クレジット
タイトル: SCP-015-PT — 電磁砲
著者: lulatred
訳者: Mth02
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その他
(著者コメント)
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アイテム番号: SCP-015-PT
オブジェクトクラス: Safe
脅威レベル: ● 白
特別収容プロトコル: SCP-015-PTはサイト-PT7のSafeクラスオブジェクト収容区画の150cm×30cm×30cmのロッカーに保管されます。SCP-015-PTに付属する水晶は損傷や不純物との接触を避けるために真空保存する必要があります。SCP-015-PTへの接触はアルマンド・フェラズ・ノゲイラ博士の許可が必要です。
オブジェクトは2日おきに清掃する必要があります。清掃は、パーツ間のほこりの蓄積を除去し、部品が酸化しているかどうかを確認し、SCP-015-PTを構成する水晶が浸されている水の交換を行います。 7日ごとに、水晶は湿らせた布と一般的な中性洗剤を使用して洗浄する必要があります。
ブラジル超常現象監督局から取得された奇蹟論術や電磁工学等の兵器開発に関する資料が管轄区画07-Bに位置するサイト-PT7の書庫や資料庫に保管されています。これらはフェラズ博士あるいはグスタボ・リンドバーグ・トーレス資料庫管理官の許可を得ることでアクセス可能です。
1974年にブラジル超常現象監督局によって書かれたSCP-015-PTの設計図。
説明: SCP-015-PTはブラジル超常現象監督局によって開発された多段式携帯電磁砲の試作品です。オブジェクトの構造は現在一般的に知られている電磁砲のそれとほぼ同一ですが、異常な手段を用いた改造が施されています。SCP-015-PTの砲撃の威力は奇蹟論術を用いたことにより同サイズの他の電磁砲のそれを凌駕しています。
SCP-015-PTは3つの部品で構成されており、また全体はグラフェンで構成されているため、その見た目に反して重量は13kgです。砲身部分は、基部から接続されたアルミニウム製の"レール"の周囲に配置された銅コイルと、それを磁化するための7つの電磁石から構成されています。ここでの"レール"は、装填された弾丸を砲身に誘導する役割を持つ板のことを指します。通常の電磁兵器とは異なり、SCP-015-PTは稼働する際に必要なエネルギーを自身に付属する水晶から供給しているため、バッテリーを必要としません。
SCP-015-PTの2つ目の部品は、強磁性の弾丸を砲身に装填する弾倉です。この部品は、外見上は一般的な携帯電磁砲のそれに類似しています。しかしながら、現在一般に使用されている電磁砲が対応している弾丸の口径は100mmまでなのに対してSCP-015-PTは350mmまでの弾丸に対応しています。この弾倉に装填された弾丸はレール上に乗せられます。SCP-015-PTの引き金を引くと、弾丸がレール上を移動して射出されます。
SCP-015-PTの3つ目の部品は、砲身下部に接続された小さな箱状の物体です。内部は前述した水晶の他に、濃度15%の塩化ナトリウム水溶液で満たされています。この部品に関する情報は不足していますが、この水晶がSCP-015-PTを稼働させるためにエネルギーを供給することと、生成されるエネルギーの量が塩化ナトリウム水溶液の量とオブジェクトを使用する人物の体質によって変化することが判明しています。
SCP-015-PTを用いた実験の結果、弾丸を射出した際の発射速度は約3000m/sを越え、またオブジェクトを使用する人物の体質に応じて約1メガジュールのエネルギーが弾丸に加えられることが判明しました。SCP-015-PTから発射された弾丸が発生させる衝撃とそれによって引き起こされる破壊は、V2ロケットが着弾した際に発生するものと酷似しています。しかし、V2ロケットは着弾と同時に起爆しますが、SCP-015-PTから発射された弾丸は起爆する前にある程度標的の内部にめり込むという違いがあります。
前述した水晶は、3つの異なる物質で構成されています。解析の結果、27%が方解石の結晶、13%がガリウムの結晶で構成されており、残りの鉱物は現在確認されている鉱物のどれとも一致していません。これらは別々に磨かれた後に溶解され、一つにまとめられた上で未知の手段により凝固されたと推測されています。水晶はSCP-015-PTから取り外されると、異常な挙動を示さなくなります。SCP-015-PTは水晶以外のエネルギーでは作動しませんが、ブラジル超常現象監督局がどのようにしてSCP-015-PTと水晶の関連性を発見したのかは不明です。
現在財団が所持している奇蹟論の知識によれば、SCP-015-PTはアスペクト放射を発生させることなく第六生命エネルギー(EEV)を電気エネルギーに変換することが可能です。EEVをSCP-015-PTの使用者から取り除いた場合、水晶にEEVに類似したエネルギーが生成され電気エネルギーに変換されます。担当研究者は、水晶の機能などを完全に理解するためには水晶の由来などを解明する必要があると述べています。
回収された文書から、ブラジルに初めて到達したイエスズ会の司祭達が水晶に奇蹟論的手法を使用した事が示唆されています。水晶に関して判明した情報は以下に添付されています。なお、情報を保有していると見られているGoI-2391(第二キリスト協会)は財団への情報提供を拒否しており、交渉が継続されています。
ブラジル超常現象監督局
オカルト部門長ベアト・ユースタキオ少佐
機 密
サマウマ計画
担当チーム: C-05
プロジェクトリーダー: 高等オカルト部門レベルA研究員ルイス・フェルナンデス・リベイロ中尉
その他のグループメンバー: 兵器開発部門レベルB研究員ラファエル・カルドソ・ペレイラ少尉、応用電磁学部門レベルB研究員カルロス・カストロ・ロボ軍曹、基礎オカルト部門レベルC研究員ビクター・マーティス・ソウザ伍長
現状: 進行中
経緯: 1978年3月18日に████・█████████・██████大尉の要請によって超常オブジェクト███の研究を目的としたチームC-05が結成されました。1972年6月26日にマウスとオブジェクトの接触により、制御された環境内において白熱灯を点灯させたことによりオブジェクトの性質が判明しました。1972年9月11日にはチンパンジーとオブジェクトとの接触によって25Vバッテリーの充電に成功しました。発生する電力の強さはオブジェクトに接触する生命体の特性によって変化するものと推測されています。1973年2月12日、超常オブジェクト███を使用した兵器の開発が開始されました。下記にオブジェクトから開発された試作超常兵器のリストを掲載しています。
付記: このオブジェクトはゴイアス州のイエスズ会系組織から奪取したもので、このオブジェクトが一般の目から隠蔽されていたことが判明しています。我々は、未だこのオブジェクトの起源とオブジェクトが形成される工程を突き止めることが出来ておらず、またオブジェクトの完全な特性などを追求することが出来ていません。仮定や簡単な計算に基づいて実施された実験では、満足の行く結果が得られました。我々がオブジェクトに費やした時間とコストは必ず報われるでしょう。とにかく、我々はオブジェクトが接触してる生物の生命エネルギーを電気エネルギーに変換でき、生成される電気エネルギーの量を操作することができると言うことが判明しています。また、生命エネルギーを電気以外の種類のエネルギーに変換することができれば軍事利用の幅はさらに広がります。このレポートは他のオカルト部門や、その他関連する部門のメンバー、超常遺物センターに送信して詳細な調査を行ってもらうよう要請する必要があります。
試作品: (各モデルの詳細は後で追記します。)
名称: アルファ EM-01: 手動操作可能な固定単段式電磁砲。超常オブジェクト███は濃度3.5%の塩化ナトリウム水溶液に浸された上で外部から試作品に接続されている。
結果: 十分なエネルギーが加えられておらず、また弾丸が砲身に引っ掛かり射出されなかった。
改善方法: オブジェクトの配置を変更する。
名称: アルファ EM-02: 手動操作可能な固定単段式電磁砲。超常オブジェクト███は試作品内部に接続され、濃度50%の塩化ナトリウム水溶液に浸されている。
結果: 弾丸にエネルギーが集中した結果、弾丸は砲身内部で爆発した。試作品は廃棄された。
改善方法: オブジェクトの配置を変更し、電磁コイルを追加する。
名称: ブラボー EM-01: 手動操作可能な固定三段式電磁砲。超常オブジェクト███は純水に浸された上で試作品に外部接続されている。
結果: エネルギーがコイル間で分散したため弾丸が発射されなかった。試作品は廃棄された。
改善方法: オブジェクトの再配置を行い、七段式に設計を変更する。
名称: チャーリー EM-01: 手動操作可能な七段式固定電磁砲。超常オブジェクト███は濃度10%の塩化ナトリウム水溶液に浸された上で試作品の内部に接続されている。
結果: 弾丸は正常に発射され、その発射速度は1200m/sを超えた事が確認された。また、弾丸には700ジュールのエネルギーが加えられたことが確認された。
改善方法: 挙動の改善を行い、カーボンファイバーを使用できるように再設計を行う。
名称: チャーリー EM-02: 手動操作可能な七段式携帯型電磁砲。超常オブジェクト███は濃度13.5%の塩化ナトリウム水溶液に浸された上で試作品の内部に接続されている。
結果: 弾丸は正常に発射され、その発射速度は2300m/sを超えた事が確認された。また、弾丸には950ジュールのエネルギーが加えられたことが確認された。
改善方法: 挙動の改善を行う。なお、模擬実戦試験の実施は現在保留されている。
名称: チャーリー EM-03: 開発中。
秩序と進歩
SCP-015-PTの研究中に、ブラジル超常現象監督局から回収された「宗教団体が所有する異常物品の記録」と題されたファイルからSCP-015-PTの一部である水晶に関連すると見られている文書が発見されました。この文書によれば、水晶はゴイアス州ポンタリーナの修道院から取得されたとされています。以下は、ポンタリーナ市に潜入していたエージェントが修道院で取得した音声記録です。
録音開始
エージェント・アレクサンドル: こんにちは、ダニエル・ボルボサという者です。この近くに住んでいますが、この小さな修道院のことは気にしたことがありませんでしたよ。中に入って妻のために写真を撮ってもいいですかね?彼女は本当に教会の装飾を愛しているのです。あなたが気にすることではありませんがね…
マルコス牧師: 私はマルコス。マルコス牧師です。演技はやめなさい、私は君がどういう人間か知っていますから。君は科学者の連中のために働いているのでしょう?
エージェント・アレクサンドル: え……ええと……貴方は一体何を言っているのですか?
マルコス牧師: なるほど、知らないのか、じゃあ話そう。私は犯罪者でも気違いでもないということを念頭に置いてほしい。私は牧師だ。神に祈り、神の言葉を地球全体に広めているのです。しかしですね、欲望と幻滅の中で生きている君達のせいで我々の修道院は崩壊しかけた。教えてくれ、君はここで何がしたいのかい?
エージェント・アレクサンドル: わかりましたよ。でもどうせ協力を求めても答えはノーになんでしょう?
マルコス牧師: そうだ。
エージェント・アレクサンドル: そうですか。ところで、あなた方が持っている水晶について教えてくれませんか……
マルコス牧師: いや、それはできませんね。あなたの組織も知っているでしょうけど、昔聖遺物は盗まれ、兄弟は拷問され、我々の修道院は焼かれたのだ。私は君達を信用しません。君の盲目的な行いが招く混乱に巻き込まれるのは真っ平ごめんだ。だから騒ぐなら君達だけで騒いでくれ。もし君達が我々の物を持っているなら、それを返してほしい。わかったらさっさと帰りなさい。そして、二度とここに来るな。
エージェント・アレクサンドル: まだ私には……
ドアの閉まる音
エージェント・アレクサンドル: 司令部…どうですか?あ、わかりました。今戻ります。
録音終了
修道院への立ち入り許可は得られませんでした。なお、SCP-015-PTの一部である水晶の修道院への返還要求は拒否しています。その他の修道士等との交渉の試みが現在も進行しています。第二キリスト協会のメンバーに対する監視は現在も継続されています。
実験015-Aの後に行われた実験も同じように実行されていますが、SCP-015-PTから発射された物体は質量や種類が異なっています。なお、実験は全て標的の貫通という結果に終わりました。
標的: 厚さ20mのコンクリートブロック。
発射後の弾丸の状態: 弾丸の速度は3150m/sに達し、1.2メガジュールの運動エネルギーが加えられたことが判明しました。
結果: 弾丸は標的に円錐状の穴を開けました。この穴は、入口の直径が90cmで出口の直径は8.5mでした。
コメント: "これらのデータは驚くべきことかどうかはわかりませんが、最新の携帯型電磁砲は30cmのコンクリートブロックも貫通できないことを考慮するとこのデータは注目するべきでしょう。SCP-015-PTによって引き起こされる損害は大型の大砲やミサイルによるものと似ています。そしてこのオブジェクトに使用されている技術は我々の知っているどの技術よりも優れています。
注目すべき点はもう一つあります。それは消費するエネルギーについてです。今までに知られている最大の電磁兵器は約25メガワットの電力を必要とします。つまり、使用できる場所に大きな制約があるということです。一方で、SCP-015-PTが必要とするのは10cm程の水晶と数滴の塩水だけです。
戦闘でのオブジェクトの使用については、この技術を再現する方法を研究する必要があり、おそらく利用可能な他のオブジェクトと共に研究しなければならないでしょう。仮に使用できるとすると、SCP-015-PTによって引き起こされる損傷が円筒形になることから、オブジェクトが迅速かつ安全に建造物に侵入する方法として使用することができるようになるでしょう。"