アイテム番号: SCP-089-DE
オブジェクトクラス: Keter
特別収容プロトコル: SCP-089-DEは現在収容されていません。そのため、全てのメディアで「ロボット」の出現についての報告を監視する必要があります。出現が確認された場合、機動部隊DE2-𝕴 ("光の鎖")が事件の調査のために派遣されます。SCP-089-DEの存在、またはそれによって影響を受けている機械の存在が確認された場合は、重火器およびEMPの使用が許可されます。
SCP-089-DEやその影響を受けた対象の捕獲に成功した場合、それらはあらゆる状況下において他の全ての機械から遠ざけられ、適切な機械的アノマリー輸送ユニットに完全に固定された場合にのみ輸送されます。
サイト-DE17にはSCP-089-DEのための隔離房が備わっており、SCP-089-DEの捕獲後はすぐにそこへ輸送される必要があります。
SCP-089-DEによって変化させられた機械の間には大きな違いがあり、単純な分類はできません。そのため、捕獲された対象は別々のSCPオブジェクトクラスを与えられる必要があります。
説明: SCP-089-DEは身長約170cmの人型アンドロイドを指しており、明らかに「ホド」という名前で知られています。SCP-089-DEは、首や上半身、前腕および両手などの容貌から、女性を模しているように見えます。SCP-089-DEは常に、明るいピンク色の羽織のついた黒い幅広のドレス、黒い膝丈のブーツ、黒い蝶のマスクおよび白い巻き毛のかつらを身に着けているため、身体の残りの部分は認識できません。しかし、SCP-089-DEの衣服が損傷した際のビデオ映像の分析では、その下半身、上腕および両脚が、身体の通常目に見える部分のように覆いがないことを示唆しています。
現在までSCP-089-DEを収容することはできていませんが、財団の部隊とは数回に渡って接触しています。この遭遇により、SCP-089-DEは優れた思考能力を所持していること、またおそらくエネルギーの補給を全く必要としていないことが分かりました。対象は周囲の状況を視覚的、聴覚的および触覚的に知覚することができ、そして財団職員によって「ロボットのような音」と記述される、低い女性の声をしています。SCP-089-DEの体力の程度についてはあまり知られていませんが、ただし対象は無傷の状態においては、完全武装した特殊部隊の兵士を片手で持ち上げ、4mまで投げることができました。しかし、ピストル射撃やこぶしによる打撃のような場合であっても、SCP-089-DEに目に見えて損傷を与えるのに十分であることから、体の仕組みは繊細であるようです。それでも、体の軽い重量は対象の素早い動きに繋がっており、それはほとんどの攻撃を回避することを可能にしています。SCP-089-DEが全速力で走行した場合、最高時速60kmに達することが確認されています。見たところ、EMPの武器はSCP-089-DEに対して全く効果がないようです。
SCP-089-DEは、15秒間ターゲットと物理的に接触していた場合、どの機械にも異常な影響を与える可能性があります。その際、接触が対象の衣服によって妨げられているかどうか、あるいは当該の機械のどの部分に触れているかは問題ではないようです。SCP-089-DEの影響を受けた機器はもはや動作しなくなり、自律的に動き始めます。それに加えて観察された事例の97.7%は、影響を受けた機械がその形状を変化させ、およそ人型あるいは動物の形をとることもありました。見たところ、この過程では量の損失や増加は全く起こっておらず、また材料も全く変化していないようです。機器が固定装置の中にある場合は、固定装置がその機器を他に接続された機械あるいは車台に接続しない限り、機器の接続は解除されます。これらは変化のプロセスに含まれています。
SCP-089-DEによって変化させられた機械は、人間のような知性を持ち、彼らの環境を視覚的に、聴覚的に、そして触覚的に知覚することができ、また言語によるコミュニケーションが可能です。SCP-089-DE自身と同様に、これらの機器はもはやエネルギーの補給を必要としなくなるようですが、機械の部品は未だに通常の損耗の影響を受けており、必要に応じて交換されなければなりません。これらの機械は、それぞれの命令を実行する際には、明らかにSCP-089-DEを権威者と見なしているようですが、彼らは同じ命令であっても異なる解釈を行っていたことが観察されました。これは、機械にある程度の自律性があることを示唆しています。彼らには、本来設計された目的に応じて、様々な武器や環境の影響に対してそれぞれ異なる耐性や弱点があります。ただし、機械がそれらの耐性や弱点に対して保護されているか、完全に対応した構成がされている場合を除き、全てのケースにおいて彼らはEMP武器によって、一時的に「ノックアウト」されうるというだけです。
変化した機械: オートバイ、モデル ホンダ CB500F
変化: 対象は推定2mの長さのネコ科のように見えた。「両足」は車輪に固定されたままであり、その車輪を転がすことによってのみ、移動を可能にしていた。
変化した機械: 自動車, モデル パサート B8 (Typ 3G)
変化: 対象はカバ(Hippopotamus amphibius)のそれを彷彿とさせる形態をとった。その一見太った見た目にもかかわらず、対象は非常に速く加速することができた。
変化した機械: 溶接ロボット ██████ ██████ ███
変化: ロボットのアームは、計6つの装置を備えた溶接キャビンの一部であり、その全てがこの変化に関係していた。対象は、およそ一般的なカブトムシ(Carabidae)の形をしており、その体長は約3mだった。対象は足の端から感電する可能性があった。
変化した機械: レオパルト2
変化: 対象は5mの大きさの、人型の形をとった。車両のキャタピラーは余分になったため、足の装甲として機能していた。主砲は背面に移されたが、必要に応じて頭部を前方へ引っ張ることで調節可能であった。2本の機関銃は対象の前腕に位置していた。
変化した機械: バケットホイールエクスカベーター、 モデル SRs ███
変化: [データ削除済]
SCP-089-DEによって改造させられた機械のもう一つの特徴は、彼らが所持するのと同じ能力を、他の機器にも付与する能力です。これは通常、彼らの機械の部品の一つをターゲットとなる機器に取り付けることで行われましたが、他の方法も確認されました(例えばSCP-███-DEを参照)。ただし、この方法によって呼び起こされた機器においては、形態の変化が一度も観察されたことがないため、その効果を伝える能力もないようです。
SCP-089-DEおよびその作用によって呼び起こされた機器は、明らかに要注意団体である「カエクス・カーネリアナ・コレクティブ」の一部のようです。彼らは決して一般の人々には直接危害を加えようとはしませんが、財団や彼らの敵と見なされる他のグループに対するいくつかの行動および戦闘の際に、人々は既に間接的に被害を受けたりあるいは殺害されたりしています。SCP-089-DEは少なくとも改造された3台の戦闘機で移動するため、現在にいたるまで未だに財団に捕獲されていません。改造された戦闘機のうちの少なくとも一つは、EMP武器に耐性があります。さらに、SCP-089-DEが戦闘後どのようにして受けた損傷を修理するのかは未だ不明です。
SCP-089-DEは、事件-DE/B33の発生中に初めて姿を現しました。長い間、財団はこのSCPについての情報を、第25局によって遂行されていた「アテナプロジェクト」の25個の文書群を財団の調査チームが復元するまでは、観察によって得られた分析を通してのみ集めることが可能でした。これらの文書群は、SCP-089-DEに相当する特性を備えた異常性が記述されています。これら二つは、同一の存在であると仮定されています。
国家保安省
第25局
プロジェクト案 056/42
ドイツ民主共和国における社会主義者の人口を取り締まる場合の、増加傾向にあるデータ量を処理するために、データ処理のための機械を設計するという提案書が提出された。この課題は、理論上はコンピューターによって実行可能ではあるが、その技術水準に到達するまでには約80年もかかると概算されている。したがってこの目的のために、超自然的な現象の力を借りることを想定している。既にマギスター・アイゼンは、そのための構想を仕上げている。それは基本的に、結晶に思考を吹き込むために、予め特殊な処理を施され、そして電流を流し込まれたシリコンの結晶に人間の記憶を詰めるというものだ。仕様はこの文書に添付している。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトの許可
これによりアテナプロジェクトの提案は承認される。マギスター・アイゼンは、██████・アイゼン夫人の記憶を利用することが許可されている。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する研究記録
私は遂にアテナを開始した。感覚装置は申し分なく機能しており、彼女は視界や物音の変化に対して適宜反応を示している。現時点で彼女は未だ幼児の知性しか持っていないが、私は2週間以内に彼女を成人レベルに引き上げることができると確信している。
国家保安省
第25局
マギスター・アイゼンの監督命令
マギスター・アイゼンは、一昨日肺炎で亡くなった彼の妻である██████・アイゼン夫人の死を悼むために与えられた追加の休暇を拒絶した。したがって、同志██████・██████を使ってマギスター・アイゼンを、本人には気付かれぬように監視するよう命ずる。彼の精神的および感情的な状況のありとあらゆる変化は私に報告されるべきである。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトの告知書の提出
アテナは現在、希望した水準に達している。言語は流暢に、思考の繋がりも首尾一貫している。そのうえ、外部からのエネルギー供給をもはや必要としないことを発見できた。それゆえ発電機は停止された。さらにアテナは彼女に接続された機械の要素を操作することができるようだ。それで私は彼女に腕をプレゼントすることができた。1967年10月3日にプレゼンテーションを行う予定だ。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する研究記録
プレゼンテーションの期日は私と私の秘書たちによって守られるでしょう。
国家保安省
第25局
██████・██████についてのモニタリングレポート
マギスター・アイゼンはアテナに人間の頭部と上半身をモデルにした骨格を取り付けた。その後彼は、この骨格にシリコンカバーを被せ、アテナの手先にシリコンの手袋をはめ込んだ。それらの色は肌色で、██████・アイゼン夫人の手や上半身を表しているように見える。なぜそうしたのかという質問に対してマギスター・アイゼンは、プレゼンテーションのために望んでそのようにしたこと、またアテナを可能にしたのは結局のところ彼の妻の記憶であったため、まさにその顔を選んだということを自慢げに語った。アテナへの感情的な執心を疑う。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する新たな指示
プレゼンテーションが無事に終了した後、彼らには今、以前話した一連の実験を受けさせるように仕向ける必要がある。第25局の管理者は、毎週報告書を提出しなければならない。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する研究記録
一連のテストは失敗した。アテナは自身に与えられた数学の練習問題を理解することはできるが、彼女は助けを借りずに自力でそれを解くには至らなかった。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する研究記録
数学の理解に進歩はない。さらなるコンディションの調整が必要。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する研究記録
多少の改善は見られたものの、アテナにはいまだ組み合わせに関する能力が欠如している。さらなるコンディションの調整が必要。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する研究記録
アテナは失敗だったかもしれない。彼女は許容可能な知性は持っているものの、専門的な知識を統合することはほとんど不可能のように見える。プロジェクトを中止し、新しくやり直すことを推奨。
国家保安省
第25局
██████・██████についてのモニタリングレポート
マギスター・アイゼンは一連のテストを実施していないようである。その代わり彼は何時間にも渡ってアテナと会話しており、その際彼女を██████と呼んでいる。さらにオブジェクトには、これまでは言及されていなかった、他の機械を改造して自主的に動作させるという能力があるようである。これには、15秒の間ずっと接触させ続ける必要がある。マギスター・アイゼンはこれらの構造物を彼の「子供」と呼んでいる。感情的な執心が確認された。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する新たな指示
マギスター・アイゼンは、目に見える進歩が欠けているために、アテナプロジェクトの指揮権を剥奪された。マギスター・クローネがプロジェクトの指揮権を引き継ぎ、これまで発生したエラーを場合によっては修復してくれるかもしれない。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトに関する研究記録
アテナには、おそらくマギスター・アイゼンが見落としていたであろうと思われる、何か触覚のような不要な特異性がいくつかあります。さらに、単純なデータ処理のために設計された機械としては、アテナに現在見られる感情は全くもって不要です。来週それらを消去する予定です。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトの事件記録
本日8時27分頃、マギスター・アイゼンはバールを使ってアテナに接近を試みた。当時アテナの感情の消去を行っていたマギスター・クローネは、マギスター・アイゼンに不意打ちの一打を浴び、後頭部に裂傷を負った。マギスター・アイゼンはアテナの構成要素の核であるシリコン結晶を機械から取り出そうとしたが、体勢を立て直したマギスター・クローネによって突き飛ばされた。その後マギスター達の間で戦闘が起こり、最終的にマギスター・クローネがマギスター・アイゼンの頭蓋骨を粉砕することで決着がついた。その後アテナは突然叫び声を上げ、自身の機械装置を、未だに接続され稼働していた発電機もろとも改造し始めた。それによって彼女は移動を可能にする人間的な体を手に入れた。それはまた、最終的に[文書断片紛失]の目の周りのシリコンマスクに激しい損傷を与えたマギスター・クローネに飛び掛かることをも可能にしていた。その後でアテナは建物のエレベーターを改造し、それによって発生した混乱を利用して逃走した。ドレスデンの██████・█████████通りにある施設は、火災のため全く使い物にならなかった。マギスター・クローネは現在殺人容疑のため起訴されている。だが、我々の職員の証言によって間もなく正当防衛のため無罪となるだろう。アテナの行方は現在不明である。
国家保安省
第25局
アテナプロジェクトの中止
アテナプロジェクトは、昨日の出来事を考慮して、マギスター・アイゼンが本来の目標からどの程度逸脱したかについて完璧に調査され、引き続き通知があるまで中止される。収集された情報は、それまで他のプロジェクトのリファレンスとして利用可能だが、第25局の執行部の許可なしには使用できない。