アイテム番号: SCP-081-UA
オブジェクトクラス: Safe/Euclid
特別収容プロトコル: 当オブジェクトはサイト-██死体安置所の専用の引出しにて、+2°Cから+4°Cの温度で保管するものとします。実験を行う際や収容違反の可能性に備えておくため、サイト-██のインベントリに、ロシア空挺軍将校の2014年モデルの野戦服あるいは常装の軍服を収容するものとします。これらは適切な勲章やバッジをあしらっておくものとします。いかなる状況下においても当オブジェクトの遺体を覆う袋の開封は禁止します。
説明: 外見上、当オブジェクトは黒い無地の高圧法ポリエチレン製の遺体袋です。袋の複数箇所が破損・修繕されたことを示唆する、溶着の痕跡が散見されます。遺体袋内部を安全かつ直接観察する手法は確立されていませんが、接触検査やCTスキャンから、部分的に腐敗した男性の死体が納められていることが示唆されます。遺体内部には不自然な形状の金属片が多数存在しており、そのため放射線を用いての検査は困難となっています。ですがそれら金属片が入っている位置や、一部の骨・内臓が破損・破裂していることから、死因は暴力によるものと推定されます (検死報告PM-A-081-UAを参照のこと)。
当オブジェクトの異常性発現は温度依存性を有します。+8°C未満の温度下では静止状態であり、非異常の同様のサンプルと区別不可能です。温度が前述の水準を超過した際、当オブジェクトは徐々に運動性を得ます。この変化はその上部から開始し、10分で下部領域にまで及びます。
完全に運動可能な状態に到達すると、SCP-081-UAは直立姿勢を取ろうと試みます。それに成功すると、直ちに東への進行を開始します。進行すべき方角を正確に特定できなかった場合にどのような挙動を取るのかは現状不明です。これは、大規模な野外試験 (例えば局地的地磁気異常を用いる実験など) が、喫緊の治安状況のため実施不可能であることに起因します。キーウ郊外で行われた実験では、ロケーションによって軌道が若干 (1ミリ秒以下) ながら変化することが示唆されています。当オブジェクトの軌道をプロットすれば、その進行目的座標が推定できるものと思われます。そのために行うべき実験の条件設定が望まれています。
通常SCP-081-UAは、進路に障害物があったとしても東へと進もうと試みます。陸上の障害物なら出来る限り最短のルートを使って迂回し、水の障害物なら横断しようとします。泳ぎに必要な動作が物理的に不可能であることから、これは普通SCP-081-UAが下流に流されていくという結果に終わり、その後陸上に漂着したのちに軌道に復帰します。閉鎖空間内で活動状態に入ってしまった場合をはじめ、回避不能な障害物に遭遇した際には、当オブジェクトは通常の移動方向に進むのをやめ、その代わりに移動可能な範囲内で四方八方に動き回ったり、物を投げたり、窓やドアに頭突きをしたりします。これは当オブジェクトが周囲の注意を自身に向けることで、状況を好転させたり、移動の継続を可能にしようとしているものと見られます。
通常状態ではSCP-081-UAはその進路にヒトやその他生物がいても無視しますが、顕著な例外が2パターン存在します。1パターン目は、その進行を妨げようとする試みに対して当オブジェクトが示す、攻撃的反応です。挑発的刺激が与えられた際、当オブジェクトはそのトリガーとなった対象を物理的接触するまで追走します。なお記録された全事例において最終的に、包んでいる遺体袋の密封性が損なわれた上で████████████████████████████っています。上記の点に鑑み、このような実験は現在禁止されています。2パターン目の例外は、ロシア空挺軍将校の制服に対する当オブジェクトの反応です。この反応は、2014年に同軍が採用したモデルの野戦服、あるいは常装の軍服に対して、極めて安定的に発生します。こうした衣装の人物を前にすると、SCP-081-UAは直ちに進行を停止しその方を向いて背筋を伸ばします。そのような人物が複数人いる場合、最高位の階級の徽章を付けた人物に対してこうした反応を示します。一方、全員の階級が同じだった場合には、最も老年であると思われる人物に対して反応します。その後当オブジェクトはそうした人物から下された命令を遵守しようとします。この遵守の試みは、その命令の性質がどんなものであるかや、オブジェクト自身に危険が及ぶかどうか、またその遂行が原理的に不可能であるかどうかさえ問わず実行されます。これに関して1件の特筆に値する実験があります。本実験では、エージェント・アーペリ (АппельAppel) がロシア空挺軍大佐に扮し、閉鎖された部屋の中で当オブジェクトに「消え失せよ」と命じました。そこから退出することができず、床に倒れ込みました。エージェント・アーペリから当任務の失敗を告げられると、SCP-081-UAは暖房用放熱器の下に近寄り、さらなる叱責を受けて徐々に興奮していきました。これは、包んでいる遺体袋の密封性が損なわれるリスクから当実験が中止されるまで続きました。
発見時の状況: SCP-081-UAは2022年3月31日、キーウ・パサジールシキー1のプリミシキー駅2の安全側線にて、ロシアが投下したミサイルの破片により高電圧送電線が破損した際に発見されました。キーウ州オーブラスチのブチャ地区ラヨンから身元不明者の死体を運搬していた冷蔵列車内の温度が、電力不足により+10°C近くになり、その結果当オブジェクトが活性状態に遷移しました。任務中のウクライナ国家警備隊分隊がこれに遭遇した時には、既に当オブジェクトは枕木を辿って一般路線に向かっていました。当オブジェクトを静止しようと試みましたが████████████████████████████████████████████████という結果に終わり、このインシデントはサイト-██に伝達されました。同サイトの専門職員がこれに曝露した領域の清掃と除染を実施し、当オブジェクトをその軌道上にあった貨物列車へと隔離しました。4月1日の夜、気温が+6°Cにまで低下したことで、当オブジェクトは静止状態に戻りました。この車両はその後エリア-██/5に移送され、1週間のモニタリングを経て初期収容プロトコルが策定されました。