?

サラザール研究員: その人については何も。

正体不明MSFE: (休止) ありがとう。帰ってもらって大丈夫ですよ。

(サラザール研究員は瞬時にサイト19にテレポートした)

[記録終了]

結果: さらなる連絡の必要が生じた際に備えて、サラザール研究員を多元宇宙連絡委員に昇進させた。この接触を通じて得られた情報は現在分析中。



超常現象ID: 875-983-382

現象説明: サイト19入口に出現した短い文書。金色で縁取られ、わずかに変更が加えられたSCP財団のロゴが押印されていた。文書内にはSCP財団と██████████ ███ ██████████の将来的な関係性に関する情報が含まれていた。

発生日: 2019/04/05

場所: サイト-19

現象発生後実行された措置: サラザール研究員 S・スティーヴン・S管理官に確認してください。3

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