アイテム番号: SCP-014-JP-EX
オブジェクトクラス: Explained
特別収容プロトコル: P-D/U-漂着イベント担当者は、SCP-014-JP-EXを確認した場合は警視庁公安部特事課に対処を依頼してください。SCP-014-JP-EX及びSCP-014-JP-EX-αに関する情報については公安部特事課との協定により定期的に情報交換が実施されます。
SCP-014-JP-EXはその詳細が判明する以前はP-D/U-漂着イベントにおける"漂着者"と同一の取り扱いがなされていました。そのため以前の収容プロトコルもP-D/U-漂着イベント対処・収容プロトコルと同一です。
P-D/U-漂着イベント対処・収容プロトコル(概略):別世界からの"漂着者"とみられる人間を発見した場合、精神鑑定を実施し虚言・精神疾患の可能性を排除してください。"漂着者”と認められた場合、異常性について調査を実施した上で、異常性に応じて通常の人型SCiPと同様の取り扱いを行います。"漂着"により異常性を失った場合はNeutralizedオブジェクトとして取り扱われます。財団に対して敵対的である場合は薬物・物理的手段を用いて沈静化処理を実施して下さい。
説明: SCP-014-JP-EXはP-D/U漂着イベントにおける、別世界からの"漂着者"と酷似した状況にある非異常性オブジェクトを指します。当初発見されたSCP-014-JP-EX-1は"漂着者"として調査が実施されました。しかしSCP-014-JP-EX-1が特殊な状況において養育されたことが発覚し、その養育者(以下SCP-014-JP-EX-A)についても事実確認のため財団と公安部特事課との共同調査がなされ、異常性が存在しないことを確認されました。調査の結果類似の事案の発生が予想されたこと、及びその状況の特殊さから当該案件についてExplained指定が成されました。SCP-014-JP-EXは異常性が存在しないため、財団においては当該案件の対処は行わず、外部団体である警視庁公安部特事課に調査を依頼しています。SCP-014-JP-EX-Aに類する個人、あるいは団体については201█年現在、警視庁公安部特事課が主体となり、財団は捜査と情報収集に協力する形で調査が行われています。その発端と考えられる人物(SCP-014-JP-EX-α)について異常性が示唆された場合は財団主導での調査が実施される予定であるため、財団において当該報告書を保管、保全しています。なお、P-D/U-漂着イベントへの対処に支障を来さないためにSCP-014-JP-EXの存在は公にはされず、当人の処遇や養育者の処罰については公安部特事課に処理を依頼しています。201█年現在SCP-014-JP-EXは計4例発見されています。
SCP-014-JP-EXのオブジェクト振り分けの経緯を以下に述べます。
SCP-014-JP-EX-1は10代とみられるコーカソイド系の女児です。200█年「東京都の路上にて身元不明で国籍不明のコスプレイヤーと思しき女児が発見された」との情報に興味を抱いた財団エージェントがSCP-014-JP-EX-1に接触し、調査を実施しました。発見時SCP-014-JP-EX-1は時折ドイツ語が入り混じった意味不明の言語を話していたため、当初統合失調症等の精神疾患の疑いを持たれましたが、着用している衣服及び所持していた杖がいずれも非常に精巧に作られていたことを不審に感じた財団エージェントにより一時的に収容されました。財団において言語を用いない精神鑑定を行ったところ精神疾患や虚言の兆候はみられませんでした。SCP-014-JP-EX-1が発する言語の解析は難航しましたが、最終的にはエスペラント語の文法をベースとして十数ヵ国の言語に用いられる単語を組み合わせた言語を用いていることが判明しました。なお、各単語の意味については元となった言語と異なる場合が存在し、SCP-014-JP-EX-1はその差異については認識していなかったことが判明しています。
以下のインタビューログは解析した言語を自動翻訳していますが、実際の意味と異なるとみられる文章については原文そのままを記載しています。
インタビューログ014-JP-EX-01 - 日付 200█/██/██
██博士: 翻訳機作動開始。こんにちは、あなたのことを聞かせて貰えないでしょうか。
SCP-014-JP-EX-1: 私に対する無礼な扱いは赦そう。私のいたところがどこか知るために質問に答える。
██博士: あなたはどこから来たのですか?
SCP-014-JP-EX-1: 私は"王国"第一皇女だ、私の王国以外に国はない、むしろここがどこか知りたい。別の世界のようだが…
██博士: 王国とはどういったところですか。
SCP-014-JP-EX-1: 王国は王国だ、両親である国王と女王の元で5人の家臣と20人の召使が生活していた。
██博士: 広さはどれくらいでしょうか。
SCP-014-JP-EX-1: この世で最も広い、と教えられてきたが、正直なところこちらの世界の方が広い。どういうことだ。
██博士: 質問に答えて下さい。
SCP-014-JP-EX-1: あー、広さは100,000ドミニオだな。
██博士: どうして外の世界に来たのですか。
SCP-014-JP-EX-1: 分からない、分からないんだ、皆が狂ったように笑ったあと気が付いたらあそこに立っていた。
██博士: 笑った後、とは。
SCP-014-JP-EX-1: 意味が分からない、何なんだ、面白かったよ、笑える、君のその顔が見たかった、だと、何なんだ。
██博士: どうしました。
その後、SCP-014-JP-EX-1は不明瞭な呟きを繰り返したためインタビューは一時中止されました。
インタビューログ014-JP-EX-02 - 日付 200█/██/██
鎮静剤を投与した上で再度インタビューを試みました。
██博士: 大丈夫ですか、問題なければインタビューを再開します。
SCP-014-JP-EX-1: ああ、大丈夫だ。
██博士: あなたの王国とはどういうところでしたか。
SCP-014-JP-EX-1: 荒れ果てた大地の中に建つ唯一の王国、と聞いていた。周りは過去の魔法大戦で荒廃してしまった。
██博士: 魔法ですか、どういったものでしたか。
SCP-014-JP-EX-1: 食物を生み出したり、敵を攻撃したりだな。私は炎を司る魔法の使い手だ。
██博士: あなたも魔法を使えたんですか。
SCP-014-JP-EX-1: 当然だ、私は王国第一皇女だからな。来たるべき時のために毎日のように研鑽に励んでいた。
インタビューの中でSCP-014-JP-EX-1が魔法を使用できるということを供述したため、異常性確認のための実験が行われました。
実験記録014-JP-EX
SCP-014-JP-EX-1に"魔法"を使用させる。SCP-014-JP-EX-1は道具として所持していた儀杖と"魔法陣"を描くための筆記具を要求した。
SCP-014-JP-EX-1: 少し時間がかかる。火を司る神への真言を周囲に描き、中心部には炎を表す紋章を描く必要がある。描いたのは久々だが…
██博士: いつもは描いていなかったんですか。
SCP-014-JP-EX-1: 練習場に既に描かれたものがあり、そこでいつも練習していたからな。まあ問題ないだろう。
SCP-014-JP-EX-1: 大丈夫、いつもやってきたことだ、何も問題ないはずだ。
約2時間後、"魔法陣"が完成した。
SCP-014-JP-EX-1: 準備ができた、始めてもよいだろうか。
██博士: よろしくお願いします。
SCP-014-JP-EX-1: では始めよう。火と炎を司る我が友よ、今一度我に力を貸してほしい。その聖なる火を持って敵を打ち砕け、"Mein Leben war sinnlos"
魔法陣には何も生じなかった。
SCP-014-JP-EX-1: おかしい、どうして、いつもはあんなにうまくいっていたのに…Mein Leben war sinnlos! Mein Leben war sinnlos!
██博士: …あなたはその文章の意味を理解していますか。
SCP-014-JP-EX-1: 炎を生じさせる呪文だ。呪文なんだ…
██博士: 分かりました。…実験を終了します。
その後、他の"呪文"について聴取を行った結果、"私は愚かな犬"、"私はただの人間"といった意味のドイツ語であり、いずれもその意味を理解していないことが分かりました。
インタビューログ014-JP-EX-03 - 日付 200█/██/██
"王国"での生活についての詳細についてインタビューを行った。実験以降精神的に不安定となっており、反抗的な様子は見られません。
██博士: 王国での生活はどのようなものでしたか。
SCP-014-JP-EX-1: はい、私は皇女でした。それに間違いはありません。
██博士: 生まれた時からそのようにして育てられていたんですね。
SCP-014-JP-EX-1: はい、その通りです。両親や使用人から愛されて育ったと思います。
██博士: 王国を離れた状況について教えてください。
SCP-014-JP-EX-1: 私の14歳の誕生会の時です。久々に王国内の全ての人間が城に揃い、私の誕生日を祝福してくれました。両親が"今日はあなたのために最大のサプライズを用意した"と言い、皆が微笑みながら何か準備を始めたところまでははっきりと覚えています。
██博士: その後、どうなったんですか。
SCP-014-JP-EX-1: おそらくそこから先は私は夢を見ていたのだと思います。あんなことがあるはずもない。
██博士: 夢の内容について教えてください。
SCP-014-JP-EX-1: あれは夢です。夢なんですよ。
██博士: もう一度言います、教えてください。
SCP-014-JP-EX-1: は、はい。何か仕掛けを作動させた途端に城がパタンと倒れました。城はただの板でした。私が狼狽えているとその瞬間全員が一斉に笑い出しました。そして皆が、声を揃えて、揃えて…
██博士: 何と言ったんですか。
SCP-014-JP-EX-1: 「ドッキリ大成功」と…そして私の顔を指さして皆がゲラゲラと笑い出して…あれは夢です。夢に決まっています。
その後、SCP-014-JP-EX-1は泣き出し、インタビューは中断された。
インタビューの後SCP-014-JP-EX-1の脳活動を精査した結果、SCP-014-JP-EX-1に記憶の改竄や虚偽の発言をしている形跡はなく、SCP-014-JP-EX-1の発言は全て事実であったと考えられます。
インタビューを受けて、SCP-014-JP-EX-Aについての調査が実施されました。この際、異常性物品が関与している可能性が高くないと見積もられたため、警視庁公安部特事課と合同で捜査が実施されました。
共同捜査の結果、██県の廃遊園地跡とされていた土地においてSCP-014-JP-EX-1の供述に合致した施設が発見されました。カント計測器を含む計測機器により現実性改変の可能性について調査が行われましたが、いかなる現実改変の痕跡も見受けられませんでした。また、SCP-014-JP-EX-1が魔法の練習場所としていた箇所を調査したところ特撮に用いられる火炎の発射機構が発見されました。さらに、廃遊園地の存在していた土地の持ち主の調査を行ったところ、SCP-014-JP-EX-1の養育者(SCP-014-JP-EX-A)とみられる人物の存在が浮上しました。SCP-014-JP-EX-Aは資産家として知られています。警視庁公安部特事課によって身柄を拘束し、尋問を実施しました。
インタビューログ014-JP-04 - 日付 200█/██/██__
SCP-014-JP-EX-A: 一体何の権限があって私をこんなところに閉じ込めているんだね。君たちは警察か?なら早く弁護士を呼んでくれ。
██尋問官: (SCP-014-JP-EX-1の写真を見せる)この子のことを知っていますね。
SCP-014-JP-EX-A: ふん、いや全く知らないね、何だこの子は、馬鹿なんじゃないかこんな格好して。
██尋問官: (SCP-014-JP-EX-Aに[編集済]しながら)この子のことを知っていますね。
SCP-014-JP-EX-A: おい!お前何やってんだ!痛い!止めろ!法廷で告発するぞ!私には政府とのパイプも
██尋問官: (SCP-014-JP-EX-Aの[編集済]を[編集済]した)もう一度だけ聞きます、この子のことを知っていますね。
SCP-014-JP-EX-A: ひぃ!話す、話すから止めてくれ!知ってる、知ってるよ!私が育てたんだ!
██尋問官: どうしてあんなことをしたんですか。答えて下さい、答えないとどうなるかお分かりですね。
SCP-014-JP-EX-A: 仲間内で面白いことをしようと色々話してたんだが、ある日新しく入ってきた奴が人間を”飼育”したら面白いんじゃないかと提案したんだ。そしてその飼育した人間に今まで飼育していたことをバラすとどんな顔をするか、とね。面白いことに飢えていた私たちはそれに飛びついたわけだ、本当に凄いこと考える奴がいるもんだと感心したよ。
██尋問官: 十年以上もそんなことをしていたんですか?そんなことのために。
SCP-014-JP-EX-A: 商売柄今まで人が嘆き苦しみ絶望する姿を多く見ていたが、純粋な子供が絶望する姿を見るのが最も面白かったんだ。そして最高のお膳立てをしてその顔を見られた。大変だったがその苦労に見合うだけの価値はあったと思うよ。
██尋問官: そうですか、他にも同じようなことをしている人がいるわけですね。名前を教えてください。
SCP-014-JP-EX-A: いや、名前も何も分からないんだ。これは本当だ!お互いバレた時に迷惑をかけないように身分は明かさなかった。でも提案したそいつを含めて5人くらいは賛同したはずだ。
██尋問官: どうして街中で解放したんですか、証拠が残るかもしれないのに。
SCP-014-JP-EX-A: 私に繋がる証拠は全て隠蔽した。所持品からも足が着かないようにしたし、あんなデタラメの言葉で人にワケを話せるはずもないしな、むしろお前らどうやって私まで行きついたんだ…。解放、いや"放流"したのはそうした方が滑稽で面白いと思ったからだ。必死になって"魔法"を使おうとするところを想像するだけで心が躍った。ところで私は何の罪に問われるんだ、児童虐待か何かにしかならんだろう、とっとと警察にでも引き渡してくれ。
██尋問官: あなたの処遇についてはこちらでも検討します。これでインタビューを終了します。
SCP-014-JP-EX-A及びその使用人に対して記憶の照会と家宅調査を実施した結果、異常性物品は発見されませんでした。また、P-D/U-漂着イベントの存在を認識していた可能性についても調査が行われましたが、SCP-014-JP-EX-Aは存在を認識していないことが判明しました。
以後のSCP-014-JP-EX-Aの処遇については財団と公安部特事課とで協議が実施されました。当初法律に則って処罰、処分を実施する予定でしたが、当該事象を公にした場合、P-D/U-漂着イベントへの対処に支障が生じる可能性が財団から指摘されました。また同時に公安部特事課においても、事件発覚に伴い飼育された人間が処分される可能性が否定できないと指摘されたことから当該案件については公安部特事課において秘密裏に処分されることが決定されました。SCP-014-JP-EX-Aのその後の処分については添付文書"公安部特事課秘匿案件014-001"を参照して下さい。
SCP-014-JP-EX-Aの供述からSCP-014-JP-EXを引き起こしている人物が他にも存在することが明らかとなり、同時に異常性が発見される可能性が低いと判断されたためSCP-014-JP-EXはExplainedオブジェクトに振り分けられ、以後の主な捜査を警視庁公安部特事課に委託しています。なお、発見された被害者に対しては公安部特事課の所管となり、現実復帰プロトコルを適用して社会復帰を促しています。20██年現在発覚しているSCP-014-JP-EXは以下の通りです。
オブジェクトナンバー |
発見時の状態 |
その後の動向 |
SCP-014-JP-EX-1 |
10代前半の女児。 前述した通りドレスを着用し儀仗を所持した状態で東京都██区にて発見。養育者確保済み。 |
財団施設にて保護。SCP-014-JP-EX-Aが確保されるまで財団施設で養育、現実復帰プロトコルの実施後財団職員として雇用され、201█年現在フィールドエージェントとして勤務中。 |
SCP-014-JP-EX-2 |
10代前半の男児。青銅製の鎧を着用し、青銅製の西洋剣を所持した状態で東京都██区にて発見。養育者確保済み。 |
現実復帰プロトコルを実施。後に里親に引き取られたとのこと。 |
SCP-014-JP-EX-3 |
10代前半の女児。 顔を含む全身に呪術的な紋様の入れ墨が施された状態で埼玉県██市にて発見。紋様に呪術的意味は確認できず。養育者確保済み。 |
現実復帰プロトコル及び入れ墨の除去手術を実施、後に里親に引き取られたとのこと。 |
SCP-014-JP-EX-4 |
10代後半の男性。 長野県██市の資産家を家宅捜索し発見。養育者の供述ではサイコキネシスを持つ超能力者として育てたとのこと。本人に異常性は確認できず。養育者確保済み。 |
警察病院にて療養中。 |
補遺: 最初にSCP-014-JP-EXの実施を教唆した人物(SCP-014-JP-EX-α)については、日本において年間100件程度発生しているP-D/U-漂着イベントの存在を把握していた可能性が否定できないことから、財団でも公安部特事課の捜査情報についてその蓄積と整理を実施しています。