SCP-002-JP-EX
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アイテム番号: SCP-002-JP-EX

オブジェクトクラス: Euclid Explained

説明: SCP-002-JPは頭部に1〜2本の角が生える人型生物です。痩身で肌は全体的に赤みを帯び、腹部が突出しているのが特徴です。歯は雑食性の動物と酷似していますが犬歯が著しく発達しています。また、手指間に小さな水かきを有しており、短時間であれば淡水・海水内を泳ぐことが可能です。体格は人間より小柄であり、成体では最大で体長172cm、最小で106cmの個体が確認されています。なおこれらの特徴のうち一部は幼少個体には見られず、生後10〜20年ほど経過した段階で段階的に出現してくるとされます。

SCP-002-JPは岩手県から東へ約750kmの沖合に存在する[編集済]島を唯一の居住区とし、島内一帯と周辺1km程度の海域を活動域としています。知能レベルは低く、船や住居を製作する技術や火を起こす技術は保有しておらず、石器を使用するまでに留まります。SCP-002-JP群は原始的な共同体を形成しており、後述する食糧を獲得した際は可能な限り多数の個体間でそれを共有し、夜間は開けた台地の上で集団で睡眠を取ることで体温の低下を防ぐことが知られています。なおSCP-002-JPはアルタイ諸語と共通性が認められる未知の言語を用いて個体間の会話を行いますが、文字は使用しません。財団の調査により、少なくとも263体の異なるSCP-002-JP個体が発見されていますが、最盛期にはこの3〜4倍程度の個体数が存在していたものと推定されています。

SCP-002-JPの重要な特徴の一つとして、極めて旺盛な食欲が挙げられます。現在のSCP-002-JPの主食は魚介類や昆虫類ですが、島の北東部に存在する貝塚から複数種類の鳥類・爬虫類の骨の欠片が多数発見されていることから、過去にはそれらの陸生動物も主な食糧源としていたと見られます。それだけでなく、SCP-002-JPは果実・樹木の皮や根、両生類や哺乳類の肉および骨、更には土壌や[編集済]まで、極めて多種類の有機物を食料として消費し、代謝することが可能です。同時にSCP-002-JPはアルカロイドやマイコトキシン類などの自然毒に対する高い耐性を有しており、これらを含有する動植物も問題なく摂食できます。[編集済]島で確認された植物が地衣類や草本に限られ、果実を産生するような樹木や土着の脊椎動物に極めて乏しいことは、かつて島の内陸に構築されていた生態系のほぼ全体がSCP-002-JP群によって消費し尽くされた可能性を示唆しています。

また、SCP-002-JPは島内と周辺海域の資源のほかに、[編集済]島に流れ着いた漂流物をも日常的に摂食しています。これには島に漂着した船舶に積載されていた貨物、並びに乗船していた全ての人間も含まれていたと考えられます。結果として島から脱出できた人間は存在せず、これは[編集済]島自体の存在が1942年の航空写真撮影まで知られずにいた原因となったと思われます。なお漂着した人間が所有していた金属製品や貴重品類は島の各地に散乱しており、SCP-002-JPによって利用された形跡は見られませんでした。

先述した食性によりSCP-002-JPは概して獰猛であり、視界に入った動く物体に対しては積極的に攻撃を加えます(相手が同族の場合はこの限りではありません)。また元来有する筋力が強いことに加えて、石材を原料とした棍棒や銛などの原始的な武具を製作・所持していることから、SCP-002-JP個体への安易な接近は極めて危険な結果をもたらします。ただし、銃器や火炎・電撃などの攻撃手段を用いることで無力化および終了をすることは可能です。

SCP-002-JPがどの時期から[編集済]島に定着していたのかは不明です。


補遺: SCP-002-JP-EX及びサイト-8199に関するタイムライン

財団日本支部において、収容違反の発生が直ちに世界に対して致命的な影響を及ぼしうる多数のオブジェクトを一般社会から隔離された地点において一括して保管・管理を行うために、太平洋上にサイト-8199を建設する計画が1953年に始動しました。その候補地の一つとして激しい海流により周辺海域の航行が困難な孤島である[編集済]島が選定され、同年に財団による島の調査が計画されました。第一次調査においてヘリコプターを用いて島に降り立った調査部隊が襲撃を受けたことにより、初めてSCP-002-JPが発見されました。SCP-002-JP群は調査部隊に敵対的であり意思疎通も成功せず、隊員2名が拉致される結果となりました。調査部隊の一時撤退後、[編集済]島におけるSCP-002-JPの存在を一般社会から隠蔽するという形式でSCP-002-JPの初期収容が図られました。

武装した機動部隊による[編集済]島の第二次調査において、平坦かつ広大な山裾を持つこと、植物が繁茂していないため安定した地盤が保存されていること、並びに先述した一般社会からの隔絶性から、巨大かつ頑健な施設が必要となるサイト-8199の建設候補地の中でも[編集済]島は最適の条件を満たしていることが判明しました。しかし、SCP-002-JPの収容区域が[編集済]島全域を覆っていることから島の使用は困難であり、サイト-8199は予定から大幅に規模を縮小した上で、小規模な島嶼や人工島、海中・地中と言った他の候補地において建設する方向で議論されることになりました。

[編集済]島における食糧資源が明らかに乏しいこと、および島北東の貝塚から多数のSCP-002-JPの新鮮な骨が発見され当該オブジェクトの個体数が減少傾向にあると示唆されたことにより、財団による介入なしではSCP-002-JPの個体数維持は不可能だと判断されたため、オブジェクトクラスをEuclidと定めた上で当初の収容プロトコルが策定され、SCP-002-JPに対する遠隔での食糧投下が実施されるようになりました。SCP-002-JPは与えられた木製のコンテナを破壊し、中の牛肉・豚肉・果実などの食糧を問題なく摂食しました。最寄りの島(約500km離れています)における航空設備が整い、小型空母を介した連絡空路が確立してからは、食糧資源投下のペースは上昇しました。

[編集済]島にSCP-002-JPが居住し続ける当初の収容プロトコルはその存在が一般社会へ暴露される危険性が高く、長期的なオブジェクト収容には適さないものでした。そこで[編集済]島全域にSCP-002-JP収容専用のサイトを建設する案が出されましたが、SCP-002-JPによる建設作業員への被害を防ぐことが困難なことから棄却され、代替案としてSCP-002-JPの全個体を[編集済]島からセクター-8102をはじめとする他の財団施設へと移送する計画が構想されました。捕獲のための試みとして投下される食糧に麻酔薬を混入させる実験が行われましたが、オブジェクトが持つ毒物への高い耐性により、昏倒したSCP-002-JP個体は皆無でした。数百体のSCP-002-JP全てに対する物理的な拘束の実施は直ちには難しいと判断されたため、結局、1958年に初期研究サンプルとして5個体のみが機動部隊により捕獲されました。確保任務の際はSCP-002-JP群による激しい抵抗が発生し、機動部隊側の負傷者6名(死者なし)、SCP-002-JP側の死亡個体数7、負傷個体数30程度が発生する結果となりました。なおこの際、第一次調査時に拉致された調査隊員2名の遺骨の一部も併せて回収されています。

回収されたSCP-002-JP個体のうち1体が解剖され、採取された角・皮膚・血液・内臓などの組織を検査したところ、以下のような事実が判明しました。

  • 角はケラチン質が重積したものである
  • 咀嚼筋と犬歯の発達が認められる
  • 肝臓が著明に肥大化しており、薬物代謝系を構成する酵素の含有量が高い
  • 血中の鉄含有量とヘモグロビン濃度が高値であり、それを反映して皮膚が赤く見える
  • 手指間の水かきはホモ・サピエンスが有する指間膜と同質である

これらの身体的特徴はいずれも通常のホモ・サピエンスにも発生しうるものであり、SCP-002-JPが根本的には人間と同種または極めて近縁な種である非異常な存在であることを示唆しました。SCP-002-JPが有する各種の特徴は以下のように説明が可能です。

  • ケラチン質の角は頭皮の角化サイクル異常で発生するもので、住居を持たず終日屋外で生活することによって引き起こされる多量の紫外線曝露に起因する
  • 良質な食糧に乏しい[編集済]島において摂食可能な物質の種類を増加させることは生存において有利に作用したため、環境への適応結果として薬物代謝系と肝臓、ならびに犬歯と咀嚼筋の発達が起こった
  • 低身長になることは隔離された島や密林のような環境でしばしば見られる適応であり、一般社会に知られている人種においてもネグリロなどの該当例がある
  • 動物質を主軸とする食性であったため鉄分の摂取量が多く、それに伴う血中ヘモグロビン濃度上昇は水中での漁労活動に有利に働いた
  • 水かきはホモ・サピエンスの胎児が有する指間膜がアポトーシスせずに遺残したものであり、これも水中での活動に適応する過程で非異常性に獲得された形質だと考えられる

この指摘を受けて改めてSCP-002-JPの生態調査が行われた結果、原始的な社会を構築する人間の部族として何ら異常性を含まない行動に終始していると判断されました。

  • 住居や船を製作する技術、火を起こす技術を持たないのは知能が低いからではなく、[編集済]島に建材や着火剤として利用可能な資源自体が無いためである
  • SCP-002-JPが使用する言語は他部族との交流を持たない中で独自の発展を遂げたものと考えられる
  • 同族との協調性と他者に対する過剰な獰猛性、そして旺盛な食欲は、苛酷かつ閉ざされた環境の[編集済]島に適応した結果として獲得したものである

以上の事実より、1959年には当該部族は異常性を持つオブジェクトとして分類すべきでないとされ、オブジェクトクラスがExplainedへ、アイテム番号がSCP-002-JP-EXへとそれぞれ変更されました。これに伴い特別収容プロトコルは撤廃され、SCP-002-JP-EXに対する食糧投下は打ち切られました。

SCP-002-JP-EXが財団による保護下から除外されたことを受けて、必要な立地面積あるいは建物の強度の確保が困難であり候補地選定が実質的な凍結状態にあったサイト-8199の建設を、[編集済]島において実施する案が再浮上しました。サイト建設地の確保を目的とし、SCP-002-JP-EXを掃討することによる[編集済]島の制圧作戦が立案されました。これは日本支部理事会にて5-2の賛成多数で可決され、本部の倫理委員会においても「部族の存在自体が知られていないため、一般社会への損失には当たらない」として承認されました。1960年に作戦は決行され、ステルス機から投下された空挺部隊により、[編集済]島に残されていたSCP-002-JP-EXの全数が終了されるに至りました。

1963年にサイト-8199が竣工したのち、[編集済]島の存在は一般社会の記録から抹消されました。サイト-8199東北棟の入口横には、作戦で犠牲となったSCP-002-JP-EXの慰霊碑が設置されています。

なお、SCP-002-JP-EXの全身標本はサイト-8199とサイト-8181に2体ずつ保存されていますが、生体組織は保存されていません。SCP-002-JP-EXのオブジェクトクラス変更過程の遡及的見直しに関する5件の請求は全て却下されています。

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