クレジット
タイトル: SCP-021-FR - 断崖の灯火
和訳者: ©︎Mincho_09
原題: SCP-021-FR - Lueur des Falaises
著者: ©︎DrJohannes
作成年(SCP-FR): 2014/4/10
査読協力 ash_huihui
アイテム番号: SCP-021-FR
脅威レベル: 緑 ●
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-021-FRは非実体であるため、現状完全な収容は計画されていません。したがって、特別収容プロトコルはSCP-021-FR実例の出現の減少と公衆に対する存在の隠蔽に集中します。
さまざまな支部により構成される機動部隊ファイ-61("断崖のランタン")は週に一度、次の断崖の調査を行います。:
- ラトラビャルグの断崖(アイスランド1 )
- モハーの断崖(アイルランド)
- エトルタの断崖(フランス)
- ノールカップの断崖(ノルウェー)
崖の縁に位置し、頂上から近づける、30cm以上空中へ突き出たすべての岩は一覧にされ、岩が影響の中心とされるSCP-021-FRに関係する全ての出来事を記録できるよう原則管理されます。
一般人が近づけるすべての岩は地面から採掘され、分析のためサイト61に移送されます。
SCP-021-FRと直接関係するインシデントの識別は可能な限り速やかに行わなければなりません。インシデントの異常な要素のすべては公衆から隠されます。
説明: SCP-021-FRは不安定な崖の縁に位置し、崖の上から徒歩で接近可能な突き出た岩を中心として、不定期にヨーロッパの特定の崖の上で発生する現象を指します。ただし、基準を満たす岩の一部のみがSCP-021-FR現象の中心になることに注意してください。
前述の基準を満たす岩が、夜か日暮れに、崖の頂上のすぐ近くにいる人間(以後、「対象」と呼称)の視野に入り、SCP-021-FR現象が発生したとき、対象は崖の実際の地理的状態とは異なる浸食状態の崖を知覚します(対象には常に崖の縁が実際よりも遠くに知覚されます)2 。対象は等しく、光源を持ち、話しかけてくる様々な外見の実体を知覚します(以後「SCP-021-FR-1」と呼称)。SCP-021-FR現象により修正された崖の外観と同じく、この実体は影響を受けていない観察者には不可視ですが、対象に作成された映像、写真などのすべての記録に現れます。
実際の崖の縁から離れた外観と対象に話しかける実体の組み合わせは、時に対象に接近を促し、対象が本来の崖の縁に近づいた際の落下を引き起こします。落下により死亡した対象が異常な特性を示すことはありません。
現象021-41 ██/██/██ 21時30分 (エトルタの断崖)
前記: 影響の中心となり得る石の管理をしていた財団の職員の一人が影響を受けた最初のSCP-021-FR現象です。
<報告開始>
(関連のない会話は削除済み)
Ryan博士: みなさん、今晩は終わりです、撤収しましょう。
Strauss研究員: センサーの電源は落としたと思うのですが、どうして岩のそばにまだ人がいるのでしょうか?
Ryan博士: 誰もいませんよ。
Koch研究員: 少し待ってください。Strauss、一体何が見えているのです?
Strauss研究員: あそこに若い男が居るはずです、懐中電灯のようなもので地面を照らしています。見てください、たぶんKeynesじゃありませんか?Keynes(叫ぶ)、何をしてるんだ?撤収するぞ。
Koch研究員: Strauss、Keynesは私たちと一緒にここにいます。崖の縁の近くに光もありません。あなたはSCP-021-FRに影響されています。カメラは持っていませんか?
Strauss研究員: 車においてきました。ついてないな。
Ryan博士: 赤外線はこの海岸では何も検知していませんね。動かず、見たものを正確に説明してください。
Strauss研究員: 大きめの人影です、1m80cmくらいでしょうか、私から30mほどのところにいます。手に何か光るようなもの、懐中電灯の光のようなもので地面を照らしています。何を着ているのかよく見えませんが、濡れたk-way3のようで、明かりで輝いています。(間)明かりで地面を照らしながら岩の周りをまわっています。何か探しているように感じます。
Ryan博士: 岩の周りを回っているのですか?空中で?
Strauss研究員: あなたが言うのとは地面が違います。岩が多くて……よく見えません、ですがまるで崖の縁が消えてしまったようです。もう少し近くで見てみます。
Ryan博士: Strauss、動かないように言ったはずです。
Strauss研究員: 岩から遠くにいる限り危険はありません。(自身の電燈で照らしながら近づき始める)
Ryan博士: あなたが見ている岩の位置はもしかしたら本来の位置とはまったく同じではないかもしれません。リスクをとってはいけません。
Strauss研究員: (動かずに)もっともですね。(間)今なんと?
Ryan博士: 何も言っていません。
Strauss研究員: 博士でないなら(見たところ知覚した実体に話しかけている)あなたですか?(長い間を置いて)すみません、行かなくてはならなので、私なしでどうにかしなくてはいけませんよ。
(長い間、Strauss研究員は何度も他のチームの元へ戻るのを躊躇しているように見える。彼は8分後ついに戻るがその選択に対して後悔しているように見える)
Strauss研究員: 彼は婚約者に贈ろうとしていた指輪を草むらの中に無くしたと言っていて、私に懐中電灯で探す手伝いをするように頼んでいます。
<報告終了>
現象021-55 ██/██/██ 23時04分(ノールカップの断崖)
前記: SCP-021-FRの声が記録できるか検証するためにチームの全員にディクタフォンが装備されています。SCP-021-FR現象は監視の4日目の夜に発生しました。本報告は現象による被影響者Nilsen博士のディクタフォンの記録を書き起こしたものです。
<報告開始>
Nilsen博士: 何か起きたようです。
Strand研究員: 赤外線には何も反応在りません。
Nilsen博士: ふざけないでください。機器が障害をきたした可能性は万に一もありません。私が影響を受けたのでしょう。実際の縁に近づきすぎたら教えてください。
(Nilsen博士は車から降り、現象が知覚された方へ離れていく。)
Nilsen博士: 誰かがとても強い光源ですが、古い蝋燭のランプに似たようなものを持っています。実体は小さく、こちらに背を向け、ランタンを左右へゆっくり振っています。
Strand研究員: 赤外線によると、現実の崖の縁に40m以上近づいています。
Nilsen博士: 実体は少し遠くにいます。近づきます。
(30秒程度の間、無線通話は無音)
Nilsen博士: 地面は流木で覆われているようです。どのようにあそこへたどり着いたのでしょう。
Nilsen博士: こんばんは、なんてお名前なの?
SCP-021-FR-1: Mayken Jørgensenっていうの。
Nilsen博士: Maykenは一人で何をしているの?
SCP-021-FR-1: 船にさよならの挨拶をしているの。
Nilsen博士: どういうこと?どの船?
SCP-021-FR-1: 夜の船よ。ランプでさよならの挨拶をしているの。あなたもさよならって言いたい?
Nilsen博士: Mayken、私はここに留まっていたいわ。
SCP-021-FR-1: 遠くからさよならしたら船にはランプが見えないよ。
Nilsen博士: (小さくStrauss研究員に話しかける)実体は8歳前後の少女のようです。正確に推定することはできませんが13世紀から15世紀のものと思われる擦り切れた服を着ています。白いスカーフを頭に巻いています。
SCP-021-FR-1: ここから離れる前に夜のボートにさよならを言うのは良いことよ。親切なことなの。さよならをするとときどき、ボートが消えるときに小っちゃな木靴と拾い上げたくなるようなどんなかわいいものも下の浜辺においてくれるの。夜の船にいつも礼儀正しくしなくちゃいけないってパパが言うの。
Nilsen博士: 夜に崖の縁にいることは危ないことだってパパは言わないの?あなたがしたいようにさせてくれるの?
SCP-021-FR-1: 私怖くないよ。あなたが一緒だもん。
<報告終了>
現象021-62 ██/██/██ 04時50分 (モハーの断崖)
前記: この事例は技術的観点から最も資料に富んだSCP-021-FR現象です。Asling研究員とチームによるビデオ記録はサイト61のアーカイブで参照可能です。
SCP-021-FR現象の中心となる岩はAsling研究員には知覚されませんでした。その代わりに、崖の端には粗い石でできた小さな家が視認されました。Asling研究員の胴には、転落するリスクなしに現象への接近を可能とするために命綱が装着されました。<報告開始>
Asling研究員: あたりがいきなり変わったようです。ついさっきまで無かった木々が見えます。崖の縁に傾いた石造り家も見えます。扉の下で動く弱い光が見えます。ビデオにすべて録画できているとよいのですが。
Teagan研究員: 命綱良し。接近できます。
Asling研究員: 突然天候が変わりました。大粒の雨が降っています。そちらではどうですか?
Teagan研究員: 雨は降っていません。
Asling研究員: 興味深いですね。これから(突然話を中断)実体が現れました。誰かいます。
Teagan研究員: 実体の説明をお願いします。
Asling研究員: 猫背の男で、身長はだいたい1m70cm程度、つばが大きい擦り切れたキャペリーヌのような帽子をかぶっています。私に手招きしています。
(Asling研究員は実体に近づく。雨音が記録機器越しに聞こえる。)
SCP-021-FR-1: こんな天気の日に外で何をなさっているのです?びしょびしょじゃないですか、君。乾かしに上がりなさい。
Asling研究員: この家はほんの5分前までここにはありませんでした。あなたは何というお方ですか。
SCP-021-FR-1: 私は老Meallán、そしてこれは小さな拙宅です。これは私の祖父の、その祖父の、その祖父の家でした。雨が想像を掻き立てたんでしょう、君。11月の雨はひどいですね。暖かい火を起こしますから、上がって乾かしなさい。
(Asling研究員は家の中へ入り、チームにより撮影されていた赤外線ビデオから即時に消える。)
Teagan研究員: Asling、そこにいますか?こちらからはもうあなたが見えません。
Asling研究員: こちらは家に入りました。
SCP-021-FR-1: もちろんあなたは入ったとも。だから言ったじゃないか、想像が掻き立てられているって。その長椅子に座りなさい、あそこの。火に当たればよくなるだろう。
(Asling研究員による記録にはたった一つの部屋から成るひどく荒廃した外観の家が映る。西の壁に接した麦の層がベットの代わりのようである。部屋には二つの荒削りの石の長椅子が互いに火を中央としておかれている。Asling研究員は扉から近い長椅子に座る。反対側の長椅子の後ろには山積みの木がおかれている。Asling研究員はカメラを天井へ向ける。天井は鉤で掛けられた粗末な織物で隠されている。鉤には玉ねぎや香草の束、鉄鍋、種々の動物の脚、乾燥したベリーや液体が入っていると思われる様々なすりガラス瓶のような細々としたものが吊るされている。SCP-021-FR-1は小さな枝を火にくべ、Asling研究員の対面に座る。彼は注意深くAsling研究員を観察している。)
SCP-021-FR-1: ここの人じゃありませんね、違いますか?
Asling研究員: ええ。
(SCP-021-FR-1はAsling研究員をじっと見続けている。彼らは40分間にわたり発言しない。部屋が暗くなり始める。)
SCP-021-FR-1 : 少し火に薪をくべなくてはいけません。
Asling研究員: したくありません。
SCP-021-FR-1: 消えてしまいますよ。
Asling研究員: 日が昇るのが遅れることはありませんから、いずれにせよ。
(部屋は暗くなり続ける。SCP-021-FR-1はAsling研究員を見つめ続ける。数時間の間彼らは一言も発さない。火はついに消える。30分間無線は無音。)
Teagan研究員: Asling?大丈夫ですか?ずっと画面であなたを確認できていません。戻ってきてください。
Asling研究員: いや、まだです。現象の終わりまで待っていたいのです。そうすれば我々は正確に私がいる現実の地形の座標を知ることができます。
(7時50分前後に太陽が昇り、現象が終了する。Asling研究員が画面に再び現れる。彼はSCP-021-FRの中心となる岩に腰掛け、足を空中に投げ出していた。)
<報告終了>