SCP-098-KO
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アイテム番号: SCP-098-KO

オブジェクトクラス: Euclid

特別収容プロトコル: SCP-098-KOの発生する毎年1月18日になったら韓国の██市(以下、行政区域と呼称)を封鎖し、外部と接触することができる全ての通信手段を排除してください。封鎖された行政区域に侵入しようとする部外者はクラスB記憶処理を施してから解放してください。SCP-098-KOによって麻痺した行政区域の代わりに、財団は全ての業務を担当します。深夜を過ぎたら、財団エージェントを投入してSCP-098-KOに関係する副産物を全て回収し廃棄して、損傷を修復してください。このプロセスはなるべく迅速に処理する必要があり、夜明けが近づいてきた場合には被害回復の進行状況に関係なく取り組んでいた仕事を中断し、行政区域の封鎖を解除した後に財団エージェントは帰還してください。1

説明: SCP-098-KOは、毎年1月17日の深夜から1月18日になると韓国の██市で発生する現象です。SCP-098-KOが発生すると、その行政区域に物理的に存在している全ての人物は、強い衝動を感じるようになります。2SCP-098-KOの影響を受けた人物は、誕生日のお祝いパーティーを行うための準備を開始します。「誰の誕生日パーティーなのか?」という質問に対し、影響を受けた人々は全員が李██という名前を口にし、自分たちと非常に親交が深い人物であるとして描写しますが、詳細な特徴や外見を質問されると混乱し、怒りを表します。ほとんどの人物は、住宅やレストランなどの様々な居住空間で李██の誕生日のお祝いパーティーを開くだけで現象は終わりますが、約5人中2人はより過激な方法でこの李██の誕生日を知らせたり、お祝いをします。これにより様々な副産物と被害が発生し、その一部は以下の通りとなっています。

  • Happy Birthday to you 李██!と書かれたチラシ、横断幕などを設置する。
  • インターネットや携帯電話などの通信手段を用いて李██の誕生日を祝うという内容のものを外部に無作為に送信する。
  • SCP-098-KOの影響を受けていない部外者を雰囲気を台無しにするという理由で暴行する。
  • 「誕生日プレゼントを用意するため」という名目で、銀行や店に保管されている金銭や貴重品を盗み出す。
  • 当該の行政区域に保管された文化的価値が存在する物体を破壊し、李██の誕生日を祝うために作成された工作物を展示する。

これ以外の全ての記録は、SCP-098-KO記録ファイルを参照してください。

過激な行動を取らなくとも、SCP-098-KOの影響を受けた人物は共通して李██の誕生日のお祝いパーティーを開くことだけに関心を持ち、自分たちが行わなければならない業務を実行しないため、SCP-098-KOの発生中には行政区域は都市としての機能を喪失します。1月18日の深夜を越えるとSCP-098-KOの影響は完全に消失し、同時に影響を受けていた全ての人物は眠ることのできるスペースに移動し、睡眠を取ります。睡眠を取って目を覚ました全ての人物はSCP-098-KOの影響を受けた記憶が平凡な日常を送ったという記憶に変化します。3

補遺: SCP-098-KO-07映像記録

SCP-098-KOが発生している行政区域の風景を撮影した映像記録のうち、一組の音楽家が撮れている映像記録を要約して叙述した。

SCP-098-KOの発生する5分前におよそ10人の音楽家が行政区域に位置する公園に集まり始めた。音楽家は楽器を調律したり、確認する作業を5分ほど行った。SCP-098-KOが発生すると、音楽家たちも様々な楽器を用いてHappy Birthday to youを楽しげな表情で楽しげに演奏し始めた。
Happy Birthday to youを2時間繰り返し演奏した後、誕生日がテーマである他の楽曲を演奏しており、演奏していた楽曲は自分たちが改詞、または直接作曲したものと見られる。この時、音楽家たちにいくつかの変則的な現象が発生した。休むことなく一日中演奏を続けていたにも関わらず疲労や脱水症状を見せなかった点と、SCP-098-KOの影響を受けていた人物が音楽家の存在を認知していないかのように無視していたという点である。時間が経過して1月18日の深夜に移り、SCP-098-KOが消失して財団エージェントが封鎖を解除する。すると音楽家たちは演奏を止め、「誕生日おめでとう!李██!」と叫んで挨拶した後、慌てて逃走した。

この音楽家の集団がSCP-098-KOの影響を受けていたのか、または何か関係があったのかは不明です。しかし、SCP-098-KOが消失しても他の普通の一般人のように睡眠を取らず、彼らから変則的な現象が観測されたという点から、財団は音楽家たちがSCP-098-KOと関係があると推測しました。

SCP-098-KO-インタビュー記録-26: SCP-098-KOの起源を追跡するため、財団は行政区域に居住していた李██という名前を持った1月18日が誕生日である全ての人物を調査しました。長年の調査の末、SCP-098-KOと関係のある李██の父親を発見し、インタビューを実施しました。

カーミラ博士: (SCP-098-KOが発生している行政区域の風景を撮影した映像を見せ)あなたは本当にこの現象についてご存知ありませんか?素直に応じてくださったなら、すぐにお帰しすることができると思います。

李██の父親: ……はい。この映像が事実なのであれば、これまで異常だと感じていた全てのことに説明がつきます。恐らくこの時に起こった出来事だと明らかになりましたからね。ただ、少しばかり語るのが難しいことなので……

カーミラ博士: あなたの一言に、この現象を防ぐことのできる糸口を見つけ出すことができるかもしれません。是非とも知っている事実を全て教えてください。

李██の父親: ふう……わかりました。その代わり考えを整理するために時間が少し必要です。(不安感を拭うために目を閉じたり、ペンを転がすなどの行動を取る。10分後、考えを全てまとめたらしくカーミラ博士に向かってゆっくりと口を開く)できました。ただ、話が少し長くなるかもしれません。

カーミラ博士: 大丈夫です。時間なら十分にありますから。しかし、真実だけを話していただく必要があります。もしそうしなければ、更に多くの時間が必要になるでしょう。

李██の父親: それは、ちょうど私の息子である李██の15回目の誕生日のことでした。普段から私の息子は小心な性格のせいで、友達とまともに付き合うことができていませんでした。そのために暗かった息子の顔がどうしてなのかその日は明るい表情で、友達が沢山来るから誕生日のお祝いパーティーをできる限り盛大にするように準備してほしいと言ったんです。ケーキはもちろん、ピザやチキン、酢豚などとにかくその年代の子供たちが好きな食べ物を一杯注文しました。恐らくは30人が一生懸命食べても余る量でした。
私と妻は、できるだけ盛大にパーティーを開くためにパーティーが開かれる部屋を華やかに飾り付け、路上音楽隊も呼んでいました。ところがパーティーの準備を終えたのに、友達が一人も来ないのです。息子はイライラとするように時計を何十回も見ていましたが、最終的に深夜を過ぎても誰も来なかったのです。その日、息子が泣くのを見て、私は気付きました。どうして息子が筆記用具や上履きをよく無くしてしまうのか、どうして服や鞄に常に靴の跡がついているのか、どうして……息子がいつも暗い表情をしていたのか、私はその時初めて気付いたのです。状況は私が思っていたよりも遥かに深刻だったのです。

カーミラ博士: (ハンカチを差し出し)これで目でも拭いてください。

李██の父親: ありがとうございます。意外と優しい方なのですね。まだその時のことを考えると、私がどれほど自分の子供に無関心であり、愚かな親であったかを思い知らされます。

カーミラ博士: それほど自分を責めないでください。それで、その事とこの現象に何の関係があるのですか?

李██の父親: はい、息子が泣くのを見ていた音楽隊の皆さんが私に声をかけたのです。
「私たちは、このような哀しい悲劇的なことが行われたことを心から残念に思います。よろしければ、私たち真昼の樫の木さすらい楽団がお子様の誕生日をここに住む人々に広くお知らせ致します。彼らはお子様の誕生日を心からお祝いする筈で、このような無礼な仕業をしでかす輩を成敗するはずです。どうですか?」
当時の私はショックのために我を失っていましたし、彼らの言葉はただ口だけの言葉だと思っていましたので、適当に聞いて頷いてしまいました。しかし、この映像とこの言葉を聞いた後で、毎年1月18日に起こっていたことを考えてみれば、その音楽隊がしでかしたことと考えて間違いないと思います。

カーミラ博士: ううむ、なるほど。それでは最後の質問ですが、お父様とお子様は、この現象についてどう思われますか?

李██の父親: 何?どのように思うって?私が今までどんな目に遭ったのかを知ってて言っているのか?

カーミラ博士: お、落ち着いて……カハッ!

李██の父親: (カーミラ博士の胸ぐらを掴み)その日以来、私は1月17日になる度に息子の気持ちを晴らしてあげるためにサプライズ誕生日パーティーを開こうと準備していたんだ。しかし、何故か寝て起きたらあっという間に1月19日になっている上に、部屋にはパーティーを開いたような痕跡まであった!頭の中には1月18日に、息子の誕生日なのにパーティーを開くことはおろか、普段と同じ一日を過ごした記憶しかないにも関わらずね。更に、それを見た息子が何を言ったのか分かるか?「一体僕の誕生日に誰の誕生日パーティーを開いたの?今度はパパまで僕を無視するの?」と言いながら私を軽蔑するような目で見つめられることが、一体何年繰り返されているのかを知っているのか!おかげで私と息子との関係は完全に粉砕されてしまった。どうやって責任を取ってくれるんだ!

カーミラ博士: け……警備員!この人を今すぐ引っ張り出して!

[インタビュー終了]

カーミラ博士のコメント: このインタビューによりSCP-098-KOの効果は、SCP-098-KOの原因である李██本人と彼の家族にも影響を与えているという事実を知ることができた。お祝いされる主役のいない誕生日のお祝いパーティーということか……。

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