⚠️ 本記事を記述する言語について
ミームおよび情報災害部門より通達
当文書には危険かつ破壊的なミーマチック・エージェントが潜在しています。閲読の前にPROTECT-UA-54防御的ミーマチック・エージェントをよく認識してください。
アセチルサリチル酸を含有する鎮痛剤が近くにあることをご確認ください。
PROTECT-UA-54への曝露を確認しました。当文書は自動的に読み込まれます。
アイテム番号: SCP-054-UA
SCP-054-UA感染者が拡散するメッセージの典型例。
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: 財団のインターネットbot群は、ネットワーク上のSCP-054-UAの発生を常に監視し、これを除去するものとします。マスメディアおよび政治的機関に潜入している財団のエージェントは、SCP-054-UAが発生した、または当アイテムが言及された場合、これらを抹消するものとします。
SCP-054-UAに曝露した人物には迅速な拘束および隔離措置を適用するものとします。感染の第一および第二段階にある人物には、強制治療を施し社会復帰させるものとします。感染の第三段階にある人物、および感染の第一および第二段階にある人物のうち治療の効果がないとみなされた者は、主担当施設の長の判断に基づき、終了措置、あるいは研究のためのさらなる利活用の対象となります。
当アイテムを扱う人員は、特別防御的ミーマチック・トレーニングを受けている者に限定されます。
説明: SCP-054-UAは、選択的な作用を持つ破壊的ミーマチック・エージェントであり、聴覚、視覚、および視聴覚的手段によって発信されます。当ミーマチック・エージェントが主にターゲットとしている人物は、社会的に孤立している人々および老人です。ただし、急進的なウクライナ・ナショナリズム・イデオロギーに基づくと考えられる世界観を有する人物は、そのターゲットに含まれません。
SCP-054-UAは累積的に作用し、その破壊的影響は曝露期間に比例します。結果的に、当アイテムの影響を中和することや、曝露者を治療することは、時間経過とともに困難になっていきます。SCP-054-UAは、当該人物が有していた世界観によっては、ほとんど影響を与えていないかのように見えることもありますが、主として以下の3段階型感染シナリオを辿ることが明らかとなっています。
第一段階: 1週間から1ヶ月持続。感染者は、利用可能なあらゆる媒体を用いて「ウクライナ国家の政治社会システムは、ロシア語話者人口を機械的に差別および人権侵害している極右である」というナラティブ群に関連する情報を積極的に検索し始めるとともに、ウクライナの人々を第二次世界大戦中のナチとの協力体制に紐づける。例えば、典型的には以下のようなレッテルを貼る行為が見られる。
- На Украине фашисты и бандеровцы1 ущемляют русских.
- Запад это Гейропа2 и Пендосия3.
第一段階の終わりに、対象は親・ウクライナ的な情報、あるいは、対象が十分な言語的知識を有していた場合には、親・西側諸国的な情報が掲載されたインターネットリソースにアクセスし、いわゆる「煽り」を実行し挑発的なコメントを行う。この段階では、SCP-054-UAへの曝露を阻害した上で集中ミーマチック・セラピーをを施すことが88%の事例において有効であり、その後SCP-054-UAは無効化が完了し、当アイテムに曝露した状態から、正常な状態での生活に移行する。
第二段階: 2ヶ月から6ヶ月持続。感染者は、政府統制下にあるメディアやラディカルな親・ロシア的インターネットリソース以外の情報媒体を拒絶する。加えて感染者間には、それまでにかれらが唱えていたものを補完するような、新たなナラティブ群が見られるようになる。
- Русский народ — избранный народ.
- Все страны вокруг нам должны, ведь это мы их создали.
- Мир держится на особой духовности России.
感染者はこうしたナラティブ群を、第一段階で多く見られたものと合わせて、可能な限り多数の聴衆に拡散しようと試みる。この際かれらは、妥当ではあるものの、その基本において疑似科学や信頼性の低い情報源に基づいた理論づけを行う。第二段階中期に差し掛かると、対象は他のあらゆる観念を頑なに拒絶するようになる。この症状は劇的に進行し、第三段階に至ってピークに達する。この段階では、SCP-054-UAへの曝露を阻害して集中ミーマチック・セラピーを施すことは、41%の事例において有効性が示されている。
第三段階: 最大持続時間は不明。感染者は煽動アジテーションから、異なる価値観を有する人々に対する精神的および身体的な攻撃といった、活発なアクションに移行する。この段階ではSCP-054-UA-1と議論しその判断における誤りを証明しようとする行為の一切が無意味となる。これは、そのように試みた場合に必ず、最終的に当該感染者が人格攻撃を開始することに起因する。かれらのナラティブ群に、以下が追加される。
- Путин хороший, это на местах воры.
- Россия должна собрать все бывшие земли.
- Все преступления русских режимов прошлого это ложь Запада.
- Россия находится в кольце врагов, которые делают всё, чтобы нам жилось хуже, хотят нас уничтожить и вообще виноваты во всём.
最も長く持続した事例では「Русские это потомки ариев, которые должны бороться против жидомасонов」という観念が見られることもあり、それに「ロシア語とサンスクリット語は同じ言語である」などといった派生観念が伴うこともある。しかしながらこのような病歴を辿った人々は、他の感染者からさえも異常者として認識されることとなり、結果的に彼らは、小規模で、かつ極めて先鋭的な集団を形成していく。SCP-054-UAへの曝露を阻害して集中ミーマチック・セラピーを施すことは、第三段階にまで感染が進行した個人に対しては、治療法としては有効性を呈さない。
オブジェクトの起源: 当オブジェクトはロシア連邦が同国国民および、その他の国の、いわゆる “ロシアの世界ルースキー・ミール” イデオロギー的概念に協調する市民に対し、より強力なイデオロギー的支配を敷くべく、同連邦保安庁 (FSB) の下部組織と協力した株式会社ロゴスに発注したものである、という疑惑が立証されています。確認できるデータによれば当ミームエージェントの最初のバージョンが発動されたのは2014年2月のことであり、最後にして最新のバージョンがリリースされたのは同年6月のことであるとされます。ミームおよび情報災害部門は、当オブジェクトの作用が繰り返し調整が施されていることを確認しており、またこのことは、その開発者が有効性をモニタリングするとともに、ミームの活動性を継続的にサポートし続けている可能性を示唆するものである、としています。
補遺:
SCP-054-UAとPax Russicaとの繋がりに関する私見
私はこの分野の専門家というわけではまったくないが、ここに意見を示しておきたいと思う。SCP-054-UA、あるいは職員間で実にうまく名付けられたニックネーム『我らが父バーティコ・ナーシ、バンデラバンデーラ』 で呼ばれるところのアイテムは、興味深い “果実” である。私の過去や私が財団に入る以前のキャリア4については皆ご存知の通りだ。私は「このミームがあの時代からあるものだ」とか言うつもりこそないし、実際にはそうではないのだろうと考えているが、しかし「これらが用いている原則はまったく同一であり、使っているナラティブは当時のものをほんの少しアレンジしたに過ぎない代物だ」と指摘しないわけにはいくまい。「敵に包囲されている」、「政府はいつだって正しい」、「我々こそは腐った西側諸国に立ち向かう最後の、平和と霊性の土地である」 これらの原則はスターリン時代を思い起こさせ、今なお活発に吹聴されているものだ。結局のところ「プロパガンダとは、それが拡散される地域や環境によらず、『大衆の意見を形成せんと試み、人々の感情や意志に影響を与えんと試み、あるいは彼らを特定の行動に誘導せんと試みるために表現されるものである』という本質は変わることがない」ということだ。
そうであるならば驚くことなどないだろう。古くからの手法が今なお有効なのだから、車輪を再発明する理由などありはしない。大方ロシア連邦のFSBもこれらミーム・エージェントを発信した時に同じようなことを考えたのだろう。とはいえ本件は、愚か者の所業とも天才の所業とも言えることを指摘しておかねばなるまい。なぜならばSCP-054-UAは旧ソヴィエトのエージェントと完全に共存可能で、それらと見事なスクラムを組んでいるからだ。SCP-054-UAがなぜここまで退役軍人に有効に作用するか不思議に思っている方もおられるのではないか? それはミームの作用原理をわざわざ変更する手間を惜しんだ開発者による怠慢だと言ってしまえばそれで終わりなのかもしれないが、あらゆる出来事が、このミーム・エージェントはまさにそれを目的として特別に選定されたものであったという事実を物語っている。ソヴィエト製の観念や工作員の残滓を統合すれば、それはゲッペルスさえスタンディング・オベーションを惜しまない効力を発揮する。その効力とはつまり、共産主義、正教、ツァーリズム、ナショナリズム、ショーヴィニズム、軍事主義、平和への希求、そして場合によってはナチズムやファシズムまでもを溶融させる力であり、その溶融物を “ロシアの世界ルースキー・ミール” などという曖昧な用語に括り上げる力であり、そしてこの用語を人々にもたらす力である。一連の出来事を外部から見た者は、まず次のように思うことだろう。「こんなもん誰が信じるんだ」と。しかしながら卓越した作用とよく選び抜かれたナラティブ群はそのタスクを完璧に完了し、この “フランケンシュタインの怪物” のごとき観念の寄せ集めから、ひとつの生けるイデオロギーを創り出している。ここで新たな疑問が生じてくる このイデオロギーは、SCP-054-UAを排除できたとして、いつまで存続するのだろうか。
— 超常的およびオカルト的アノマリー部門 上級科学職員, サイト-UA-16 管理官, 教授, 博士兼大学教授資格ハビリターツィヤ (д-р з габ.Dr. habil.) 7. █.█. ヤキム。
SCP-054-UAについて
サイト-██渉外課はサイト-UA-16に賛辞を送るとともに、SCP-054-UAにかかる既存の情報の独自の解析結果を貴サイトに送信申し上げる。
この破壊的で多数の感染経路を有する、SCP-054-UAに指定されたミーマチック・エージェントが、主にロシア連邦国家の方に有益なナラティブ群を流布していることも確かなことではある。であるからこそ、多少その形態を異にするとはいえ、これと同じようなものが政府統制下のマスメディアや、教科書、学術的単行書、あるいはフィクションなど、国からの資金を得て出版・公開された種々の文字媒体にも定期的に確認されているのだろう。同様に、その構成や作用原理が、貴官が言及したサンプルと酷似しているという点は、弊サイト-██の専門家の結論と一致するところである。
しかしながらサイト-██渉外課は、僭越ながら、「上述のミーマチック・エージェントの開発および流布にロシア連邦の特別機関が関与している」との仮説については保留すべきであると表明させていただきたい。現代という環境で、SCP-054-UA感染者たちが示しかつ流布しているような規模での、思想先鋭化だとか偽情報だとかいった情報戦略は、短期的には政府の目的にそぐうアクティビティを散発的に激増させるという効果があるのだとしても、長期的には破綻する運命にある。その効果は、当オブジェクトがターゲットとしている人口集団の性質上、限定的である。かれらは人数こそ多いものの、SCP-054-UAによって埋め込まれた観念を社会に有意な影響を与えうるほどの権力や資源を有していないからだ。それだけではない。上記のミーマチック・エージェントの影響に対し免疫がある人々が、これに曝露してしまった人々のことを概して精神病患者とみなしており、後者が扇動 (プロパガンダ) する観念に強固な反感を抱くようになるからだ。ロシア連邦側の専門家たちがこうした点に気づいていないとは思えないことを踏まえても、SCP-054-UAドキュメント中で宣言された仮説の有効性については疑念が高まるばかりである。
上記の観点から、サイト-██渉外課としては、貴官の意見に対して異説を唱えたい所存である。弊課の仮説は「SCP-054-UAを開発および流布したのは政治結社ルフ・“アングリフ”5 である」というものである。歴史的事実から当該GoIがこの類のミーマチック・エージェント作成に要求される科学技術的能力を保有していることは実証されている。のみならず、感染者が非感染者におよぼす上述したような長期的影響は、当該GoIがどのような人物集団を標的としているか、という既存の知見に矛盾しないのである。かれらの標的とは、ウクライナ国家にとっての潜在的敵性人物である。かかる敵性人物は、このようなミームに曝露でもしなければ、白日の元に躍り出ずに潜伏し続けていたであろう人物だ。そして、最も決定的なタイミングで、甚大なダメージをもたらしたであろう人物だ。かれらは当ミーマチック・エージェントの作用下で変容し、「ウクライナの敵」という表象の、生の、そして鮮烈な体現者となったのだ。これ以上に効果的に演出されたプロパガンダも早々あるまい。
SCP-054-UAドキュメントが示す通り、当ミーマチック・エージェントの流布はロシア連邦によるクリミア半島支配およびウクライナ領ドネツィク・ルハンシク地域侵略を促進する効果に繋がっている。すなわち前述のGoIの理念と真っ向から対立する効果を呈しているということである。しかしながら、弊サイト-██の専門家はこれら領域の支配・侵略という歴史的イベントの初期段階において、当オブジェクトが拡散されたという決定的な証拠を得られていない。とはいえ、サイト-██渉外課は、そのようなイベントへの関与が仮に証明されたとしても、それは弊サイトが提示した仮説と何ら矛盾するものではない旨を指摘申し上げたい。P.O.R.A.6 が利用できるリソースは比較的限られており、当該GoIが開発したアノマリーは必ずしもその思惑通りに作用していないからだ。例えばドキュメント041-UA-D-1が示唆するように、SCP-041-UAは子どもという、選挙プロセスに関与しない集団にまで効果を及ぼすようにはデザインされていなかったはずである。サイト-██渉外課は、仮にそのような関与が十分に証明されたとしても、やはりSCP-054-UAが有する当該の侵略促進効果は、当ミーマチック・エージェントの最初期のバージョンが持っていた構造的欠陥に起因するものであると推測する。そう考えればミームおよび情報災害部門が現在まで観測し続けている、継続的な改良にも説明がつくだろう。
サイト-██渉外課は、この場をお借りしてサイト-UA-16に対する敬意を改めて表する。
サイト-UA-16管理官
ヤキム博士
SCP-054-UA担当研究員
和訳注
1.
バンデラとは、ウクライナの政治家、ウクライナ民族解放運動の指導者。彼はウクライナ第5代大統領ペトロ・ポロシェンコにより、「ウクライナ独立のために戦っていた英雄たち」のひとりとして称えられている一方で、ソ連による占領への抵抗のため「敵の敵は味方」として、ナチスと協力した時期があることが取り沙汰される。
2. Гейропаゲイロッパとは、ヨーロッパに対する蔑称。「Гейゲイ」と「Европаヨーロッパ」のかばん語。「保守的なロシアに対し、ヨーロッパは堕落し同性愛にまみれている」という、同性愛嫌悪と反西欧感情が結びついて生じた差別語。
3. Пендосияペンドシヤとは、アメリカ合衆国に対する蔑称。「Пендосペンドース」は時代によって様々な意味を持つが、例えばアメリカ合衆国に在住したロシア人が黒人に対する差別語として用いた例がある。
4. ヤキム博士は1890年、ウクライナの西部に生まれ、同地がソ連に占領された際にGRU “P” 部局に所属していた経歴を持つ。ソ連崩壊に伴い財団に参加した。
5. 政治結社ルフ・“アングリフ” とは、
GoI-UAのひとつ。極右の国粋主義的テロ組織であり、第5代大統領ペトロ・ポロシェンコを支持してきた。
6. 政治結社ルフ・“アングリフ” (Політична Організація Руху "Ангріф"Political Organisation Rukh “Angriff”) の略称。
7. 大学教授資格ハビリターツィヤとは、ウクライナ語圏のほかドイツ語圏等で使用されている高位の学位のひとつ。文字通り、この学位を取得すれば大学教授に就任する権利を得る。
本ページを引用する際の表記:
このコンポーネントの使用方法については、ライセンスボックス を参照してください。ライセンスについては、ライセンスガイド を参照してください。
以下のコンポーネントをフォークして使用しています。