SCP-053-JPを装着中のエージェント・████
アイテム番号: SCP-053-JP
オブジェクトクラス: Safe
特別収容プロトコル: SCP-053-JPは両端を固定し、低危険物収容棚に収容して下さい。Dクラス職員を用いた実験は禁止します。収容違反が発生した場合、セキュリティ担当は警備犬とGPSによる追跡を行って下さい。
説明: SCP-053-JPは長さ約2.3mの黒い布です。材質はごく普通の木綿です。ヤシャブシを鉄媒染して黒く染色したと考えられますが、染料からは微量の[編集済]が検出されました。SCP-053-JPは財団エージェントが土産物として三重県████市の露店で購入し、後にサイト-81██の休憩室で使用された際に特異性が発見されました。
SCP-053-JPで頭部の80%以上を覆い、両端を垂らしたとき、着用者に特異性が発現します。着用者は他の人間から認識されなくなります。着用者の映像を見ても、そこに着用者がいることを認識できません。しかし音声のみの記録では、着用者の声や物音を認識することができました。また機械や他の生物の認識能力には影響がなく、全ての事例で着用者を正常に認識しました。SCP-053-JPを脱いだ場合、特異性はただちに消滅します。
SCP-053-JPの特異性は、ある概念に対する知識が深く関わっていることが判明しました。詳細はインタビュー053-JP-01を参照して下さい。
インタビュー053-JP-01 - 日付20██/██/██
対象: エージェント・████
インタビュアー: ████研究員
付記: このインタビューはSCP-053-JPの認識実験の後に行われました。
<録音開始>
████研究員: お疲れ様でした。私の姿が全く認識できなかったようですね。いつから?
エージェント・████: お前がSCP-053-JPを顔に巻いて、白衣の[編集済]になった瞬間からだよ。声も聞こえないし、足音も聞こえなかった。
████研究員: 水たまりや芝生の上を歩いたとき、波紋などから間接的に認識できませんでしたか?
エージェント・████: 見てたけど、全然気づかなかったな……お前、何でズボン濡れてるの?
████研究員: バケツに水を入れて、蹴飛ばしてみたんですけどね。気づいてもらえなくて、逆に寂しかったです。肩を叩いたのには気づきましたよね?
エージェント・████: ああ。叩かれるまで気づかなかったし、その後もどこにいるのか全然わからなかったけどな。
████研究員: あなたが反射的に繰り出した裏拳を、まともに喰らってしまいましたよ。手ごたえありませんでしたか?
エージェント・████: いや、空振りだと思ったけど……あれ、拳に血がついてるな。
████研究員: 私のです。 肩を叩かれるのも、顔を殴るのも、同じ触覚のはずなんですがね。なぜ空振りだと思ったんですか?
エージェント・████: そりゃ、[編集済]が俺の裏拳なんか喰らうはずがない……ん? どういうことだ? お前、[編集済]じゃないよな?
████研究員: 私が[編集済]の訳ないでしょう。武道の経験すらありませんよ。
エージェント・████: 面白いな! なあそれ、今度は俺が着けていいか?
████研究員: インタビューを終了します。ご協力ありがとうございました。
<録音終了>
SCP-053-JP着用者を認識できなかった被験者は全員、「[編集済]がそんなとこ歩いてるはずがない」「[編集済]だから見つけられるはずがない」「[編集済]の攻撃なんて避けられるはずがない」などとコメントしました。
幾つかの実験により、SCP-053-JP着用者を認識できる人間が少数ながら確認されました。これらの被験者には、「[編集済]を知らない」という共通点がありました。しかし対象が[編集済]について知った後は、通常通りSCP-053-JP着用者を認識できなくなりました。
これらのことから、SCP-053-JP着用者は認識されないのではなく、[編集済]として認識されることによって「SCP-053-JP着用者は認識できない」という認識を新たに植えつけていると推測されます。日本国内で[編集済]を知らない人間は極めて少ないため、この影響はほぼ全ての人間に及ぶことになります。
SCP-053-JPが露店で販売されていたことから、未収容のSCP-053-JPが存在する可能性があります。財団は███県████市でこの露店を発見しました。詳しくは調査報告書053-JP-01を参照して下さい。
調査報告書053-JP-01 - 日付20██/██/██
付記: エージェント・████は警察官に偽装しています。
<録音開始>
エージェント・████: ちょっと失礼します。この露店は営業許可を受けていますか?
男性: ええ、受けていますよ。ええと、許可証どこだったかな……。
(男性はしゃがみこむ。何かを探している様子だったが、すぐに立ち上がる)
男性: ああ、これです。
エージェント・████: [編集済]だ!?
男性: ククク……どうした? 我らがそんなに珍しいか? といっても、聞こえてはいまいな。
エージェント・████: 消えた!? くそっ、やっぱり同じものを持っていたか……。「本部」、応答して下さい。こちら「斉藤巡査長」です。「被疑者」を見失いました!
男性: 本部とやら、聞こえているのなら心しておくがいい。我らについて多くを知る者ほど、我らにとってたやすい相手となろう。さらばだ。
<録音終了>
終了報告書: エージェント・████は対象の確保に失敗しました。この事件以降、該当する露店の目撃報告が完全に途絶えました。何らかの隠蔽工作を行ったものと思われます。調査を継続します。
補遺: SCP-053-JPの収容と研究のため、財団では[編集済]の知識がない非Dクラス職員を探しています。添付された画像の人物を認識できた職員は、████研究員まで申し出て下さい。
ページリビジョン: 8, 最終更新: 29 Aug 2021 16:23