クレジット
記事: SCP-040-DE - 彼の人形/Seine Puppe
著者:
Dr Ore
アイテム番号: SCP-040-DE
オブジェクトクラス: Euclid
特別収容プロトコル: SCP-040-DEは5m x 5m x 3mのクッション壁のセルに収容されなければなりません。その内部には状況に応じて許可が出されている全面を柔らかい素材で覆った寝椅子と腰かけが配置されています。この部屋は24時間カメラで監視されていなければなりません。SCP-040-DEは1日3回、十分な食事を提供される必要があります。
SCP-040-DEが自傷あるいは他の要因で怪我をした際には即座に拘束して落ち着かせるために、精神医学的知識を持った女性介護士1名と心理学的知識を持った女性警備員1名(両者ともクリアランスレベル1以上)が待機していなければなりません。加えて該当職員はSCP-040-DEの衛生施設利用の要求に対応し、その使用中および食事中の対象を監視する必要があります。また、SCP-040-DEとの交流は女性職員のみが行わなければなりません。
SCP-040-DEは治療の一環として日記を1日1回書くように指示されています。上記の条件を備えた介護士と警備員はこの活動中に監視を行い、必要に応じて対象の安全を確保するために取り押さえなければなりません。また、対象は週に2度、割り当てられたクリアランスレベル2の女性財団精神科医(現在はシュティア博士)とのセッションを行う必要があります。
セルに置く物が欲しいというSCP-040-DEの要求はプロジェクト管理者に提出され、その裁量に従って承認あるいは拒否されます。SCP-040-DEにはリスト040-DE-Rにある1つ以上の基準を満たすメディアを見せてはなりません。
説明: SCP-040-DEは身長1.78m、体重60kgの女性です。対象は痩せ型で、ほとんどの職員から「魅力的」だと形容されます。SCP-040-DEの特徴はその真っ白な皮膚と体毛、赤い瞳の色です。この発色は白子症に起因するのではなく、皮膚と虹彩内部の対応する色素によって形成されています。それに加えて頭髪や眉毛、まつ毛以外の体毛がないことも特徴ですが、これは対象に不快感を与えてはいないようです。
SCP-040-DEは軽傷をミリ秒以内に回復できる強力な再生能力を保有しています。これまでのところ重傷時の観察はなされていませんが、SCP-040-DEは短時間で四肢を生やし、心臓の破壊や全身火傷、下半身の切断からでさえも生存することができたと述べています。この特異性はSCP-040-DEの生物学的老化も防いでいると思われるため、その正しい年齢を特定することはできません。その一方で、既にリスト化されている身体的特徴を除き、SCP-040-DEは人間にとって一般的でない特性を外に保有してはおらず、現在まで優れた身体能力を示したこともありません。SCP-040-DEは標準知能テストでIQ104を記録しています。
SCP-040-DEは心的外傷後ストレス障害や極度の男性恐怖症、身体醜形障害などの様々な精神障害に罹患しています。このため、パニック発作や情動発作を起こす前にSCP-040-DEと長時間の交流をすることは困難です。SCP-040-DEが様々な期間に渡って自発的に緊張病に陥る様子も観察されており、直接あるいは鏡や写真などで自分の体を目にした場合には自己攻撃的な行動を表し始めます。また、SCP-040-DEは空想的あるいはドラマチック、エロティック、コメディ、ホラー、アクション、アドベンチャー要素のある娯楽メディアに対して非常に病的な反応をします。これらの視聴はわずか数分後に絞扼反射や、さらに既に上述した反応や行動の誘発につながります。
発見: SCP-040-DEは████年1月31日に、ドイツの██████にある地元の公園の辺りを目的無く全裸で彷徨っているところを警察によって確保されました。身元を特定するために行った健康診断において対象が特異性を保有していることが判明し、██████警察に潜入していた財団職員が報告したことですぐにSCP-040-DEは財団に確保されました。
SCP-040-DEは自らを7年前に██████で行方不明になったと報告されている█████████ █████であると主張しています。しかしこの主張はDNAテストと写真照合によって反証されています。実際SCP-040-DEを既存の身元に当てはめることは客観的にはできませんが、対象の主張から自分の身元に関しては真実を語っていると推測されています。さらにSCP-040-DEは█████ ████という名前の男性(POI-3572-DE)に誘拐され、虐待されていたと主張しています。SCP-040-DEが短時間のインタビューと日記で説明した虐待の種類から推測すると、████氏は現実改変実体であると考えられます(報告040-DE-L参照)。
SCP-040-DEへのインタビューとそのトラウマへの対処が困難であるため、シュティア博士はさらなる情報を得るために心理学的セッションの度に参照される日記を付けることを対象に勧めました。SCP-040-DEはこの提案に同意しましたが、精神的混乱のせいで記録を中断してしまうため、現時点では長い文章を作成することができません。
████年4月12日の記録
こんにちは
いきなりここに何を書いたらいいのか本当にわからないんです。ごめんなさい。
一度自分の状況の要約だけしておきます。私はどこかの秘密組織の独房にいます。ここからまた出られるのか、そもそも自分が出たいのかもわかりません。彼が外にいる限りは…あの人たちは彼をここから遠ざけられるの? 彼がもしも私を見つけてやって来たら[残りの内容は判読不能]
████年4月16日の記録
今日は健康診断を受ける必要がありました。割りと普通の数値だと言われました。もう私の身体じゃないのだとしても、私に少なくとも一つは普通が戻ったんです。私は自分の身体が嫌いです。身体が、私の見た目が嫌い、心から嫌なんです。それは彼の作品です。私は彼が来るまでは他のみんなと同じように普通だったんです、私は[SCP-040-DEが顔面をかきむしり始めたため、内容はここで終わっている。]
████年4月23日の記録
私に起こった出来事を書くように言われました。最初に彼と出会った時から書き始めるのがいいでしょう。そう、会った時というのは、彼が私を寝室からテレポートさせたんです。彼は退屈だと呟いていて、遊びに何かを必要としていました。もちろん私は抵抗しようとしました。彼はただ無造作に街の全てを空中に打ち上げました。ただその破壊の痕跡はすぐにまた元通りになりました。誰もそのことに気が付いてないみたいでした。自分の振る舞いを考えろ、そう彼は言いました。そうしなければ次はあの崩壊が永遠に続くことになると。私は諦めることしかできませんでした。それ以外にどうするべきだったの?
注記: 涙によるものである水のしみがページ上に複数あります。
████年4月24日の記録
最初はホントに楽しかった。私たちは色々な映画や物語を再現しました。ヒーローやヴィランの役にのり込むことができました。想像以上のことだった。でもその内彼はそれをつまらないと言って、シナリオを変え始めました。そしたらある時から原型が何も残らなくなって。それで彼は私をシナリオに合わせて変えて…
████年4月25日の記録
時間が経つにつれて悪化していきました。彼は自分のために物語をでっち上げて、それに合うように私を変化させました。まるで私は色んなアクセサリーを着けた、着せ替えのできる人形のようでした。彼はいつも私を「新鮮」にしておくために前にあった出来事の記憶を消していましたが、私の中のほんの一部は前に何があったのかをずっと覚えていました。そして、その部分は大きくなり続けていました。
注記: SCP-040-DEは記述後7分間緊張状態となり、泣き始めました。
████年5月5日の記録
ある時から彼は自分のフェチだけを満たそうとしたのだと思います。他の人たちが服を着替えるみたいに、フェチは彼を変えました。ある日の私はドラキュラのドレスを着た白い髪の吸血鬼になって、明くる日には全身を液体金属にされ、そのまた次の日には光輪や翼、ハープを全部持った天使になりました。それで彼は私を無理矢理どんな異形に変えても、いつも勃起して、私を捕まえると
注記: SCP-040-DEの筆跡は記述が進むにつれて次第に震えたものになりました。最終的に対象は悲鳴を上げ、両手で頭を押さえました。職員が対象に近寄ろうとすると、机の下に隠れて過換気症候群を発症しました。SCP-040-DEは1分後に意識を取り戻しました。
████年5月10日の記録
自分というものが奪われていく感覚が想像できますか? 自分の顔が、アイデンティティーが奪われて、別の何かに置き換えられていく感覚は? 自分というキャラクターでさえも、自在に特徴や癖、思い出、好みを自由に奪ったり与えたりできる狂った男の手の中にある粘土だったら?それで、それが本物じゃないよと伝えてくる低い声以外に、変化したことを全く思い出せなかったら?
注記: SCP-040-DEは筆記中にボールペンを折るほどに強く握りしめてしまったため、記述を中断しなければなりませんでした。対象は新たなペンを与えられた際、「書いている最中に発作を起こさない日に新しく個人記録を書き上げたい」という理由でさらに記述を続けることを激しく拒否しました。
████年5月12日の記録
今日はとても嫌なことを考え付きました。私がもう私じゃないこと、私の存在や見た目が私のものじゃなくなってることはわかっています。でも私が思っているよりも、私は私じゃないのかもしれません。あの豚野郎は私のコピーを何度か作りました。まさしくコピーです。自分の魂と意思を持った人間です。それでアイツはそれが楽しかったのか、またみんな壊してしまいました。もしも私が私のオリジナルじゃなくて、オリジナルが
注記: SCP-040-DEが机の天板に自分の頭を打ち付け始めたため、拘束する必要がありあした。
████年5月21日の記録
それ以上悪くなることなんてないと思っていましたが、私の期待は裏切られました。彼はスプラッターの味を知ったのです。もちろんそんなことをしたら私が生きられないのはわかりきっていました。だから彼は私を不死にしたみたいでした。それで[極めて暴力的な描写のため非表示]。
注記: SCP-040-DEは記録を作成している最中に震え始めましたが、なんとか記録を完成させました。しかしその完成1分後に吐き気を催しました。
████年6月2日の記録
ある日それが起こりました。私は何度も変えられて、何度もコピーされて、何度も別の私と交換されていたので、その全ての変化を覚えていた小さな部分がある時爆発したのです。それで彼がどれほどその部分を黙らせようとしてもできませんでした。彼が怒って私の故郷を破壊しないかと恐怖しましたが、彼には最後に恐ろしい考えがあったのです。彼は私に全ての記憶を返しました。私の人生で経験した全ての記憶を、真実のものも偽りのものも全てです。この記憶の洪水のせいで私は今の衰弱した状態になり、遂に彼は衰弱した私を解放しました。多分最後にもう一度私が苦しんでいるのを楽しむためでしょう。私が捨てられたのは、誰にも助けられないほどにひどく傷つくまでの間、彼が私で遊んでいたからです。その後で、彼は一人、それかきっと複数の新しい人形を手に入れているはずです。手遅れになる前に彼女らが逃げられることを、あるいは彼が間違って彼女らを殺してしまうことを、彼女らのために願っています。人間があんなことに耐える必要はありません。決して。
職員の一部はこの治療法に疑問を呈していますが、シュティア博士がそのような疑問が出た際にSCP-040-DEに尋ねたところ、記録を作成した後は気分が良くなると対象は述べました。POI-3572-DEに関する捜査は未だ進行中です。