SCP-1000-JP-EX
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アイテム番号: SCP-1000-JP-EX

オブジェクトクラス: Neutralized Explained

特別収容プロトコル: 現在SCP-1000-JP-EXは絶滅したと考えられています。存在が公に知られないよう、化石を含め、SCP-1000-JP-EXの遺骸はサイト-8102の標本保管庫に収蔵されます。SCP-1000-JP-EXの化石あるいは存命個体が発見された場合、概ね重複する分布を示すヨーロッパオオナマズ(Silurus glanis)や、信憑性の低い未確認生物として偽装されます。

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SCP-1000-JPの頭骨。右外側の模式図。

説明: SCP-1000-JPは全長1.5~1.7mに達する、ワーム状の水棲脊椎動物です。SCP-1000-JPは骨格の形状や汗腺の存在などの解剖学的特徴から哺乳類との共通性を示しますが、既知の哺乳類から逸脱する下記の形態形質の組み合わせを有します。このため当初SCP-1000-JPは分類不能の未確認生物として扱われ、分子データを用いた解析手法の発達後も長らく類縁関係が不明でした。

SCP-1000-JPの頭部には顎が存在せず、円口類ヤツメウナギ目と類似する可動性を欠く半円形の口器が位置します。脊椎動物における二次的な顎の消失はSCP-1000-JP以外に報告されていません。口器には位置ごとの異歯性を示す歯が配列し、ヒト(Homo sapiens)と類似します。声道はヒトと比べ極端に矮小化しており、バリエーションに乏しい鳴き声を発します。鼻や目といった感覚器官は頭部の腹側に位置しており、既知の魚類含む水棲生物の種と一致しません。SCP-1000-JPの脳は大脳と小脳が中脳と間脳を隠すように卓越し、哺乳類の脳と一致します。特に、発達した大脳新皮質はヒト上科の霊長類と、大後頭孔がより吻側で貫通する幅広の後頭骨はヒトと共通します。

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4個体分のSCP-1000-JPの脊柱

膨らみを帯びた頭部の後側は単純化した椎骨が薄い椎間板を挟んで配列しています。哺乳類に見られる頸椎・胸椎・腰椎の区別は困難であり、これらはヘビ亜目の爬虫類に見られる特殊化と類似します。SCP-1000-JPはヘビと同様に前肢が二次的に消失していますが、移動の際は側方ではなく背腹方向の波動運動により推進力を得ており、これは海棲哺乳類と共通します。一般の哺乳類では胸肋骨以外の肋骨が退化・消失する一方、SCP-1000-JPは尾椎末端を除いて各椎骨に肋骨が附随しており、四肢に代わって上陸時の体重支持に寄与します。四肢に伴って鎖骨・胸骨は失われており、SCP-1000-JPは整然と配列した脊柱による均一な運動能力を獲得しています。

SCP-1000-JPは仙椎が退化し、尾椎が消失しています。SCP-1000-JPは小型化した骨盤を介して後肢が腰椎以前の脊柱と連続して新たな体幹を形成しており、後肢は仙椎以降の脊柱に代わる運動器官として機能します。これは鰭脚類の形態を極端化させたものとして喩えることが可能です。典型的な哺乳類と比較して大腿骨と脛骨・腓骨が短縮、中足骨および各趾骨が伸長しており、後肢を構成する骨の長さは足根骨を除いてほぼ均等です。これによりSCP-1000-JPは従来の哺乳類の骨格形態よりも柔軟な後肢の動作が可能です。

SCP-1000-JPは主として動物食性であり、河川に生息する甲殻類・二枚貝類・魚類などを捕食します。SCP-1000-JPは下顎を持たず咀嚼能力を欠くため、捕食行動は水や泥と共に獲物を丸呑みにすることで行われます。大型魚類や河川に転落した大型哺乳類などが捕食対象とされることは無く、特にヒトは忌避される傾向にあります。

発見経緯: SCP-1000-JPは中世にイギリス・グレートブリテン島のテムズ川で生存個体が発見されており、怪魚や大蛇として民間伝承に記録されています。特異的外見と体躯ゆえにSCP-1000-JPは食用とされることがなく、積極的な駆除対象として扱われていました。SCP-1000-JPの生息個体数は元々少数でしたが、1814年以降の目撃情報は急速に減少し、18██年に財団が保護した時点では絶滅寸前に陥っていました。この原因としては、排水の流入による生息環境の悪化、小氷期の終焉による水温・気温上昇、個体数減少による近交弱勢の誘発と絶滅の渦などが考えられています。

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産出記録から推定されるSCP-1000-JP分布域

その後、財団古生物学部門の調査により、過去のSCP-1000-JPの分布が一部解明されています。SCP-1000-JPはかつてヨーロッパ本土やイタリア・シチリア島にも生息しており、一部西アジアにも分布した可能性があると判明しています。SCP-1000-JPの化石あるいは完全な鉱物置換が起きていない半化石は、ヨーロッパ地域の後期更新世から完新世にかけての地層で産出しています。このため、SCP-1000-JPの祖先である陸棲哺乳類は前期更新世までに水圏に進出し水棲適応を果たしたと考えられます。

飼育環境において、SCP-1000-JPの寿命は約80年であることが収容済みの個体の例から示唆されています。本稿執筆時点で収容されている最後の個体は1920年代頃に誕生したと推測されており、また種全体は野生絶滅の状況にあると考えられています。このため、SCP-1000-JPは2000年代に絶滅すると推測されます。当該個体は2002年6月24日に死亡しました。解剖の結果、死因は加齢に伴う非異常の胆石症および急性胆嚢炎と判断されました。血液および体組織のサンプルと剥製はサイト-8102に保管され、SCP-1000-JPは絶滅したと見なされNeutralizedに再分類されました。



追記1: 上記個体を含め、SCP-1000-JPの遺骸・半化石から得られたミトコンドリアDNA(mDNA)を用い、分子遺伝学部門により全塩基配列の解読が行われました。解読の結果、SCP-1000-JPは現生哺乳類の中ではH. sapiensに極めて近縁であることが判明し、ボノボ(Pan paniscus)よりも近過去においてヒトとの最近接共通祖先から分岐したことが示唆されました。塩基置換数にヒト上科霊長類の分子時計を適用したところ、ヒトとSCP-1000-JPの分岐年代は約0.4Maと推定されました。

これに関し形態系統を支持する古生物学部門は、細部の骨格形態の類似性や層序との整合性を認めた上で四肢や頭骨の特殊化を指摘し、判断を保留しました。また解析手法の是非にも議論が波及したため、統計学部門を交えた合同研究が進められています。

追記2: 次世代シーケンサーの登場を受け、mDNA解析の結果を検証するため、Genome Analyzer IIxによるSCP-1000-JPの核DNA(nDNA)の全塩基配列の解読が実行されました。当該のnDNAシーケンスは哺乳類のものと類似しましたが、既知の哺乳綱の系統と一致せず、上目レベルでの関係性の議論が困難であると判明しました。

また、SCP-1000-JPのnDNAシーケンスは部分的に一部の爬虫綱・両生綱と一致しました。他分類群と一致する塩基配列が母細胞から娘細胞への遺伝の蓄積(遺伝子の垂直伝播)で得られる可能性は微々たるものであると考えられることから、他分類群から遺伝子が取り込まれる水平伝播を視野に入れた議論が進められています。

同時に、解読結果および推定される共通祖先保有関係がnDNAとmDNAで大きく異なる原因についても議論中です。



追記3: 2013年11月3日、財団はドイツ連邦共和国ミュンヘンにて、ドイツ第三帝国が実施した上部更新統の地質調査報告書を回収しました。自国民の遺伝学的優位性を主張する当時のドイツは、ゲルマン人の祖先民族が世界の正当なる支配者の地位にあったことを証明すべく、考古学的研究を強く推進していました。親衛隊の傘下に置かれた機関アーネンエルベによる研究対象は純然たる歴史科学のほか、魔術・呪術など、異常・非異常を問わず広範囲に亘りました。当該の地質調査は古人類学の領域に踏み込んだ当該機関によるものと考えられています。

当該文書にはSCP-1000-JPあるいはそれに極めて近縁な生物種が記載されており、mDNAに基づく類縁仮説と整合的な祖先-子孫関係が導かれました。当該仮説に基づき、SCP-1000-JPはその系統発生的起源が明らかにされたと判断され、Explainedに再分類されました。

当該文書は隠匿され、連合国による調査を免れて旧アーネンエルベ関係者により保管されていました。当該文書の地質概説に記載された露頭は隠蔽のため破壊されており、また回収された生物遺骸は発掘以降急激に酸化が進行したため、良好な保存状態を保った関連標本は現存しません。

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